先月から仕事がデスマーチと化して全然星が見れない日が続いていましたが、ようやく一区切りついて、10月5日の夜は久々の天体撮影、というか先日買った ASI294MC Pro のテスト撮影をしました。
横浜は夜中までには快晴の予報だったので早めに準備して再び土星と衛星を撮るべく夕方から μ-180C と SX2 をベランダに出してスタンバイ。なのですが、雲がひっきりなしに流れてくる上、シーイングも極悪で結局断念。
夜中からは晴れてきたので木星を撮影したのですが、シーイングはほとんど改善しておらず、撮影データをいつも通りに処理すると「おせんべいノイズ」が浮きまくって使い物にならずボツに。「おせんべいノイズ」というのは、極めてシーイングが悪い時に何故かモノクロカメラでのみ発生する現象で、AutoStakkert の「継ぎ目破綻」の一種と思われます。以前に何度か経験しました。
というわけで何も撮れないのも癪なのでバローレンズを外して直焦点で月面を撮影しました。シーイングが悪い上、月がベランダの天井のギリギリの位置にあったので口径も少し削られてるかもしれません。
まあ解像度は ASI294MM Pro の半分ですし*1 そこそこ写っています。が、フラットナーも何もない素の Dall-Kirkham なので周辺部の結像はコマ収差で結構荒れています。この構図だと周辺部に欠け際のクレーターが来てしまうので微妙ですね…
せっかくのカラーカメラということで一応は彩度を上げて色を出しているのですが、所詮は月面なので色の変化が微妙すぎてテスト撮影としてはどうかという…
ということで、色があって月明かりでもそこそこ写りそうなターゲットということで、M42 の中心部をラッキーイメージングで撮ってみました。
シーイングが悪く写野全体にうねりのような像のゆらぎがあって、そのままスタックしても位置合わせが合わなさそうなので、まずは月・惑星と同じように AS!3 でスタックしました。フラット・ダークの処理も AS!3 です。
一応中心部のモクモクが主題なのであまり炙っていません。というか月明かりのカブリがあるのとフラットがイマイチ合わなかったせいかあまり炙ると背景にムラが出るのでほどほどにしてあります。
フラットを青空フラットにしたせいかカラーバランスが大きく崩れて調整が難しかったのでスタック後の画像は PI で ABE → PCC → HistgramStretch してストレッチ画像を作成。さらに StarNet2 で星なし画像を作って RegiStax で wavelet 処理。ストレッチ画像から星なし画像を減算したものを wavelet 画像と合成して仕上げました。
ざっくり書くとこうですが、トラペジウム周辺が StarNet2 で上手く星抜きできなくて手書きのマスクを使ったりもしています。また、元々カラーバランスが崩れすぎなせいか悪シーイングで星像がぼやけ気味なせいか、SPCC では十分なサンプル星が拾えず PCC を使っています。PCC でも Signal Evaluation で Detection scales を上げたり Minimum detection SNR を下げたりしてサンプルを増やすようにしました。
というわけでとりあえず使えそうな感じです。途中でうっかり冷却切って-10℃から0℃まで一気に昇温してしまったけど結露とかはなかったみたい。秋になって外気温が下がっててよかった…
ちなみに ASI294MM Pro を持っていながら MC Pro も買っちゃったのは、やはり3色フィルターでは撮影に時間がかかりすぎてしんどいので、MM と MC で惑星写真みたいに LRGB 合成するのが効率よさそうだし、彗星みたいな動きの速い対象だと MM は辛すぎ、というのを前々から思っていたのですが、先月末に複数の天文ショップから ZWO 製品が10月2日から7%値上がりとの告知があり、さすがに7%はしゃれにならんということで駆け込みで購入したというわけです。この際 AM3 も、とも思ったのですが、さすがにそこまでは踏ん切りがつきませんでした…
*1:ASI294MC Pro には MM Pro のような Unlocked Bin 1 Mode (46 Megapixel モード)がありませんので 11 Megapixel が最大です。