Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

11月1日の木星の再処理

11月1日に撮影した木星なんですが…

同じ日に撮った他の人達の写真を見てから改めて自分の写真を見るとですね… なんかコッテコテやな、と…

また悪い癖が出てきて、ついつい「こってり」目に仕上げてしまったようです。これは僕が勝手に言ってる用語なんですが、階調表現を重視して模様の強調処理を控えめに仕上げた画像処理を「あっさり」、逆に解像感と模様の造形のインパクトを重視して模様を限界まで強調して仕上げた画像処理を「こってり」と呼んでいます。元ネタはもちろん 天下一品のスープです。

2019年から画像処理を試行錯誤しているうちにノイズを抑えつつ模様を浮き上がらせる技が身に付いてきて、調子に乗ってどんどん「こってり」仕上げに偏っていたのですが、2020年に改心して「こってり」と「あっさり」のバランスを追求するようになったのでした。

でも撮影後の仮処理は目が疲れてるせいもあるのか「こってり」が良さそうに見えてしまうんですよね… 仮処理の目的は写りの良い時間帯と悪い時間帯の見極めなのでそれでも構わないのですが、その流れで本番の処理を初めてしまうとついつい「こってり」に傾いてしまうようです…

ということで、再処理です。どうも好シーイングに見合った結果が得られていない気がして AS!3 のスタックからやり直しました。また、今回からは AutoStakkert!3 3.1.4 (最新版)を使ってみました。*1 AVX2 に対応しているので処理がちょっと速くなっています。

木星とイオ (2023-11-01 21:53) (A+K40%)
木星とイオ (2023-11-01 21:53) (A+K40%)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 265), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 325), SharpCap 4.0.9268.0 / 露出 1/60s x 1500/3000 コマをスタック処理 x 9 (L:5, RGB:4) をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.1.4, WinJUPOS 12.2.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2024, Lightroom Classic で画像処理

どうでしょう?前回の処理の前のチェックではこの時間帯のシーイングはベストよりは少し落ちる感じだと思っていたのですが、処理してみると全然いいのでは…?

今回は AS!3 の Quality Estimator の設定を変えていて、Noise Robust をデフォルトの5から7に上げています。こうすることでフレーム品質の評価がノイズに惑わされにくくなってより妥当なランキングができるようになる、のだと思います。事前のテストでは5よりも6、6よりも7がディテールのコントラストが上がる傾向がありました。

Wavelet パラメータもイチからやり直したのですが、やはりLだけ見て「こってり」(K)と「あっさり」(A)のバランスを取るのは難しく、両方作って Photoshop で A の上に K のレイヤーを重ねて不透明度を調整することでブレンドしました。この方法を「K-Aブレンド法(K-A Blending)」と呼んでいます。勝手に。

この方法だと LRGB 合成後の状態でリアルタイムにブレンドのバランスを確認できるので便利です。今回は K のブレンド比(不透明度)は40%にしました。今見るとまだちょっとこってり気味かな… でもディテールの階調が潰れずに解像感もむしろ良くなっていると思います。

この調子で他のキャプチャも再処理していきたいと思います。

*1:最新版と言っても2018年6月リリースです。今までずっと最初にダウンロードした3.0.14をそのまま使っていました…