Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

横浜の空の天の川 / 動画で撮る星座 / SA GTi また止まる (2024/7/4)

7月4日の夜、Nikon Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED のテスト撮影を兼ねてベランダから天の川を撮影ました。また、動画撮影のテストでや座、わし座、いるか座の近辺の動画を撮影しました。このカメラレンズは先日中古で購入したものです。


天の川を撮る

横浜の空ではさすがに肉眼では天の川は見えないのですが、非改造デジカメでも画像処理を頑張ればうっすらとは写る、というのは8年前に確認していました。

また、冷却CMOSカメラとデュアルナローバンドフィルターでバーナードループのような赤い星雲もかなり写るのも昨年確認しています。

というわけで、今回は冷却CMOSカメラとデュアルナローバンドフィルターで天の川を狙いました。バックフォーカス調整は0.5mmのシムリング2枚で合わせて1.0mm追加して撮影。

結果はこちら。

天の川 (2024/7/4 22:42)
天の川 (2024/7/4 22:42)
Nikon Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED (35mm, 開放), ZWO 2" Duo-Band Filter / Sky-Watcher Star Adventurer GTi, 30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.13 による自動ガイド / ZWO ASI294MC Pro (Gain 150, 0℃), SharpCap 4.1.11817.0, 露出: 2分 x 32コマ / PixInsight 1.8.9-2, Lightroom Classic で画像処理

結構写りました。望遠端の35mm(フルサイズ換算70mm)での撮影です。実は広角端17mm(フルサイズ換算35mm)でも撮ったのですが、カブリと迷光によるゴーストを補正しきれずボツにしました… 35mmもさすがに低空の光害カブリは画像処理でも取り切れなくて残してあります。写野のすぐ下にはマンションがあり、実は避雷針が写り込んでいました(シグマクリップで消えたようです)。

M8 干潟星雲, M20 三裂星雲, M17 オメガ星雲, M16 わし星雲, 散開星団 M23 あたりははっきり写っています。恒星は M17 のあたりはギリギリ12等まで写っています。光害の影響が強い画像下部の銀河中心あたりでは10.5等あたり、光害が一番ひどい画像右下隅はギリギリ10等が限界のようです。

PixInsight の AnnotateImage でアノテーションを付けたものを以下に。

天の川 (2024/7/4 22:42) (アノテーション付き)
天の川 (2024/7/4 22:42) (アノテーション付き)

画像処理は PixInsight で WBPP*1 の後 ABE*2, PCC*3, HistogramTransformation の後、Lightroom でグラデーションマスク処理とノイズリダクションとその他微調整です。なおフラットはカメラを真上に向けて、レンズフードの上に白画面を表示してフロントライトを最大輝度にした Kindle(電子ペーパー端末)を置いて撮影しました。

ストレッチ処理前の画像(WBPPのスタック結果)を Lightroom でカラーバランスと +2.0 露出補正のみで処理したのがこちらです。

天の川 (2024/7/4 22:42) (カラーバランス、+補正のみ)
天の川 (2024/7/4 22:42) (カラーバランス、+補正のみ)

デュアルナローでもなかなか厳しい… M8, M17, M16 は既に識別できる程度に写っています。撮影時のプレビュー画像ではっきり視認できたのは M8 だけでした。

星像はやはり周辺が流れ気味。流れ方が四隅それぞれ違うのでレンズの取り付けが少し傾いているようです。シムリングの柔らかさのせい?縦構図で画面の長辺方向に重力がかかっているので余計に傾きの影響が強いのかもしれません。あとストレッチ前だとあまり目立たないのですが、周辺部では倍率色収差がかなりあります。

星座を動画で撮る

天の川の撮影後はフィルターを IR-Cut フィルターに入れ替えて動画撮影のテストをしました。SharpCap の設定は昨年12月のテストとほぼ同じです。

撮影対象はわし座、や座あたりからいるか座まで。いるか座、かわいいので…

結果はこちら。元の解像度は 2072x1411 ですが、Full-HD にクロップしました。

わし座、や座、いるか座 (2024/7/5 00:28)
わし座、や座、いるか座 (2024/7/5 00:28)
Nikon Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED (35mm, 開放), ZWO 2" IR-Cut Filter / Sky-Watcher Star Adventurer GTi / ZWO ASI294MC Pro (Binning 2, RAW8, Gain 570, 0℃), SharpCap 4.1.11817.0, 露出: 65.734ms, フレームレート: 15fps / ffmpeg 4.4.2 で画像処理。

キャプチャ画像を PixInsight でアノテーションしたものを以下に。

こぎつね座、や座、わし座 (2024/7/5 00:28)
こぎつね座、や座、わし座 (2024/7/5 00:28)

いるか座 (2024/7/5 00:28)
いるか座 (2024/7/5 00:28)

ギリギリ7等星まで写っているようです。前回のテストでは7.5等ぐらいまで写っていたのですが、焦点距離の違いでしょうか?前回は55mm、今回は35mm。

焦点距離が短いとセンサーのピクセルに入る背景光の割合が増えて暗い星はコントラストが落ちて写りにくくなるはずです。ということは17mmだともっと写りが悪くなる?今度17mmもテストしてみます。流星撮影に使いたいので本当は17mmが本命…

ちなみに動画の処理は ffmpeg だけでやりました。実は ffmpeg は SER ファイルをそのまま扱えます(最近まで知らなかった)。ただ、バージョンが古いせいかフィルター指定でクロッピングする場合、クロップ位置(x,y)を指定するとデベイヤーがおかしくなるようで、一度高品質のMP4に変換してからクロップや回転等の処理を追加しました。

$ ffmpeg -framerate 15 -i 2024-07-05-00_28_01.ser -vf crop=w=2072:h=1410,hqdn3d -c:v libx264 -crf 17 -pix_fmt yuv420p -r 15 2024-07-05-00_28_01_hqdn3d.mp4

$ ffmpeg -ss 0:04 -t 1:00 -i 2024-07-05-00_28_01_hqdn3d.mp4 -vf crop=w=1920:h=1080:x=12:y=129,colorbalance=gm=-0.1:bm=-0.14:gs=-0.1:bs=-0.14:gh=-0.05:bh=-0.07,eq=gamma=0.97,transpose=1 -c:v libx264 -crf 23 -pix_fmt yuv420p 2024-07-05-00_28_01_hqdn3d_cut_crop_colorbalance_eq_transpose.mp4

主なオプションの意味は以下の通り。

1回目:

  • -framerate 15 : 入力のフレームレートの指定。これがないと変換時にフレームドロップしまくります。
  • -vf : ビデオフィルターオプション。
    • crop=w=2072:h=1410 : 縦のピクセル数が奇数だと変換時にエラーになるので偶数にするためのクロップ。クロップ位置は原点。
    • hqdn3d : ノイズリダクション
  • -c:v libx264 : ビデオコーデック。h264 を指定。
  • -crf 17 : 圧縮品質。小さいほど高品質。18 でほぼ元画像と見分けがつかないと言われている。
  • -pix_fmt : ピクセルフォーマット。yuv420p を指定。こうしないとツールや動画投稿サービスでエラーになることがある。
  • -r 15 : 出力のフレームレートの指定。

2回目:

  • -ss 0:04 : 入力の切り抜きのスタート位置。4秒を指定。
  • -t 1:00 : 入力の切り抜きの長さ。1分を指定。
  • -vf : ビデオフィルターオプション。
    • colorbalance=gm=-0.1:bm=-0.14:gs=-0.1:bs=-0.14:gh=-0.05:bh=-0.07 : カラーバランス。
      • gm=-0.1 : 中間調のグリーンをちょい下げる。
      • bm=-0.14 : 中間調のブルーをもうちょい下げる。
      • gs=-0.1 : シャドウのグリーンをちょい下げる。
      • bs=-0.14 : シャドウのブルーをもうちょい下げる。
      • gh=-0.05 : ハイライトのグリーンをわずかに下げる。
      • bh=-0.07 : ハイライトのブルーをもうちょい下げる。
  • eq=gamma=0.97 : ガンマ値の指定。わずかにコントラストを上げる(背景を暗くする)。
  • transpose=1 : 90度単位の回転指定。90度回転する。

ちなみにオプションの細かい調整は ffmpeg と一緒にインストールされる ffplay を使うと便利です。ffmpeg のオプションをそのまま渡すとリアルタイムに変換結果を再生するのでトライアンドエラーが捗ります。

Star Adventurer GTi がまた止まった

今回はお手軽に Star Adventurer GTi を使いましたが、以前出ていた赤経方向にモーターを動かしても極軸が回らなくなる現象が再発してしまいました。

これはその後何もしていないのに直って、それから再発していなかったんですが。

今回もモーターは回っているのでギア周りで何かがあるのではと思って、赤道儀を逆さにして手のひらでペシペシ叩いてみたりしたところ復活しました。昭和のテレビか!?

そうして撮影していたのですが、動画撮影時に子午線を越えてイナバウアー状態になり、機械的にそれ以上回らなくなって追尾が停止した後、また症状が再発。反転させようにも極軸が回りません。

電源再投入、クランプを緩めて極軸をグリグリ回す、手のひらでペシペシ叩く、等試してみましたがダメ。面倒ですがカメラ等を下ろして、赤道儀を取り外して、赤道儀をひっくり返してクランプを緩めて極軸をグリグリ回したり揺すったりして戻したところ、復活しました… どうも逆さにするのがキモらしい?

わけがわかりませんが、赤経モーターのギアに異常な負荷がかかるとクラッチ的な何かが外れて動力がウォームに伝わらなくなる仕組みがあるのでしょうか?そして通常は負荷がなくなるとバネか何かで元に戻るはずが、バネの力不足か何かで戻らないことがある?でも分解動画ではそれらしき機構は見当たらなかったんですけどね…

その他

トラブルと言えば最初にカメラを赤道儀に載せた時にアリガタと ZWO の冷却カメラ用三脚アダプターのバンドの固定が甘くてカメラが回ってしまい、危ないところでした。カメラネジ1本で固定していたので、重いレンズが付いていると無理があるようです。

どうしたものかと思案して、まずはアダプター付属のアルカプレートをバンドに取り付けました。バンドにはカメラネジ穴の両横に一回り小さいネジ穴が2つあり、付属のプレートにも対応するネジ留め用の穴があります。それらしきネジをなんとか見つけてネジ3本でプレートを取り付け。これでカメラの重さでネジが外れることはなくなります。

問題はこのアルカプレートをビクセン規格のアリミゾにどうやって取り付けるか。アルカクランプをビクセンアリガタに取り付けて使用するとしても、ここでカメラネジ1本留めでは元の木阿弥。しかし手持ちのアルカクランプでアリガタに2本以上のネジで留められるものがありませんでした。

結局カメラ太ネジ(3/8インチ)で固定できるアルカクランプにスカイメモS付属のショートプレートを取り付けて目一杯ネジを締め込んだところ、なんとかカメラの重さに耐えてくれました。しかしこれでは危なっかしいのでもっと安全に固定できるアルカクランプを探します…

*1:WeightedBatchPreprocessing

*2:AutoBackgroundExtractor

*3:PhotometricColorCalibration