Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

速報: 地球近傍小惑星 2024 MK の接近 (2024/6/29)

6月29日の夜、地球近傍小惑星 2024 MK を撮影しました。

2024 MK は6月16日に発見されたばかりの小惑星で、直径は120〜260m、6月29日 13:46 UT(日本時間 22:46)に地球から29万kmまで近づくと予測されました。月の軌道半径が約38万kmで月の軌道より内側まで入り込む形ですが、衝突の可能性はゼロとされていました。

ジェット推進研究所(JPL)のデータベースによると、軌道はこんな感じです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/2024MK-orbit-viewer-snapshot-2.jpg

https://rna.sakura.ne.jp/share/2024MK-orbit-viewer-snapshot-1.jpg

この小惑星のことは星見屋さんが Seestar での観測を呼びかけていて知り、その呼びかけを受けて天文学者の今村和義さんが観測方法をまとめたブログ記事を参考にしました。

最接近の15分前くらいに惑星状星雲 NGC 6818 のすぐそばを通過するので NGC 6818 を導入して待ち伏せ撮影するのが吉、とのことでしたが当日は曇りで、そのタイミングで撮れるかどうかわからないので、上の記事で紹介されていた JPLHorizons System で出力した予測座標を Stellarium に入力して写野の星図のスクショを溜めておいて、21時過ぎから撮影していたのですが、結局雲に邪魔されずに長時間連続して撮れたのが NGC6818 接近前後の約30分間でした。

まずは NGC 6818 への接近のクローズアップのタイムラプス動画を。約50倍速です。

地球近傍小惑星 2024 MK と惑星状星雲 NGC 6818 の接近 (2024/6/29 22:22:57.2 - 22:39:44.0)
地球近傍小惑星 2024 MK と惑星状星雲 NGC 6818 の接近 (2024/6/29 22:22:57.2 - 22:39:44.0)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折), ZWO UV-IR Cut Filter / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.13 による自動ガイド / ZWO ASI294MC Pro (Gain 300, -10℃), SharpCap 4.1.11817.0 / 露出: 2秒 x 369コマ からタイムラプス動画を作成 / PixInsight 1.8.9-2 (WBPP)で画像処理, PixInsight 1.8.9-2 (Blink), ffmpeg 6.1.1, TMPEG Enc Video Mastering Works 5 で動画生成。

写野全体(16:9にクロップしましたが)のタイムラプス動画も。これも約50倍速です。こちらは縮小状態ではわかりにくいので全画面で見てください。

地球近傍小惑星 2024 MK (2024/6/29 22:16:57.4 - 22:48:20.9)
地球近傍小惑星 2024 MK (2024/6/29 22:16:57.4 - 22:48:20.9)
露出: 2秒 x 692コマ からタイムラプス動画を作成。他の撮影データは上に同じ。

最後の方で飛行機が写野に飛び込んで来たり雲が大量に流れてきたりしてますが…

比較明合成の軌跡の画像も。雲が流れてきたフレームを混ぜると無茶苦茶になるので最後の87コマを抜いて処理しています。

地球近傍小惑星 2024 MK の軌跡 (2024/6/29 22:16:57 - 22:45:19)
地球近傍小惑星 2024 MK の軌跡 (2024/6/29 22:16:57 - 22:45:19)
露出: 2秒 x 625コマ を比較明合成。他の撮影データは上に同じ。

光度は NGC 6818 接近時の周囲の恒星との比較では 9.6 等前後と思われます。たった数百メートルの小惑星がここまで明るく見えるのだからそれだけ近くまで来たということですね… このサイズでも地球に衝突すれば都市が一つ吹き飛ぶ程の破壊力があります。1908年のツングースカ大爆発で衝突した彗星もしくは小惑星が直径60〜100メートルとされており、爆発力は水爆級とされています。2024 MK はこれより一回り大きいわけで…

ともあれ、なんとか撮影できました。今回は速報ということで、動画のフレームにタイムスタンプ入れたりはまた後日。