Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

Nikon Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED 購入 (追記あり)

梅雨時ですがみなさまいかがお過ごしでしょうか。コロナ第11波も心配ですが、家に籠もっていたら籠もっていたで心配事があります。そう、SNS 等で伝染するポチリヌス菌感染症

というわけで、今回ポチってしまいましたのはカメラレンズ。Nikon Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED の中古品(難あり)です。マップカメラの通販で購入しました。

Nikon の旧型(Dタイプ)のAFレンズはレンズを外した状態でも(通電していなくても)絞りやフォーカスリングが機能して、MFレンズとして使用できます。MFのフィルムカメラが現役の頃のレンズなのでそういう設計になっています。なので、これを天文用のCMOSカメラに装着して天体撮影に使用しようというわけです。

「難あり」と書きましたが、要は故障品。AFが全く動かないとのことです。フォーカスエイドは可とのことなのでMFで使う分には問題なさそうなのですが、外装に傷ありとのことなので、AFが壊れた原因を想像するに、果たしてまともに写るものなのかどうか疑問が残ります。

そのかわりお値段は2万円台と破格。このレンズは生産終了品で現在新品は入手不可能ですが、定価は275,000円でかつての実売価格は13万円台でした。現在中古で良品だと6万円前後します。ニコンのデジタル一眼は持っていませんし、買う予定もありませんから、MFでちゃんと使えるなら大変お得なのですが…

マップカメラの商品ページには検品動画がアップされていて、それを見ると確かにAFはダメそう(電源投入時に異音がしてピントリングが小刻みに震え続ける)ですが、レンズは綺麗で傷や曇りやゴミは見当たらず、ピントリングやズームリング、絞りリングの動きもスムースに見えます。外装の傷は結構ありますが、ズーム時のレンズの動きから見て内部のメカにダメージが入っている印象はありません。

結局博打覚悟でポチってしまいました…


フード(HB-23)はついていないのでアマゾンで1000円ぐらいの互換品を(どうせ要改造なので)ポチりました。また ZWO のカメラへの取り付け用に協栄でフィルタードロワー付・ニコンFマウントアダプターをポチりました。マウントアダプターは EOS 用を持っていますが、マウントコンバーターの付け外しがダルいのと、手持ちのアダプターはフィルタードロワーが付いていない(アダプターをバラしてフィルターをねじ込むタイプ)ので。

で、今日諸々届いたので早速テスト。

Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED + ASI294MC Pro
Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED + ASI294MC Pro

レンズの外観とメカの動きは期待通り良好そう。あとはちゃんと写るかどうかですが、昼休みにファーストライトしたところ、中心像は良好なものの、広角端の17mmの周辺像が悪すぎ… 望遠端の35mmは良好そうでした。

最近のデジタル用設計のレンズに比べるとやや甘いとは聞いていましたが、フルサイズ用レンズをフォーサーズにクロップして撮ってるのにここまで?まさか光学系にもダメージが?

気がかりなのが、ほぼ無限遠の遠景を撮っているのにピントリングの距離指標が1mとかそんな近いところを指していること。それってフランジバックが合ってないような…

ピントリングでレンズ全体が動くようなレンズならばフランジバックが合ってなくても合焦さえすれば問題ないのですが、このレンズはインナーフォーカス(フォーカス時に光学系の一部のレンズだけ動く)なのでフランジバックが合ってないと予期しない収差が出てしまう可能性があります。その場合、シムリングでフランジバックを調整すればレンズ本来の性能が期待できるかもしれません。

ということで、夜になってシムリングをとっかえひっかえしながら遠方の鉄塔のランプを撮って調整してみました。シムリングは ZWO の冷却カメラの付属品を使用したのですが、0.5mm、0.2mm、0.15mm、0.1mm の4枚が入っているのですが、0.2mm と 0.15mm の違いは僕の指の感覚では識別できず…

とりあえず 0.5mm と 0.2mm と 0.15mm ともう一台の付属品から 0.2mm もしくは 0.15mm のリングを組み合わせて合計 1.0mm もしくは 1.05mm 調整したところで、ちょうどいいくらいになりました。

広角端(17mm)のテスト画像がこちらです。鉄塔をまず中央に入れてピントを合わせて撮影した後、鉄塔が写野の周辺部(左下隅)に来るようにフレーミングを変えて撮影したものです。

Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED テスト(17mm F2.8,  周辺/中央, シムリングなし/あり)
Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED テスト(17mm F2.8, 周辺/中央, シムリングなし/あり)

元々は収差で像が放射方向に大きく流れていたのですが、シムリングを入れることで大幅に改善しました。もう少し追い込めそうですが、広角端と望遠端ではベストな調整値が異なるようで、この状態でも望遠端は像が円周方向にわずかに広がっています。なのでズームを使うつもりならある程度妥協が必要です。

望遠端(35mm)のテスト画像がこちらです。

Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED テスト(35mm F2.8, 周辺/中央, シムリングなし/あり)
Ai AF-S Zoom-Nikkor 17-35mm F2.8D IF-ED テスト(35mm F2.8, 周辺/中央, シムリングなし/あり)

シムリングなしだと広角端ほどではないですが収差で放射方向に像が流れているので、シムリングありだとわずかに過剰修正になっているものと思われます。

というわけで、これでCMOSカメラでも広角(と言ってもフルサイズ換算34mmですが)で撮れるようになりました。以前 CMOS カメラで流星を撮るテストをしていましたが、

55mm(フルサイズ換算110mm)では写野が狭すぎるので、元々流星の動画撮影用に使っていた17.5mmと同程度の写野で撮れるF2.8以下の明るいレンズを探していました。これでうまいこと撮れるかなぁ…

2024/6/28 05:15 追記: 収差の記述を修正しました

収差についての記述で「サジタル」「メリジオナル」「コマ収差」等々の言葉づかいがどうも怪しいことに気付いたので修正しました。混乱すると思うので取り消し線による修正ではなく文言をまるごと差し替えています。

広角端の周辺の像の流れについて最初コマ収差と書いていましたが、よく見ると形が逆(放射方向の内側に向かってボケが広がっている)なので非点収差なのでしょうか?

天体望遠鏡のレデューサーの調整で、バックフォーカスが短すぎると放射方向に周辺星像が伸び、長すぎると周辺星像が円周方向に伸びるという話があって、それと同じかと思ったのですが、

紹介のFlat6AⅢなど,ドローチューブに装着する補正レンズは,焦点位置までの距離=バックフォーカス(以下BFと略)により周辺像が変化します。短いと放射状に伸び,長いと円弧を描いた(コマ収差のような)星像になります。
補正レンズのバックフォーカスについての考察: K-ASTEC BLOG

これもよく見たら「コマ収差のような」とか書いててコマ収差そのものではないっぽいですね… なんだかよくわかりませんがとにかくバックフォーカスを調整すればOKってことで。