Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

満月 (2022/10/10) / FSQ-85EDP テスト撮影 (その1)

連休中は色々用事があって連休最終日の10月10日はオフだったのですがくたびれて夜までほぼ寝てばかりだったのですが、22時頃にベランダから外を見ると満月が輝いていたので、せっかくなのでとテスト撮影も兼ねて撮影しました。

何のテストかというと、今年7月上旬に注文して8月下旬に届いた FSQ-85EDP のテストです。実はこれまで9月5日と9月26日の夜に恒星と銀河でテスト撮影していたのですが、月面のテスト撮影は今回が初めてです。

今回のテスト撮影はデジカメ(OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II)での撮影です。BLANCA-80EDT で悩まされた色ズレがないかチェックするためにカラーカメラを使います。

まず直焦点。マイクロフォーサーズ用Tリングには RedCat 51 で使っている William Optics 製のものを使用しました。FSQ-85EDP への接続には「タカハシ接続リング M54-M48」を噛ませてあるので1mm程光路長が余計かもしれません。

撮って出し(RAW現像で露出補正とクロップのみ)の1枚がこちら。

月齢14.7 (2022/10/10 23:54) (直焦点撮って出し)
月齢14.7 (2022/10/10 23:54) (直焦点撮って出し)
高橋 FSQ-85EDP (D85mm f450mm F5.3 屈折) / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/1000秒 / Lightroom Classic で画像処理(露出補正とクロップのみ)

撮って出しでシャープネス等一切なしなのでややぼんやりしていますが、色滲みや収差っぽいボケもなく良く写っています。これを72コマスタックしてガッツリ画像処理したのがこちら。

月齢14.7 (2022/10/10 23:54)
月齢14.7 (2022/10/10 23:54)
高橋 FSQ-85EDP (D85mm f450mm F5.3 屈折) / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/1000秒 x 72/144 コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理

カリッカリに解像してます。4Kモニターに表示しても十分見れそうです。

続いて BLANCA-80EDT で月を撮る時にいつも使っていたオリンパス純正の2倍テレコンバーターを使ったものですがここで問題発生。この2倍テレコン(EC-20)はマイクロではない方のフォーサーズ用で、いつもはM42のTリングに接続するわけですが「タカハシ接続リング M54-M48」には直接つながりません。

FSQ のように補正レンズを内蔵している望遠鏡では後玉からセンサーまでの最適な距離が決まっていて、カメラや追加の補正レンズを接続する際には決まった光路長になるようにしなくてはなりません。

しかし手元には変換リングとして一番短いのが ZWO の冷却カメラに付属していた「M42M-M48F-16.5L」しかなく、さすがに16.5mmも光路長が伸びるのは気が引けるのでなんとかならないかと考えて、Tリングを分解して光路長を無理やり縮めました。

ビクセンのフォーサーズ用Tリングビクセンのフォーサーズ用Tリングを分解したところ
ビクセンフォーサーズ用Tリングを分解したところ

このTリングはリングのマウント側に近い方のイモネジを3本緩めると2つに分解できます。マウント側のパーツの内側にはM42のメスネジが切ってあって、ここに「M42M-M48F-16.5L」をねじ込むことができます。

分解したTリングに ZWO M42M-M48F 16.5L 変換リング + タカハシ接続リング M54-M48 を接続するところM48F-M42M + フォーサーズTリング(一部) + MMF-3 とマイクロフォーサーズ用Tリングの光路長の比較
分解したTリングに ZWO M42M-M48F 16.5L 変換リングして光路長を比較

光路長を比較するためにFT-MFT用マウントアダプターを繋いでマイクロフォーサーズ用Tリングと並べてみました。5mm 程長いですがこのくらいなら…

ということで撮影してみました。撮って出し(露出補正+クロップのみ)がこちら。

月齢14.7 (2022/10/11 00:29) (2xテレコン撮って出し)月齢14.7 (2022/10/11 00:29) (2xテレコン撮って出し)
高橋 FSQ-85EDP (D85mm f450mm F5.3 屈折), OLYMPUS 2x TELE CONVERTER EC-20 (合成F11) / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/400秒 / Lightroom Classic で画像処理(露出補正とクロップのみ)

等倍で見ると月面の縁に少し色の滲みが見られます。上側が青、下側が黄色く見えます。カメラはざっくりとですが赤道方向が水平になるように回転しており、ほぼ南中時の撮影なので、画像の向きはおおむね実際の上下と一致しています。となるとこれは大気色分散なのでしょうか?でもそれなら下側はもっと赤っぽく見えないとおかしいような…

まず大気色分散ですが、「ほしぞloveログ」の Sam さんの記事で公開されている計算用の Excel シートを使います。

過去の天気図とアメダスの記録を確認して、気圧(P)に1012hPa、気温(T)に287.65K(14.5℃)、高度に62.583+0.264度(月の高度+月の視半径)を設定したところ、月の上側の端では大気色分散によるRとBの差は約0.80秒角。下側の端も同じように計算すると大気色分散は約0.82秒角。

WinJUPOS で月の大きさを測定したところ、2xテレコン使用時は 0.7500"/pixel でした。なので、上側ではBがRに対して1.07ピクセル上に、下側ではRがBに対して1.08ピクセル下にズレる計算です。

しかし、実際にチャンネルをずらしてみると、月の上側の画像はRチャンネルを1ピクセル上げると青いフリンジがほぼ消え、下側の画像のRチャンネルを0.375ピクセル下げる(画像を8倍に拡大して3ピクセル下げて1/8に縮小する)と黄色っぽいフリンジはほぼ消えました。下側は逆では?

これはBの画像がRに比べてボケているか(軸上色収差)、もしくはRの拡大率がBに比べて小さい(倍率色収差)ということです。しかしそのどちらだとしても上側の色ズレの量はより大きくならないといけないので変なんですよね… なんだかよくわかりません。

色収差の原因が鏡筒側かテレコン側かもわかりませんし、とりあえず直焦点では問題ないというところまでが今回の結論。

最後に2xテレコン版を96コマスタックして仕上げたものを見てみましょう。こちらは RGB Align をONで処理しています。

月齢14.7 (2022/10/11 00:29)
月齢14.7 (2022/10/11 00:29)
高橋 FSQ-85EDP (D85mm f450mm F5.3 屈折), OLYMPUS 2x TELE CONVERTER EC-20 (合成F11) / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/400秒 x 96/176 コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理

大気色分散と色収差が混じっているせいか、色ズレは完全には消せてませんが、まあこれだけ写れば文句はないかな、という感じではあります。