8月18日の午前中に「アストロソーラー太陽観測用フィルターフィルム」を使って太陽を撮りました。いつもの黒点写真はうまく撮れたのですが、調子に乗って太陽モザイク撮影に挑戦してみたのですがこれはうまくいきませんでした…
アストロソーラー導入
使用したのはバーダープラネタリウム「アストロソーラー太陽黒点観測フィルターフィルム(眼視用OD-5・大サイズ)」です。実は今年の1月に協栄で購入したのですが、なかなか太陽を撮るチャンスがなくて今までほったらかしにしていました。
今見るとだいぶ値上がりしてますね。早めに買っておいて正解でした…
今まではケンコーの PRO ND-100000 77mm を使っていました。これは2012年5月21日の金環食を望遠レンズで撮るために買ったもので*1 BLANCA-80EDT では 77mm ネジのゴムフードを鏡筒のフードの内側に嵌め込んで使っていました。口径がちょっと無駄になるのとフィルターの並行性がイマイチでカブリにわずかにグラデーションが出る以外は問題なく使えていました。
しかし FSQ-85EDP ではこのフィルターを取り付ける方法がなく、また、85mm を 77mm に絞るのはちょっと抵抗もあり、アストロソーラーの導入となりました。あわよくばミューロン180Cでも使ってみようと大サイズを購入したのですが今回はとりあえず FSQ-85EDP でファーストライトです。
協栄で売っているのはフィルムのみで望遠鏡に取り付けるための枠は自作することになります。枠の作り方は国際光器のサイトの説明を参考にしました。
写真入りの解説なのですが写真が小さいのと双眼鏡用の小さな枠で説明していて少々分かりづらいので、実際にやってみた手順を図解してみました。製品に添付された説明書は全部読んだ上で、あくまで参考として見て下さい。
① まず、鏡筒のフードの長さと同じくらいの幅でフードにちょうど巻き付くか少し足りないくらいの長さの段ボールのベルト(段ボールA)を用意します。フードが伸縮式の場合は、段ボールをフードの先に合わせて巻き付けた時に段ボールがフードの固定ネジに被さらないように段ボールの幅を調整します。また、段ボールA の片方のエッジには②でアストロソーラーフィルムをかぶせるのでギザギザにならないよう綺麗に平行に裁断します。
② ①で用意した段ボールAをフードに巻き付けます。段ボールの片方のエッジをフードの先端にぴったり合わせてはみ出ないようにします。
③ 巻き付けた状態の段ボールAの外側に両面テープを貼ります。びっしりとぐるぐる巻きにするのがベストですが、ねじれたり斜めになったりすると面倒なので適度な長さに切って貼ってもかまいません。筒先から筒の後ろの方まで貼って剥離紙を剥がしておきます。両面テープは大量に消費するので使いかけのテープだと途中で足りなくなることもあります(なった)。あらかじめ新品を買っておくのが吉です。
④ 正方形に切り取ったアストロソーラーのシートを用意します。サイズは1辺がフードの直径の倍くらいがよいと思います。
⑤ ④で用意したシートを③の筒先に被せます。シートのはみ出した部分は筒の周りに貼った両面テープに貼り付けてシートが剥がれないようにします。曲面に貼り付けるので綺麗には貼れませんが、くしゃっとしてしまってかまいません。シートの張り具合も完全にピンと張るのではなく少し緩いぐらいにします。緩くうねっている程度で鋭いシワができていなければ大丈夫です。シートの貼付けは筒の先の方の両面テープだけ使って後ろの方の両面テープは⑦で使うので残しておきます。
⑥ ①で用意した段ボールAと同じ幅で長さは同じか少し長い段ボールのベルト(段ボールB)を用意します。段ボールBは段ボールAの上から巻きつけるので少し長めに作る方がよいです。
⑦ ⑥で用意した段ボールBを段ボールAの上から巻き付けて⑤で余らせた両面テープに貼り付けます。迷光を避けるため、段ボールBの合わせ目を段ボールAの合わせ目からずらして筒全体として隙間ができないようにするとよいと思います。段ボールBの合わせ目は、外側からガムテープ等を貼って剥がれないようにします。
これで出来上がりです。出来上がった枠(筒)はフードからゆっくり引き抜いてフィルムが汚れたり破れたりしないように保管しておきます。使用する時はフィルムに傷がないか確認してから、筒先がフードの先に達するまでゆっくりとフードに被せていきます。
太陽の撮影
というわけで、アストロソーラーフィルターで実際に太陽を撮影してみました。
今までで一番よく解像していると思います。コントラストの良さはプレビューをひと目見てわかりました。さすがにプレビューでは粒状班は視認できませんでしたが、黒点のディテールや表面のテクスチャの濃淡ははっきり見えました。
以下に黒点の拡大写真(クロップした等倍画像)も貼っておきます。
ちなみに FSQ-85EDP での撮影は最初なかなかピントが合わなくて苦労しました。適当にそのへんのリングやフリップミラー等を組み合わせても短すぎたり長過ぎたりでなかなか合焦できる組み合わせが見つからず、結局こうなりました。
バローレンズから鏡筒のカメラ回転装置(TSA-102)までの間のリング構成は以下のようになりました。
- ZWO T2-1.25″ Holder (ZWO ADC 付属品)
- ZWO T2 Ring (11mm) (ZWO ASI294MM Pro 付属品)
- 笠井 T2 T2延長筒セット (セットのリングを全部繋げたもの)
- ZWO M42-M48 extender 16.5mm (ZWO ASI294MM Pro 付属品)
- KYOEI ZWO タカハシ接続リング M54-M48
太陽面モザイク撮影失敗
プレビューで太陽面の黒点のない部分のテクスチャが安定して見えているのを見て、これなら太陽面のモザイク撮影もできるのでは?と思い、上の写真を撮った後挑戦してみたのですが、結論から言うと失敗しました。
wavelet 処理後、画像端の乱れた部分をトリミングした画像を用意し、MS ICE や Photoshop の Photomerge でモザイク合成を試みたのですが、MS ICE はデタラメに繋いでしまい、Photomerge は繋ぐのを諦めて単に並べてしまいました。
仕方なく手動で合わせてみようと差の絶対値で画像を重ねて継ぎ目を探ってみると、一見重なりそうなのですが、粒状班のパターンが結構ズレてしまっているようです。結局、継ぎ目がどうしても綺麗にならなかったりよくわからなかったりする部分があったのと、モザイクの糊しろが足りなくて一箇所欠けている場所ができてしまっていたので、手動でのモザイク合成も諦めてしまいました…
以前の記事でも触れましたが、太陽の自転(+地球の公転)の速度が結構速いのと、粒状班のパターンが分単位の時間スケールで変化するため、のんきに時間をかけてモザイク撮影しているうちに糊しろ部分が合わなくなってしまうようです。
やはりセンサーの大きいカメラで全面を一度に撮るしかないのでしょうか。