Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

ASI294MC Pro で流星動画を撮る (2023/12/16)

12月16日未明、ASI294MC Pro にカメラレンズを付けて動画撮影するテストをしていたところ、流星が映り込みました。

元々ふたご座流星群の撮影を狙って調達した機材なのですが、悪天候で撮影が流れてしまったところ、未明に横浜在住の友人が流星を見たとツイートしていたのを見て晴れ間があるのかと思いベランダに出たものの、南の空は一面の雲で、ごく低空だけ少し晴れているという状況で、まあ、でも雨は降ってないしせっかくなので機材のテストだけでもやっておくか、と、夜景でテストしていて、最後に長回しのテストをする時に、やはり星像も見ておきたいと、適当に雲の隙間にカメラを向けて撮っていたら映り込みました。15分間の間に2つの流星が。

流星 (2023/12/16 05:30:02)
流星 (2023/12/16 05:30:02)
Micro NIKKOR 55mm F2.8 (開放) + ZWO UV/IR Cut Filter 48mm / ZWO ASI294MC Pro (Bin2, Gain 545, RAW8, 8℃), SharpCap 4.0.9538.0, 露出:65.5ms, 15fps / SER Player 1.7.2, ffmpeg 4.2.7 で画像処理。

流星 (2023/12/16 05:32:45)
流星 (2023/12/16 05:32:45)
撮影データは上に同じ

流星 (2023/12/16 05:30:02) (Astrometry.net でアノテーション)
流星 (2023/12/16 05:30:02) (Astrometry.net でアノテーション)
撮影データは上に同じ

流星 (2023/12/16 05:32:46) (Astrometry.net でアノテーション)
流星 (2023/12/16 05:32:46) (Astrometry.net でアノテーション)
撮影データは上に同じ

経緯台、というか三脚に取り付けたジンバル雲台で撮っているので天頂方向が上の構図です。場所は適当に雲の切れたところに向けたのでよくわかってなかったのですが、Astrometry.net でプレートソルブするとかみのけ座の方向でした。方向的に2つ目の 05:32:46 の流星はふたご座流星群っぽいですが、最初の 05:30:02 の流星は散在流星でしょうか。

最初の流星は写野からはみ出していた上にあまりに高速でプレビューで見た時はどこから飛んできたかもよくわかりませんでしたが、動画を確認すると斜め下から飛んできててびっくりしました。瞬間的ですが緑色の流星痕も出ています。明るさは比較になる明るい星が写ってないので(かみのけ座β星の4.2等が一番明るい)よくわからないのですが、1等くらいはありそう?

2つ目の流星は短いですが明るさは最初のと同じくらいで、流星痕が2秒くらい残っていて変形して消えていく様子が写っていました。流星痕はやはり緑色です。カラーバランスを調整していないので正確な色はわかりませんが星や背景の色からすると緑色なのは確かだと思います。

機材について

Micro-NIKKOR 55mm F2.8 などというオールドレンズで撮っています。フォーサーズセンサーなのでフルサイズ換算110mmの中望遠になります。今時のAFレンズはMFでもモーター駆動なので、CMOSカメラにマウントアダプターで接続してもピント合わせができません。

カメラと鏡筒をEFマウント(EOSマウント)で接続するようにしていましたが、EFマウントレンズは古いレンズでも全部AFなので結局Fマウントのマウントコンバーター(K&F Concept KF-NFEF.P)で手持ちのMFの NIKKOR レンズを付けることにしました。NIKKOR のMFレンズなら父の遺したのが実家に結構あるし、中古でも安価に入手できるものが多いです。

ZWO ASI294MC Pro + ZWO EOS-EFマウントアダプターII + K&F Concept KF-NFEF.P + Micro-NIKKOR 55mm F2.8
ZWO ASI294MC Pro + ZWO EOS-EFマウントアダプターII + K&F Concept KF-NFEF.P + Micro-NIKKOR 55mm F2.8

実はマイクロフォーサーズ用のマウントアダプターも買ってあるのでいつも流星撮影に使っている Voigtlander Nokton 17.5mm F0.95 を使うことも検討しましたが、レンズの先以外にフィルターを付けられる場所がないので諦めました。

ZWO T2→1.25インチフィルターアダプターに31.7mmフィルターを取り付けてマウントアダプターの内側にねじ込むのもやってみたのですが、フィルター枠がレンズの後端に干渉してレンズが取り付けられませんでした。レンズによっては大丈夫なのかもしれませんが、フィルター径もギリギリなので明るいレンズだとケられそう。

その点 ZWO EOS-EFマウントアダプターII は二つのカメラ側パーツからマウント側パーツを外すと 48mm フィルターを装着できるネジが切ってあります。取り付けにくいですけど… うっかりするとフィルターのガラスに指が触れたりアダプターの内側で爪が削れたりするので注意。

ZWO EOS-EFマウントアダプターII への48mmフィルターの取付け
ZWO EOS-EFマウントアダプターII への48mmフィルターの取付け

カメラ雲台への取り付けは以前何かを買った時に送料無料にするためについでに買った ZWO ASI冷却カメラ用新型三脚アダプター78mm を使用。全部組み立てるとこうなります。

ZWO ASI294MC Pro + Micro-NIKKOR 55mm F2.8
ZWO ASI294MC Pro + Micro-NIKKOR 55mm F2.8

ZWO ASI294MC Pro + Micro-NIKKOR 55mm F2.8
ZWO ASI294MC Pro + Micro-NIKKOR 55mm F2.8

Micro-NIKKOR 55mm F2.8 は青ハロは若干ありますが、他に目立った収差もなく Bin 2 で Full-HD クラスの解像度で撮る分には十分だと思います。

撮影について

SharpCap で撮りましたが、どのモードで撮るかというのは悩みました。色々試して以下の設定がベストという結論になりました。

  • モード: RAW 8 (8bit RAW)
  • キャプチャエリア: 4144x2822 (ROIなし)
  • ビニング: 2
  • 出力形式: SERファイル(*.ser)

露出とフレームレートは、まず「フレームレート: 最大」に設定してから、フレームレートが 15fps になるように露出時間を調整して露出合わせはゲインで調整します。これでファイルサイズは約2.7GB/分。1時間撮ると約160GB。1TB の SSD に6時間15分撮れる計算です。

以下、その他色々検討したことを箇条書きで。

  • フレームレートは 20fps くらいまでいけるけど中途半端なのも微妙だし余裕を見て 15fps に。
  • ROI で 4144x2116 で撮ると 25fps くらいまでいけるが、縦横比が横長になってしまうし、Bin2 で縦 1058 だと Full-HD 以下になり、corp して使うのもつらい。
  • Bin 1 にしても fps は変わらないけどファイルサイズが4倍になる。
  • ていうか Bin 増やしても fps 上がらないの意味わからない。PC 側でビニングしてる?
  • RAW 16 は転送が重いのか fps も少し下がるしファイルサイズが倍になる。
  • RGB24 はデベイヤーしてカラーの AVI になるのは楽だがファイルサイズが3倍になるし AVI のフレームレートが 30fps 固定?
  • 結局 RAW8 SER で撮って SER Player で AVI 保存するのが楽。

ちなみにフレームレートは ±0.5fps くらいは変動しますが、これは諦めるしかないようです。「フレームレート:最大」にせず 15fps とかを設定しても全然安定しませんし、fps を指定すると指定値より少し fps が下がってしまいます。フレームレートの設定では fps の値を微調整できないので結局露出時間で調整するしかありません。

フレームレートが安定していないとフレームの撮影時刻がわからなくなるので「タイムスタンプ: ON」にして動画の左上隅にタイムスタンプを写し込むようにしました。SER で撮っているので SER Player で確認することもできますが、ネットで人に見せるには動画上に表示しないといけないので。

ただし、このタイムスタンプは SharpCap がカメラからフレームが届いた時点の時刻を元にしているそうです。SharpCap のフォーラムのこちらの議論によると、フレーム到着時刻 - 露出時間 を記録しているのでは、とのこと。だとすると、センサーの読み出し速度とデータ転送速度によってはそこそこ遅延がありそう。

動画の処理・変換について

RAW8 または RAW16 で撮った SER は SER Player で開いて [Save Frames As AVI File] でデベイヤー済みの AVI (コーデックは 24 bits RGB (RV24))で保存できます。フレームの範囲を指定して保存することもできます。フレームレートは平均フレームレートが設定されるっぽいです。

保存した AVI は ffmpeg で h264 の MP4 ファイルに変換しました。以下は 05_24_46.ser_F07200-07350.avi を 05_24_46.ser_F07200-07350.mp4 に変換するコマンドラインです。

ffmpeg -i 05_24_46.ser_F07200-07350.avi -vf crop=w=2072:h=1410 -c:v libx264 -crf 25 -pix_fmt yuv420p 05_24_46.ser_F07200-07350.mp4

そのまま変換すると、ピクセルフォーマットが yuv444p になり、プレイヤーによっては再生できません。ネットサービスでもアップロードに失敗するサービスがあります。たとえば Twitter はダメでした。なので一般的なピクセルフォーマットである yuv420p に変換するため、オプション -pix_fmt yuv420p を指定する必要がありました。

しかし、これを指定すると縦のピクセル数が奇数だとエラーになってしまうので、偶数にするためにオプション -vf crop=w=2072:h=1410 で縦1ピクセル分を削るクロッピングを指定しています。

ビットレートは品質固定モードのオプション -crf 25 で指定しています。値を大きくするとより低画質(低ビットレート)、小さくすると高画質(高ビットレート)になります。ビットレート固定モードで指定する場合は -b:v 20M のように指定すると 20Mbps の固定ビットレートになります。

ということで…

これでデジカメの制約から開放されて流星が撮れそうです。

実は夏にペルセウス座流星群ATOM Cam Swing で撮っていたのですが、ブログで報告しそびれてしまいました。

お手軽で便利ではあるのですが、画質が微妙というのがあって、メインで使うにはちょっと、という感じでした。本来監視カメラだからなのか、雲とかゆっくり動くものの動きを間引いて圧縮してるように見えるのですが…