Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

木星タイムラプス (2023/7/29)

前回のエントリにある通り、7月29日の夜は夜中から土星を撮って、その後木星が昇るのを待っていました。

今年の木星はかなり北寄りに位置していて、南向きベランダからだとかなり高く昇ってからでないとベランダの壁*1に邪魔されて撮れません。撮影は3:20頃からになり、その後市民薄明になる4時過ぎまで木星を撮り続けました。

シーイングはかなり安定しており、なんと今回もガニメデの模様?が写っていました。衛星が写野に入ったのは、というか意識して写野に入れるため木星をセンターから外して撮ったのは 3:49 からでした。

まだ画像処理が全部終わっていませんが、取り急ぎ衛星入りの静止画1枚と、木星の自転と衛星の公転がわかるタイムラプス動画を仕上げました。

まずは静止画として仕上げたものを。

木星、ガニメデ、イオ (2023/7/30 03:50)
木星、ガニメデ、イオ (2023/7/30 03:50)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 285), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 325), SharpCap 4.0.9268.0 / 露出 L: 12ms x 1500/3000コマをスタック処理 x5, RGB: 16.7ms x 1500/3000コマをスタック処理 x4, をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.2.5, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2023, Lightroom Classic で画像処理(衛星は同じデータから別画像処理したものを合成)

ちょうど大赤斑が地球の方を向いたタイミングで、写野にガニメデ(上)とイオ(下)が入ってきました。衛星は両方とも地球から見て木星の向こう側を回っています。つまりこの後木星の後ろを通過するというタイミングでした。*2

ガニメデはなにやら黒い大きな模様らしきものが見え、イオは模様こそわからないものの、ガニメデとは明らかに違う黄色っぽい色がはっきり写っています。

ガニメデの模様といえば昨年の秋に初めて「写ったぽい」と速報エントリを書いてから続報をまだ書いていなかったのですが…

実はこれについては疑義があるのです。その点については後日別エントリにまとめるとして、とりあえずは模様だと思っておきましょう…

そして木星と衛星の12分間の動きを150倍速のタイムラプスムービーにしたのがこちらです。動きがゆっくりですし、5秒しかないのでイマイチ映えませんが…

木星の自転、ガニメデとイオの公転 (2023/7/30 03:49-04:02)
木星の自転、ガニメデとイオの公転 (2023/7/30 03:49-04:02)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 285), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 325), SharpCap 4.0.9268.0 / 露出 L: 12ms x 1500/3000コマをスタック処理 x5, RGB: 16.7ms x 1500/3000コマをスタック処理 x4 をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.2.5, RegiStax 6.1.0.8, ffmpeg で画像処理

個人的には結構エモいな、と思っているんですが、あまり賛同を得られなさそう…

木星のタイムラプスは2年前にやったのですが、

こちらは全フレームを Photoshop で処理してLRGB合成、という偉業、というか狂気の沙汰でしたが、今回は以下のような手順でだいぶ簡略化しました。

  • AutoStakkert!3 でスタックしたL画像5枚を1セットにして WinJUPOS de-rotation する。
    • この時0.1分ずつ Reference Time をずらして1セットにつき約30フレームを生成。
    • Reference Time がセットの中央の画像と次の画像の中間に来たらセットに含める画像を一つずらす(最初の画像を外して最後の画像の次の画像を入れる)。
    • これを繰り返して9枚のL画像から137フレームを生成。
    • フレームに衛星を含めるために出力サイズを3840ピクセル(元のフレームの倍)に設定。
  • RGB画像は4枚を1セットとし、L同様に処理して137フレームを生成。
    • セットの画像を入れ替えるタイミングは Reference Time が3番目の画像の撮影時刻(中央値)と一致したタイミング。
  • RegiStax6 のバッチ機能でLフレームのセットをまとめて wavelet 処理。
    • 衛星用の弱めの wavelet パラメータで処理した。
  • RGBフレームのセットも同様にバッチでまとめて wavelet 処理。
    • wavelet パラメータはさらに弱めのものを使用。
    • バッチには RGB Balance 設定も追加。
  • ffmpeg で wavelet 済みLフレームを動画に変換して L.mp4 を生成。
    • ffmpeg -framerate 25 -pattern_type glob -i 'L-frames/*.png' -vf crop=w=1920:h=1080:x=1365:y=1365 -an -b 6M -vcodec libx264 -pix_fmt yuv444p L.mp4
      • フォルダ L-frames 内の png をフレームとして 25 fps の動画に変換。
      • 倍のサイズで出力したフレームをクロップしてFHDサイズにしている。
      • 音声なし、ビットレート6Mbps、コーデックは x264、ピクセルフォーマットは yuv444p
  • ffmpeg で wavelet 済みRGBフレームを動画に変換して RGB.mp4 を生成。
    • ffmpeg -framerate 25 -pattern_type glob -i 'RGB-frames/*.png' -vf crop=w=1920:h=1080:x=1365:y=1365 -an -b 6M -vcodec libx264 -pix_fmt yuv444p RGB.mp4
  • ffmpeg で L.mp4 と RGB.mp4 をLRGB合成(?)
    • ffmpeg -i RGB.mp4 -i L.mp4 -filter_complex "[0:v]format=yuv444p[0v];[1:v]format=yuv444p[1v];[0v][1v]mergeplanes=0x100102:yuv444p,hqdn3d,eq=saturation=2" -vcodec libx264 -b 6M -pix_fmt yuv420p LRGB2NR-x264.mp4
      • filter_complex の設定はややこしい… yuv の y (輝度)を L.mp4 (1番)から、u と v (色情報)を RGB.mp4 (0番)から持ってきて合成する設定です(mergeplanesとその前後)。
      • ノイズリダクション(hqdn3d)、彩度アップ(eq=saturation=2)のフィルターも追加。
      • デフォルトだと Twitter とかに貼れないので codec を x264, ピクセルフォーマットを一般的な yuv420p で出力。

というわけで、色とか模様のディテールとかはかなり妥協したものの、大幅に省力化されました(これでも)。

実は AutoStakkert! の方も今回初めてやった工夫があるのですが、ざっくりとした説明を Mastodon の方に書きました。スレの最初だけ引用します。続きはリンク先を参照してください。

AutoStakkert!3 で Planet(COG)モードでスタックするとデフォルトで惑星を(というか輝度重心を)画像中央に持ってきて、それでいてフレームサイズは元のサイズになるので惑星をオフセットして衛星を写野に入れるフレーミングで撮ってるとせっかく入れた衛星がフレームの外になってしまうことがあるのだけど、AS!3の機能で惑星をオフセットしてスタックできるのにいまさら気付いた。
ナょωレよ″丶)ょぅすレナ @rna@mstdn.jp (2023年7月30日 18:45)

*1:マンションの隣室との間を仕切る壁。

*2:実は撮影終了の約20分後にガニメデが木星の影に入っていたのを後から知りました… もっとも日の出直前のタイミングで既に空が明るくなっていたはずなので撮影は不可能だったかも。