Facebook には「何年前の同じ日にあなたはこんな投稿をしました」と通知する機能があるのですが、それで昨日、7年前(2013年)のこの時期にパンスターズ彗星(C/2011 L4 (PANSTARRS))を撮ったのを思い出しました。
当時僕は病気で休職中で気晴らしに望遠レンズで月や星座を固定撮影で撮っていました。まだ本格的に天文をやるというつもりはなく、パンスターズ彗星の事を知ったのもたまたま Twitter で話題になっていたからだったと記憶しています。
そんな明るい彗星ならひょっとしたら写るかも?ぐらいの気持ちで、特にそのための装備を揃えたりすることもなく、手持ちの機材で軽い気持ちで撮りました。当時はまだ望遠鏡も持っておらず、カメラもレンズも元々当時追っかけていた女優さんを撮るために買ったものを使いました。
2013年3月9日に一度チャレンジしてみたのですが、眼視でもカメラのライブビューでも確認できませんでした。当てずっぽうで撮った写真に怪しい光点が写っていたのですが、パンスターズ彗星の方位と高度を iStella HD で調べて、Google Maps で近くの山の山頂の高度と方位を計算して、山頂からの彗星の相対位置を計算したところ、これは彗星でないと判明。
翌日は寝落ちして撮影できず、その翌日3月11日、夕方18:00過ぎに西の空を見ると夕焼け空で概ね快晴でしたが空の低いところには薄雲が出ていました。9日の計算で使った目印の山が雲に隠れて方位が正確にわからず、確かこの日は肉眼でもカメラのライブビューでも彗星が確認できてなかったと思います。
当たりをつけた位置から少しずつ方位をずらして撮った写真の中から彗星らしき尾を引いた光を見つけました。
架台がミザールのK型微動マウントですが、これは月や星座を撮るのに自由雲台では辛くなってきていたので、前の年の12月にをヤフオクで落札したものです。目盛環はありませんが微動ハンドルを回す回数で相対的な位置は把握できました。
さて、これが本当にパンスターズ彗星なのか、目印の山頂が雲に隠れていたせいですぐには確信が持てないでいました。別の山の山頂で再計算したところ、位置が微妙に合いません。カメラの時計が少しズレていたのに気付いて再計算、そして大気差も計算に入れましたが誤差は0.6度ほど。ほぼ彗星に間違いないとは思ったのですがちょっともやもやが残りました。
翌日3月12日もよく晴れました。この日も肉眼では彗星は見えませんでしたが拡大ライブビューで彗星の姿を確認。その時の写真がこれです。強調処理のない撮って出しの画像です。どこに彗星があるかわかりますか?
強調処理をかけるとこんな感じです。右上にたなびいた雲の少し上に光点が見えます。
この後彗星は雲に突っ込んでいってしまったのですが、薄雲越しでも彗星の形がわかるくらいの明るさでした。そして低空の雲の切れたところに再び姿を現しました。
この後西の山の稜線に沈むまで撮り続けました。連続写真をアルバムにまとめました。
さて、同じような場所に2日続けて彗星らしき姿が見えてしかも日周運動ぽい動きで西に沈んでいったわけですから、これがパンスターズ彗星で間違いないのでしょうが、一応また計算してみたところ、山の高さの入力ミスを見つけて、それを直すと誤差0.1度以下で写った位置に彗星が来ることがわかりました。
というわけで無事パンスターズ彗星を撮ることができました。この時の興奮が天文趣味に本格的に復帰するきっかけになりました。
パンスターズ彗星は0等程度まで明るくなりました。薄明下では肉眼では厳しいものの、双眼鏡では見えましたし、写真でも固定撮影で十分楽しめる明るさでした。今年は5月に接近するアトラス彗星(C/2019 Y4)が期待されています。
注目のATLAS彗星(C/2019 Y4)、3月に入ってやや明るさの伸びが鈍化したようにも。鈍化がこのままとして、光度係数kを仮に10とし、ここまでのグラフと繋がるようにすると図のような感じ(m0=7.3)。近日点通過時の明るさは0~1等前後。PANSTARRS彗星(C/2011 L4)に近い見え方かも。素人予想だけど。 pic.twitter.com/C09wea9j7p
— HIROPON (@hiropon_hp2) March 12, 2020
大彗星になるとの予想はあまりあてにならないようですが、生暖かい目で見守っている HIROPON さんの予想でも「パンスターズ彗星に近い見え方かも」とのことですから、デジカメと三脚だけで撮れる天文趣味の入門には好適な彗星になるかもしれません。
そういえば2013年にはアイソン彗星も撮りました。その時の話はまたいずれ…