Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

NHK『コズミック フロント☆NEXT』で KAGAYA さんの機材をチェック

7月16日放送のNHK BSP『コズミック フロント☆NEXT』は「スターゲイザー 星空の冒険者たち」と題して世界の天文関係者を紹介する番組でした。この回に天文ファンにはおなじみの映像作家 KAGAYA さんが登場するということで見てみました。

番組で紹介されたのはスティーブン・オメーラさん(眼視観測の達人)、KAGAYA さん、高橋製作所、ゲナティ・ボリソフさん(ボリソフ彗星の発見者)。KAGAYA さんの出番は15分程でした。

KAGAYA さんについてはその仕事ぶりもさることながら、天文ファンとしては使用機材も気になるところ。ということで番組中に出てきた機材をチェックしてみました。

KAGAYA パートの冒頭、スカイツリー新月前の細い月のコラボを狙ってずらりと並んだ機材。カメラが素早くパンして機材の詳細はよくわからないのですが、それでもひと目見て異様なシルエットのレンズが…

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画面右端に見える緑色の巨大なレンズ、SIGMA APO 200-500mm F2.8 / 400-1000mm F5.6 EX DG じゃないですか!?なんでこんなの持ってるの!?

知らない人が見たらシュミカセか何かかと思われるでしょうが、れっきとした屈折式のレンズです。最大径23.6cm、全長72.6cm、重量15.7kg という他に類を見ない巨大なレンズで、SIGMA の山木社長も「作ってみてびっくり」*1 のキワモノレンズです。

気を取り直してその隣に設置していた機材。

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天体望遠鏡とのことですが、接眼部のロゴを見た感じ BORG の鏡筒でしょうか。カメラは α7R IV のようです。

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こちらのレンズは FE 70-200mm F2.8 GM OSS でしょうか。ボディーはα7系と思われますがよくわかりません。

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バックに見えているのは先程の SIGMA APO 200-500mm F2.8 / 400-1000mm F5.6 EX DG ですが、ここは KAGAYA さんの額のヘッドライトに注目。

後のシーンでも着用していて、愛用品と思われますがアウトドア用品には疎くて自力では特定できず、Twitter で気になるーって言ってたら親切な方が教えてくれました。Petzl の e+LITE というモデル、それも旧型(おそらくE02 P3)のようです。

KAGAYA さんのは赤いスイッチでバンドが細い紐のモデルですが、新型(2017年モデル)の E02 P4 はスイッチが白でバンドが平たいラバーバンドです。新型の方が明るいのですが、電池の持ちが短くなっているそうで*2 それで旧型を使い続けているのかもしれません。

ところ変わって KAGAYA さんの仕事場。

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仕事部屋の上にロフトがあるのですが、Vixen AP赤道儀(赤緯モーター付き)が置いてあるのが見えます。

そして仕事部屋のデスク。

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モニターが6面!手前の2つはキーボードとマウスが別に付いているのでサブマシンでしょうか。

それはともかくガラスのデスクに置いてあるグラスの下の方に注目。天文年鑑が見えますね。銀色の表紙は2018年版と思われます。KAGAYA さんは古い天文年鑑を捨てられないタイプなのかも。*3

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メインマシンのマウスは MX Master 3 のようです。ロジクールのマウスの最上位機種ですね。

ここで KAGAYA さんの少年時代の話になって、高校時代の写真が。

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なにやら見おぼえのある赤道儀… ミザール AR-1 赤道儀でしょうか?モータードライブがなくガイド鏡を載せているので手動ガイドで撮っていたんでしょうね。すごい。

KAGAYA さんの Twitter を検索してみるとやはり AR-1 でした。

僕も子供の頃ビクセンかミザールかタカハシかで悩んでいたものでした。結局ビクセンにしたのですけど…

ところ変わって機材置き場にて一番よく使うレンズを見せてくれる KAGAYA さん。

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明るい広角レンズで天の川を撮るのに使うとのこと。SIGMA Art 14mm F1.8 DG HSM でしょうか?レンズには白い(蓄光?)シールが割符のように貼ってあります。暗いところでレンズ装着時の位置合わせがしやすいようにする工夫でしょうか。

よく見るとレンズとボディーの間にマウントコンバーターらしきものが挟まっています。MOUNT CONVERTER MC-11 でしょうか?このレンズは SONY Eマウント用もあるのですが、どうも Canon FE マウント用を MC-11 CANON EF-E 経由で使っているようです。

夜になって仕事部屋の上のロフトのベランダで月を撮影する KAGAYA さん。

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どういうわけかAP赤道儀を普通の三脚ではなくSXGハーフピラーデスクトップ脚を組み合わせた超低い脚に載せて、寝転がって撮影しています。何故?ベランダの天井が低いとか?

鏡筒は BORG ですね。107FL天体鏡筒セットCR あたりでしょうか。*4

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カメラは冒頭でも出てきた α7R IV、BORG の1.4倍テレコンも使っています。

最後はベテルギウスの減光でちょっと趣の変わったオリオン座を撮りに山梨まで遠征した KAGAYA さん。遠征機材は…

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SWAT ですね。それもフル装備*5の。よく見ると銘板に V-spec の文字が… どうやら SWAT の最上位機種 SWAT-350V-spec のようです。

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三脚は Vixen APP-TL130三脚 でしょうか。

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SONY のレンズに緑ラインの白レンズなんてあったっけ?と思ったら Canon のレンズですね。EF400mm F4 DO IS II USM と思われます。

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ボディーはやはり α7R IV なので SIGMA MOUNT CONVERTER MC-11 EF-E で接続しているものと思われます。MC-11 での純正EFレンズの接続は動作保証外ですが、天体撮影で手ブレ補正もAFも不要だから使えているということなのかも。

というわけで KAGAYA さん愛用の機材を見てきました。全体的に作品作りのためには投資を惜しまない攻めの姿勢が伺えます。そう言えばスカイツリーと月のシーンで KAGAYA さんはこう言っていました。

二度と同じ繰り返しのない一瞬なので、失敗するとものすごく後悔するんですね。自分で対応ができなかった時は。ですのでその瞬間っていうのは本当に自分の全能力を使って失敗がないように、気を配って、見逃さないようにしております。

番組の取材は今年の1月下旬のようで、先日の大火球撮影に関連する話は出てこなかったのですが、そのへんについては三菱電機 DSPACEの記事「KAGAYAさんは、なぜ真夜中の大火球を捉えることができたのか」に詳しく載っています。

7月2日未明の大火球の動画を見た時は「え?KAGAYA さんなんでこんな曇り空撮ってたの?」とびっくりしたのですが、例のロフトのベランダに2年前から火球監視用のカメラが仕掛けてあって常時全天を撮影していたというのです。

決定的瞬間を見逃さないために全力を尽くす。そんな KAGAYA さんの姿勢を見習いたいものです。

とはいえ、今回の大火球といい、7年前のラヴジョイ彗星と流星(+流星痕)といい、努力してなければ絶対撮れないけど努力してるからといって誰でも撮れるものではない、というレベルのスーパーショットを繰り返してるところを見ると、なんというか「天に愛されてる人」なんだろうなぁ…

*1:デジカメ Watch【PMA07】“キワモノ"が写真を変える」より

*2:Petzl e+lite E02P4 /ペツル イーライト 2017年モデル - 和田哲哉 -LowPowerStation- より

*3:僕も捨てられないタイプです…

*4:中川光学研究室ブログのこの記事によると、やはり BORG 107FL のようです。シュミットでお買上げとのこと。

*5:オプションは極軸微動ユニット、マルチ赤緯ブラケット、回転ユニット、アルカスイスキャッチャー、ウェイトシャフト、バランスウェイト、極軸望遠鏡が確認できました。