Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

北アメリカ星雲(NGC7000) (2022/8/18)

8月18日の夜、近所の公園に出撃して北アメリカ星雲(NGC7000)を撮りました。久々の野外での撮影で、トラブル続きでHαしか撮れませんでしたが…

北アメリカ星雲(NGC7000)とペリカン星雲(IC5070) (2022/8/18 22:03) (Hα)
アメリカ星雲(NGC7000)とペリカン星雲(IC5070) (2022/8/18 22:03) (Hα)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折) + ZWO Ha Filter / Kenko-Tokina スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 2.6.11 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (11 Megapixel*1, Gain 300, -10℃), SharpCap 4.0.8949.0, 露出 2分 x 24コマ / DeepSkyStacker 4.2.6, Photoshop 2022, Lightroom Classic で画像処理

一時間足らずの露出ですがよく写ったと思います。撮影したコマの大部分は月の出の後に撮ったものですが、さすがナローバンドです。

モノクロの天体写真は「映え」ないせいかSNSに貼っても反応が激薄なんですが、個人的にはカラーよりも星雲の構造がよく見えるので、Hα画像だけ何度も見返したりします。子供の頃(1970〜1980年代)の天文書や天文雑誌に乗っていた写真はモノクロの方が多かったので、子供の頃に憧れていたあんな写真を撮りたい!という気分にもマッチしますし。

カラー写真はもちろん綺麗なんですが、赤い色だと細部の形が見えにくいんですよね。単にLRGB合成が下手なせいかもしれませんが… とはいえ、散光星雲の透明感の表現はやっぱりカラーでないと難しいので、やっぱりカラーも撮りたいのです。

今回は月の出までにLRGBを撮って、残りの時間でHαを撮る予定だったのですが、トラブル続きで撮影開始が月の出直前になってしまったので、Hαだけ撮って帰ることになってしまいました。

トラブルというのはまず忘れ物。出撃を決めたのがその日の夕方だったので、バタバタと準備していたため、落ち着いて持っていくものを点検する余裕がありませんでした。

20:00過ぎに現地に着いて三脚を広げて水平を取って、スカイメモSを載せて極軸をおおまかに北極星に向けて、さて、というところで赤緯体を持ってきてなかったことに気付きました… さすがにこれはなければどうにもならないものなので取りに帰りました。荷物を置いて帰るわけにもいかず機材は一度撤収。

帰宅して赤緯体をバッグに入れて即再出撃して、改めて機材を設置したのですが、冷却カメラに電源を繋ごうとした時に、DC電源ケーブルとポータブル電源のシガーソケットアダプターケーブルを忘れていたことに気付きました… 間違えてベランダ撮影で使うACアダプタを持ってきていたのです。

この時は崩れ落ちそうになって、もうこのまま帰ろうかと思ったのですが、ふとポータブル電源にAC出力用のコンセントが付いていることを思い出しました。ACアダプタをここに挿せば使えるはず… バッテリーのDCをACに変換してACアダプタでDCにまた変換するわけで、効率は悪いのですが、さすがにもう一度撤収して帰宅してまた戻ってくる気力はないので、これで行くことにしました。

極軸合わせはいつも通りドリフトアライメントですが、元のズレが大きすぎて極軸の水平方向の調整幅を越えてしまいました。最初に三脚を設置する時に大まかに北極星の方に向けて、スカイメモSの極軸望遠鏡にざっくり北極星を導入したつもりだったのですが、どうも北極星だと思っていた星は全然違う星だったようです…

公園には敷地を取り囲むように高輝度LEDの照明が設置されていて、北の方向にも照明があり、低空は2等星でもほとんど見えない状況でしたが、なんとか心眼?で見た北極星がどうも違ったらしいです。仕方がないので三脚ごと機材を動かして、三脚の水平を取り直してやり直しです。

極軸を合わせ、カメラの向きを合わせ、その後デネブを導入してピント合わせをしたのですが、写野に派手にカブリが出ていてびっくり。これはフード先のクリアバーティノフマスクに斜めから入射した照明の光が屈折?反射?して迷光になっていたようで、撮影前に取り付ける予定だった巻き付けフードを付けることで解決しました。

時刻は22時前。月の出は22:10頃で、この時点でもうHα以外は諦めていたのでHαでピント合わせ。そして巻き付けフードを外して、バーティノフマスクを外して、また巻き付けフードを付けて北アメリカ星雲を導入。これはデネブのすぐ東なので楽勝。Hαだと、ゲインを最大にして15秒露出で北アメリカ星雲がはっきり見えました。

これらの作業の合間に冷却カメラの温度を少しずつ下げていました。SharpCap には冷却速度の調整機能がないようなので、手動で1分間に2〜3℃ずつ、26℃ぐらいから-10℃まで冷却。

さて撮影、とオートガイドを始めるとガイド星が赤緯方向にずんずん流れていきます。どうも作業中に極軸がズレてしまったようです。まあ、スカイメモSではよくあることなので、極軸を水平方向にドリフトアライメントでの調整方向と同じ向きに微調整。調整量は勘です。

ガイドエラーはだいぶマシになったようなので、2分露出ぐらいならなんとかなるだろうと、ダメならダメでいいや、と、かなり投げやりな気持ちでそのまま撮影開始。この時点ですっかり疲れ果てていたので極軸を追い込む余裕はありませんでした。

途中風が吹いたりもしてたので正直もうダメかと思っていました。疲れて立ったり座ったりが億劫になっていたのでガイドグラフもあまりチェックしていませんでした。以前はやっていた手動ディザリングもやりませんでした。トータルで赤緯方向にだいぶ流れているのは気付いていましたが、撮影画像の写野のズレは一見してわかるほどではなかったのでそのまま撮影を続行。

結果的には撮影中に赤緯方向のエラーは減っていって、ガイドエラーは許容範囲に収まりましたし、スタックしても縮緬ノイズは見当たらず、Hαの撮影結果としては成功でした。

とはいえ、野外で余裕のない状況でのモノクロカメラでの撮影はなかなか厳しいという思いは強まりました。撮影コマ数が3〜4倍になるので、トラブルで撮影可能コマ数が減るとカラーの撮影は不可能になります。去年の M31 の撮影でも結局L画像しか撮れませんでしたし…

こうなるとカラーカメラが欲しくなってきますね…

対象の向き的に「イナバウアー」はできないため、子午線を越える前に撮影終了して、0時前に帰宅。ポータブル電源の容量の減り具合は5段階の目盛りの1つ分で十分余裕がありました。DC出力で使った時とたいして変わらないようです。

帰宅後は薄明前まで木星を撮影して、その間カメラと鏡筒はバラさずに置いておいて、木星の撮影が終わった後、室内でフラット、ダーク等を撮りました。画像処理はいつも通りDSSを使いましたが、実は話題のPixInsight本も買ってあるので、近いうちにそちらも試してみようと思います。

木星の撮影の話はまた後ほど。

*1:ASI294MM Pro の解像度選択は、今まで SharpCap 3 の表記にならい 8288x5644 のモードを Binning 1, 4144x2822 のモードを Binning 2 と書いていましたが、SharpCap 4 では前者を 46 Megapixel モードの Binning 1、後者を 11 Megapixel モードの Binning 1 と扱うようになりました。ややこしいので今後 SharpCap 4 の表記に合わせます。Binning については記載がない場合は 1 とします。