Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

月面X (2017/3/5)

日曜日の夜に最近よく話題になる天文イベント「月面X」がありました。月面にアルファベットの X に見える模様が見えるというもの。月面の地形が絶妙な角度で太陽に照らされることで起こる現象です。

正直個人的にはあまり興味のないタイプの天文イベントなのですが、一般ウケはいいようでついつい撮ってしまいました。承認欲求…!当日は曇りでよくて薄雲越しに、悪くて厚い雲に覆われ何も見えない状況だったのですが、なんとか撮れました。

「月面X」未満の「〉」みたいな形になっている月面とセットでどうぞ。

「月面X」未満 (2017/3/5 18:09)
「月面X」 (2017/3/5 19:18)
「月面X」(2017/3/5 18:09, 19:18)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井BLANCA-80EDT (8cm F6), 2x TELECONVERTER C-20
ISO 200, 1/50s
Lightroom CC で画質調整, トリミング

わずか一時間余りでも意外と陰影に変化が出ているのがわかります。全景はこちら。

「月面X」未満 (2017/3/5 18:09)
「月面X」 (2017/3/5 19:18)

あまり興味がないと言いましたが、理由はそれほど X に見えないというのが一つ。正立像だと漢字の「火」みたいに見えることが多いです。

もう一つの理由は、特定の言語の文字に見えるという現象をイベント視するのはあまりに自文化中心主義的な観点じゃないかということ。人の顔に見えるとかならまだ普遍性があるかもしれませんが。

まあ、それを言い出すと星座とか全部西洋文化ですけど、神話みたいに直接文化の深いところとつながっているものなら、その文化ごと味わえばいいことなのですが、ただ文字に見えるだけとなると戸惑ってしまうのです…

「月面X」を見るたびに思い出すのは、福本伸行の麻雀漫画『天 天和通りの快男児』に登場した銀次という雀士のことです。彼はガン牌*1の達人で、牌の裏についたわずかな傷や汚れのパターンを文字に見立てることで牌を識別・記憶します。

しかし、普通のアルファベットに見えるような特徴的な傷や汚れがそうそうあるわけではないですし、そんな傷は他人にも気づかれて対策されてしまいます。そこで銀次は独学で世界各国の言語の文字を学び、見立てることが可能な文字の種類を膨大な数に増やしつつ普通の日本人が知らないような言語の文字に見立てることでこの問題を解決します。

銀次が望遠鏡で月面を見たら、きっと無数の「月面ナントカ」を見つけてしまうのではないか、などということを「月面X」を見るたびに思うのです。僕も文句言ってる暇があったら「月面大文字」とか「月面卍」とか「月面鳥居」とか見つけたらいいんでしょうか。

でもそれって面白いのかな?月面そのものに向き合ってないんじゃないかな?などと考えこんでしまいます。まあ、そんなのただの遊びなんだしどうでもいいじゃない!って言われればそれまでなんですが。

*1:牌の裏側についた(あるいは意図的につけた)傷や汚れから何の牌かを識別・記憶することで、山の牌や他人の手牌を読んでゲームを有利に進めるイカサマ。

オートガイダー導入記 (2): オートガイダーを買う理由・買わない理由

前回の続きです。

結論から言うと、こうなりました。

勢い余って光害カットフィルターまで買っています。

買ってしまったオートガイダーというのはこれです。これに背中を押されて沼に転がり落ちてしまいました。

https://rna.sakura.ne.jp/share/kyoei-tokyo-000000007176.jpg

QHY CCD の QHY5L-IIM + ミニ・ガイドスコープ セット。特にミニ・ガイドスコープにやられました。これはビクセン互換のファインダー台座のアリミゾに取り付け可能なCマウントのレンズです。*1 焦点距離は130mmでこの手のセットで売られているレンズとしては長め。重量は最軽量級でシステム総重量で200g台。その一方で値段はこの手のセットとしては最安級です。

オートガイダーの導入に躊躇していた理由は以下の二点でした。

  • ガイドスコープや周辺パーツの重量で赤道儀の負担が増える。
  • スカイメモSでは2軸ガイドができない。

このミニ・ガイドスコープならファインダーより軽くてファインダーと差し替えてマウントできるので赤道儀への負担は増えません。これで買わない理由の半分が吹き飛びました。

そうなるともうひとつの理由についても再考したくなってきます。実際にスカイメモSでオートガイドで直焦撮影という無茶をしている人はいるのでしょうか?ググってみると、いました。

あくまで実験としてやっているようですが、800mm 直焦に APS-C 2400万画素の Nikon D5200 で撮っています。120秒露出に成功、ただし別の記事では120秒は歩留まりが悪いとも書かれています。

南北方向(赤緯)のエラーが意外に少ないのにびっくりしました。極軸が十分合っていれば意外と大丈夫なものなのでしょうか?そういえば今まで30秒以上のノータッチ追尾撮影で失敗した画像は大抵東西方向に星が流れていたことを思い出しました。

試してみる価値はありそう、という気がしたものの、4万円台の買い物にはまだ躊躇いが… でも、ここまでくると買う理由を探すモードになってきました。

買う理由その1: ドリフト法による極軸調整がスムースにできるようになるのではないか? テレコンバーターとデジカメのライブビューを見てやるドリフト法は面倒だし精度に不安がありましたが、PHD2 Guiding のドリフトアライメント機能を使えば極軸の誤差を定量的に表示してくれますし、極軸の調整量を視覚的に表示してくれます。

買う理由その2: 電子ファインダーとして使えるのではないか?横浜の空では空が明るすぎて5cmファインダーでもあまり暗い星が見えません。天体の導入にはデジカメで10秒露出ぐらいで試し撮りを繰り返しながら星をたどっていたのですが、PCに常に表示されるオートガイダーの映像を見ながら星をたどればずいぶん楽になりそうです。

ということで、どう転んでも何らかの役には立ちそうだし、将来まともな赤道儀を買えば当然オートガイダーとして普通に使えるわけだし、無駄にはならないだろう… と思ったのですが一つ問題が。

ミニ・ガイドスコープの取り付け金具の足がえらく短いので、屈折望遠鏡の接眼部近くにある台座に取り付けた場合、ガイドスコープの視野に望遠鏡の鏡筒が入ってしまわないか気になります。反射望遠鏡ならファインダー台座は筒先なので大丈夫なのですが…

そこでオートガイダーのセンサーサイズとガイドスコープの焦点距離から視野角を計算すると、意外と視野が狭くて2度ぐらい。望遠鏡のフードを伸ばしても視野には入らなさそうだと判明しました。

もっとも、視野角が狭いということは電子ファインダーとしての使い勝手は微妙かも… でももうここまで来たら、と震える決心で注文してしまいました。

せっかく長時間露出できるようになっても光害で背景が飽和してしまったら意味がないので光害カットフィルター IDAS LPS-D1 QRO 48mm (27,000円)も一緒に注文してしまいました。

(つづく)

続き:

*1:買ってから知りましたがアリガタの裏にネジ穴があり、カメラネジでも取り付けられます。

春の銀河いろいろ (2017/3/4)

前回前々回と撮影に失敗している M91 と M88 なんですが、夜中から晴れるという予報を見て今度こそと、まだ雲が出ているうちからベランダに望遠鏡を出して撮影の準備。予報が外れて無駄になってもダメージが少ないのがベランダ観測の利点です。積極的に活かしていきたいところ。

ドリフト法による極軸合わせを何度も雲に邪魔されながらなんとか24時前までに完了。その頃には空は晴れていて、そのまま M91, M88 の撮影を開始。昼のうちから予習しておいたおかげで導入もスムース。今回は無事最後まで撮影できました。

M91, M88 (2017/3/5 00:05)
M91, M88 (2017/3/5 00:05)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 10枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

棒渦巻銀河 M91 (左)の渦巻き部分の腕がうっすらとですが写っています。M88 (右)も腕が巻き付いているのがわかります。

この後夜明け前まで春の銀河を撮っていました。まず、M91 のすぐ南にある M90 と M89。

M90, M89 (2017/3/5 01:10)
M90, M89 (2017/3/5 01:10)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M90 (左上)は斜めから見た渦巻銀河、M89 (右下)は長軸が地球に向いていて丸く見える楕円銀河です。

次は M88 の西に少し離れたところにある M99。

NGC4302, NGC4298, M99 (2017/3/5 02:13)
NGC4302, NGC4298, M99 (2017/3/5 02:13)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 10枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M99 (右)の西の方には M98 がありますが、少し距離が離れていてツーショットにすると両方共レンズの収差の多いところに入ってしまうので、反対隣の NGC4302, NGC4298 とのスリーショットにしてみました。左に二つある銀河の縦に細長い方が NGC4302 で、その右の小さな銀河が NGC4298 です。

M99 はフェイスオンの渦巻銀河ですが腕の巻き具合が非対称で、右に伸びる腕がアホ毛っぽくなっているのがかわいいところです。写真でも小さいながらもアホ毛部分がしっかり写っています。

NGC4302 はエッジオン銀河ですが、よく見ると縁の暗黒帯が写っているような?長焦点でちゃんと狙ってみたいところです。

最後はだいぶ離れたところで、おとめ座の頭の上あたりにある銀河 M61 です。

M61 (2017/3/5 03:19)
M61 (2017/3/5 03:19)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

これもフェイスオン銀河ですが、小さい… それでもしっかり腕が巻いているのが見えます。もっとも既に西に傾いて高度がやや低めだったせいか外側の淡い腕が一部写らなくて、ちょっと変な形に見えてしまっています。

今回は朝方まで大きなトラブルもなく順調に撮影できました。撮影の待ち時間にアニメの録画も消化出来て一石二鳥。そして今回も写真のあちこちに米粒みたいに銀河が散らばっていて楽しいのですが、そのあたりはまた後日。

M91, M88 (2017/3/3)

GPV 気象予報の雲量予報では、今夜は深夜2時頃までは晴れてそう、ということで22時過ぎから準備して先日痛恨のミスで撮り逃した M91 と M88 のツーショットを撮影しました。

が、極軸調整やら赤道儀の電池交換(スカイメモSは単3電池4本です)やらターゲットの導入やらで1時間以上かかり、撮影開始は23時半。5分露出を10枚が目標なので雲が出るまでには十分間に合うと思っていたら24時前から雲が出てきて中断。

雲が流れていった隙に撮影再開もしたのですが、すぐまた雲が出てきて最終的には一面の曇り空になり断念。1時過ぎに撤収。二度も撮り逃すとは…

くやしいので撮れた3枚をコンポジットしてみました。ノイズが多いですが、意外とそれっぽく写ってるかも?

M91, M88 (2017/3/323:36)
M91, M88 (2017/3/323:36)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 3枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

棒渦巻銀河の M91 (左)は、棒があるのは見えますが渦巻きの部分はうっすらとしか見えないですね。残念。M88 (右)は昨年ノータッチ20秒露出で撮ったものよりはハッキリ写っているものの、ノイズが多いのが痛し痒しです。次こそはしっかり撮りたいです…

ところでこの写真、よく見ると M92, M88 以外にもあちこちに銀河が写っています。こういうのは白黒を反転させると見つけやすくなるのでやってみました。

M91, M88 周辺 (2017/3/3 11:36)
M91, M88 (2017/3/323:36)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 200, 300s x 3枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, 白黒反転
オリジナルサイズの画像

ごく小さなものも写っているので等倍表示で探したところ、20個以上の銀河がありました。興味のある方はオリジナルサイズ画像で探してみてください。

見つけた銀河の名前を Stellarium で調べて書き込んでみました。

14等台の銀河がギリギリ写っています。聞いたこともないような銀河がほとんどですが、右下の NGC4477 から NGC4435 までの連なっている銀河は「マルカリアンの銀河鎖(Markarian's Chain)」の一部です。

オートガイダー導入記 (1): スカイメモSにオートガイダーってアリですか?

前回の続きです。

ここから新シリーズ「オートガイダー導入記」と題してオートガイダー導入にまつわるエピソードを書いていこうと思います。

スカイメモSには ST-4 互換のオートガイダー端子が付いています。

スカイメモS 本体
スカイメモS本体。右下のモジュラージャックがオートガイダー端子。
左側に置いてあるのは iPhone 7

こんな小さな赤道儀でオートガイダーなんて使えるんでしょうか?という話をする前にオートガイダーとはどういうものかについてざっくりと説明します。

オートガイダーというのは長時間露出や焦点距離の長いレンズで天体写真を撮るのに使う小型のUSBカメラです。といっても、それで写真を撮るのではなく、星の動きを追いかけて撮影(ガイド撮影)するために撮影用のカメラとは別にPCのUSBに繋いで、赤道儀制御用のソフトに星の映像をリアルタイムに入力するためのものです。*1

制御ソフト(PHD2 Guiding 等)はオートガイダーから入力された映像から星の動きを読み取り、オートガイダー側に赤道儀を動かすための信号を送ります。オートガイダーはその信号を中継して赤道儀のオートガイダー端子に送り、星の動きをキャンセルするように赤道儀のモーターを動かします。

元々赤道儀は極軸を地球の自転と反対方向に回すことで星の動きをキャンセルしているのですが、モーターのスピードの誤差や機械的な誤差、極軸合わせの誤差などが組み合わさって、どうしても微妙に星がズレていってしまいます。

なので、それが無視できないような条件では、撮影鏡とは別の望遠鏡(ガイドスコープ)を覗いて星の動きを見てモーターの速度や望遠鏡の向きを微調整しながら撮る必要があります。*2 これが「ガイド撮影」なのですが、それを自動でやってしまうのがオートガイダーです。僕が子供の頃はそんな便利なものはありませんでした。

しかし、スカイメモSのような小さな赤道儀でそんな大げさなことができるのでしょうか?やったとして意味があるのでしょうか?

まず、望遠鏡で撮る場合は望遠鏡に加えてガイド鏡まで載せなくてはなりません。耐荷重的に大丈夫でしょうか? BLANCA-80EDT にガイド鏡を取り付けるには鏡筒バンドも必要で、重量がさらに増えます。

また、スカイメモSの赤緯軸にはモーターがなく、オートガイドといっても1軸ガイドになります。星が赤緯方向に流れたら打つ手なしです。赤緯方向の誤差が発生する要因には、極軸合わせの誤差や、赤道儀の各部や三脚の撓みがありますが、それらはクリアできるでしょうか?

正直厳しいと思っていたので、スカイメモSのオートガイダー端子は飾りみたいなものだと思っていました。空の暗い場所で撮ったりF値が暗めの望遠レンズで長時間露出するなら使う意味があるかもしれませんが、横浜の空では ISO 1600, F2.0 なら2分足らずの露出で真っ白の写真になってしまいます。

なので、スカイメモSでオートガイダーを使うことはあまり考えていませんでした。

もっとも、デジカメWatchの「【コーワPROMINARレンズ リレーレビュー】星景・天体写真編:星降る夜の美しさを再現、見事な解像力」でポータブル赤道儀とオートガイダーで撮ったプレアデス星団の見事な写真を見て少しばかり心を動かされはしたのですが…

でもこれ、SWAT-350 ですしねぇ。本体にここに写っているオプション全部付けるとすごい値段になります。KYOEI-TOKYO で買うとこんな感じ。

https://rna.sakura.ne.jp/share/SWAT-350-full-armed.png

227,880円(税込)。本格的な自動導入赤道儀が買えるお値段。まあ、それだけの価値はあると思いますが、それだけにスカイメモSと一緒にしてはいけないかな、と。それによく見ると三脚も結構よさげな… ジッツオに見えるのですが気のせいでしょうか。

それはともかく… いずれしっかりした赤道儀を買う時には一緒にオートガイダーを買おうとは思っていて、天文ショップの通販サイトを訪れるたびにチェックしていました。そして昨年10月半ば、ある製品に出会ってしまったのです。(つづく)

続き:

*1:マイコンと制御ソフトを内蔵してPCを必要としないタイプのものもあります。

*2:撮影鏡の写野の外にある星を使ってガイドするオフアクシスガイドという方法もあります。

お気楽惑星撮影

今でこそ deep-sky がメインですが、赤道儀を買うまでは望遠鏡の用途は専ら月と惑星を撮ることでした。

月や惑星の撮影と言っても動画を撮って Registax で画像処理というような本格的なものではなく、デジカメでワンショット撮影です。拡大光学系はカメラ用の2倍テレコンバーターのみです。ワンショットと言っても何十枚も撮って一番よいもの、というか、大気のゆらぎで像が歪んでいないラッキーショットを選びます。

960mm (フルサイズ換算 1920mm) F12 だと普通の惑星なら固定撮影で撮れる範囲ですが、赤道儀を導入してからは星を追いかける手間もなく撮影が捗るようになりました。また、固定撮影ではシャッター速度1/8秒ぐらいが限界だったのが数秒はブレずに撮れるようになり土星の衛星のような暗い衛星も撮りやすくなりました。

昨年の撮った木星のベストはこれです。

木星と衛星 (2016/3/18 00:42)
木星と衛星 (2016/3/18 00:42)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 2x TELECONVERTER EC-20
木星:ISO 200, 1/50s, 衛星:ISO 200, 1/4s を合成
Lightroom CC, Photoshop CC で画像処理, トリミング

大赤斑も見えているし 8cm F6 にしてはそこそこシャープに写っているし個人的には満足、ということにしておきましょう… 衛星は左からエウロパカリスト、イオ、ガニメデです。

画像処理はただのトーンカーブと明瞭度の調整ですが、ひとつだけ変なことをしていて、色ズレの補正のためにRGBチャンネルを分解してRとBを1〜2ピクセルずらしています。色ズレは水平方向なので大気による色分散ではなくて光学系の問題だと思います。

土星のベストはこちら。

土星と衛星 (2016/8/7 19:30)
土星と衛星 (2016/8/7 19:30)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 2x TELECONVERTER EC-20
土星:ISO 200, 1/8s, 衛星:ISO 200, 2s を合成
Lightroom CC, Photoshop CC で画像処理, トリミング, 拡大

こちらは等倍だと小さくて見づらいので2倍に拡大しています。他の画像処理は木星と同様。

カッシーニの間隙がなんとか見えています。表面の縞模様はほとんど見えませんね。衛星は、土星の左下がディオネ、右がテティス、右上がレア、さらに右上がタイタンです。

エンケラドゥスは写っていません。というか土星に近すぎて露出を上げると輪の光のにじみに紛れてしまい判別できなくなっています。一度だけギリギリ写っていたことがあったのですが、それっきりです。

2016年といえば火星接近の年でしたので火星も撮りました。

火星 (2016/6/3 22:49)
火星 (2016/6/3 22:49)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 2x TELECONVERTER C-20
ISO 200, 1/160s
Lightroom CC, Photoshop CC で画像処理, トリミング, 拡大

これも元の画像を2倍に拡大しています。右下の黒い部分が大シルチス、だと思います。

ちなみに惑星写真の天地については南を上(北半球で見た場合の倒立像)にする流儀と、北を上(北半球で見た場合の正立像)にする流儀がありますが、個人的に正立像の方がしっくりくるのと探査機などが撮った写真の多くが北を上にしていることから、僕は北を上にしています。ちなみに眼視でもわざわざ正立プリズムを使って見ています。

もっとも火星は北の向きがこれで合ってるのかよくわかりません…

どんなものでしょう? 8cm F6 ではこれ以上拡大してもしょうがないかなぁと思っています。色ズレのこともあるし。スタックもこんな小さな像をスタックしても意味あるのかなぁと思うのですが…

でも、カメラのライブビューで見るともっとくっきりしてるんですよね。なぜだかよくわかりませんが、これは画像処理次第でもっと写りがよくなることを意味するのでしょうか。

来年は火星が大接近するのでそれまでに色々考えてみたいと思います。

街に出て星を撮る

前回の続きです。

8月になると深夜にはアンドロメダ大銀河(M31)が見頃になるのですが、南向きのベランダからは見えません。さんかく座の銀河 M33 ならどうだろうと試しに望遠鏡を向けてみたのですがギリギリでベランダの天井に邪魔されて見えません。

しかし試しに三脚を少し縮めて望遠鏡を端に寄せてみるとギリギリ見えることがわかり、撮ってみました。

M33 (2016/8/10 01:57)
M33 (2016/8/10 01:57)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1600, 20s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

なんとか撮れましたが… せっかくの大きなフェイスオン銀河なのに、意外と淡くて渦巻き構造もうっすらとしか見えません。20秒露出の限界でしょうか。

そしてベランダの限界も。トリミングして画像処理でもごまかしているので一見わかりませんが、写野の1/3くらいが迷光らしきカブリでダメになっていました。街灯に照らされたベランダの天井の照り返しが迷光になっているものと思われます。

そこで思い切って望遠鏡を外に持ちだしてみることにしました。初めてなので夜遅くなる前に帰れる21時前に。徒歩なのであまり遠くには行きたくなくて、場所は家の近くの駐車場です。やや寂れているとはいえ商店街の通りに面しているのですが駐車場そのものに明かりがなく建物に囲まれた奥の方はそこそこ暗いという場所です。

そういう場所と時間なので、ターゲットはこの時期この時間に天頂付近に見える天体。はくちょう座のデネブのそばの赤い散光星雲 IC7000 通称「北アメリカ星雲」と、こと座の惑星状星雲で「ドーナツ状星雲」とも呼ばれる M57 です。

北アメリカ星雲とペリカン星雲 (2016/8/30 21:26)
アメリカ星雲とペリカン星雲 (2016/8/30 21:26)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1600, 20s x 12枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算640mm相当にトリミング

M57 (2016/8/30 22:22)
M57 (2016/8/30 22:22)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1600, 20s x 6枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算2290mm相当にトリミング

この日は風が強く、たびたび露出中に機材が風に煽られて揺れてしまうという悪条件でしたが、せっかく外に出てきたのだからとしつこく撮り続けて、なんとかブレてないカットを必要な数だけ集めることができました。

写りの方は… 北アメリカ星雲は、星雲の形を知っている人ならそれとわかる、程度でしょうか。ただでさえ赤い星雲の光に対する感度の低い無改造カメラで撮っているのに露出時間が全然足りません。光害の影響も大きく無理な強調処理を強いられています。

M57 はなんとか赤と青のリングに見えています。が、なにしろ小さな星雲なので約4倍に拡大(トリミング)してもこの小ささです。せめてレデューサーなしで撮りたいところですが、露出は3倍必要になりますし、追尾精度も倍近く必要になります。ノータッチのスカイメモSでは無理な相談です。

ノータッチ20秒露出でお手軽に色んな天体を撮ってきましたが、限界もはっきりしてきました。北アメリカ星雲がこれなら冬の馬頭星雲やばら星雲も厳しいでしょう。光害カットフィルターも使えません。光害カットフィルターは一般に露出時間が倍必要になり、実質10秒露出が上限になってしまうので。

やはりちゃんとした赤道儀を買うしかないのか?しかし外で撮影するという選択を既にしてしまった身としては外に持ち出すのに苦労しそうな重赤道儀に対して以前に増して抵抗感が出てきています。

どうしたものかと、あれこれ悩む日々が続きます。(つづく)

続き: