Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

金星 (2020/4/25)

4月24日の深夜は M22 を撮りましたが、その後赤道儀だけそのままベランダに残しておきました。昼に μ-180C を載せて金星を撮るためです。昼間に極軸合わせは至難なので夜のうちに合わせた状態で置いておくというわけです。

最近金星が三日月状に欠けているのを撮っておきたいなとは思っていて、日没前後だと南向きベランダからは撮れない位置に来ているので昼のうちに撮ろう、在宅勤務になっているから昼休みに撮るチャンスはあるはず、と思っていたのですが、結局土曜日に撮ることになりました。

朝 M22 の処理が終わってからふと気になって Stellarium で確認したところ金星の南中高度が高すぎて南中付近ではベランダの天井に阻まれて撮れないことがわかり、これはヤバいとあわてて調べた結果、12時頃から14時前までならなんとか撮れそうだと判明して一安心。

もう一つ気になっていたことがあって、それは直射日光が鏡筒の内側を照らして迷光にならないかということ。離角が43度くらいなので鏡筒径21cmのμ-180Cだと筒先から22.5cm奥まで日光が届く計算。

なので、そのくらいの長さの板を太陽側に付けて遮光しようということで、段ボールをマジックで黒く塗ったものをゴムバンドで筒先に取り付けました。ゴムバンドは8cm屈折用に自作した巻きつけフードを取り付けるためのマジックテープ付きのものを2本つなげるとちょうどよい長さになりました。

実際に取り付けると計算通り遮光できていてなかなかナイス、と思っていたのですが… この日は風が強すぎました。西からの風をまともに受けて煽られて鏡筒は揺れるし最終的には吹き飛ばされて危うく外に落ちてしまうところでした。

結局撮影は遮光なしで行いましたが顕著なコントラストの低下も見られず不要だったかな、と。黒い鏡筒内面が日光で炙られて筒内気流が乱れるのでは、とも思っていたのですが、元々シーイングが最悪だったせいもあって遮光の有無による差は識別できませんでした。

金星の導入ですが、かなり苦労しました。まずファインダーと鏡筒の筒先にキャップを付けたまま自動導入。導入中に太陽の方を向いてしまう可能性を考えてのことです。自動導入が終わってファインダーのキャップを外し、おそるおそるのぞいて見ると青空に浮かぶ白い光点がはっきり見えました。

【注意】誤って太陽を見てしまうと失明の危険があるので、昼の金星の観察は十分注意して行ってください。特に手持ちの双眼鏡等で見ることは避けてください。

4月28日には最大光度を迎える金星は-4.5等。この明るさなら肉眼でも見えるとも言われますが、さすがに肉眼では全くわかりませんでした。僕の目が悪いせいもあるのかもしれませんが… ここまでは順調でしたがここからが大変でした。

ファインダーの中心に金星を合わせてバローレンズを組み込んだ撮影システム(システムC)のフリップミラー側に取り付けたアイピース(8-24mmズーム)をのぞいて金星を探したのですがみつかりません。ピントが合ってないせいかと思いピントを調節するのですがそれらしき光は見えず、どうも金星は視野の外のようです。

システムCは拡大率が3倍以上あって24mmアイピースでも300倍ぐらい出ていて視野が狭すぎるので、一度システムCを天頂プリズムに差し替えて90倍で見たところ中心から少し離れたところに金星を発見。中央に寄せてからシステムCに差し替えたのですがやはり青空しか見えません。

合焦ノブを回していってもそれらしき光点がみつからず焦ります。正直あきらめかけたのですが、ピントの行ったり来たりを繰り返して4回目くらいでやっと金星の姿が現れました。夜空なら相当ピンぼけでも明るい星の存在はすぐわかるのですが、青空がバックだと合焦するギリギリまで何も見えないので、合焦ノブを相当ゆっくり回さないと見逃してしまうようです。

やっと導入した金星ですが、シーイングが悪くプレビューでのピント合わせは困難を極めました。結局ピントを少しずつずらしながら撮影を繰り返して5本目ぐらいでやっとピントが合った気がしました。

システムCにはADCが組み込まれていますが、像の乱れが激しい上に青空バックで色ズレが視認できないし、天頂付近ではプリズムの水平方向もよくわからない状態だったのでADCのプリズムはニュートラルにセットした状態で撮影しました(ADCを外すと倍率が変わるので)。

これだけシーイングが悪いのだから5000フレーム撮って1000フレーム選別ぐらいが適切かと思ったのですが、実際に撮ってみると90秒くらいの間にどうしても強風で大きくブレる瞬間があって、そうなると AutoStakkert!3 で image stabilization 後に AP を置ける領域がものすごく狭くなってしまうため使い物になりませんでした。

結局、強風が来ないうちになんとか撮り切れる3000フレームで撮影しました。結果はこうなりました。

金星 (2020/4/25 12:35)
金星 (2020/4/25 12:35)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (ゲイン275) / 露出 1/1000秒 x 1000/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC, Photoshop 2020 で画像処理

ややぼやけてはいますが、一応三日月状の姿が撮れました。地球照はもちろんありません。

表面の模様は全くわかりませんが、そもそも可視光ではほとんど何も写らないですよね。ではUVフィルターを買ってまで撮るかというと… 撮影する機会もあまりないし、そこまでする気にはまだなれないでいます。

模様はともかくもっと細い金星も撮ってみたいとは思うのですが、細くなればなるほど太陽に近く危険が伴います。遮光の問題もあってドームでもないと厳しいのではとも思うのですが…