Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星 (2021/12/30)

12月30日の深夜にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(P67)を撮りました。12月30日は、夕方にレナード彗星を、

夜からは勾玉星雲、M35と撮っていました(両方とも未処理)が、こちらは「二重赤緯体方式」で撮っていました。

上の記事の最後に書いたように、元々この方式はチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星をどうやって撮ろうかと思って採用した方式ですが、正直この頃には撮る気がかなり冷めつつありました。

この彗星を撮ろうと思った理由は、ESOの探査機ロゼッタが残された彗星というのもあるのですが、やはり最近観測されている細く長い尾に興味をそそられたからです。しかしレナード彗星で彗星の長い尾の淡さを思い知らされて、いくら天頂付近とはいえ、10等くらいの彗星のさらに暗い尾がまともに写るだろうか?と…

とはいえ、時間もあるし、せっかくなので撮ってみることにして導入してみました。STAR BOOK TEN には彗星のデータが入ってないので手動導入。*1 M44 プレセベを自動導入してアライメントを確認してからiステラで確認した彗星の座標まで鏡筒を振ると、プレビューに恒星とは違うぼんやりした星が見えました。露出をかけるとコマも見えています。意外と明るい?

ということで、例によって1コマ毎にフィルターを切り替える方法でLRGB撮影。機材は RedCat 51 + ASI294MM Pro で12月4日のレナード彗星 + M3 の時と同じですが、

今回は彗星の動きが遅そうですし、そもそも暗いので、Lは2分、RGBは4分ずつ露出をかけて撮りました。とにかく少しでも多く露出をかけたいのですが、「二重赤緯体方式」だと子午線は越えられないのでギリギリまで粘って 1:50まで撮りました。約2時間半、LRGB各9コマです。

高度が上がって光害の影響が和らぐにつれコマの形がはっきりしてきたのですが、どっちを向いているのかよくわからず。コマが扇状に拡がっていて尾がどっち方向に流れているのかよくわかりません。そもそもフレーミングする前に調べとけって話ですが、どうせ写らないと思っていたので…

撤収後は確認のため勾玉星雲のHαだけ処理して就寝。翌大晦日は疲れてぐったりしてて、夜は頑張ってブログを2本アップして、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の画像処理は年越し後の夜中になりました。

というわけで結果はこちら。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(P67) (2021/12/31 01:34)
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(P67) (2021/12/31 01:34)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折) + ZWO LRGB Filter 31mm / Vixen SX2, 30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 2.6.10 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (Binning 2, Gain 150, -10℃), SharpCap 4.0.8334.0, 露出 L:2分 x 9コマ, RGB:4分 x 各9コマ を彗星核基準コンポジット / DeepSkyStacker 4.2.6, Photoshop 2022, Lightroom Classic で画像処理

尾の向きですが、正解は西向きちょっと北寄り、でした。鋭く細い尾が伸びています。コマの周りはやっぱり扇形になってますね。あまり彗星を撮らないこともありますがこういうのは初めてです。

色は、もっと緑色っぽく写るかと思ったのですが、コマの周辺にごく淡くしか緑色成分がない感じ。LRGB合成がヘタなだけ?光害カブリの緑色に負けてる?

RGBフィルターを替えながら撮って彗星核基準コンポジットやると流れる恒星がカラフルになるかと思ったのですが、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は動きがゆっくりなせいもあってほとんど目立ちません。等倍で見ると暗めの恒星の軌跡が色ズレしたように写っているのがわかるくらいです。

ちなみに尾が西向きだと彗星は東向きに(左に)動いているように見えますが、実際には尾の流れている方向の西向きに(右に)移動しています。恒星の軌跡の色ズレで左端が赤くなっていることからもわかります。これは撮影の時に R, G, B, L の順で撮ったからです。

それにしても意外と明るい?と言っても彗星核基準コンポジットなので恒星が暗めに写っていて恒星との比較はできないので、Lフィルターで撮ったシングルショットの画像を見てみます。画像処理はクロップしてトーンカーブを反転して直線のまま傾きを変えた以外は変えていません。

P67 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星 (2021/12/31 01:34) (シングルショット)
P67 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星 (2021/12/31 01:34) (シングルショット)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折) + ZWO L Filter 31mm / Vixen SX2, 30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 2.6.10 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (Binning 2, Gain 150, -10℃), SharpCap 4.0.8334.0, 露出 2分 / DeepSkyStacker 4.2.6, Lightroom Classic で画像処理

明るさの近そうな恒星をマークしてみます。カッコ内は等級です(wikisky 調べ)。

P67 チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星 (2021/12/31 01:34) (シングルショット) (マーカー付き)

TYC 1956-830-1 (9.7等)よりは暗く、TYC 1956-231-1 (11.2等)よりは明るいので、10等台のようです。10等台前半くらいに見えます。

今更ながら吉田誠一さんの計算した光度予想グラフを見てみると、

ピークは9等前後?11月から12月にかけてくらいですかね?既に暗くなってますし、10等台というのは妥当なところでしょうか。というか、もうだいぶ暗くなっているものだと思っていました。



さて、日本人なら(?)「チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星」の名を聞く度に思い浮かべるのはやはり「カラシメンタイコ」ですよね!って、発見者の名前なわけですからあんまりイジるのも失礼なんですが、どうしても… 撮っている間ずっとこの曲が頭の中で流れていました。

2014 6 18 TSUTAYA O-EAST 絵恋「 カラシメンタイコ」

地下アイドル界の毒蝮三太夫絵恋ちゃん*2 の初期の名曲(迷曲)「カラシメンタイコ」(2013)です。歌詞をよく聴いてください。全く意味がわかりません。

毒蝮三太夫呼ばわりはライブでのオタクイジリの毒舌ぶり*3 から僕が勝手に言っているだけなんですけど Twitter を検索すると1年に1回くらいはその類似性が指摘されています。一応アイドルなのですがこれは一体… という。

僕は絵恋ちゃんのファンというわけではないのですが、当時追っかけていた速水ゆかこさん*4 と共演していた関係でイベントで何度かお会いした他、速水さんの配信で絵恋ちゃんの楽曲が度々流れていたため洗脳クセになって初期のアルバムを2枚買いました。

一言で言うと「聴くと頭が悪くなりそうな音楽」です。「カラシメンタイコ」も含め、初期の音源は Amazon Music 等のストリーミングサービスで配信されているので、頭が悪くなりたい時に聴いてみてください。

って、ここ何のブログでしたっけ?

あ、あけましてどうもです(昨日言い忘れてた)。

*1:今調べるとビクセンのサイトから「軌道要素ファイル」をダウンロードして STAR BOOK TEN に登録できるんですね。今度試してみます。

*2:読みは「えれんちゃん」。初期のクレジットはちゃんなしの絵恋でした。ちゃんが付くようになったの今知りました。

*3:動画の最後の方にその片鱗が。

*4:現在は芸能活動は停止して漫画家として活動しています。