Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

WBPP で違う日に撮った撮り増しデータを扱う

なんか前々回から突然ブログ書いても☆が付かなくなったんですが、何かあったんでしょうか?僕の知らないところで破門状が回ってたりするんでしょうか?それはともかく前回の記事で書き忘れたネタを。

天体撮影では総露光時間を増やすために複数の夜にまたがって同じ対象を撮影して、それらを全部スタックして一枚の写真に仕上げることがあります。導入位置のズレなどは自動処理で補正できますし、冷却カメラなら温度を固定して撮ればダークも使いまわしできるのですが、フラットはそうはいかないことがあります。

1夜目の撮影後にカメラを取り外すと、次の夜の撮影でカメラを取り付けた時にカメラの向き(光軸を軸とした回転角)を完全に一致させることが困難な場合があります。接眼部とカメラに印を付けて合わせるという手もありますが、ねじ込み式のパーツがあるとピッタリ締め込んだ時の位置が微妙に変わることがあります。

また、フラット補正にはレンズやセンサー上に落ちたホコリの影を消す効果もありますから、取り外したカメラの保管中にホコリが動いたり増えたり減ったりということがありますので、なるべく撮影前か後にカメラを取り外す前に撮ったフラットを使いたいところです。

ところが WBPP はデフォルトではどのフラットをどのライトに適用するかは自動で決まります。同じカメラで同じフィルターを使ったフレーム同士でマッチングさせるわけですが、同じ機材を使っていると違う日のフラットもライトも全部混ぜてスタックされてしまいます。

WBPP 2.0 から入った Grouping Keywords 機能を使えばこれを避けることができます。

WBPP の画面右端にある Grouping Keywords にチェックを入れて、FITS ファイルのヘッダの名前をリストに追加すると、そのヘッダに入っている値が同じもの同士でフラットやライトがグループ化され、同じグループ内のフレーム同士のみマッチングされるようになります。FITS ヘッダ以外にフレームのファイル名やフレームが保存されているフォルダのフォルダ名などでもグループ化できます。

前回のエントリの写真の処理ではこの機能を使いました。

ここでは 2022/9/26 の深夜に撮った分を SESSION_2022-09-27 というフォルダに、2022/10/20 の夜に撮った分を SESSION_2022-10-20 というフォルダに放り込んで、Grouping Keyword に SESSION を追加しました。これで、フォルダ名の SESSION_ に続く部分が SESSION キーワードの値として解釈され、フラットとライトが 2022-09-27 と 2022-10-20 の2つのグループに分けられます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/WBPP-GroupingKeywords-01.png

Calibration タブの一覧にキーワード SESSION のカラムが追加されていて、どのようにグループ分けされたかが確認できます。2022/10/20 は L の撮り増しのみだったので、FLAT と LIGHT の L のみ 2022-10-20 のグループができました(一度実行済みなので BIAS, DARK, FLAT は master になっています)。

でもよく見たら DARK と BIAS もグループ化されてますね… これではもったいのですが、これはどうやらキーワードを含まないフォルダにバイアスとダークを放り込んでおけば全グループのフレームとマッチングしてくれるようです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/WBPP-GroupingKeywords-02.png

ダークは L 用の15秒のダークと0.03秒のダークフラットのみ別のフォルダにまとめました。結果 SESSION の値は - (空欄の意味)になり、FLAT と LIGHT の L の Dark の列にチェックが入って(Dark が当たった状態)適切にマッチングされたことがわかります。

なお Integration では全グループの Calibration 済みフレームがスタックされるので、撮り増しの目的通りの動きになります。

https://rna.sakura.ne.jp/share/WBPP-GroupingKeywords-03.png