Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

CP+ 見に行きました

CP+ 2017 見に行きました。出不精なものでこういうイベントには滅多に行かないのですが用事のついでで少し足を伸ばして二時間ほどふらふらしてきました。

初めてだったのであまり勝手がわからず、とりあえず赤道儀を見てきました。専門の天文ショップの実店舗には行ったことがなかったので、こういう機会に各社の製品を見ておこう、と。鏡筒の方はノーチェック。

元々レポートする気がなかったので写真とかほとんど撮ってないし、100% 自分の都合でしか見てなかったのであまり人の役には立たない内容ですが個人的な記録として…

ケンコー・トキナー

今まで一度も写真を貼ってなかったのですが、スカイメモSはこれです*1。微動台座&アリガタプレート + バランスウェイト + 微動雲台 + 専用三脚 でフル装備。

CP+ 2017: ケンコー・トキナー スカイメモS

望遠鏡を載せての展示はありませんでした。それが本来の使い方なのかも。

そして本家スカイメモ(の三代目)がこれ、なんですけどやや投げやりな展示。

CP+ 2017: ケンコー・トキナー スカイメモRS

バランスウェイトだけ付けっぱなしで放置って大丈夫なんですかね。6時の位置ならギアに負担はかからないから問題ない?

ちょっと気になったのは参考出品のこれ。

CP+ 2017: ケンコー・トキナー スカイユニット(参考出品)

スカイメモS用微動雲台に取り付けて手動式の簡易赤道儀にするパーツです。「スカイユニット」という名前が付いていました。簡易と言っても赤経赤緯共に全周微動がついています。

スカイメモSとは極軸の向きが90度違う形になりますが、スカイメモSの微動雲台は高度が0度から90度まで動かせるので問題ありません。高度を0度にすれば経緯台としても使えるはず。*2

もしそうなら BORG などの小型望遠鏡と組み合わせて、最初は経緯台として使って、天体に興味が出てきたら赤道儀としても使ってみて、天体撮影がしたくなったらスカイメモSにステップアップ、みたいな使い方ができるかも?

その他、NEWスカイエクスプローラーEQ6 PRO と NEWスカイエクスプローラー AZEQ6GT が展示されていました。AZEQ6GT 実際に見るとバカでかいですね… というか EQ6 PRO も十分デカかったです。やっぱり 20cm ニュートンとかを載せるにはこのくらいは必要なんでしょうか。

ケンコー・トキナーのブースでは MEADE のシュミカセも展示していたのですが、こちらはフォーク型経緯台ばかりでした。LX200-30ACF か 25ACF か確認しそびれましたが、とにかくデカいのが一際異彩を放っていました。

CP+ 2017: ケンコー・トキナー MEADE LX200-30ACF?

写真だとデカさが伝わりませんね全然… もう、なんか「兵器」って感じでした。

ビクセン

ビクセンブースの赤道儀ポラリエと AP 系がメインでした。SX2 あたりを見たかったんですけど。

CP+ 2017: ビクセン ポラリエ

ポラリエもオプションで色々拡張できるんですね。スライド雲台プレートDDに取り付けられたレンズは FUJINON XF50-140mm F2.8 R LM OIS WR (重さ 995g)でしょうか。公式サイトの写真と同じ組み合わせのようです。フルサイズ換算200mmですが、説明員さんの説明を横で聞いてたら5分くらいの追尾なら大丈夫だとか。

AP赤道儀もバリエーションがいくつも展示されていました。

CP+ 2017: ビクセン AP星空雲台

CP+ 2017: ビクセン AP-SM マウント

このくらいのサイズ感の赤道儀がいいなぁと思って説明員さんに 1000mm くらいの直焦撮影は可能かどうか尋ねたのですが、あまりそういう用途は想定していないとのこと。

耐荷重的には写真にある A80Mf (8cm F11.4, 重さ 2.5kg)ぐらいが上限だけど、オートガイダーを使っても追尾精度はそこまで期待しないで欲しい的な説明。ベースが「星空雲台」なので、と。ポラリエの兄貴分ぐらいに思って欲しそうなニュアンスでした。

スカイメモSからのステップアップと思ってましたが、仕様を見るとウォームホイル径が73.5mmとスカイメモSの86mmより小さいんですね(歯数は同じ)。2軸ガイドができるのはいいのだけどガイド精度そのものが限界なら意味ないですね…

その他 AXJ 赤道儀がひっそりと(?)展示されていましたが、デカい赤道儀はまた今度とスルー。あとは GP2(?) 赤道儀に STAR BOOK TEN を付けて自動導入赤道儀にしたものが。GP2 をわざわざ中古で買って実売価格でも10万近いコントローラーを付ける気にもならないですねぇ…

BORG

BORG に赤道儀なんて… いや、ありました。なぜかユニテックのポータブル赤道儀 SWAT シリーズをセットで展示してました。

CP+ 2017: BORG 90FL日食撮影セット + ユニテック SWAT-350

SWAT-350 は実物を見ると結構頑丈そうに見えます。でもオプション揃えると高いんだよなぁ…

SWAT-350 に載っている鏡筒は発売予定の 90FL 日食撮影セット CH です。カーボン鏡筒仕様で2.1kg。焦点距離は付属テレコン使用で 700mm ですがこれをガイドできるということなのか、それとも日食用だから長時間ガイドすることは考えてないのか、そのへんちょっと聞きそびれてしまいました。

SWAT で撮ったと思われる*3天体写真が一緒に展示されていて、ばら星雲や馬頭星雲など十分に露出時間をかけないと撮れない天体が綺麗に撮れていました。90FL での作例があったか未確認。

SWAT-200 の展示もありました。こちらは 71FL との組み合わせ。

CP+ 2017: BORG 71FL+レデューサー7872セット + ユニテック SWAT-200

こちらはちょっと頼りない感じがしますがどうなんでしょう。

サイトロンジャパン

ここまでのブースは望遠鏡関連の展示としてまとめて展示場の隅っこで展示していたのですが、サイトロンジャパンは撮影用品関連のブースのある真ん中あたりに陣取っていて、しかもかなり大量の望遠鏡を展示していました。うっかり見逃すところでした。

展示していた赤道儀は、セレストロンの Advanced VX と新製品 CGX, Sky-Watcher の EQ5GOTO, AZ-EQ5GT, EQ6R など。

Advanced VX は予算10万円で赤道儀を買いたい… と思い悩んでいた時期に候補にしていたもの。マウント自体のサイズ感は悪くないけど、三脚が意外と場所取りそう。縮めた状態での展示でしたがそれでもベランダに入るかどうか微妙な感じ。

EQ5GOTO も候補に入っていた赤道儀ですが、これもマウントはともかく付属の三脚が意外と大きい。どちらも耐荷重が公称で 10kg 近くあるのでそれなりの三脚付けているんですかね。

というわけで、気がつくとベランダで使えそうな赤道儀を探していたのですが、なかなか難しい感じ。今度秋葉原に出た時に協栄産業シュミットでメジャー持ってじっくり検討してみますかね。

CP+ の天文視点での濃いレポートは PHD2 Guiding のマニュアルの日本語訳や、都心から撮る天体写真で知られる HIROPON さんのブログをどうぞ。

これ読むと、僕の方は見逃していたことがいっぱいありますね。あとちゃんとブースの人に話聞かなきゃダメですね。次回はがんばります…

*1:僕のは色違いで赤です。

*2:説明員と話すチャンスがなくて経緯台として使えるかどうか確認は取れていません。

*3:そう思っていたのですが、作例に赤道儀の名前は書いてなかったかも。→ 2017-03-01 追記: SWATの公式ブログで会場の作例を撮られた加曽利さんが作例について触れていました。SWAT + BORG での作例とのことです。

テンモンGO

ポケモンGO」が日本でサービスを開始したのが昨年7月。ポケモンはほとんどプレイしたことがなかったのですが、周りの熱気にのせられて始めてみたら結構ハマって一時期は毎日プレイしてました。そんな時期にノリで作ったのがこれ。

https://rna.sakura.ne.jp/share/TenmonGo/%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%A2%E3%83%B3GO_20160811.jpg

「テンモンGO の図鑑」です。今まで撮った天体をポケモンGOの図鑑風にまとめてみました。さすがにアプリまで作る気力はないので GIMP でチマチマ作ったものです。手作りなので一部ミスも。8月11日時点で「捕まえた数: 38」となっていますが実際は39です。

図鑑にセレクトした天体はメシエ天体全部と藤井旭『全天星雲星団ガイドブック』*1で紹介されていた天体のうち、特に撮ってみたいと思っている天体です。

あれから半年経って「捕まえた数」は 64 になりました。20秒露出時代の薄い写りの天体も一部はオートガイダー導入後に撮った写真で更新しています。

こういうのを作って眺めてると気持ちがアガって、今度はあれ撮ろう!という気分になってきますね。

ちなみに「見つけた数」は眼視で見た数にしようかなと思ったのですが、見つけた数の方が捕まえた数より少なくなるのも変な気がして撮った数と同じにしてあります。眼視もやってみたいのですが自宅からではさすがに難しそうです。

2017-03-02 追記: セレクトした天体(メシエ天体以外)

符号 通称 説明
Barnard 33 馬頭星雲 オリオン座の暗黒星雲
IC2177 わし星雲(かもめ星雲) いっかくじゅう座の散光星
IC5067〜5070 ペリカン星雲 はくちょう座の散光星
Mel 25 ヒアデス星団 おうし座の散開星団
Mel 111 かみのけ座の散開星団
NGC869とNGC884 ペルセウス座二重星 ペルセウス座散開星団 h+χ
NGC1499 カルフォルニア星雲 ペルセウス座の散光星
NGC2237 ばら星雲 いっかくじゅう座の散光星
NGC3242 木星状星雲 うみへび座の惑星状星雲
NGC5139 ω星団 ケンタウルス座の球状星団
NGC6992-5 網状星雲 はくちょう座の散光星
NGC7000 北アメリカ星雲 はくちょう座の散光星

*1:1981年発行の第四版。つまり僕が小学生の頃に買った本。

ノータッチ追尾で撮る夏の星雲・星団

前回の続きです。

光害の中で散光星雲のような淡い天体が撮れるのかという懸念があったのですが、昨年5月、カメラレンズで天の川を撮影した際にいて座の散光星雲が識別できる程度には写ることがわかりました。

そんなわけで翌月の6月6日と10日にいつもの望遠鏡でいて座の星雲や星団を撮りました。例によってスカイメモSでノータッチ追尾20秒露出です。

M8 干潟星雲 (2016/6/6 01:31)
M8 干潟星雲 (2016/6/6 01:31)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1600, 20s x 6枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M20 三裂星雲 (2016/6/6 1:38)
M20 三裂星雲 (2016/6/6 1:38)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1600, 20s x 6枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M17 (2016/6/10 23:49)
M17 (2016/6/10 23:49)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1600, 20s x 4枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M16 (2016/6/10 23:59)
M16 (2016/6/10 23:59)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1600, 20s x 4枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

撮ることは撮ったよ、という感じでしょうか。三裂星雲が三つに裂けているのが写っていて嬉しかったのですが、そのど真ん中を人工衛星が横切ってしまうという不運…

どれも荒れ気味の画像なのはコンポジットの枚数が足りなくてノイズが多いからです。8枚は使いたいので10枚くらい撮るのですが、この時期はなぜか追尾がブレがちで歩留まりが悪く、撮ったカットの半分くらいしか使えませんでした。

露出もこの倍くらいは欲しい感じですが背景が既に66%ぐらいでこれ以上は画像処理が難しい、というか既に階調があまり残せない状態です。光害カットフィルターがあればなんとかなるんでしょうか。でもこのあたりの街灯やマンションの廊下の明かり、もうほとんどLEDになってるんですよね…

光害カットフィルターは水銀灯やナトリウム灯の輝線スペクトルをカットする仕組みなので白色LEDの連続スペクトルには無力です。それでも(今のところ)ないよりはずっとマシだと後に判明しているので今年は頑張ってみたいです。

その他こんな天体も撮りました。こぎつね座の惑星状星雲「亜鈴状星雲」こと M27 です。

M27 あれい状星雲 (2016/6/11 00:54)
M27 あれい状星雲 (2016/6/11 00:54)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1600, 20s x 6枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

露出が足りなくて縁の赤いところが曖昧ですが青い色はよく出ていて宝石のようです。それに意外と大きい。メシエ天体の惑星状星雲としては最大とのことですが*1 期待以上でした。

球状星団もいくつか撮りました。

M28 (2016/6/6 01:48)
M28 (2016/6/6 01:48)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 800, 20s x 4枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M22 (2016/6/6 01:55)
M22 (2016/6/6 01:55)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 800, 20s x 4枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M15 (2016/6/11 01:53)
M15 (2016/6/11 01:53)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 800, 20s x 6枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

球状星団もそれぞれ個性があるのがわかります。M22 でかい。迫力あります。M15 は美形な感じ。M28 は… これはもっと長焦点で狙ってみたいところ。今の機材では無理かな…

球状星団は微光星の粒がノイズに紛れてほしくないので ISO 感度を落として撮っています。追尾が少しブレるだけでも辛くなるので歩留まりも悪くなりがち。

初めて見る天体ばかりで夢中になっていっぱい撮りましたが、限界も見えてきた感じです。限界の中で楽しむか、限界を超えていくのか… などと考えていると天文ショップのサイトで赤道儀を眺める時間が多くなっていくのでした。(つづく)

続き:

*1:中西昭雄『メシエ天体ビジュアルガイド』(誠文堂新光社) p63

このブログのタイトルについて

このブログのタイトル「Deep Sky Memories」は、deep-sky objects (DSO = 星雲・星団など太陽系外の天体で普通の恒星以外のもの)の撮影というブログのテーマにちなんだものですが、タイトルのどこかに「スカイメモ」を入れたくてこういうタイトルにしました。

もちろん愛用の赤道儀であるスカイメモSにちなんでということですが、本格的な観測や作品づくりとしての天体撮影からは距離を置いて、メモをとるぐらいの気持ちで天体を撮ろう、という僕の立ち位置をあらわしています。

太陽や月、惑星、人工天体といったものも撮らないわけではないのですが、deep-sky にこだわって、何万光年もはなれた天体の光がこの街の空にも届いているというその証拠を記録していきたいと思います。

M31 (2016/11/05 22:32)
M31 (2016/11/05 22:32)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, LPS-D1 QRO
ISO 1000, 90s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算600mm相当にトリミング

横浜の空の天の川 (2016/5/5)

都市近郊では「天の川が見える」というのが星がよく見えることの指標になっています。首都圏だと房総半島や三浦半島に見える場所があるらしいですが、まだ行ったことがありません。横浜に来る前は地方都市に住んでいたので見るチャンスはあったと思うのですが、当時は天文の趣味から離れていました。

そんなわけで天の川を見たことがないのですが、横浜の空でもデジタル写真になら写るのでは?と思い立ち、昨年の5月に例によって自宅のベランダからチャレンジしてみました。もちろん肉眼では全然見えません。それどころか自宅付近では3等星がやっと見えるぐらいの空です。

とりあえず天の川が一番明るいいて座付近の天の川を狙ってみました。高度が低くて光害の影響も受けやすい場所でもあります。結果はこれ。

いて座の天の川 (2016/5/5 03:16)
いて座の天の川 (2016/5/5 03:16)
OLYMPUS OM-D E-M5, ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (35mm)
ISO 400, f/2.8, 40s x 4枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理

カメラは無改造、光害カットフィルターは使用していません。*1 意外と写っているのではないでしょうか?さすがに光害のカブリが酷くて画像処理でかなりごまかしていますが、結構それっぽく写っています。

星雲や星団もあちこちに写っています。flickr のノート機能で天体の名前を書き込んでおきました。PCから写真をクリックして flickr のサイト上で見ると確認できます。*2

M8 (干潟星雲), M20 (三裂星雲) 付近をズームアップしたのがこちら。

天の川, M8, M20, M21, M23 (2016/5/5 02:20)
天の川, M8, M20, M21, M23 (2016/5/5 02:20)
OLYMPUS OM-D E-M5, ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm)
ISO 400, f/2.8, 40s x 4枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理

M8, M20, M21 (2016/5/5 02:20)
M8, M20, M21 (2016/5/5 02:20)
OLYMPUS OM-D E-M5, ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm)
ISO 400, f/2.8, 40s x 4枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算400mm相当にトリミング

当時はこのあたりの散光星雲がここまで写るとは思っていなかったので感動したものです。

ちなみに画像処理前はこんなのです。

いて座の天の川 (画像処理前) (2016/5/5 03:16)
いて座の天の川 (画像処理前) (2016/5/5 03:16)
OLYMPUS OM-D E-M5, ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (35mm)
ISO 400, f/2.8, 40s

天の川, M8, M20, M21, M23 (画像処理前) (2016/5/5 02:20)
天の川, M8, M20, M21, M23 (画像処理前) (2016/5/5 02:20)
OLYMPUS OM-D E-M5, ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm)
ISO 400, f/2.8, 40s

あまり露出はかけていませんが、それでもバックグラウンドの濃度は50%ぐらいです。*3 ISO感度を半分に落として露出時間を倍にしたらもう少し写りがよくなるでしょうか?光害カットフィルターも欲しいところです。また、写真下部のカブリは光害だけでなく地上の明かりが直接レンズに入って迷光になっている可能性もあります。今年は色々試行錯誤してみたいと思います。というか、こういうのは遠征したらいいんですよねそもそも…

*1:77mm径のモデルは値段が…

*2:モバイル版サイトではノートは見れないようです。

*3:カブっているのだからフォアグラウンド?

ノータッチ追尾で撮る春の銀河

前回の続きです。

カメラレンズでの追尾撮影にも慣れてきた昨年2月、いよいよ望遠鏡を使った撮影にチャレンジします。北極星の見えない南向きのベランダからスカイメモSの恒星時運転に任せたノータッチ追尾で撮影します。

使用する望遠鏡は 笠井トレーディング BLANCA-80EDT + 0.6x レデューサー です。カメラレンズ風に言うと 288mm F3.6 に相当します。カメラはマイクロフォーサーズOLYMPUS OM-D E-M5 なので、フルサイズ換算576mmのレンズになります。この望遠鏡の性能や使い勝手については別の記事にまとめました。

極軸望遠鏡は使えませんので、極軸合わせにはドリフト法を使います。ドリフト法は実際にガイド星を追尾して追尾誤差に合わせて極軸を調整する方法です。別の記事に具体的な方法と原理を簡単にまとめました。*1

ガイド星の動きは同じ望遠鏡に2xテレコンバーターを付けたカメラの拡大ライブビュー(14倍)でチェックしていました。作業時間は30分くらいかかりました。今はオートガイダーを利用する便利な方法でやっているのですが、やはり30分くらいかかります…

最初は慣れれば短時間で済ませられるようになるだろうと思っていたのですが、ドリフト法は調整が進んで追尾誤差が少なくなるほど残りの小さな誤差を蓄積させて検出するのに長い時間がかかってしまい、少々手際よく作業してもどうにもならないようです。

最初の夜のターゲットは「しし座の三つ子銀河」にしました。8秒露出です。

M65, M66, NGC3628 (2016/2/11 03:08)
M65, M66, NGC3628 (2016/2/11 03:08)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1600, 8s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

なんとか三つの銀河が写っていました。ギリギリ写っている NGC3628 (写真上)は明るいカメラレンズを使っても固定撮影では全然写らなかったので結構嬉しかったです。

その後は調子にのって少しずつ露出時間を伸ばして冬の深夜に春の銀河を次々撮りました。極軸合わせに慣れてくるとスカイメモSの追尾精度でもこの焦点距離で20秒くらいまではブレずに撮れることがわかりました。

まずはもう一度しし座の三つ子銀河。

M65, M66, NGC3628 (2016/2/17 01:22)
M65, M66, NGC3628 (2016/2/17 01:22)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1000, 20s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

あまり代わり映えはしませんが M66 (写真左下)の渦巻の腕が少しは見えるようになってきました。

同じくしし座の三つの銀河、M95 と M96 と M105 も撮りました。

M105, M96, M95 (2012/2/17 01:47)
M105, M96, M95 (2012/2/17 01:47)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1600, 15s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

これはイマイチ。知らないとどれが銀河かよくわかりません。

次はおとめ座の、と言ってもおとめ座銀河団の銀河密集地帯からは離れたところにある「ソンブレロ銀河」こと M104 です。これはよく写りました。

M104 (2016/2/17 03:43)
M104 (2016/2/17 03:43)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1000, 20s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

小さいながらも UFO みたいな形がよくわかります。

次はかみのけ座の M98 と M99 です。

M99, M98 (2016/2/17 02:39)
M99, M98 (2016/2/17 02:39)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1000, 20s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

かすかながら M99 (左下)のくるっと渦巻いている腕がわかります。こういうのが見たいんです、こういうのが。フェイスオン銀河*2の台風みたいな、あるいは鳴門の渦潮みたいな渦巻き。こういうのが好きなんです。あ、M98 (右上)も一応銀河らしく写っています。

次はそのすぐ北にある M100 です。これもフェイスオン銀河なのですが…

M100, NGC4312 (2016/2/17 02:50)
M100, NGC4312 (2016/2/17 02:50)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1000, 20s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M100 (中央)も画像処理で思いっきり強調すると渦巻きっぽいのが確認できるのですが、ノイズが多すぎて残念な感じ。露出時間が全然足りないということです。

次は M98。M100 から南東方向に少し降りたところにあります。

M88 (2016/2/17 03:01)
M88 (2016/2/17 03:01)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1000, 20s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

アンドロメダ銀河を超ちっちゃくしたような姿です。縁の部分に暗黒帯があるのがわかるようなわからないような。

M98 からさらに南東に進んで、次は M90。

M90 (2016/2/17 03:11)
M90 (2016/2/17 03:11)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1000, 20s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

これも露出が足りない感じです。残念。

天体一つにつき20秒露出で8枚なので撮影自体は5分とかからず、サクサクと撮れました。全体的に露出が足りない感じですが、望遠レンズでは見えない銀河の形が写っていて DSS から画像が出てくるたび一人盛り上がっていました。

望遠レンズでは見えないと言えば球状星団もそうです。かみのけ座の銀河を撮ったついでに同じかみのけ座の球状星団 M53 も撮ってみました。

M53 (2016/2/17 03:31)
M53 (2016/2/17 03:31)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 1000, 20s x 4枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

星の粒が見えていて球状星団らしい姿に写っています。この写真だけ4枚コンポジットです。追尾精度が甘くて使えるカットがこれだけしかありませんでした。

ということで、スカイメモSを買う前は全然使い物にならなかったらどうしよう、と思っていたのですが、それは杞憂でした。他人に自慢できるような写真ではないですが、自己満足できる程度の写真は撮れることがわかりました。

光害の影響も、20秒くらいでは光害で明るい背景が飽和してしまうこともなく、その点はまだ余裕がありそうで、それならばもっと露出時間を伸ばしたいと思ってしまうのですが、そうなると本格的な赤道儀が必要なのか…

この時はまだ散光星雲のような淡い天体を撮っていません。M42 は別格ですが、他はそもそも写るのか。「馬頭星雲」とか「ばら星雲」みたいな赤い星雲は無改造のカメラで写るのか、改造が必要なら改造用に新しいカメラも必要だし… などと悩む日が続きます。(つづく)

続き:

*1:「簡単に」というのは数式や定量的な議論が出てこない、ぐらいの意味です。

*2:地球から見て銀河の渦巻きを真上(あるいは真下)から見る向きの銀河

ドリフト法による極軸調整

赤道儀の極軸合わせの方法の一つ「ドリフト法」を簡単にまとめました。北極星が見えない南向きのベランダ等で極軸を合わせるのに便利な方法です。ポータブル赤道儀など極軸望遠鏡を持たない赤道儀で極軸を精密に調整するのにも使えます。

以下は観測地が北半球の場合の手順です。星の移動方向の上下左右は正立像で見た時の方向です。オートガイダーの映像や直焦点に取り付けたカメラのファインダーなどで見た場合に相当します。眼視でガイド星を見る場合は上下左右を逆に読み替えてください。

準備

  • 赤道儀の極軸は北に向けておきます
  • 極軸の高度は観測地の緯度と同じにします
  • 架台の水平出しはしっかりやります

ドリフト法では極軸の向きを方位と高度を分けて調整しますが、水平出しができてないと高度を調整した時に方位もズレてしまって面倒なことになります。しっかりと言っても三脚に付いている泡式の水準器で合わせられる範囲で十分です。

方位調整

  • 南天の赤道付近かつ子午線付近の星を導入します
  • 自動追尾で数分待ちます
  • 星が上下(南北)のどちらにズレたかをチェックします
    • 上(北)にズレた場合は極軸は西にズレています
      • 極軸の方位を東の向きに調整します
    • 下(南)にズレた場合は極軸は東にズレています
      • 極軸の方位を西の向きに調整します
  • 星が上下(南北)に動かなくなるまで調整を繰り返します

極軸の方位ズレと星の動く方向の関係を図解すると以下のようになります。

https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/drift-alignment-01.png

https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/drift-alignment-02.png

このイメージを頭に入れておくと調整方向がどっちなのか迷わなくなります。調整量は星のズレの量から計算できるはずですが、勘で動かして慣れる方が手っ取り早いと思います。

高度調整

  • 東の空から昇る星を導入します
  • 自動追尾で数分待ちます
  • 星が上下(南北)のどちらにズレたかをチェックします
    • 上(北)にズレた場合は極軸は上にズレています
      • 極軸の方位を下向きに調整します
    • 下(南)にズレた場合は極軸は下にズレています
      • 極軸の方位を上向きに調整します
  • 星が上下(南北)に動かなくなるまで調整を繰り返します

https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/drift-alignment-03.png

https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/drift-alignment-04.png

西の空に沈む星でドリフトする場合はを上下の調整方向は逆になります。

必要に応じてさらに方位調整と高度調整を繰り返して極軸の精度を追い込みます。

フルサイズ換算600mm程度までの直焦撮影で5分程度の露出時間なら、方位調整、高度調整、もう一度方位調整、で30分ぐらいかければ十分だと思います。

PHD2 Guiding のドリフトアライメント

オートガイダーを導入済みならフリーのオートガイドソフト PHD2 Guiding のドリフト法支援機能が使えます。これを使用すると極軸ズレの量が把握でき、方位・高度の調整量の目安も表示してくれるので調整が捗ります。

準備

通常のドリフト法と同じ準備をしたら PHD2 Guiding で以下の操作を行います。

  • キャリブレーションを先に済ませます
  • メニューの [ツール - ドリフトアライメント] を選択します
    • 「ドリフトアライメント - 方位角調整」ダイアログが開きます
      https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/PHD2-drift-alignment-02.png

方位調整

注意: PHD2の最近のバージョンでは赤いラインの傾きの上向き・下向きとガイド星のドリフト方向の北・南の対応関係が不定になっているようです。実際に方位調整した際に傾きが急になってしまった場合は、方位・高度とも調整方向を全て反対向きに読み替えてください。

  • 南天の赤道付近で南中している星を導入します
  • ダイアログの [ドリフト] ボタンを押すと1軸オートガイドが開始します
    https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/PHD2-drift-alignment-01.png
  • ガイドグラフに赤緯方向の誤差が蓄積していき誤差のトレンドラインが赤いラインで表示されます
    https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/PHD2-drift-alignment-01_02.png
    • 赤いラインの傾きが上向きならガイド星が北にズレています
    • 赤いラインの傾きが下向きならガイド星が南にズレています
  • オートガイダーの映像にはオーバーレイでガイド星を中心とした円が描画されます
    https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment//PHD2-drift-alignment-01_01.png
    • 円の大きさは極軸の誤差の大きさを表します
  • 赤いラインの傾きが安定したら [調整] ボタンを押してガイドを止めます
  • 極軸の方位を調整します
    • 傾きが上向きなら極軸の方位を東の向きに調整します
    • 傾きが下向きなら極軸の方位を西の向きに調整します
    • 調整量はオーバーレイ描画された円からガイド星がはみ出さない範囲が目安です
  • 調整したら [ドリフト] ボタンを押して再びトレンドラインの傾きをチェックします
  • 赤いラインの傾きが十分フラットになるまで [ドリフト] と [調整] を繰り返します

高度調整

  • ダイアログの [>高度] ボタンを押します
    • 「ドリフトアライメント - 高度調整」ダイアログが開きます
      https://rna.sakura.ne.jp/share/drift-alignment/PHD2-drift-alignment-03.png
  • ダイアログの [ドリフト] ボタンを押すと1軸オートガイドが開始します
    • (表示等は方位調整と同じなので省略します)
  • トレンドラインの傾きが安定したら [調整] ボタンを押してガイドを止めます
  • 極軸の方位を調整します
    • 傾きが上向きなら極軸の高度を下向きに調整します
    • 傾きが下向きなら極軸の高度を上向きに調整します
    • 調整量はオーバーレイ描画された円からガイド星がはみ出さない範囲が目安です
  • 調整したら [ドリフト] ボタンを押して再びトレンドラインの傾きをチェックします
  • 傾きが十分フラットになるまで [ドリフト] と [調整] を繰り返します

西の空に沈む星でドリフトする場合はを上下の調整方向は逆になります。