Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

笠井トレーディング BLANCA-80EDT

現在使っている撮影鏡 BLANCA-80EDT について。

BLANCA-80EDT は 8cm F6 の屈折望遠鏡です。カメラレンズ風に言うと 480mm F6 です。

主な仕様は以下の通り。

製品名 BLANCA-80EDT
http://www.kasai-trading.jp/blanca-80edt.htm
メーカー 笠井トレーディング
http://www.kasai-trading.jp/
口径 80mm  
口径比 F6
焦点距離 480mm
光学系 3枚玉分離式EDアポクロマート
合焦機構 クレイフォード式デュアルスピードフォーカサー
鏡筒径 90mm
鏡筒長 360mm
重量 2.4kg (DX接眼部使用時の実測値)

一眼レフを安心して取り付けられるように接眼部は「高機能DXマイクロフォーカス接眼部」に交換したものを使っています。

以下、性能や使い勝手について実際に使ってみて気付いたことをまとめます。あくまで僕が2013年に購入した特定の個体についての評価です。マイナーチェンジ等で現在のモデルとは異なる可能性があります。

色収差は直焦点やレデューサー使用での撮影ではほぼ気になりません。月を撮る時はカメラ用の2xテレコンを使用して 960mm F12 で撮っていますが十分シャープな写りだと思います。ただしテレコン使用で E-M5 で撮った写真を等倍表示で見ると数ピクセル分の色ズレがあります。直焦点では問題ありません。画面全域で同じ方向に色がズレているのでスケアリングが合っていないせいかもしれません。*1

星雲・星団を撮る時はオプションの「ED屈折用0.6xレデューサー」を付けて 288mm F3.6 で撮影しています。フォーサーズ規格のカメラならフルサイズ換算 576mm です。このレデューサー、本当は F7〜F8 用で、BLANCA-80EDT には適合しないものですが、イメージサークルの小さいフォーサーズならなんとか… 四隅付近は非点収差やコマ収差で星像が伸びてしまって厳しいですがどうせトリミングが前提と割りきって使っています。

鏡筒の作りは外側は悪くないですが内側は… 遮光環が接眼部手前に一つしかないようです。高度20度くらいの低い位置の天体を撮ると地上の明かりによる迷光に悩まされて苦労しました。対策として自作の巻きつけフードでフードの長さを15cm延長しています。

機能的な特徴としては以下のものがあります。

  • 伸縮式の組み込みフード
  • アリガタにもなる三脚座
  • 回転式の接眼部

伸縮式フードはアルミ製でガタもありません。伸ばすと対物レンズから10.5cm、フード内径は9cmなので、計算上 0.6xレデューサー + フルサイズでもケラレないはずです。*2 むしろ短すぎるのが問題です。

三脚座は便利です。鏡筒バンドが不要になり軽量化に貢献しています。カメラネジ(1/4インチ)で架台に取り付けられる他、ビクセン互換のアリガタとして使えます。ただし台座の長さは7cmしかないので前後のバランス調整には限界があります。

鏡筒バンドが付属しないため、ガイド鏡の同架などには工夫が必要です。接眼部にビクセン規格のファインダー台座があるので、QHYCCD miniGuideScope のようなファインダーと差し替えられるタイプのものを使うのが簡単です。

三脚座が鏡筒に固定されていて鏡筒を回転できないので代替として接眼部に回転機構があります。接眼部のネジを緩めると接眼部全体が回転します。若干ガタがあり光軸ズレが心配ですが画質に目に見えた問題は出ていません。

ただし、フラットフレームの撮影には注意が必要です。元々接眼部の中心と光軸が一致しておらず、フラットが偏心してしまうのですが、そんな接眼部を回転させるとフラットの中心も回転してしまいます。接眼部の角度を撮影時のままにしてフラットを撮らないとフラットが合わなくなります。

付属のキャリングケースは決して丈夫とは言えませんが、鏡筒が軽いので十分使えます。型抜きしたウレタンが入っているので安心です。ただし、レデューサーや直焦アダプター付けたままでは入りません(ケースのサイズ自体が足りない)。また、接眼部を回転した場合は正位置に戻さないと入りません。

色々欠点はありますが、軽さが強みです。軽めの一眼とレデューサーにファインダーまで付けても、スカイメモSの1kgのカウンターウェイトでバランスします。ポータブル赤道儀で星雲・星団を狙う撮影鏡として、コストパフォーマンス的にも悪くない選択だと思います。

*1:E-M5 の画素ピッチは3.75μmで、レンズには厳しいカメラです(D800 でも 4.88μm)。

*2:実際にはこの組み合わせだと収差がひどくて使い物にならないと思いますが。

カタリナ彗星 (2016/1/19)

前回の続きです。

初めて追尾撮影をしてから5日後、ようやく当初の目的だったカタリナ彗星を撮影しました。

カタリナ彗星 (2016/1/19 02:29)

OLYMPUS OM-D E-M5, ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm)
ISO800, f/2.2, 15s x 4枚
Lightroom CC, Photoshop CC で画像処理, フルサイズ換算400mm相当にトリミング

まだ DeepSkyStacker に慣れてない頃で手動コンポジットです。 DSS に慣れないというか、DSS のデフォルトの設定では出力画像の色調が変わりすぎて、それを調整するのに慣れていませんでした。

今日あらためて DSS で処理したのがこれです。上の写真とは別に f/2.5, 20s のカットが7枚あったのでコンポジットしてみました。

カタリナ彗星 (C/2013 US10) (2016/1/19 02:20)
カタリナ彗星 (C/2013 US10) (2016/1/19 02:20)
OLYMPUS OM-D E-M5, ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm)
ISO800, f/2.5, 20s x 7枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算400mm相当にトリミング

尾の伸びている部分は全然写っていませんが、固定撮影の写真と比べるとコマの広がりがずっとよく写っています。

この日のカタリナ彗星の位置は北斗七星のミザールとアルコルのそばにいて、明るさは5.19等でした。

stellarium-001
2016/1/19 のカタリナ彗星(C/2013 US10)の位置
Stellarium 0.15.1 で表示

(つづく)

続き:

初めての追尾撮影

前回の続きです。初めて赤道儀を買った頃の話。

スカイメモSが届いてから三日後の深夜、やっと赤道儀を使って天体を撮影できました。極軸望遠鏡で極軸を合わせるために近所の駐車場に出て撮っています。望遠鏡を外に持ち出すのはまだ抵抗があったのでカメラレンズでの撮影です。

撮影したのはぎょしゃ座の三つの散開星団 M37, M36, M38 です。

M37, M36, M38 (2016/1/14 01:23)
M37, M36, M38 (2016/1/14 01:23)
OLYMPUS OM-D E-M5, ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm)
ISO800, f/2.5, 13s
Lightroom CC で画質調整

これは南向きのベランダからは見えない天体で、この日初めて撮りました。長時間露出はノイズが増えると思ってISO感度は少し下げています。今見るとぱっとしない写真ですが、固定撮影の頃は ISO 1600, 1.6s でしたから約4倍の露出で、*1 当時としては想像以上にたくさんの星が写っていてわくわくしました。

上の写真はコンポジットなしのワンショットです。実はコンポジット用に10枚ほど撮っていたのですが、当時は DeepSkyStacker をまだ使いこなせてなくて後回しにしていました。そこで今日あらためてコンポジットしてみました。

M37, M36, M38 (2016/1/14 01:23)
M37, M36, M38 (2016/1/14 01:23)
OLYMPUS OM-D E-M5, ZD35-100mm F2.0 (100mm)
ISO800, f/2.5, 13s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, トリミング

当時は知識がなくてダークフレームやフラットフレームを撮っていなかったのですが、ライトフレームのみのコンポジットでもだいぶ天体写真っぽくなりました。ワンショットでトーンカーブをキツくいじるとノイズが強調されてザラザラの絵になってしまうのですが、コンポジットをかけるとノイズが減ってキツい調整にも耐えるようになります。*2

たった13秒の露出にとどめたのは、スカイメモSの追尾精度がまだよくわかっていなかったから。マニュアルでは中望遠程度までを想定しているようなので換算200mmの望遠だと厳しいのかなと思い、様子を見ながら露出時間を伸ばしていくことにしました。今となってはもう少し思い切って露出時間を伸ばしてもよかったかと思いますが。

この日は遠征のシミュレーションも兼ねて、荷物を減らすため赤緯微動なしで標準のプレート取り付けた自由雲台にカメラを据えて撮影していたのですが、天体の導入に大変苦労しました。また、南天から北天にレンズの向きを変えると機材全体のバランスが崩れて極軸がズレてしまいます。極軸調整用の微動雲台の高度調整ウォームギアバックラッシュがあるからです。

ZD ED 35-100mm F2.0 はフルサイズの 70-200mm F2.8 に相当するレンズで、いいレンズですがサイズも重さもフルサイズ相当になっています。赤緯微動は望遠鏡を使う時だけでよいと思っていたのですが、これに懲りてその後は赤緯微動を付けて撮るようにしています。微動台座とバランスウェイトで重心が前に出た分レンズの向きでバランスが崩れることがなくなりますし、天体の導入も格段に楽になりました。(つづく)

続き:

*1:本当は8倍。デジカメのISO感度を下げても本当の意味での感度(量子効率)は変わらず、センサーが集めた光の量はISO感度によらず露光量に比例するので。

*2:ただしキツい調整をすると光害のカブリや周辺減光も目立ってしまうので仕上げは難しくなります。実際画面下の方はかなりカブっていましたが Lightroom の段階フィルターでごまかしました。周辺減光もトリミングでごまかしました。

国際宇宙ステーション(ISS)を狙い撃ち

2月15日の夕方、関東地方上空を国際宇宙ステーション(ISS)が通過しました。ISSの通過は、その軌跡を星景写真として撮る他に、天体望遠鏡や 1000mm 以上の望遠レンズがあるなら、ISS そのものの姿を撮るという楽しみ方ができます。地上 400km の上空を高速で飛翔する人工天体を狙い撃ちするスタイルはまさにスナイパー気分です。

何度かチャレンジしてそこそこの結果は出しているのですが、一発勝負の難しさに加え ISS の姿勢と地上から見た角度の兼ね合いでなかなかかっこいい姿を撮るのは難しいです。最近では1月28日に ISS の通過があって望遠鏡による撮影を試みたのですが、あろうことか撮影中にピントがズレてしまって全滅… 今回はそのリベンジです。

その結果は…

国際宇宙ステーション(ISS) (2017/2/15 18:35)
国際宇宙ステーション(ISS) (2017/2/15 18:35)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井BLANCA-80EDT (8cm F6), 2x TELECONVERTER EC-20
ISO 1250, 1/1000s
Lightroom CC で画質調整, 等倍切り出し

今までで一番写りがよくて、ほぼ満足いく結果でした。左の太陽電池パドルがギリギリ四枚に分離して写っています。

とはいえ、ベストの条件では撮れませんでした。まず南向きのベランダで撮ったので ISS が一番接近した北北東の空を通過したタイミング(直距離 429km)では撮れず、その上うっかりシャッターを低振動モード*1を切るのを忘れるというミスをやらかしてしまい慌てて連写モードに設定しなおすというタイムロスがあって、上の写真が撮れたのはだいぶ離れてからでした。

直距離がどのくらいか撮影した写真からざっくり計算してみます。国際宇宙ステーションの横幅は約 108.5m *2、これが写真上ではおおよそ 45.5 ピクセル。奥行き方向には斜めになっていないと仮定すると、E-M5 のピクセルサイズは 3.75μm なので、センサー上では 0.170625mm の像になっていて、これと 108.5m との比が、焦点距離 960mm と直距離の比に等しいので、直距離は約 610km となります。*3 再接近で撮れたなら4割くらい大きく撮れたはずでした…

撮影方法ですが、ISS を撮る時は赤道儀は使わず経緯台(ミザール K型微動マウント)を使っています。今時の自動赤道儀だとISSの軌道を自動追尾できるらしいのですが、スカイメモSにはそんな芸当はできません。手動で追尾するなら動きが直観的な経緯台の方が向いています。

ピントは前もって月か金星で合わせておきます。どちらも見えないならギリギリまで待って明るい恒星を見つけて合わせます。今回は金星で合わせました。ISS とは随分距離が違うので正確には合ってないと思うのですが遠くの山とかに合わせるよりはマシみたいです。

撮影中はずっと望遠鏡のファインダーを覗きます。僕は 5cm 8倍の90度正立ファインダー*4を使っています。カメラのシャッターは連写モードにして、リモートケーブルを繋いで手元でシャッターを押せるようにしておきます。流し撮りは無理なのでシャッター速度はなるべく高速に。いくら ISS が明るいとはいえ 1/1000 秒くらいの露出だと ISO 感度は相当上げないといけません。

ISS を見つけたら頑張ってファインダーの視野に入れます。そして ISS の動きをよく見て軌道を読んで、望遠鏡を数秒後に来る位置に先回りして向けておき、十字線の真ん中に飛び込んでくるところで連写します。そしてまた先回りして連写、先回りして連写、と繰り返します。

というわけで、全然 Deep Sky の話じゃなくなっていますが、形が見えないくらい遠くのものを拡大して見るというのは望遠鏡の素朴な楽しみ方ですし、ISS の場合「そこに人が乗っている」というのがいいですね。マラソンランナーを沿道で見送るような風情があって。

*1:レリーズするとシャッターチャージ後数秒待ってからシャッターが切れるモード。

*2:参照: 国際宇宙ステーション(ISS)の大きさ、重さはどれくらい?

*3:フリーのプラネタリウムソフト Stallarium のシミュレーションによると撮影時刻の直距離は約 594km ということでそこそこ合ってます。

*4:http://www.kasai-trading.jp/8x50erectingfinder-gf.htm

ポリマ食

2月14日深夜におとめ座の肩のところにある3等星ポリマの食があったので撮影しました。特に気にしていなかったのですが、当日の昼に AstroArts の公式アカウントでお知らせがあって気になり出しました。

そういえば1月9日深夜のアルデバラン食では潜入は撮れたのに出現は撮れなかったなぁ… とあの時の欲求不満を思い出し、今回は両方撮ろうと決めて2時間前から準備を始めました。赤道儀の極軸合わせ(ドリフト法)に40分かけて、運転速度を月の速度に切り替えて、ピント合わせや試し撮りで準備が終わったのが20分前。2時間前からというのは気が早すぎかと思ったけどそうでもなかった…

連続写真か動画かで迷いましたが、アルデバラン食で動画を撮ってる人がいて真似してみたくなってたので動画で。本気で「観測」として撮るわけではなくあくまで遊びですが、単純に何時何分何秒に潜入とか言ってみたかったのでNTTの時報と一緒に録画してみました。携帯電話だと遅延があると聞いたので固定電話の子機をベランダに持ち出して。コードレス電話は遅延大丈夫なのかな?まあ遊びなので気にしないことに。

5分前に録画を開始して時報を鳴らそうとしたらボタンを押し間違えてFAXを送信し始めた時には焦りましたが、なんとか潜入に間に合いました。

ポリマ食 潜入 (2017/2/14 23:31)
ポリマ食 潜入 (2017/2/14 23:31)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井BLANCA-80EDT (8cm F6), 2x TELECONVERTER C-20
ISO 200, 1/50s, Full-HD Fine
TMPGEnc Video Mastering Works 5 で色調調整, 2倍に拡大(フルサイズ換算3840mm)

潜入は22時32分25秒あたりでしょうか。動画ならフレーム単位で数えられるかと思いましたがシンチレーションが大きくてどこで完全に隠れたのかよくわかりませんね。

出現も無事撮れました。

ポリマ食 出現 (2017/2/15 00:51)
ポリマ食 出現 (2017/2/14 23:31)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井BLANCA-80EDT (8cm F6), 2x TELECONVERTER C-20
ISO 200, 1/50s, Full-HD Fine
TMPGEnc Video Mastering Works 5 で色調調整, 2倍に拡大(フルサイズ換算3840mm)

こちらは00時51分56秒あたりでしょうか。

というわけでポリマ食観察を楽しみました。惜しいのはポリマが二重星として見える大きさで撮れなかったこと。静止画では 8cm F6 + 2xテレコンでギリギリ写るようです。

出現後撮った静止画を等倍で見るとギリギリでポリマAとポリマBが分離できていました。

月齢17.6 (2017/2/15 00:57)
月とポリマA,B (2017/2/15 12:57)
月齢17.6の月と出現後のポリマ (2017/2/15 12:57)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井BLANCA-80EDT (8cm F6), 2x TELECONVERTER EC-20
ISO 200, 1/50s
Lightroom CC で画質調整, トリミング

なんとか分離して見えたのは10枚のうち2枚だけ。他はシンチレーションで潰れて一つの星にしか見えませんでした。こんなのどうするんだろうと思ってネットを検索したら、惑星を撮る方法(CCDカメラで動画を撮ってRegiStaxで画像処理)で撮っている人がいました。

僕はワンショットでしか惑星を撮ったことがないのですが、機材が揃ったらこういうものも撮ってみたいものです。

赤道儀。それは沼の入り口…

ケンコー・トキナーポータブル赤道儀スカイメモS」を購入したのは昨年の1月10日。当時カタリナ彗星(C/2013 US10)が接近して6等台まで増光していたのですが、深夜につい魔が差して Amazon でポチってしまいました。やっちまった感漂うツイートが残っています。

当時僕はカメラレンズを使った固定撮影で星野写真を撮っていました。星野と言っても8等星くらいまでしか写らないささやかなものですが、それで満足していようと心に決めていました。

天体写真の趣味は凝りだすといくらでもお金がかかるもの。世の中に「沼」と呼ばれる趣味は色々ありますが、「カメラ + PC + アウトドア」の合わせ技になる天体撮影の底なし度はかなりのものです。戒めのためにこんなコラも作っていました。赤道儀購入のちょうど一年前です。

いわゆる「悪循環コラ」です。*1 当時の気持ちがよくわかるコラですね…

それから一年。カタリナ彗星も年末から固定撮影では撮っていて、星座の中でそれとわかる程度には写っているのに満足しようとしていたのですが、しようとしていただけでした。


カタリナ彗星とアークトゥルス (2016/1/3 04:35)
固定撮影で撮ったカタリナ彗星 (2016/1/3 04:35)
OLYMPUS OM-D E-M5, ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0, 100mm, ISO 2000, 1.6s x 8枚
Lightroom CC, GIMP 2.9 で画像処理, フルサイズ換算400mm相当にトリミング

やはり不満があって、というか、積年の不満の圧力がカタリナ彗星を口実に赤道儀購入へと背中をグイグイ押している状態だったのです。

ポータブル赤道儀(ポタ赤)を選んだのには理由があります。

まず第一に、大きな機材は稼働率を下げかねないということ。ベランダでの使用がメインとはいえ、気軽に持ち出せないと撮影が億劫になってしまい、年に何度かしか使わないなどというもったいないことになりかねません。

使わない時には分解して押し入れに保管みたいなことではダメで「いつも部屋の隅に転がってる」ぐらいの勢いでなくては気軽に扱えません。しかし、自宅の狭い部屋では大きな赤道儀と専用の大きな三脚をそんなふうには置けそうにありません。

また、光害の激しい横浜の空でどこまで露出時間を伸ばせるか、伸ばして意味があるのかわからないというのも理由の一つ。横浜での撮影を断念せざるをえなかったとしても、ポタ赤なら遠征用に使えます。むしろ、車を持っていない僕の場合、交通手段は電車と徒歩になるのでポタ赤しかありえません。

仮に横浜の空でも長時間露出が有効だとして、長時間露出には正確な極軸合わせが必要です。しかし自宅のベランダは南向きで北極星が見えません。ドリフト法など北極星が見えない場所でできる極軸合わせの方法はありますが、極軸望遠鏡を使う方法に比べると手間や時間がどのくらいかかるか未知数でした。

ベランダでの極軸合わせがあまりに大変なら、遠征とは言わないまでも近所の公園などで撮影することになりますから、徒歩で数百メートル苦労せずに持ち運べるサイズと重量の赤道儀となると、ポタ赤か小型赤道儀ということになります。

そしてこれらの懸念事項がすべて杞憂に終わってベランダでも本格的な天体撮影ができそうなことがわかったら、後からもっと大きな赤道儀を買うことになるかもしれません。ポタ赤ならその後も遠征用のサブ機として活用できます。

まとめると、こんな感じです。

  • 使わない時に邪魔にならず持ち運びが楽。
  • 横浜の空で使い物にならなくても田舎に持っていけば使える。
  • 意外と使えて後で本格的な赤道儀を買うことになっても遠征用に使える。

要は、ポタ赤ならどう転んでもつぶしが効く、ということ。

そんなわけで、ポタ赤の中ではコストパフォーマンスが高く、一応望遠鏡も載せることができる機種ということで、スカイメモSと専用オプション一式を購入しました。

スカイメモS 本体 34,487円
スカイメモS用微動雲台 9,990円
スカイメモS用微動台座&アリガタプレート 10,190円
スカイメモS用バランスウエイト 7,220円
合計 61,887円

価格は2016年1月時点の価格です。3万円台で安いと思っていましたが、結局小型赤道儀並の値段になってしまいました。でもユニテックの SWAT シリーズに比べれば…

まあ、往年の名機スカイメモの新機種だから悪いものではないだろう、と思っていたのですが実はこれ、Sky-Watcher の Star AdventurerOEM なんですね。これは後から知りました…

そんなスカイメモSですが、ポチった翌日にもう届きました。しかし早速試したいのに風邪ひきで外に出れずしばらくおあずけ状態が続きます。(つづく)

Kenko ポータブル赤道儀 スカイメモS レッド 455173

Kenko ポータブル赤道儀 スカイメモS レッド 455173

続き:

*1:画像の元ネタは『みやぎ県政だより』2010年12月号 特集 薬物乱用は「ダメ。ゼッタイ。

はじめに

このブログでは、デジタルカメラと小型赤道儀と小型望遠鏡を使った天体撮影をテーマに、日々の成果、機材、撮影技術、画像処理、そして天体そのものについて、気が向くままに書いていこうと思います。

車も持たずアウトドアそのものも苦手なタチなので、もっぱら横浜市内のマンションのベランダから撮影しています。デジタル技術の進歩のおかげで、最近では手間暇を惜しまなければ街の中からでもこんな写真が撮れます。


馬頭星雲 (2017/1/4 23:03)

ばら星雲 (2017/2/2 22:05)

M82, M81 (2016/12/30 02:13)

M65, M66, NGC3628 (2016/12/8 04:17)

どの写真も撮影に30分〜1時間、PCでの画像処理にも同じくらい時間をかけています。使用機材・ソフトウェアはすべて以下のようなものです。

この他オートガイダーや光害カットフィルターも使っていますが、そのあたりはまたいずれ。

本格的に天体撮影を趣味にしている人から見ると、画質は荒いし露光も不足気味で微妙な出来栄えかと思いますが、それでも子供の頃にわくわくしながら読んだ、藤井旭『全天 星雲星団ガイドブック』(誠文堂新光社)に載っていた写真と同程度かそれ以上ではあるので、僕はそこそこ満足しています。

機材についても、カメラがキヤノン製でないとか、この焦点距離で撮影するのにポータブル赤道儀はないだろうとか、いろいろツッコミどころはあるかと思いますが、都市部で光害がひどい場所での撮影なので、真っ当な機材をいきなり揃えても無駄になるのが怖くて、元々持っていたカメラ機材を流用してどこまで撮れるかを、固定撮影から始めて少しずつ手探りでステップアップしていった結果こうなりました。

そのあたりの経緯についても、少しずつ書いていこうと思います。