Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

M5 (2017/3/19)

昨夜は22時頃から晴れるという予報だったのですが、19時頃には星がほとんど見えなかったこともありあまり期待もせず、体調も悪かったので寝てしまいました。しかし深夜0時過ぎに目がさめて、渋々ベランダから外を見ると空は晴れ。木星が南中して、南東の空低くオレンジ色の半月が出ています。

月の光が淡く拡がっていて透明度の悪そうな空でしたが、とりあえず機材を組み立てて望遠鏡を木星に向けてみると、少しかすみがかってはいるもののシーイングは悪くなく、大赤斑もはっきり見えていました。せっかくなので木星を撮ってから極軸を合わせ。

極軸合わせには苦戦して、方位調整を追い込んだと思って最後の微調整をしようとネジを回すとカクンとズレてしまいまた追い込みなおし、ということを繰り返してしまい、納得いくところまで追い込むのに1時間以上かかってしまいました。

元々 M104 ソンブレロ銀河と M53 を直焦で撮ってみよう思っていたのですが、M104 はもうだいぶ西に傾いていたし、M53 も撮り終わる前に天井にぶつかりそうだったので、M5 を撮ることにしました。月に近くてあまり綺麗に写らないとは思ったのですが、直焦での球状星団の写りを見ておきたかったので。

月明かりで空の背景が明るく肉眼では星がよく見えず、スピカからヘゼを経由しておとめの足を伝ってという遠回りのやり方での導入に手間取り、撮影開始は3時半。撮り始めるとまた極軸がずれていたのでその場で微調整して再開。なんとか薄明前に撮影終了。

背景が明るいので露出は少し減らして 4 分にしました。光害カットフィルターは無し。オートガイドの調子はまあまあで RMS ±1.7 秒前後。極軸誤差による赤緯のズレは 4 分間で 2 秒程度。結果は…

M5 (2017/3/20 03:48)
M5 (2017/3/20 03:48)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6)
ISO 200, 240s x 10枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1200mm相当にトリミング

どうでしょう?意外と見れる仕上がりのような?等倍で見るとガイドエラーの影響なのか星像がややぼやけて見え、望遠鏡の解像度を生かしきれてないように思われますが…

でも「志を低く」をモットーにしている僕の基準は「iPad で表示して十分シャープに見えるなら OK」というものなので、これなら OK かな、と。

スカイメモS での直焦撮影(480mm)は、5 分程度の露出ならなんとか使えそうです。とはいえ今の極軸合わせの精度ではギリギリで、光害カットフィルターを使って10分以上の露出ができるかというと厳しいです。しかし極軸をこれ以上追い込むのは微動雲台の精度的に難しい気がします。

最後に最初に撮った木星の写真を。

木星と衛星 (2017/3/20 01:06)
木星と衛星 (2017/3/20 01:06)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 2x TELECONVERTER EC-20
木星: ISO 200, 1/60, 衛星: 1/2s を合成
Lightroom CC, Photoshop CC で画像処理, トリミング

大赤斑がなんとか見えています。衛星は左からカリスト、イオ、エウロパ、ガニメデです。

AstroBin に登録してみた

AstroBin という天体写真に特化した写真共有サービスにアカウントを作ってみました。

今まで知らなかったのですが、NGC 天体の名前で画像検索していて偶然見つけました。海外のサービスですが、UI は日本語にローカライズされています。一部翻訳が怪しい部分もありますが、未だに日本語化されていない flickr に比べれば…

AstroBin の面白いところは、まずアップロードされている写真に機材や使用ソフトウェアの情報が載っているところ。撮影鏡とカメラだけでなく、ガイド鏡とガイドカメラ、赤道儀、DeepSkyStacker 等の画像処理ソフトなどがメタデータ化されていることです。*1

そのため、画像検索で使用機材を検索条件に含めたり、特定の機材で撮られた写真の一覧を表示したりすることも簡単にできるようになっています。たとえば Star Adventurer (スカイメモS の OEM 元の SkyWatcher 製ポタ赤)を使って撮影された写真の一覧はこんなふうに参照できます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/astrobin-20170318/skywatcher-star-adventurer.png

もうひとつ面白いのは、写真をアップロードすると写っている天体の名前を表示するオーバーレイや写野を示した星図を自動で作ってくれること。たとえばしし座の三つ子銀河の写真をアップロードすると自動的にこんな表示が出るようになります(マウスを写真の上に置いた時の表示)。

https://rna.sakura.ne.jp/share/astrobin-20170318/astrometry-overlay.png

自分では写っているのに気づいてなかったような天体まで検出されています。このあたりの機能は Astrometry.net のサービスを使用しているようです。

また、一度アップした写真を画像処理をやりなおして再アップする際に、以前にアップした写真の修正版として上書きアップロード(?)できるようです。

いろいろかゆいところに手の届くサービスですが、海外サービスということでフォーラムは英語だし、日本人ユーザーが見当たりません。サイトの日本語訳に変ないたずらがあったりするので *2 少なくとも日本の文化を理解しているユーザーが関わっているはずなのですが、みんな英語使ってるんで僕が気付いてないだけかも。

あと、アップした画像をブログ等に簡単に貼る方法がないような。「共有」では 130 ピクセル角のサムネイルしか貼れないんですよね。

まあ、なにはともあれ一度登録して使ってみようと登録して写真を2枚アップロードしてみました。

もっとも無料ではトータルで10枚しかアップロードできなくて、あくまで試用アカウントという感じですが。年会費 $18 の Lite プランが年12枚まで、年会費 $36 の Premium プランが無制限ということで、使いでがありそうなら Premium プランかなぁと思っています。

*1:ただしメタデータをいいかげんにつけてる人も結構いるようで機材名入力の補完候補に同じ機材と思われる名前が微妙に違った名前で複数登録されていたりもしています。

*2:ユーザー登録が「丁度一年前」だとこんな表示が出たりとか…
https://rna.sakura.ne.jp/share/astrobin-20170318/astrobin-profile-just-one-year-ago.png

オートガイダー導入記 (7): 屋外での撮影のテスト

前回の続きです。

ベランダの天井に邪魔されずに天頂付近の天体を撮影するには屋外に機材を持ちだして撮るしかありません。オートガイド撮影となると、通常の機材に加えてオートガイダーとノート PC も持ちださなくてはなりません。荷物が増えたり設置の手間が増えることもさることながら、ノート PC が必要になることでバッテリー容量に撮影時間が制約されるのが問題になります。

今時のノート PC のバッテリーは通常使用で 7 時間くらいは持続しますが、使うのは 6 年前の機種ですし、PHD2 がガイド中にどのくらい電力を食うのかわかりませんし、またオートガイダーの電源も USB 経由でノート PC から供給することもあるので、持続時間は通常よりは短いはず。

赤道儀自体の電源については、スカイメモS の場合は消費電力がとてつもなく低くて三ヶ月くらいは電池交換不要なので気にしたことがありません。電源は単3電池4本ですから予備も気軽に用意できます。

まあ、ダメならダメで仕方がないのでとにかくやってみようと、昨年11月5日と7日にまた近所の駐車場で撮影しました。持って行ったノート PC は Lenovo ThinkPad X201s (Cor i7 L620)です。バッテリーは 6 セルバッテリーを装着しました。

5日のターゲットはアンドロメダ座の大銀河 M31 と、さんかく座の銀河 M33 と M45 プレアデス星団です。M33 と M45 を選んだのはベランダから撮影した時のカブリが本当にベランダの天井の照り返しのせいなのかを確認する意味もあります。

M31, M33, M45 の順で 90 秒露出で 10 枚ずつ撮影したのですが、初手から極軸調整に手間取ったり、途中で駐車場に面したアパートの住人のおじいさんから声をかけられたり、なぜかガイドが暴走しておたおたしてるうちに機材を動かしてしまって極軸の再調整が必要になったりして時間をロス。

結局 M45 の撮影途中の2時間40分でノート PC のバッテリー警告が出て時間切れ。ちなみに途中でピント位置がずれていたようで M33 は若干ピンぼけ、M45 か完全にピンぼけでした。

M31 (2016/11/05 22:32)
M31 (2016/11/05 22:32)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 1000, 90s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算597mm相当にトリミング

M31 はそこそこ雰囲気のある写りになりましたが、外側の淡いところがあまり出ていません。90 秒では露出不足のようです。

M33 (2016/11/05 23:06)
M33 (2016/11/05 23:06)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 1000, 90s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M33 は先に述べたようにちょっとピンぼけ。でもそれ以上に星像が菱型にくずれているのが気になります。

LPS-D1 QRO を使うとこの傾向があって、実際ライブビューで見ても星像が菱型に見えてピント合わせに苦労するのです。これは後に不良品と判明して最終的に QRO でない無印の LPS-D1 と交換してもらいました。

ベランダで撮った時にでた画面下部のカブリについては今回は出なかったのですが、かわりに画面上部に少々カブリが… 今度は街灯の迷光?よくわかりません。

この日は他にもフラット撮影用に使う iPad を忘れてフラットが撮れず、過去のフラットで代用することになったり、散々でした。

ということで諸々反省した上で翌々日も出動。今度は ThinkPad の電力設定を省電力側に倒して再挑戦。(つづく)

続き:

3月後半の撮影計画

今月は28日が新月。今までだいたい晴れた日の当日に何を撮るか決めていたけど、もう少し計画的に撮影したほうがバタバタしなくていいんじゃないかと思って今月後半から月末にかけて撮れそうな天体(DSO)をリストアップしてみました。

撮れそうな時間帯と空の向きでグループ化しています。「南天」は要は南向きのベランダから撮れるもの。「北天/天頂」は外出しないと撮れないもの。

* 付きはノータッチ追尾で撮影済み。
** 付きはオートガイダー導入後撮影済み。

19:00 - 21:00

南天

いっかくじゅう座:

  • NGC2237-9 ばら星雲 (散光星雲) **
  • IC2177 わし星雲 (散光星雲) **

おおいぬ座:

とも座:

うみへび座:

かに座:

このへんは一通り撮っています。直焦(480mm(換算960mm))で撮りたいものも特にないかな… 撮りたいってほどじゃないけど M67 とか撮ってみてもいいかもしれない。

北天/天頂

ぎょしゃ座:

ふたご座:

ぎょしゃ座散開星団はシーズンではないけどまだギリギリ撮れそう。ここは以前望遠レンズ(100mm (換算200mm))では撮影しましたが、望遠鏡ではまだ撮ってません。でもカメラレンズで三つ一緒に撮ったほうが綺麗かな…

勾玉星雲はこの時間帯では厳しいかな?

M35 は以前撮った時はガイドが安定しなかったり、光害カットフィルターの不具合で星像が乱れ気味だったのでいつか再チャレンジしてみたいけど優先度は低め。

21:00 - 0:00

南天

しし座:

  • M105 (銀河) **
  • M96 (銀河) **
  • M95 (銀河) **
  • M66 三つ子銀河 (銀河) **
  • M65 三つ子銀河 (銀河) **
  • NGC3628 三つ子銀河 (銀河) **

うみへび座:

  • NGC3242 木星状星雲 (惑星状星雲)

木星状星雲は視直径が木星とほぼ同じ、ということは直焦でも厳しいかな。M57 の半分くらいだし… でも証拠写真程度でも一度撮ってみたい。

北天/天頂

おおぐま座:

  • M81 (銀河) **
  • M82 (銀河) **
  • M108 (銀河) **
  • M97 (惑星状星雲) **

後日書くつもりですが、ここは昨年末に撮りました。その時はレデューサー使用(288mm (換算576mm))で M81 と M82、M108 と M97、それぞれをツーショットで撮ったので今度は直焦で個別に撮ってみたい。けど優先度は低め。

0:00 - 3:00

南天

おとめ座:

  • M49 (銀河)
  • M85 (銀河)
  • M87 (銀河)
  • M49 (銀河)
  • M58 (銀河)
  • M98 (銀河) *
  • M104 ソンブレロ銀河 (銀河) *
  • M59 (銀河) *
  • M60 (銀河) *
  • M99 (銀河) **
  • M100 (銀河) **
  • M84 マルカリアンの銀河鎖 (銀河) **
  • M86 マルカリアンの銀河鎖 (銀河) **

かみのけ座:

うみへび座:

ケンタウルス座:

へび座:

おとめ座銀河団、まだ撮ってないの結構ありますね。M58 と M87 は過去撮った写真に写ってはいるのだけど、写野の周辺で歪んでいるのでちゃんと撮りたい。渦巻銀河の M58 が最優先かな。他は楕円銀河で面白みに欠けるので優先度は低め。

M60 は楕円銀河だけど子持ちでかわいいので直焦で撮ってみたい。M59 も一緒に写るはず。

ω星団は、はたして見えるのかどうか… 一応ベランダから遠くまで見える場所があってそこを通るはずなのですが、高度は 5 度以下。無理かなぁ。

北天/天頂

りょうけん座:

  • M106 (銀河)
  • M94 (銀河)
  • M63 ひまわり銀河 (銀河)
  • M3 (球状星団)
  • M51 子持ち銀河 (銀河)

おおぐま座:

  • M109 (銀河)
  • M40 (恒星)
  • M101 回転花火銀河 (銀河)

このへんは全く未開拓。この時間に外で撮れるチャンスがあれば是非。大きなフェイスオン銀河 M101、やはり大きくて形が面白い M106 は最優先。

子持ちのフェイスオン銀河 M51 と細かい模様が綺麗な M63 は小さめなので直焦に慣れたら狙ってみたい。でも先に 288mm で撮るかな…

M40 は最後の最後でいいでしょう (´・ω・`)

3:00 - 4:30

南天

へびつかい座:

さそり座:

夜明け前の短い時間なので厳選したいところ。でも球状星団ばっかりですね…

M14 と M19 が大きめで微光星が多いので直焦でどれだけ綺麗に撮れるか試してみたい。他は周囲の天の川の星がにぎやかな M62 と、集中度が低くて星の粒が見やすい M107 が気になる。

北天/天頂

ヘルクレス座:

M13 は北天最大の球状星団ですが未だに見たことがありません。大きいから 288mm でもいいかな? M92 も忘れずに撮りたいところ。

何等星まで写る?

いつも撮っている天体写真に何等星ぐらいまで写っているのか気になったので調べてみました。

春の銀河いろいろ (2017/3/4)」で撮った M91 と M88 のツーショット写真の M88 付近のギリギリ見えている星の等級を Stellarium で調べてみたところ…

https://rna.sakura.ne.jp/share/M91+M88-P3059656-65-4_3.jpg
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 10枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, 等倍切り出し

16.45 等まで確認できました。光害で背景の明るさが 50% くらいになっているので本来はもっと暗い星まで写るはずなのでしょうけど、それでも肉眼では 3 等星が見えるか見えないかの空なので、意外と暗い星まで写っているという気もします。

ちなみに Stellarium のデフォルトの状態では暗い星は表示されません。設定画面の [ツール] タブの「星表のアップデート」グループにある [カタログの取得] ボタンを 9/9 になるまでクリックして星表を全部ダウンロードすると 18 等まで表示できるようになります。

https://rna.sakura.ne.jp/share/stellarium-settings-tool.png

と言っても全ての星のデータがあるわけではないようで、写真に写っていても表示されない星や、表示はされているもののクリックしてもデータが表示されない星もあります。

オートガイダー導入記 (6): テスト撮影

前回の続きです。

その後、新月が来るのが待てなくてまだ24日にオートガイダーを使ったテスト撮影を実施。オートガイダーと一緒に購入した光害カットフィルター IDAS LPS-D1 QRO のテストも兼ねています。*1

この日は M33、プレアデス星団(M45)、オリオン座の大星雲(M42, M43)、そして馬頭星雲を撮りました。一般に光害カットフィルターを使うと光量が半分くらいに落ちるので露出時間は倍必要なのですが、まだ 2 分以上の露出を成功させる自信がなくて 90 秒露出です。

まず前回と比較できる馬頭星雲から。

馬頭星雲 (2016/10/25 01:20)
馬頭星雲 (2016/10/25 01:20)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 1000, 90s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

だいぶポニーヘッドが見えてきました。でもまだクッキリ浮かび上がるような写りにはなりません。光量は前回より少ないのですがコントラストが上がって画像処理後はむしろ明るく写っています。光害カットフィルターの効果が出ていると言っていいでしょう。

こちらはプレアデス星団

M45 (2016/10/25 00:00)
M45 (2016/10/25 00:00)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 1000, 90s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算441mm相当にトリミング

青いガスがそこそこ見えています。ちなみに写真下の方にカブリが激しく出ていたのですが、Lightroom の段階フィルターでごまかしています… おそらくベランダの天井からの照り返しが迷光になってカブったものと思われます。露出時間が長くなるとこういうことにも気を使わないといけなくなります。

こちらはオリオン座の大星雲(M42, M43)。

M42 (2016/10/25 00:56)
M42 (2016/10/25 00:56)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 1000, 90s x 7枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

かなり淡いところまで写っていますが、中心部は白飛びしてしまっています。綺麗に撮るには多段階露光して HDR 処理とかしないといけませんね…

馬頭星雲もそうでしたが、LPS-D1 QRO を使うといつもは紫がかった色に写る星雲が赤っぽく写ります。背景のカラーバランスをニュートラルにすると青成分が少し抜けてしまうようです。

最後は M33 です。

M33 (2016/10/24 23:15)
M33 (2016/10/24 23:15)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1 QRO
ISO 1000, 90s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

夏に20秒露出で撮ったものに比べるとだいぶハッキリしてきました。でもまだまだ微妙ですね。しかし夏の写真ではわからなった M33 の中にあるピンク色の散光星雲が一部見えてきています。ちなみに M33 の写真もベランダの天井の照り返しによると思われるカブリが出ていましたがごまかしてあります。

ということで、光害カットフィルターは赤い星雲に対しては特に効果があることがわかりました。露出時間が長くなるのもオートガイダーを使えばなんとかなりそうです。しかし天頂付近や北天の天体を撮るにはオートガイダーを制御するためのノートPCを野外に持ちださなくてはなりません。(つづく)

続き:

*1:実は20日にもうお座の銀河 M74 を撮ったのですが、ガイドが安定せず 8 枚中 4 枚しか使えるカットが確保できず失敗。

オートガイダー導入記 (5): ファーストライト

前回の続きです。

オートガイダーにファーストライトという言葉を使うものなのかどうかわかりませんが、とにかく最初のオートガイド撮影をするべく、まずはキャリブレーションです。PHD2 の画面には既に星が映っています。カメラ露出時間の設定は 0.2 秒で、肉眼では見えないような星が視野にいくつも入ってきています。

キャリブレーション赤道儀のモーターを動かした時にオートガイダーの映像上でどの方向にどれだけ星が動くかを測定する作業です。これによってガイド中に星がズレた時にモーターをどの方向にどれだけ回すかが決定できるようになります。

Shft + ガイド開始ボタンクリックでキャリブレーションを開始すると、画面の適当な星がガイド星に選ばれて画面下のステータスバーに West step がカウントアップしていくのですが、途中で止まってしまい「赤経(RA)キャリブレーション失敗: ガイド星が十分に動きません」というエラーが出てしまいます。

何度やっても同じです。ガイド星自体は動いていますし、スカイメモS の方は PHD2 の信号に反応しているらしく、キャリブレーション中はコントロールボタンのバックライトが小刻みに点滅しています。

解説サイトで、ノイズがガイド星に選ばれてしまうせいでガイド星が動かなくてエラーになることがあると読んだのを思い出して、手動でガイド星を選択したのですが、ダメ。手動で選んだのもノイズなのか?とダークライブラリ*1 を作成してやりなおしたけどやはりダメ。

よく考えたらキャリブレーション中にガイド星が少しは動いていたのだからノイズなわけがないのですが、この時は気が付きませんでした…

極軸が合ってないのが悪いのかと思って PHD2 のツールメニューからドリフトアライメントを選択したら「ドリフトアライメントを開始する前にキャリブレーションをして下さい。」のエラー。これも考えれば当たり前です。ドリフトアライメントでは実際に1軸ガイドを行うわけですから。

改めてマニュアルをよく読むと、キャリブレーションステップサイズというパラメータの設定が必要になる場合があるとのこと。これはキャリブレーションの1ステップでどれだけモーターを回すかを決めるパラメータでしょうか。これが小さすぎるとキャリブレーション中に星が十分動かなくてエラーになるようです。

キャリブレーションステップサイズを設定するには、まず怖くて触りづらい脳みそアイコンを押して設定画面を開きます。PHD2 の設定画面を出すボタンのアイコンは歯車ではなくてなぜか脳みそです。それもカラーの。

https://rna.sakura.ne.jp/share/phd2-20170313/PHD2-brain-button.png

設定画面の [ガイド] タブを開いて、

https://rna.sakura.ne.jp/share/phd2-20170313/PHD2-settings-guide.png

Calibration グループのキャリブレーションステップ入力欄横の [計算...] ボタンをクリックします。するとこんなダイアログが開きます。

https://rna.sakura.ne.jp/share/phd2-20170313/PHD2-settings-guide-calc.png

ここでガイドスコープの焦点距離とオートガイダーのセンサーのピクセルサイズを入力すると(他の欄はデフォルト値のままだったと思う) 適切なキャリブレーションステップの値が計算されて [OK] ボタンを押すと先ほどの入力欄に入力されます。

QHYCCD miniGuideScope + QHY5L-II-M の場合は、ガイドスコープの焦点距離が 130mm, センサーのピクセルサイズは 3.75μm で、キャリブレーションステップサイズは 1700 と計算されました。

この値で設定画面も [OK] してキャリブレーションをやりなおすと、今度は West step が終わると East step に進むようになりました!が、その後 North step とか言い出してエラーに。スカイメモS は赤緯軸ガイドできないからそこはキャリブレーションしようがないのですが…

どうも初期設定で何か間違えたのか赤緯軸がないことが PHD2 に伝わってなかったようです。設定をどう直せばいいのかマニュアルを見てもなかなかわからなかったのですが、結局脳みそボタンの設定画面の [Algorithms] タブの赤緯グループの最初のドロップダウンメニューを [無し] に、赤緯(Dec)ガイドモードを [Off] に設定すればよいようです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/phd2-20170313/PHD2-settings-algorithms.png

これで無事キャリブレーションが完了してガイドが開始するようになりました。オートガイダー接続から 2 時間かかりましたが、ここから先は順調に進みました。ドリフトアライメントは 30 分くらいで完了。

テスト撮影は、とりあえずファインダーなしで導入しやすい天体ということで、西の空の高くにあったアルタイルをターゲットにしました。オートガイダーを電子ファインダーとして使うつもりでしたが、視野が狭すぎて使えないことがわかったので…

レデューサーありの 288mm (フルサイズ換算 576mm) と、なしの 480mm (フルサイズ換算 960mm) で 60 秒露出で撮影。288mm は 4 枚中 3 枚は星像がほぼ点像に、480mm はどれも赤経方向に少しブレていてなんとか使えそうなのが 5 枚中 2 枚という結果に。288mm の方は 120 秒露出も試してみましたが贅沢を言わなければ使えそう?という感じ。*2

PHD2 のガイドグラフを見ると RMS エラーが ±2 秒ぐらい、ピークは ±4 秒くらい。心配した赤緯方向のズレは極軸をきちんと合わせてあればこのくらいの露出時間ではほとんど問題にならないようです。

というわけで 288mm は使えそうという結論になったところで、せっかくだからと深夜に馬頭星雲を撮ってみることにしました。満月が出ていて条件はかなり悪いのですが 60 秒露出でチャレンジ。前回の倍の露出時間です。結果は…

馬頭星雲 (2016/10/16 02:37)
馬頭星雲 (2016/10/16 02:37)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 800, 60s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

前回よりはマシでポニーヘッドも見えてきましたが、まだまだ露出が足りませんね。月明かりで背景が明るいせいであまりきつい強調処理もかけられませんでした。この後朝方までかかって M42 や M1 も撮ったのですが寝不足のせいでミスを連発。新月が近付いた頃に再チャレンジすることを誓って撤収しました。(つづく)

続き:

*1:オートガイダーのセンサーのダークフレームを露出時間毎に記録したもの。これを作っておくと PHD2 がノイズキャンセルに使用する。

*2:どうもこの時はコンディションがあまり良くなかったようで、その後のテストでは 480mm でも使えそうな感触を得ています。参照: 「スカイメモSの追尾精度の限界は? - Deep Sky Memories」。