Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

AutoStakkert!3 のパラメータを試す

イケてない月面写真がなんでイケてないのか、なんとかイケてる風にできないか、と悩んでいます。シーイングが悪いからしょうがない、で済む話なのか、ということですね。

月面写真のスタックには AutoStakkert!3 (AS!3)を使っていますが、これが色々設定パラメータの多いソフトで、なるべくデフォルトをいじらず雰囲気で微調整しながら使ってきたのですが、各パラメータをいじるとどうなるかを試してみました。

今回調整するパラメータは以前から気になっていた以下の3つ。

  • Quality Estimator: Normal range: Local/Global
  • Reference Frame: Double Stack Reference: ON/OFF
  • AP Size: 24/48/104/200

ベースラインとなる画像はこの画像。

アルプス谷 (2018/12/15 20:31)
アルプス谷 (2018/12/15 20:31)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F36.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/60s x 1000/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

15日に撮ったアルプス谷です。AS!3 の設定は以下の通り(強調は今回試す設定)。

  • Image Stabilization: Surface
    • Improved Tracking: OFF
  • Quality Estimator: Local
  • Reference Frame:
    • Double Stack Reference: OFF
    • Autosize (quality based): ON
  • AP Size: 48
  • Auto AP:
    • Min Bright 5

画像は RegiStax 6 のウェーブレット処理と Lightroom の階調と外観の調整が入った一通り仕上げた状態のもの。以下仕上げ処理は同じで AS!3 のパラメータのみ変えた画像を見ていきます。

Quality Estimator: Global

アルプス谷 (2018/12/15 20:31) (QE Global)
アルプス谷 (2018/12/15 20:31) (QE Global)

これは悪化してますね… いわゆる継ぎ目破綻らしきぶよぶよした模様があちこちに発生しています。

「Quality Estimator」は動画からスタックに使うフレームを選別する際のフレームの品質を評価する方法を決めるパラメータです。今回は3000フレーム中1000フレームをスタックしますが、この時、AS!3 は評価値の高い方から順に1000フレームを選びます。

「Normal range」の「Local」は alignment point (AP) の周辺を見て評価、「Global」はフレーム全体を見て評価、ということで、「Global」の方が視野が広いってことだからいいんじゃないの?と思ったのですが…

Analyse を実行すると動画のフレームは評価値順にソートされますが、*1 「Global」で Analyse 後に動画を再生すると明らかにぼやけたフレームがちょいちょい最初の方に混じってるので、評価に失敗しているのがわかります。

Double Stack Reference: ON

アルプス谷 (2018/12/15 20:31) (RF Double Stack)
アルプス谷 (2018/12/15 20:31) (RF Double Stack)

これは違いがほとんどわかりませんね。良くなったとも悪くなったとも言い難い…

「Double Stack Reference」は AutoStakkert! 2 の「Last Stack is Reference」に相当するものだと思いますが、これは AP を揃える位置の基準となるフレームに、一度スタックした画像を使うというオプションです。

なのでこれを有効にすると2回スタックを実行するため処理時間が長くなってしまうのですが、この様子だとその価値はなさそうだなと…

AP Size: 24

アルプス谷 (2018/12/15 20:31) (AP Size 24)
アルプス谷 (2018/12/15 20:31) (AP Size 24)

なんじゃこりゃあ!?明らかに悪化してますね。細かい破綻が全面に広がっています。

「AP Size」は Alignment Point のサイズです(そのまんま)。AS!3 は Alignment Point の範囲を見てフレーム間で同じ場所を探して位置を合わせてスタックするのですが、一般に「AP Size」が小さすぎると追いきれなくて破綻してしまうようです。

小さい方がディテールを追いかけて正確にスタックしてくれるかと思ったのですがそうじゃないんですね。

AP Size: 104

アルプス谷 (2018/12/15 20:31) (AP Size 104)
アルプス谷 (2018/12/15 20:31) (AP Size 104)

おっ、これはいいですよ?アルプス谷の東の端の周辺のザラザラしたところが浮かび上がってきました。

全体を見るとベースライン(AP Size 48)に比べてディテールが落ちているようにも見えますが、よく見るとベースラインの画像のディテールだと思っていたところ、継ぎ目破綻っぽいのが結構ありますね…

AP Size: 200

アルプス谷 (2018/12/15 20:31) (AP Size 200)
アルプス谷 (2018/12/15 20:31) (AP Size 200)

AP Size: 104 が良かったので、ひょっとしてもっと大きい方が良いのでは?と思ってやってみましたが、ちょっとぼやけてしまいました。それでもベースラインよりは良いですね。

まとめ

  • 「Quality Estimator」の「Global」は悪化
  • 「Double Stack Reference」は効果なし
  • 「AP Size」は大きめが吉

AP Size の最適値はたぶん拡大率やシンチレーションの揺れ具合でも変わってくると思いますが小さすぎるよりは大きすぎる方がマシ、という傾向はありそうです。

でも一番大事なのは「元がダメなら何やってもダメ」ということですかね… AP Size: 104 でもボケボケですよね。ここからさらに追い込んでもあまり期待できなさそう。日本の冬のシーイングではこんなものなのかなぁ…

*1:フレームビューウィンドウ左上の Frames のラベルをクリックすると時系列順と切り替えられます。