Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

木星タイムラプス

7月16日深夜に撮った大量の木星の撮影データからタイムラプスムービーを作成しました。

撮影時の記録はこちら。

μ180C で惑星を撮り始めて4年目になりますが、16日深夜は過去最高レベルのシーイングが1時間半ぐらい続いていたので、雲が切れてからはADCの調整を除いてほぼぶっ続けで撮影していました。おかげて画像処理が大変だったのですが、これだけデータがあれば木星がぐるぐる回るタイムラプスムービーが作れるのでは?と思いついてしまって、もっと大変なことになってしまいました…

作業に5日かけてやっとできました。若干粗い部分もありますが、こちらになります。

木星 (2021/7/17 1:42:24-2:57:36)
木星 (2021/7/17 1:42:24-2:57:36)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 276), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 360) / 露出 1/60s をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.0.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic, ffmpeg 4.2.4, mp4fpsmod 0.26 で画像処理

どうでしょう?ちょっと左側のリムの処理がイマイチですが… 600倍速で約7.5秒と短い動画ですが、むちゃくちゃ手間がかかりました。

まず、実際の撮影ではモノクロカメラとカラーカメラを切り替えながら撮影しているので、元データは L/RGB それぞれ 3〜4 分間隔で撮影した動画になります。これをそれぞれ AutoStackkert!3 で stack した L と RGB の画像を、WinJUPOS でそれぞれ de-rotation して、wavelet 処理して、Photosho で LRGB 合成して、Lightroom で微調整して1枚の写真に仕上げています。

いつもは stack した L 画像3コマを撮影時間の中心時刻に reference time を合わせて de-rotation し、RGB 同様に3コマからから L と同じ reference time で de-rotation しています。3コマの選択を1コマずつずらしていって、44枚の写真ができるはずだったのですが、試しに7枚の写真でタイムラプスを作ってみると動きが粗くてイマイチ…

そこで ffmpeg のフレーム補完機能(minterpolate)を使って中割りを自動生成してみたのですが、イオの公転はそれっぽく補完されたものの、木星の模様が単なる自転による動きではない謎の動きをするようになってしまって使えませんでした。パラメータを色々試したのですがどうしてもダメ。

結局 WinJUPOS の de-rotation で reference time をずらしていって中割り画像を生成することにしました。600倍速25fpsで再生することを目標に、0.4分(24秒)毎に1枚生成してL/RGB各189枚。これをLRGB合成して、リムの明るさの変動を調整して、衛星を消して木星だけのフレームを生成して動画化。

WinJUPOS は衛星を de-rotation できないので、衛星だけの画像を別に用意し ffmpeg でフレーム補完した動画を作成して、最後に ffmpeg木星だけの動画にクロマキー合成して仕上げました。

タイムラプスと言っても正確に等間隔で撮影できていないので、de-rotation で等間隔のフレームを生成できる木星本体はともかく、衛星の方はそのままではタイムラプスにできませんが、mp4fpsmod というツールを使ってフレームのタイムコードを指定して可変fpsの動画を生成し、それを ffmpeg のフレーム補完で25fpsの動画に変換しました。

なお、衛星の軌道がうまく補完されるように、衛星だけの画像は少し大きめにトリミングしたものを使っていて、補完後に目標のサイズにトリミングした動画を生成しています。そうしないとフレームの外に飛び出た衛星の画像と飛び出る前の衛星の画像の間がうまく補完できないので。

作業はなるべく自動化したかったのですが、WinJUPOS は自動化機能がなく全部手作業、RegiStax6 はバッチ機能があるためそれを活用しましたが、フレームの輝度(コントラスト)が時間と共に変わってしまうため、3回くらいに分けてコントラストを調整しながら処理しました。

Photoshop でのLRGB合成はアクションの記録を活用して省力化しました。本当はスクリプトで完全自動処理と行きたかったのですが、雛形になる Photoshop が生成したスクリプトが全く理解できない代物だったので今回は諦めました。適当に加工すれば使えなくはなさそうだったのですが、かなり試行錯誤が必要そうだったのと、理解してないコードを使うのは抵抗があったので…

リムの輝度の変化の処理は、明るくなった部分についてはマスクするレイヤーを透過率を変えてコピペしていくことでまあまあ処理できたのですが、周期的に発生する暗くなって二重化したリムを持つフレームについては簡単に繰り返せる処理を思いつかなかったのでそのままにしてあります。WinJUPOS の LD value をうまく設定すればそもそもリムの輝度ムラは出ない気もしますが、そのへんはまだ追求していません。

ちなみに例の「こってり」「あっさり」の2種類作って合成するやつは今回はやっていません。Wavelet のパラメータを追い込んで一発でちょうどいい感じになるよう調整しました。

ということで、7.5秒の動画を作るのに延べ10時間くらいかかってしまいました。パペットアニメ『PUI PUI モルカー』のコマ撮り撮影が1日5秒分くらいとのことなので、結構いい勝負ですね…

というわけで、まあ半分CGみたいなものではありますが、あこがれの木星タイムラプスができました。もう一度やれ、と言われてもなかなかできないし、これだけの好条件で連続撮影ができる夜はなかなかないですから、やりようがないかもしれませんね…

あとは自転の位相をずらした画像を並べた疑似3D木星動画とかも作れそう?そのうち作って見るかもしれません。

最後に189フレームの中のベストショットを仕上げた写真を。

木星 (2021/7/17 2:16)
木星 (2021/7/17 2:16)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 276), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 360) / 露出 1/60s x 1500/3000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) をLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.0.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理