あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
さて、新年最初のエントリです。新年一発目がこの話題でいいのかという気はしますが…
1月3日放送開始のテレビアニメ『恋する小惑星(アステロイド)』が年末から天文ファンの間で話題になっていました。
ビクセンやアストロアーツがタイアップする、PVやビジュアルの星空の作画がガチっぽい、ということで話題になっていたので、個人的にはあまり馴染みのないタイプのアニメですが見てみたところ、天文ファン的にかなりガチな作りだったので紹介します。
と、思っていた矢先、HIROPON さん(id:hp2) の検証記事に先を越されてしまいました!
重複する内容も多くなりますが、とりあえず第1話を見て気付いたことなどをまとめます。
ストーリーは回想シーンから始まります。主人公の「みら」は子供時代に夏のキャンプで一人の男の子「あお」と出会います。
いて座でしょうか?明るい星は惑星?と思ったらあおが木星だと言っていました。背後に『星空年鑑2008』が見えているので2008年の星空と思われます。
2008年8月1日の22時頃と当たりをつけて Stellarium で表示した星空がこちら。*1
やはりいて座と木星ですね。しっかり作画しているのがわかります。
あおはみらの名前を聞いてくじら座の変光星ミラと同じ名前だと教えます。
『星空年鑑2008』のページでしょうか。2008年1月22日のミラの極大の記事が出ています。
自分の名前が星の名前だと知って喜ぶみら。あおという名前の星はないのかとみらにたずねられ、そんな名前の星はないとあお。なければつけちゃえばいいんじゃない?とみら。小惑星なら見つけたら自分で名前をつけられるけど、とあお。じゃあそれ見つけよう!とみら。この約束がこの物語のテーマになります。
この星空、やはりガチっぽい作画です。*2
時は変わって高校に入学したみら。お目当てだった天文部は部の統廃合で地質研究会と合併し地学部に。地学部の部室にある望遠鏡が一見してビクセンのポルタとわかります。
ポルタII A80Mf あたりでしょうか。
配信でこれから見る人もいると思いますのでネタバレにならないようにここから先のストーリーは端折ります。内容的にはゆるめの百合アニメでしょうか?個人的には百合は好きですがもっと微妙な距離感(ふたりはプリキュア スプラッシュスターの咲と舞くらいの)が好みかな…
長いアバンが終わってオープニング。ここでも星空が出てきますが、やはりガチですね。
春の夜空ですね。肉眼では3等星がギリギリの横浜で星を見ているので星座は苦手ですが、北斗七星、うしかい座、しし座はすぐわかります。
夕方にみらが西の空の水星を眺めるシーン。
2008年から10年後ぐらいだとすると4月はじめに夕方に水星が見えるのは2016年か2017年です。このあと朝方に金星が見えるという会話があるのですが、それも2016年、2017年が該当します。おひつじ座の星の並びが正確なら2017年でしょうか?
アイキャッチはゆり座、じゃなくてふたご座。
みらが部室で天文誌を広げるシーン。これは『月刊 星ナビ』の誌面でしょうか?
Stella Image 7 の広告が載っています。Stella Image 8 が2017年2月発売なので、劇中はそれより前?と思いましたが、部室にあったバックナンバーの可能性もあります。
これは空のどのあたりかちょっとわかりませんでした。
みらが4月の日没後の南西の空を見るシーン。
HIROPON さんによると4月7日あたりの天文薄明終了時(19:36)であろうとのことです。冬の星座のオリオン座とおおいぬ座ですが、この時間ならまだ見えています。
以下はあおが同じ時間の東の空を見るシーン。
おとめ座とからす座でしょうか。中央の明るい星が木星だとすると、2017年の星空と一致します。
ということで劇中の時間は2017年で確定っぽいです。
今発売中の『月刊 星ナビ』2020年2月号に原作者 Quro さんのインタビューが載っている(p18-21)ということで早速買って読んでみました。
やはりみらの入学は2017年とのこと。原作は『まんがタイムきららキャラット』で連載中ですが、現在は2018年の設定だそうです。原作では『星ナビ』のバックナンバーを参照して話の年月日を決めて描いているとか。作者は元高エネ研(KEK)広報ということもあって記述の正確さにはこだわりがあってそうしているようです。
ということで、アニメでもそのあたりのこだわりを受け継いでいるのでしょう。他にも画面の周辺部に収差がある表現とか、リアリティを盛り上げる工夫が感じられる作品です。こういう作品はなかなかないと思いますので、この手のアニメに興味のない天文ファンの方もぜひ一度見てみるといいのではないでしょうか。