Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

木星、土星、火星 (2020/6/9)

6月9日の深夜に久々に惑星を撮りました。今期はまだ昼の金星以外に惑星を撮っていません。というか木星土星はもう一年ほど撮っていません。この日は薄雲の漂う怪しい天気でしたが、前の日の深夜の関東は最高のシーイングだったそうで、Twitter に東京荻窪天文台③が素晴らしい木星の写真を撮影されていたので、ひょっとして今日も?と思い、無理を押して撮影しました。

結果から言うと、シーイングはダメでした… 最初に木星を撮ったのですが、合焦位置から僅かにずれたところでは激しい川の流れのような気流の乱れが見える状況で、木星面の細部が見えずピント合わせに苦労しました。

結局土星の輪の方がピントを合わせやすいと考えて先に土星を撮り、それから木星を撮り直しました。そして最後に火星を撮りました。どれも薄雲越しかそれに近い状況でゲインは上げ気味、ノイズが多いので5000コマ撮影して3000コマをスタックしています。

撮った順番とは前後しますが木星から。

木星 (2020/6/10 02:32)
木星 (2020/6/10 02:32)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 340) / 露出 1/60s x 3000/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

ひどいですね… 最初は3000コマで撮影して de-rotation するつもりで何本も撮っていましたが、処理してみるとあまりにひどすぎて WinJUPOS で手間を掛ける気になれず、5000コマで撮ることにしました。露出時間は約1分半で木星の自転によるブレが少し心配になるのですが、ここまでボケボケなら関係ないだろうと思って。

シーイングがまともなら北赤道縞のうねりやそこから伸びるフェストーン、南半球には白斑も写ってそうなのですが、何もかも曖昧にしか写っていません。

次は土星

土星 (2020/6/10 01:53)
土星 (2020/6/10 01:53)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 402) / 露出 1/30s x 3000/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

これもひどいですね。カッシーニの間隙は全周は写らず、輪の描写自体も曖昧です。一応カッシーニの間隙でピントを合わせたのですが、隙間がちゃんと見えていたわけではなく、揺れる像の中に段差のようなものを見出すのが精一杯でした。

なお、写真の向きは「木星の北極が上」です。木星でカメラの向きを合わせたままで撮って、撮ったままの向きで仕上げています。

最後に火星。

火星 (2020/6/10 03:20)
火星 (2020/6/10 03:20)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 280) / 露出 1/60s x 3000/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

これは意外と悪くない?でも、そう見えるのは2年前の大黄雲下の曖昧な模様しか見たことがないからかもしれません。視直径はまだ9.8秒で、10月6日の最接近時の半分に満たない小さな姿ですが、南極冠の広がりがくっきりと見えています。中央の黒い帯はキンメリア人の海でしょうか?

というわけで久々の三惑星でしたがかなり残念な結果になってしまいました。そろそろ梅雨入りなので当分おあずけかもしれませんが、撮り続けないと好シーイングにも出会えないのでなるべくがんばろうと思います。

ところで、けむけむさん主催の天下一画像処理会:惑星の部に応募しました。

常々、他の人の撮った素晴らしい惑星写真と自分の残念な惑星写真を比較しても、シーイング、筒内気流、ピント、ADCの設定、スタックパラメータ、waveletパラメータ等々、要因が多すぎて何が悪いのかよくわからなくて歯がゆいなと思っていたのですが、天下一画像処理会では元データはみんな一緒で画像処理だけに要因が絞られるため、比較検討が捗るのが素晴らしいと思って応募しました。

提出した画像処理手順は画面一枚分という制約があり書けなかった事が多々あるので、手順やパラメータの詳細を13日の発表後にエントリにまとめてアップしたいと思います。

二日月、水星、金星 (2020/5/24)

5月24日の日没後、自宅で月と水星と金星の接近を撮りました。月は新月の翌日ということで二日月(月齢1.7)です。先週はずっと天気が悪く、22日の水星と金星の接近は撮れませんでしたが、24日は久々に晴れ間が出て三角に並んだ月と水星と金星が撮れました。

二日月、水星、金星 (2020/5/24 19:37)
二日月、水星、金星 (2020/5/24 19:37)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (83mm F2.8) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 1.6秒 / Lightroom CC で画像処理

細い月の右上が水星、水星の右下が金星です。水星の右上に見えている星はぎょしゃ座の五角形を形作る星の一つでエルナトという星(1.65等)です。

18:45くらいからスタンバイしていたのですが、19時過ぎくらいに月と金星に気付き、カメラのライブビューでは水星も見えていました。水星は空が明るいうちは肉眼ではなかなか見えなかったのですが、19:40くらいには肉眼でもはっきり見えるようになりました。

流れるちぎれ雲に邪魔されたりもしながら19:45くらいまで撮影しました。地上の風景を絡めたショットも撮ったのですが、あまり映えないので個人的な記録にとどめました…

先週は M61 の超新星(SN 2020jfo)を撮りたかったのですがずっと天気が悪く、この日も結構雲が流れる空模様だったので撮影は諦めました。既に減光しつつあるようですが23日に14.7等とのことなので来週中くらいならなんとかなるかなぁ…

7年前のアイソン彗星(C/2012 S1 (ISON)) (2013/11/8-2013/11/23)

先月のエントリで2013年の春に撮ったパンスターズ彗星について書きましたが、今回は同年秋に撮ったアイソン彗星の思い出を振り返ります。

パンスターズ彗星のエントリの最後に紹介したアトラス彗星(C/2019 Y4 (ATLAS))ですが、その後なんと核が崩壊、まだ彗星らしい形は保っているものの、このまま散り散りになってゆく運命のようです。

彗星の崩壊・消滅と言えば2013年に接近したアイソン彗星(C/2012 S1 (ISON))を思い出します。大彗星が期待された点も共通していますね。

パンスターズ彗星(C/2011 L4 (PANSTARRS))を撮影して天文熱がぶり返した当時の僕ですが、当然アイソン彗星も撮りました。相変わらず固定撮影ですが、それでも彗星らしい姿がちゃんと写りました。

アイソン彗星 (C/2012 S1 (ISON)) (2013/11/21 05:23)
アイソン彗星 (C/2012 S1 (ISON)) (2013/11/21 05:23)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO1600, RAW) / 露出 1.3秒 x 4コマをコンポジット / DeepSkyStacker 4.1.1, Lightroom CC で画像処理

これは2013年11月21日未明に撮ったものです。これがベストショットとなりました。*1

アイソン彗星の撮影は10月28日未明から始めて何度か試みたのですが失敗。最初にその姿を捉えたのは4度目の撮影で、11月8日未明でした。アイソン彗星おとめ座β星ザヴィヤヴァの近くに位置していました。

アイソン彗星 (2013/11/8 04:43-04:45)
アイソン彗星 (2013/11/8 04:43-04:45)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO2000, RAW) / 露出 1.6秒 x 8コマをコンポジット / Lightroom 4.4, GIMP 2.9.1 で画像処理

低空の光害に埋もれかけていて実に頼りない写りですがいくばくかの彗星らしさはあります。

翌9日未明にも撮影しました。

アイソン彗星 (2013/11/9 04:53-04:57)
アイソン彗星 (2013/11/9 04:53-04:57)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO2000, RAW) / 露出 1.6秒 x 16コマをコンポジット / Lightroom 4.4, GIMP 2.9.1 で画像処理

写りはあまり変わらないのですが、前日の位置から随分動いています。そこでこんな画像を作ってみました。

アイソン彗星の移動 (2013/11/8-2013/11/9)
アイソン彗星の移動 (2013/11/8-2013/11/9)

光害のカブリを取ってなくて継ぎ目が目立ちますが… 一晩でこれだけ動く、というのはわかると思います。

次に撮れたのは11月13日未明。

アイソン彗星 (2013/11/13 04:29)
アイソン彗星 (2013/11/13 04:29)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO4000, RAW) / 露出 1.6秒 / Lightroom 4.4 で画像処理

画角はフルサイズ換算で350mm相当です。かすかに尾のようなものがあるような… といったところ。

ちなみにこの日はしし座の北に位置していたラブジョイ彗星も撮りました。

ラブジョイ彗星 (2013/11/13 04:00)
ラブジョイ彗星 (2013/11/13 04:00)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO2000, RAW) / 露出 1.6秒 / Lightroom 4.4 で画像処理

こちらは尾は写っていませんが彗星らしい緑色が印象的です。彗星がこういう色に写るというのをこの時始めて知りました。光度は6等前後だったと思います。

翌11月14日未明にも撮りました。

アイソン彗星 (2013/11/14 05:03-05:05)(8枚コンポジット)(拡大)
アイソン彗星 (2013/11/14 05:03-05:05)(8枚コンポジット)(拡大)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO2000, RAW) / 露出 1.6秒 x 8コマをコンポジット / Lightroom 4.4, GIMP 2.9.1 で画像処理

前日の写真より拡大して画角はフルサイズ換算700mm相当。コンポジットで尾がうっすら見えてきました。

次に撮ったのは翌々日の11月16日未明。

アイソン彗星 (2013/11/16 05:24-05:26)(4枚コンポジット)
アイソン彗星 (2013/11/16 05:24-05:26)(4枚コンポジット)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO1600, RAW) / 露出 1.6秒 x 4コマをコンポジット / Lightroom 4.4, GIMP 2.9.1 で画像処理

尾がだいぶはっきりしてきました。画角はフルサイズ換算350mm相当。だんだん太陽に近づいて条件が悪くなっているのですが、増光の勢いの方が強いようで、薄明の空に負けない姿を撮ることができました。

翌11月17日未明、アイソン彗星はスピカの近くまで来ていました。

アイソン彗星とスピカ (2017/11/17 05:22-05:23)(4枚コンポジット)
アイソン彗星とスピカ (2017/11/17 05:22-05:23)(4枚コンポジット)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO1600, RAW) / 露出 1.3秒 x 4コマをコンポジット / Lightroom 4.4, GIMP 2.9.1 で画像処理

アイソン彗星を拡大(フルサイズ換算700mm相当)するとこうなります。

アイソン彗星 (2017/11/17 05:22-05:23)(4枚コンポジット)
アイソン彗星 (2017/11/17 05:22-05:23)(4枚コンポジット)

前日より写りが悪いのですが、低空なので(この日は高度20度)空の状態に左右されやすいのです。

翌11月19日にはスピカの横を通り抜けました。

アイソン彗星、スピカ、人工衛星? (2013/11/19 04:57)
アイソン彗星、スピカ、人工衛星? (2013/11/19 04:57)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO2000, RAW) / 露出 1.3秒 / Lightroom 4.4 で画像処理

次に撮影したのは11月21日未明。これがエントリ冒頭のベストショットになりました。以下はそれをフルサイズ換算700mm相当に拡大したものです。

アイソン彗星 (C/2012 S1 (ISON)) (2013/11/21 05:23) (拡大)
アイソン彗星 (C/2012 S1 (ISON)) (2013/11/21 05:23) (拡大)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO1600, RAW) / 露出 1.3秒 x 4コマをコンポジット / DeepSkyStacker 4.1.1, Lightroom CC で画像処理

尾がかなりはっきり見えてきました。コマも随分明るくなっています。

翌11月22日未明には水星に近づきます。

水星とアイソン彗星 (2013/11/22 05:17)
水星とアイソン彗星 (2013/11/22 05:17)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO1600, RAW) / 露出 1.3秒 / Lightroom 4.4 で画像処理

そして翌11月23日に撮影したこの写真が最後になりました。

水星、アイソン彗星、土星 (2013/11/23 05:27)
水星、アイソン彗星土星 (2013/11/23 05:27)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.8) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO1600, RAW) / 露出 1.3秒 / Lightroom 4.4 で画像処理

電線が写り込んでしまっていますが… 水星、土星アイソン彗星のスリーショットです。土星はわかりにくいですが左下隅に写っています。この条件でも尾がはっきり見えているアイソン彗星の姿に近日点通過後の勇姿を期待したものでした。

というわけで、翌11月24日も撮影はしたのですが、アイソン彗星は朝焼けの光の中に飲み込まれてその姿を確認できませんでした。この先は近日点通過後までおあずけ、そう思っていました。

近日点通過は11月29日早朝。その日の昼に衝撃的なニュースが。


29日朝(日本時間)に太陽に最接近したアイソン彗星は、太陽からの強烈な熱を受け、彗星の核の部分がほぼ消えてしまったとみられている。12月以降に明け方の空で長い尾を見ることは、かなり難しくなった。
AstroArts 天文ニュース「アイソン彗星の核が太陽最接近でほぼ消滅

前々から太陽に近づきすぎるので崩壊の危険性があるとは言われていたアイソン彗星ですが、本当に崩壊してしまうとは…

一応夕方の西の空のアイソン彗星が無事だったら来たはずの位置の周辺を撮ってはみたのですが何も写りませんでした。

太陽 (2013/11/29 10:19)
太陽 (2013/11/29 10:19)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO1600, RAW) / 露出 1/1600秒 / Lightroom 4.4で画像処理

翌11月30日も…

翌12月1日。

これで完全に諦めました。

そしてダメ押し。

崩壊したのは仕方がないとして、崩壊したアイソン彗星の痕跡を観測できるかどうか?というのをまだ少しは考えていたのですが、HIROPON(id:hp2)さん曰く… *2

(´・ω・`)

というわけでアイソン彗星の思い出はここで終わりです。ずいぶん落ち込みはしましたが、その後もグレずに固定撮影でぼちぼち天文を続けていました。そして2年後の2016年1月、カタリナ彗星(C/2013 US10)の接近に心乱されてついに…

*1:当時はGIMPで手動コンポジットをしていたのですが、これは今回DSSで再処理したものです。

*2:ちなみにこの頃はまだ HIROPON さんのことを全然知らなくて、このツイートもTLに流れてきたのを拾っただけでした。

惑星写真、8cm 屈折の実力は?

昨年木星を撮ってて18cmでこの程度なのか!?そんなはずはない!と、荒ぶって画像処理の修行をしてそこそこ満足出来るところまでたどりついたのですが、

今の自分の画像処理技術で 8cm 屈折で撮ったベストショットを処理したらどうなのか?8cm屈折の実力を自分はまだ知らない!と思って2018年4月28日深夜に撮ったベストショット、

これを再処理してみました。

木星 (2018/4/29 02:00) (2020/4/28 再処理)
木星 (2018/4/29 02:00) (2020/4/28 再処理)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 2000コマをスタック処理(1.5倍 drizzle) / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

どうでしょう、この解像感?結構ヤバくないですか?再処理前はこうでした。

木星 (2018/4/29 02:00)

再処理の手順は、以前と同じスタック結果を元画像として、

  • 元画像をグレースケール変換して疑似L画像の生成
  • 疑似L画像と元画像をそれぞれ wavelet 処理
  • 上の結果を LRGB 合成
  • Photoshop / Lightroom で調整

といった感じです。

wavelet のパラメータは、疑似L画像が以下の通り。

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 1
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelets: ON
  • Contrast: 100
  • Brightness: 0
  • De-ringing: Dark side: 10, Bright side: 250
Layer Denoise Sharpen 設定値
1 0.30 0.110 32.5
2 0.25 0.110 65.0
3 0.25 0.110 49.0
4 0.30 0.110 27.5
5 0.30 0.100 7.3

RGB画像(元画像)が以下の通り。

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 1
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelets: ON
  • Contrast: 100
  • Brightness: 0
  • De-ringing: Dark side: 10, Bright side: 250
Layer Denoise Sharpen 設定値
1 0.25 0.100 26.9
2 0.25 0.110 32.5
3 0.25 0.110 32.5
4 0.25 0.110 14.0
5 0.25 0.110 3.0

というわけで、8cm 前後の短焦点アポ屈折で DSO を撮っているみなさん!惑星には縁がないと思っているかもしれませんが、あなたの望遠鏡でもこのくらいは撮れます!是非お試しあれ!

三日月、すばる、金星 (2020/4/25)

4月25日の夕方、KAGAYAさんのツイートで三日月(月齢2.1)が出てるのを知ってマンションの廊下から撮影しました。一応 stay home ですかね?

三日月 (2020/4/25 19:11)
三日月 (2020/4/25 19:11)
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO (f40mm, 絞り F2.8) / ミザール K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 2秒 / Lightroom CC で画像処理

三日月はおうし座に位置して、よく見ると三日月の右のすぐ近くにすばる(M45 プレアデス星団)が見えています。

三日月とすばる (2020/4/25)
三日月とすばる (2020/4/25)
上の写真をトリミング、画質調整。

三日月の上の方を見上げると金星が輝いていました。

三日月と金星 (2020/4/25 19:14)
三日月と金星 (2020/4/25 19:14)
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO (f27mm, 絞り F2.8) / ミザール K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 4秒 / Lightroom CC で画像処理

三日月の左上にはヒアデス星団も見えています。

翌26日には金星が四日月に接近して、それをみんなで撮ろうというイベントがあったのですが、当日の横浜は曇り。しかも強風ということで、そんな中で雲の切れ目を待ち続ける気力もなかったのでパスしたのでした。東京も似たような天気だったと思うのですがKAGAYAさんは一瞬の晴れ間をものにして撮影に成功。いやあ、やっぱりそういうところが違いますよね。反省…

金星 (2020/4/25)

4月24日の深夜は M22 を撮りましたが、その後赤道儀だけそのままベランダに残しておきました。昼に μ-180C を載せて金星を撮るためです。昼間に極軸合わせは至難なので夜のうちに合わせた状態で置いておくというわけです。

最近金星が三日月状に欠けているのを撮っておきたいなとは思っていて、日没前後だと南向きベランダからは撮れない位置に来ているので昼のうちに撮ろう、在宅勤務になっているから昼休みに撮るチャンスはあるはず、と思っていたのですが、結局土曜日に撮ることになりました。

朝 M22 の処理が終わってからふと気になって Stellarium で確認したところ金星の南中高度が高すぎて南中付近ではベランダの天井に阻まれて撮れないことがわかり、これはヤバいとあわてて調べた結果、12時頃から14時前までならなんとか撮れそうだと判明して一安心。

もう一つ気になっていたことがあって、それは直射日光が鏡筒の内側を照らして迷光にならないかということ。離角が43度くらいなので鏡筒径21cmのμ-180Cだと筒先から22.5cm奥まで日光が届く計算。

なので、そのくらいの長さの板を太陽側に付けて遮光しようということで、段ボールをマジックで黒く塗ったものをゴムバンドで筒先に取り付けました。ゴムバンドは8cm屈折用に自作した巻きつけフードを取り付けるためのマジックテープ付きのものを2本つなげるとちょうどよい長さになりました。

実際に取り付けると計算通り遮光できていてなかなかナイス、と思っていたのですが… この日は風が強すぎました。西からの風をまともに受けて煽られて鏡筒は揺れるし最終的には吹き飛ばされて危うく外に落ちてしまうところでした。

結局撮影は遮光なしで行いましたが顕著なコントラストの低下も見られず不要だったかな、と。黒い鏡筒内面が日光で炙られて筒内気流が乱れるのでは、とも思っていたのですが、元々シーイングが最悪だったせいもあって遮光の有無による差は識別できませんでした。

金星の導入ですが、かなり苦労しました。まずファインダーと鏡筒の筒先にキャップを付けたまま自動導入。導入中に太陽の方を向いてしまう可能性を考えてのことです。自動導入が終わってファインダーのキャップを外し、おそるおそるのぞいて見ると青空に浮かぶ白い光点がはっきり見えました。

【注意】誤って太陽を見てしまうと失明の危険があるので、昼の金星の観察は十分注意して行ってください。特に手持ちの双眼鏡等で見ることは避けてください。

4月28日には最大光度を迎える金星は-4.5等。この明るさなら肉眼でも見えるとも言われますが、さすがに肉眼では全くわかりませんでした。僕の目が悪いせいもあるのかもしれませんが… ここまでは順調でしたがここからが大変でした。

ファインダーの中心に金星を合わせてバローレンズを組み込んだ撮影システム(システムC)のフリップミラー側に取り付けたアイピース(8-24mmズーム)をのぞいて金星を探したのですがみつかりません。ピントが合ってないせいかと思いピントを調節するのですがそれらしき光は見えず、どうも金星は視野の外のようです。

システムCは拡大率が3倍以上あって24mmアイピースでも300倍ぐらい出ていて視野が狭すぎるので、一度システムCを天頂プリズムに差し替えて90倍で見たところ中心から少し離れたところに金星を発見。中央に寄せてからシステムCに差し替えたのですがやはり青空しか見えません。

合焦ノブを回していってもそれらしき光点がみつからず焦ります。正直あきらめかけたのですが、ピントの行ったり来たりを繰り返して4回目くらいでやっと金星の姿が現れました。夜空なら相当ピンぼけでも明るい星の存在はすぐわかるのですが、青空がバックだと合焦するギリギリまで何も見えないので、合焦ノブを相当ゆっくり回さないと見逃してしまうようです。

やっと導入した金星ですが、シーイングが悪くプレビューでのピント合わせは困難を極めました。結局ピントを少しずつずらしながら撮影を繰り返して5本目ぐらいでやっとピントが合った気がしました。

システムCにはADCが組み込まれていますが、像の乱れが激しい上に青空バックで色ズレが視認できないし、天頂付近ではプリズムの水平方向もよくわからない状態だったのでADCのプリズムはニュートラルにセットした状態で撮影しました(ADCを外すと倍率が変わるので)。

これだけシーイングが悪いのだから5000フレーム撮って1000フレーム選別ぐらいが適切かと思ったのですが、実際に撮ってみると90秒くらいの間にどうしても強風で大きくブレる瞬間があって、そうなると AutoStakkert!3 で image stabilization 後に AP を置ける領域がものすごく狭くなってしまうため使い物になりませんでした。

結局、強風が来ないうちになんとか撮り切れる3000フレームで撮影しました。結果はこうなりました。

金星 (2020/4/25 12:35)
金星 (2020/4/25 12:35)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (ゲイン275) / 露出 1/1000秒 x 1000/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC, Photoshop 2020 で画像処理

ややぼやけてはいますが、一応三日月状の姿が撮れました。地球照はもちろんありません。

表面の模様は全くわかりませんが、そもそも可視光ではほとんど何も写らないですよね。ではUVフィルターを買ってまで撮るかというと… 撮影する機会もあまりないし、そこまでする気にはまだなれないでいます。

模様はともかくもっと細い金星も撮ってみたいとは思うのですが、細くなればなるほど太陽に近く危険が伴います。遮光の問題もあってドームでもないと厳しいのではとも思うのですが…

M22 (2020/4/24)

4月24日の夜、無性に球状星団が撮りたくなって、深夜から M22 を撮りました。もちろん自宅のベランダから。Stay Home が叫ばれる昨今、天体撮影のための遠征の是非についても議論のあるところですが、個人的にはここ2年ほどベランダからしか撮影してない(できない)ので普段通りというわけです。

M22 は4年前に 8cm F6 + 0.6倍レデューサーで初めて撮影してそのデカさに驚いたものでした。

8cm F6 直焦での撮影は3年前に試みたのですが雲が出て失敗してしまいました。

今回はそのリベンジということになります。球状星団は周辺部の微光星がはっきり見えるように強調すると中央の星が密集した部分が白飛びしやすいので多段階露光で撮影しました。

ガイドは乱れがちで、最初は蛇行はないもののシーイングが悪いせいか細かいゆらぎの多い状態が続き、その後安定してきたと思ったら蛇行が始まるという有様で、途中から過修正を防ぐため断続的に赤緯ガイドを Off にしてガイド星がドリフトで自然に中央に戻るのを待ってみたり、ほとんど半自動ガイドみたいなことをしていました。

それでもガイドが流れたコマが出てきて、予定より少ないコマ数でコンポジットするはめになりましたが、対象が球状星団なので強調処理も控えめでノイズもあまり目立たずに済みました。結果はこちら。

M22 (2020/4/25 02:00)
M22 (2020/4/25 02:00)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 1分30秒 x 2コマ + 3分 x 6コマ + 6分 x 6コマ 総露出時間 57分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom CC で画像処理

等倍で見ると星像が肥大気味でキリッとしない感じですが、鑑賞距離で見る分には悪くないと思います。

M22 は写真では黄色みがかった星が多くて金色の星団に見えるのが好きなのですが、他の人の撮った写真を見るともっと白っぽく仕上げている人が多いようです。普通に背景をニュートラルグレーに寄せると黄色くなるんですが、みなさんどうやっているのでしょう?

そもそも M22 の星の実際の色はどうなっているんでしょうか。単に高度が低いから黄色っぽく色付いて見えるだけで本当は白かったりするんでしょうか?でも周囲の恒星を見るとちゃんと白い星もあるから本当に黄色っぽい気もするんですが…

ところで球状星団を構成する恒星って球状星団の中心の周りを公転していたりするのでしょうか?もしそうなら何十年かかけて球状星団が回転するタイムラプスムービーとか撮れるのかなーとか思って気になりました。

この記事を見ると M22 の中心部にはブラックホールが複数あるようですし、星団の中の恒星の運動とかややこしいことになってそうですが、そういうのがアマチュアの機材でも観測できたらおもしろいのですが。