Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

ぎんがさがし

先週末に撮った銀河の写真について。

上のエントリではトリミングした写真を載せていますが、実際にはもっと広い範囲を撮っていて、そこにはたくさんの銀河が一緒に写り込んでいます。反転画像から探してみましょう。

M91, M88 周辺 (2017/3/5 00:05)
M91, M88 周辺 (2017/3/5 00:05)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 10枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, 白黒反転
オリジナルサイズの画像

M90, M89 周辺 (2017/3/5 01:10)
M90, M89 周辺 (2017/3/5 01:10)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, 白黒反転
オリジナルサイズの画像

M99 周辺 (2017/3/5 02:13)
M99 周辺 (2017/3/5 02:13)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 10枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, 白黒反転
オリジナルサイズの画像

M61 周辺 (2017/3/5 03:19)
M61 周辺 (2017/3/5 03:19)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, 白黒反転
オリジナルサイズの画像

ぎんがさがしたっのし〜!ということで、Stellariumにらめっこしながらマッピングしてみたのがこちらです。

M91, M88 周辺の銀河マップ (2017/3/5 00:05)
M91, M88 周辺の銀河マップ (2017/3/5 00:05)
オリジナルサイズの画像

M90, M89 周辺の銀河マップ (2017/3/5 01:10)
M90, M89 周辺の銀河マップ (2017/3/5 01:10)
オリジナルサイズの画像

M99 周辺の銀河マップ (2017/3/5 02:13)
M99 周辺の銀河マップ (2017/3/5 02:13)
オリジナルサイズの画像

M61 周辺の銀河マップ (2017/3/5 03:19)
M61 周辺の銀河マップ (2017/3/5 03:19)
オリジナルサイズの画像

集計してみました。

写真 見つけた数
M91, M88 周辺 26
M90, M89 周辺 32
M99 周辺 18
M61 周辺 18

ということで合計94個の銀河が写っていました。名前を書き込む余白がなかったりして書き込んでいないものもあるので、本当はもう少し写っています。

これだけ銀河があれば、きっといるよね? 宇宙人のフレンズ!

スカイメモSの追尾精度の限界は?

昨年オートガイダーを導入した時はスカイメモSの実力がどの程度か把握せずに見切り発車で買ってしまったのですが、結果的には当初の目的、つまり 8cm F6 + 0.6x レデューサー(288mm)で数分程度のガイド撮影は達成できました。

ではレデューサーなしの 480mm (フルサイズ換算 960mm)ではどうでしょう?これはオートガイダー購入当初試しにやってみたものの、ガイドエラーで星が流れてしまい、無理だと判断していたのですが、最近当時の写真を見返してみると、この頃はまだ設定を詰め切れてなかったせいか 288mm でもあまり安定してガイドできていませんでした。

そこで今の設定でもう一度試してみることにしました。昨日は空はよく晴れていたものの、深夜まで月が出ていて DSO の撮影には不向きでしたが、こういう時こそテスト撮影に向いています。

まず、スカイメモSの素の追尾精度を知りたくてピリオディックモーションの写真を撮ってみました。適当な星野を極軸を方位だけずらした状態で10分露出で撮影します。*1

追尾精度が完璧なら南北(赤緯)方向にまっすぐ星が流れていくはずですが、実際にはギアやモーターの誤差で追尾速度が揺らいで蛇行した光跡が写ります。実際に撮ってみた写真がこれです。

https://rna.sakura.ne.jp/share/periodic-motion-of-SKYMEMO-S.jpg
スカイメモSの追尾誤差
左: ノータッチ追尾
右: QHY CCD QHY5L-IIM + miniGuideScope (130mm) + PHD2 Guiding でオートガイド
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井BLANCA-80EDT (8cm F6)
ISO 200, 600s

ノータッチ追尾で撮影した方(左)は赤道儀の誤差がそのまま光跡のゆらぎとしてあらわれています。オートガイダーで1軸ガイドしながら撮った方(右)では大きな揺らぎは補正されてほぼ真っすぐの光跡が写っています。

BLANCA-80EDT の焦点距離は 480mm, E-M5 の画素ピッチは 3.75μm なので、画像上の1ピクセルは1.61秒になります。*2 ノータッチでの光跡の揺らぎの幅は21ピクセルなので、ピリオディックモーションは±16.9秒ということになります。結構ありますね…

しかしオートガイダーを使うと長周期の揺らぎは完全に補正されて誤差は±4.0秒まで減少します。たいしたものですが実際に使い物になるのかどうか。というわけで、今度は極軸をちゃんと合わせて実際に天体を撮ってみました。しし座の三つ子銀河を5分露出です。

M65, M66, NGC3628 (2017/3/7 23:51)
M65, M66, NGC3628 (2017/3/7 23:51)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6)
ISO 200, 300s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1600mm相当にトリミング

意外とイケてるような…? てっきりガイドエラーでぼやけてしまって焦点距離が活かしきれてない写真になるものと思っていたのですが、少なくともレデューサー使用時よりは細部まで解像しているように見えます。

等倍で見ても、若干星が楕円になっているカットもあったものの顕著な星像の乱れは見当たりませんでした。PHD2の表示では赤経の誤差のRMS値が±1.6秒前後でした。赤緯は極軸調整の精度がイマイチで5分で2秒弱の速度でズレていってました。

今回はテスト撮影だったので光害カットフィルターは使っていません。本来直焦では 0.6x レデューサー使用時と比較すると約2.8倍の露出時間が必要になるのですが、今回はフィルターなしなので光量が約2倍になり、普段と同じ露出時間でもプラス補正で十分見れる明るさに写っています。

光害カットフィルターを使うと10分以上の露出時間が必要になり、さすがに極軸調整がシビアになってしまいます。でも、光害の影響の少ない天頂付近を通る星団や惑星状星雲をフィルターなしで撮るなら使えるかも? もっとも球状星団の微恒星はガイドエラーが目立ちやすいのですが… そのへんも今度試してみようと思います。

2017-05-13 追記

その後、直焦点で色々撮ってみた結果を以下の記事にまとめました。

*1:追尾速度の誤差の周期は通常極軸を回すウォームネジが1回転してウォームホイールが歯1枚分回転する時間になります。ウォームホイールの歯数が144枚なら周期は10分になります。

*2:\tan^{-1} \frac{0.00375}{480} = 0.000447623° = 1.6114428″

月面X (2017/3/5)

日曜日の夜に最近よく話題になる天文イベント「月面X」がありました。月面にアルファベットの X に見える模様が見えるというもの。月面の地形が絶妙な角度で太陽に照らされることで起こる現象です。

正直個人的にはあまり興味のないタイプの天文イベントなのですが、一般ウケはいいようでついつい撮ってしまいました。承認欲求…!当日は曇りでよくて薄雲越しに、悪くて厚い雲に覆われ何も見えない状況だったのですが、なんとか撮れました。

「月面X」未満の「〉」みたいな形になっている月面とセットでどうぞ。

「月面X」未満 (2017/3/5 18:09)
「月面X」 (2017/3/5 19:18)
「月面X」(2017/3/5 18:09, 19:18)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井BLANCA-80EDT (8cm F6), 2x TELECONVERTER C-20
ISO 200, 1/50s
Lightroom CC で画質調整, トリミング

わずか一時間余りでも意外と陰影に変化が出ているのがわかります。全景はこちら。

「月面X」未満 (2017/3/5 18:09)
「月面X」 (2017/3/5 19:18)

あまり興味がないと言いましたが、理由はそれほど X に見えないというのが一つ。正立像だと漢字の「火」みたいに見えることが多いです。

もう一つの理由は、特定の言語の文字に見えるという現象をイベント視するのはあまりに自文化中心主義的な観点じゃないかということ。人の顔に見えるとかならまだ普遍性があるかもしれませんが。

まあ、それを言い出すと星座とか全部西洋文化ですけど、神話みたいに直接文化の深いところとつながっているものなら、その文化ごと味わえばいいことなのですが、ただ文字に見えるだけとなると戸惑ってしまうのです…

「月面X」を見るたびに思い出すのは、福本伸行の麻雀漫画『天 天和通りの快男児』に登場した銀次という雀士のことです。彼はガン牌*1の達人で、牌の裏についたわずかな傷や汚れのパターンを文字に見立てることで牌を識別・記憶します。

しかし、普通のアルファベットに見えるような特徴的な傷や汚れがそうそうあるわけではないですし、そんな傷は他人にも気づかれて対策されてしまいます。そこで銀次は独学で世界各国の言語の文字を学び、見立てることが可能な文字の種類を膨大な数に増やしつつ普通の日本人が知らないような言語の文字に見立てることでこの問題を解決します。

銀次が望遠鏡で月面を見たら、きっと無数の「月面ナントカ」を見つけてしまうのではないか、などということを「月面X」を見るたびに思うのです。僕も文句言ってる暇があったら「月面大文字」とか「月面卍」とか「月面鳥居」とか見つけたらいいんでしょうか。

でもそれって面白いのかな?月面そのものに向き合ってないんじゃないかな?などと考えこんでしまいます。まあ、そんなのただの遊びなんだしどうでもいいじゃない!って言われればそれまでなんですが。

*1:牌の裏側についた(あるいは意図的につけた)傷や汚れから何の牌かを識別・記憶することで、山の牌や他人の手牌を読んでゲームを有利に進めるイカサマ。

オートガイダー導入記 (2): オートガイダーを買う理由・買わない理由

前回の続きです。

結論から言うと、こうなりました。

勢い余って光害カットフィルターまで買っています。

買ってしまったオートガイダーというのはこれです。これに背中を押されて沼に転がり落ちてしまいました。

https://rna.sakura.ne.jp/share/kyoei-tokyo-000000007176.jpg

QHY CCD の QHY5L-IIM + ミニ・ガイドスコープ セット。特にミニ・ガイドスコープにやられました。これはビクセン互換のファインダー台座のアリミゾに取り付け可能なCマウントのレンズです。*1 焦点距離は130mmでこの手のセットで売られているレンズとしては長め。重量は最軽量級でシステム総重量で200g台。その一方で値段はこの手のセットとしては最安級です。

オートガイダーの導入に躊躇していた理由は以下の二点でした。

  • ガイドスコープや周辺パーツの重量で赤道儀の負担が増える。
  • スカイメモSでは2軸ガイドができない。

このミニ・ガイドスコープならファインダーより軽くてファインダーと差し替えてマウントできるので赤道儀への負担は増えません。これで買わない理由の半分が吹き飛びました。

そうなるともうひとつの理由についても再考したくなってきます。実際にスカイメモSでオートガイドで直焦撮影という無茶をしている人はいるのでしょうか?ググってみると、いました。

あくまで実験としてやっているようですが、800mm 直焦に APS-C 2400万画素の Nikon D5200 で撮っています。120秒露出に成功、ただし別の記事では120秒は歩留まりが悪いとも書かれています。

南北方向(赤緯)のエラーが意外に少ないのにびっくりしました。極軸が十分合っていれば意外と大丈夫なものなのでしょうか?そういえば今まで30秒以上のノータッチ追尾撮影で失敗した画像は大抵東西方向に星が流れていたことを思い出しました。

試してみる価値はありそう、という気がしたものの、4万円台の買い物にはまだ躊躇いが… でも、ここまでくると買う理由を探すモードになってきました。

買う理由その1: ドリフト法による極軸調整がスムースにできるようになるのではないか? テレコンバーターとデジカメのライブビューを見てやるドリフト法は面倒だし精度に不安がありましたが、PHD2 Guiding のドリフトアライメント機能を使えば極軸の誤差を定量的に表示してくれますし、極軸の調整量を視覚的に表示してくれます。

買う理由その2: 電子ファインダーとして使えるのではないか?横浜の空では空が明るすぎて5cmファインダーでもあまり暗い星が見えません。天体の導入にはデジカメで10秒露出ぐらいで試し撮りを繰り返しながら星をたどっていたのですが、PCに常に表示されるオートガイダーの映像を見ながら星をたどればずいぶん楽になりそうです。

ということで、どう転んでも何らかの役には立ちそうだし、将来まともな赤道儀を買えば当然オートガイダーとして普通に使えるわけだし、無駄にはならないだろう… と思ったのですが一つ問題が。

ミニ・ガイドスコープの取り付け金具の足がえらく短いので、屈折望遠鏡の接眼部近くにある台座に取り付けた場合、ガイドスコープの視野に望遠鏡の鏡筒が入ってしまわないか気になります。反射望遠鏡ならファインダー台座は筒先なので大丈夫なのですが…

そこでオートガイダーのセンサーサイズとガイドスコープの焦点距離から視野角を計算すると、意外と視野が狭くて2度ぐらい。望遠鏡のフードを伸ばしても視野には入らなさそうだと判明しました。

もっとも、視野角が狭いということは電子ファインダーとしての使い勝手は微妙かも… でももうここまで来たら、と震える決心で注文してしまいました。

せっかく長時間露出できるようになっても光害で背景が飽和してしまったら意味がないので光害カットフィルター IDAS LPS-D1 QRO 48mm (27,000円)も一緒に注文してしまいました。

(つづく)

続き:

*1:買ってから知りましたがアリガタの裏にネジ穴があり、カメラネジでも取り付けられます。

春の銀河いろいろ (2017/3/4)

前回前々回と撮影に失敗している M91 と M88 なんですが、夜中から晴れるという予報を見て今度こそと、まだ雲が出ているうちからベランダに望遠鏡を出して撮影の準備。予報が外れて無駄になってもダメージが少ないのがベランダ観測の利点です。積極的に活かしていきたいところ。

ドリフト法による極軸合わせを何度も雲に邪魔されながらなんとか24時前までに完了。その頃には空は晴れていて、そのまま M91, M88 の撮影を開始。昼のうちから予習しておいたおかげで導入もスムース。今回は無事最後まで撮影できました。

M91, M88 (2017/3/5 00:05)
M91, M88 (2017/3/5 00:05)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 10枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

棒渦巻銀河 M91 (左)の渦巻き部分の腕がうっすらとですが写っています。M88 (右)も腕が巻き付いているのがわかります。

この後夜明け前まで春の銀河を撮っていました。まず、M91 のすぐ南にある M90 と M89。

M90, M89 (2017/3/5 01:10)
M90, M89 (2017/3/5 01:10)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M90 (左上)は斜めから見た渦巻銀河、M89 (右下)は長軸が地球に向いていて丸く見える楕円銀河です。

次は M88 の西に少し離れたところにある M99。

NGC4302, NGC4298, M99 (2017/3/5 02:13)
NGC4302, NGC4298, M99 (2017/3/5 02:13)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 10枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

M99 (右)の西の方には M98 がありますが、少し距離が離れていてツーショットにすると両方共レンズの収差の多いところに入ってしまうので、反対隣の NGC4302, NGC4298 とのスリーショットにしてみました。左に二つある銀河の縦に細長い方が NGC4302 で、その右の小さな銀河が NGC4298 です。

M99 はフェイスオンの渦巻銀河ですが腕の巻き具合が非対称で、右に伸びる腕がアホ毛っぽくなっているのがかわいいところです。写真でも小さいながらもアホ毛部分がしっかり写っています。

NGC4302 はエッジオン銀河ですが、よく見ると縁の暗黒帯が写っているような?長焦点でちゃんと狙ってみたいところです。

最後はだいぶ離れたところで、おとめ座の頭の上あたりにある銀河 M61 です。

M61 (2017/3/5 03:19)
M61 (2017/3/5 03:19)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 8枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

これもフェイスオン銀河ですが、小さい… それでもしっかり腕が巻いているのが見えます。もっとも既に西に傾いて高度がやや低めだったせいか外側の淡い腕が一部写らなくて、ちょっと変な形に見えてしまっています。

今回は朝方まで大きなトラブルもなく順調に撮影できました。撮影の待ち時間にアニメの録画も消化出来て一石二鳥。そして今回も写真のあちこちに米粒みたいに銀河が散らばっていて楽しいのですが、そのあたりはまた後日。

M91, M88 (2017/3/3)

GPV 気象予報の雲量予報では、今夜は深夜2時頃までは晴れてそう、ということで22時過ぎから準備して先日痛恨のミスで撮り逃した M91 と M88 のツーショットを撮影しました。

が、極軸調整やら赤道儀の電池交換(スカイメモSは単3電池4本です)やらターゲットの導入やらで1時間以上かかり、撮影開始は23時半。5分露出を10枚が目標なので雲が出るまでには十分間に合うと思っていたら24時前から雲が出てきて中断。

雲が流れていった隙に撮影再開もしたのですが、すぐまた雲が出てきて最終的には一面の曇り空になり断念。1時過ぎに撤収。二度も撮り逃すとは…

くやしいので撮れた3枚をコンポジットしてみました。ノイズが多いですが、意外とそれっぽく写ってるかも?

M91, M88 (2017/3/323:36)
M91, M88 (2017/3/323:36)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm
ISO 200, 300s x 3枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算1150mm相当にトリミング

棒渦巻銀河の M91 (左)は、棒があるのは見えますが渦巻きの部分はうっすらとしか見えないですね。残念。M88 (右)は昨年ノータッチ20秒露出で撮ったものよりはハッキリ写っているものの、ノイズが多いのが痛し痒しです。次こそはしっかり撮りたいです…

ところでこの写真、よく見ると M92, M88 以外にもあちこちに銀河が写っています。こういうのは白黒を反転させると見つけやすくなるのでやってみました。

M91, M88 周辺 (2017/3/3 11:36)
M91, M88 (2017/3/323:36)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー
ISO 200, 300s x 3枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, 白黒反転
オリジナルサイズの画像

ごく小さなものも写っているので等倍表示で探したところ、20個以上の銀河がありました。興味のある方はオリジナルサイズ画像で探してみてください。

見つけた銀河の名前を Stellarium で調べて書き込んでみました。

14等台の銀河がギリギリ写っています。聞いたこともないような銀河がほとんどですが、右下の NGC4477 から NGC4435 までの連なっている銀河は「マルカリアンの銀河鎖(Markarian's Chain)」の一部です。

オートガイダー導入記 (1): スカイメモSにオートガイダーってアリですか?

前回の続きです。

ここから新シリーズ「オートガイダー導入記」と題してオートガイダー導入にまつわるエピソードを書いていこうと思います。

スカイメモSには ST-4 互換のオートガイダー端子が付いています。

スカイメモS 本体
スカイメモS本体。右下のモジュラージャックがオートガイダー端子。
左側に置いてあるのは iPhone 7

こんな小さな赤道儀でオートガイダーなんて使えるんでしょうか?という話をする前にオートガイダーとはどういうものかについてざっくりと説明します。

オートガイダーというのは長時間露出や焦点距離の長いレンズで天体写真を撮るのに使う小型のUSBカメラです。といっても、それで写真を撮るのではなく、星の動きを追いかけて撮影(ガイド撮影)するために撮影用のカメラとは別にPCのUSBに繋いで、赤道儀制御用のソフトに星の映像をリアルタイムに入力するためのものです。*1

制御ソフト(PHD2 Guiding 等)はオートガイダーから入力された映像から星の動きを読み取り、オートガイダー側に赤道儀を動かすための信号を送ります。オートガイダーはその信号を中継して赤道儀のオートガイダー端子に送り、星の動きをキャンセルするように赤道儀のモーターを動かします。

元々赤道儀は極軸を地球の自転と反対方向に回すことで星の動きをキャンセルしているのですが、モーターのスピードの誤差や機械的な誤差、極軸合わせの誤差などが組み合わさって、どうしても微妙に星がズレていってしまいます。

なので、それが無視できないような条件では、撮影鏡とは別の望遠鏡(ガイドスコープ)を覗いて星の動きを見てモーターの速度や望遠鏡の向きを微調整しながら撮る必要があります。*2 これが「ガイド撮影」なのですが、それを自動でやってしまうのがオートガイダーです。僕が子供の頃はそんな便利なものはありませんでした。

しかし、スカイメモSのような小さな赤道儀でそんな大げさなことができるのでしょうか?やったとして意味があるのでしょうか?

まず、望遠鏡で撮る場合は望遠鏡に加えてガイド鏡まで載せなくてはなりません。耐荷重的に大丈夫でしょうか? BLANCA-80EDT にガイド鏡を取り付けるには鏡筒バンドも必要で、重量がさらに増えます。

また、スカイメモSの赤緯軸にはモーターがなく、オートガイドといっても1軸ガイドになります。星が赤緯方向に流れたら打つ手なしです。赤緯方向の誤差が発生する要因には、極軸合わせの誤差や、赤道儀の各部や三脚の撓みがありますが、それらはクリアできるでしょうか?

正直厳しいと思っていたので、スカイメモSのオートガイダー端子は飾りみたいなものだと思っていました。空の暗い場所で撮ったりF値が暗めの望遠レンズで長時間露出するなら使う意味があるかもしれませんが、横浜の空では ISO 1600, F2.0 なら2分足らずの露出で真っ白の写真になってしまいます。

なので、スカイメモSでオートガイダーを使うことはあまり考えていませんでした。

もっとも、デジカメWatchの「【コーワPROMINARレンズ リレーレビュー】星景・天体写真編:星降る夜の美しさを再現、見事な解像力」でポータブル赤道儀とオートガイダーで撮ったプレアデス星団の見事な写真を見て少しばかり心を動かされはしたのですが…

でもこれ、SWAT-350 ですしねぇ。本体にここに写っているオプション全部付けるとすごい値段になります。KYOEI-TOKYO で買うとこんな感じ。

https://rna.sakura.ne.jp/share/SWAT-350-full-armed.png

227,880円(税込)。本格的な自動導入赤道儀が買えるお値段。まあ、それだけの価値はあると思いますが、それだけにスカイメモSと一緒にしてはいけないかな、と。それによく見ると三脚も結構よさげな… ジッツオに見えるのですが気のせいでしょうか。

それはともかく… いずれしっかりした赤道儀を買う時には一緒にオートガイダーを買おうとは思っていて、天文ショップの通販サイトを訪れるたびにチェックしていました。そして昨年10月半ば、ある製品に出会ってしまったのです。(つづく)

続き:

*1:マイコンと制御ソフトを内蔵してPCを必要としないタイプのものもあります。

*2:撮影鏡の写野の外にある星を使ってガイドするオフアクシスガイドという方法もあります。