昨年12月4日の夜に μ-180C 直焦点(18cm F12)でDSOを撮るテストをしました。惑星状星雲については以前ラッキーイメージングというか、どちらかというとノーガイドで撮るために数秒程度までの露出で撮影することはしていました。
しかしもっと淡い対象については諦めていました。使っていたカメラが惑星撮影用の非冷却タイプのCMOSカメラなので、あまりゲインを上げるとノイズが大きすぎて使い物にならないだろうと。
しかし今は感度も高くノイズも少ない冷却カメラがあります。これを使えばなんとかなるのでは?ということで、M1 かに星雲でテストしてみました。が、撮影の不手際で検証しきれず… しかし期待の持てそうな結果ではあったので、後日再チャレンジするために記録しておきます。
12月4日は夕方に金星を撮っていました。
天気はいいし、せっかくなので μ-180C で何か出来ないかと考えて、上に述べたようなことを考えてテストすることにしたわけです。
ASI294MM Pro の Bin 2 (11M pixel)で、ゲインを最大(570)に設定してかに星雲を導入。姿は一応見えるのでが惑星状星雲とは違ってかなり淡い… 無理かも、と思いつつ、Lを1秒露出、RGBを2秒露出、Hαは15秒と長めに設定して撮影。
確か22:00頃から撮影を開始して0:00頃にDSSで仮にスタックしてみたのですか、アライメントがほとんど機能しません。星をほとんど認識してくれず、かといって star detection threshold を下げるとノイズを拾ってめちゃくちゃになります。
よく見るとノーガイドでブレてると思っていた星像がどうもピンぼけっぽい。さらによく見ると微光星がドーナツ状に!完全にピンぼけです… 撮影を中断してピントを合わせ直してそこまで撮った約2000コマを捨てて再撮影。
1:00過ぎにはベランダの天井でケラれてる気がしてきたので1:23に撮影終了。再撮影分は、L 240コマ、RGB各120コマ、Hα60コマです。これを DSS で50%に選別してスタックしました。フラットは夜明け後に鏡筒を快晴の南の空に向けて撮ったスカイフラットです。
とりあえずLRGB(LとRにHαをブレンド)合成したのがこれです。
M1
かに星雲 (2021/12/5 00:46)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO LRGB Filter 31mm & ZWO Ha Filter 31mm / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0, 露出 Hα:15秒 x 120/240コマ L:1秒 x 120/240コマ RGB:2秒 x 各60/120コマ / DeepSkyStacker 4.2.6,
Photoshop 2022,
Lightroom Classic で画像処理
大きく写って迫力はあるのですが、ノイジーで解像感では 8cm F6 + ASI290MC で撮ったものに劣るような…
ただ、このノイズ感は露光不足によるショットノイズっぽいので、単純にコマ数が稼げてないのが原因と思われます。
LとHαをストレッチとノイズリダクションのみで仕上げたものがこちらです。クロップもしていないので周辺部のコマ収差の影響もわかります。
M1
かに星雲 (2021/12/5 00:46) (L, クロップなし)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO LRGB Filter 31mm (L) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0, 露出 1秒 x 120/240コマ / DeepSkyStacker 4.2.6,
Photoshop 2022,
Lightroom Classic で画像処理
Lは結構撮れているように見えますが等倍で見るとボソボソになっていて露光不足を感じます。なにしろF12で総露出時間がたったの2分ですからね… それでも16.5等の「かにパルサー」がちゃんと写っています。逆に言うと星雲の部分はもっと暗いわけですが。
ちなみに240コマ全部スタックすると若干ノイズは改善されましたが、星像も若干肥大する感じ。やはり選別は必要でコマ数をもっともっと稼がないと厳しそう。
μ-180C の周辺部の描写ですが、やはり放射状に星像が伸びてますね。スポットダイアグラムから想像したほどではないのですが、コマ収差で淡く拡がった部分がレベル補正でバックグラウンドノイズもろとも消えて見えなくなっているだけでしょうか?
中心部2/3ほどは使える感じですが、左上だけ星像の伸びが大きいのが気になります。
M1
かに星雲 (2021/12/5 00:46) (Hα, クロップなし)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO Ha Filter 31mm / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0, 露出 15秒 x 60/120コマ / DeepSkyStacker 4.2.6,
Photoshop 2022,
Lightroom Classic で画像処理
Hαは露出をかけただけのことはあってボソボソ感はだいぶマシなのですが、レベルを切り詰めると背景のノイズが結構浮いてきます。右やや上の端にアンプグローっぽい形も見えるのでダークノイズが取りきれてない?
焦点距離2160mmをノーガイドで15秒なので、使い物にならないことも覚悟していたんですが、結構まともに写っています。星像がもっと肥大するかと思っていました。
Lに写っていた微光星でHαに写ってないものが結構あります。スペクトルの違いなのか、単にガイドエラーで暗い星が十分重ならなくて消えてるだけなのか。かにパルサーも見当たりません。中性子星ってHα出ない気がするのですが、そのせい?
ということで不完全燃焼になってしまいましたが、コマ数を稼いで総露出時間を伸ばせばなんとかなりそうな気配です。今後またチャレンジしようと思います。
M1 を撮った後、朝にスカイフラットを撮るため機材は撤収せずそのままにしていたのですが、せっかくなので夜が明けるまで Hα であちこち電子観望していました。
最初に見たのがばら星雲。Hαで30秒露出。中心部のガスの流れが見えています。
電子観望: ばら星雲中心部 (2021/12/5 01:49)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO Ha Filter 31mm / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0 露出: 30秒 /
iPhone 12 mini で画面を撮影
結構見えるじゃん、と思って馬頭星雲も見てみました。
電子観望: 馬頭星雲 (2021/12/5 02:04)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO Ha Filter 31mm / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0 露出: 30秒 /
iPhone 12 mini で画面を撮影
ノイズはひどいですが、はっきり見えます。さすがにノーガイド30秒はちょっとブレてますね。
次にトールの兜星雲。これは適当に Stellarium で見つけた星雲を導入していたような。あ、これがトールの兜か、とびっくりした記憶があります。せっかくなので残しておくか、とここからライブスタックで画像を保存しました。
Livestack: NGC2359 トールの兜星雲 (2021/12/5 02:27)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO Ha Filter 31mm / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0, 露出 8秒 x 26コマ (Livestack) / DeepSkyStacker 4.2.6,
Photoshop 2022 で画像処理
DSS は fits → tiff 変換に使用しているだけです。
春の銀河が見えてくる頃だったので銀河も見てみました。ここからは R フィルター使用です。
Livestack: NGC2903 (2021/12/5 03:02)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO LRGB Filter 31mm (R) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0, 露出 2秒 x 256コマ (Livestack) /
Photoshop 2022 で画像処理
NGC2903です。ダーク、フラットなしにしては結構写ってる?でも2秒露出でも全部スタックするとブレてしまいますね。あと、縮緬ノイズが結構出てます。
しし座三つ子銀河の M65, M66, NGC3628 も撮りました。
Livestack: M66 (2021/12/5 03:16)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO LRGB Filter 31mm (R) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0, 露出 2秒 x 256コマ (Livestack) /
Photoshop 2022 で画像処理
Livestack: M65 (2021/12/5 03:28)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO LRGB Filter 31mm (R) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0, 露出 2秒 x 273コマ (Livestack) /
Photoshop 2022 で画像処理
Livestack: NGC3628 (2021/12/5 03:44) (rawframesを処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO LRGB Filter 31mm (R?) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0, 露出 ?秒 x 213コマ (Livestack) / DeepSkyStacker 4.2.6,
Photoshop 2022 で画像処理
明るい銀河はそこそこ写ります。露出をもっとかけてフレームを選別してスタックすればそこそこけいそう?
NGC3628 は操作ミスで Livestack 結果が保存できてなくて自動保存されていた rawframes を DSS でスタックしました。PNG の rawfarames しか残っていなかったので撮影データがわかりません。たぶん他と同じ2秒露出だと思います。
M100 も撮りましたが、これも rawframes を DSS で処理したのですが、star detection threshold が難しくて頑張って調整しても368コマのうち20コマしかスタックできませんでした。写野に明るい星が少ないのも影響しているかも。
Livestack: M100 (2021/12/5 04:00) (rawframesを処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO LRGB Filter 31mm (R?) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0, 露出 ?秒 x 20/368コマ (Livestack) / DeepSkyStacker 4.2.6,
Photoshop 2022 で画像処理
これは全然ダメですね。こういうことがあるとなると、数十コマ試し撮りしてスタックして撮るかどうか決めないと、全部無駄になっちゃう可能性ありますね… ただ、DSS が弾いた画像見ても弾かなかった画像と大差ないものも結構あって、スコアの差もわずかで、なんで弾いてるのか謎。スコアのしきい値とかどこかで設定できるのかな?
最後に球状星団 M3 です。これもDSSに結構弾かれてしまいました。
Livestack: M3 (2021/12/5 05:44) (rawframesを処理)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO LRGB Filter 31mm (R?) / Vixen SX2 / ZWO ASI294MM Pro (Gain 570, -10℃), SharpCap 4.0.8418.0, 露出 ?秒 x 9/42コマ (Livestack) / DeepSkyStacker 4.2.6,
Photoshop 2022 で画像処理
周辺減光の形が他と違うように見えるのは、例によってベランダの天井からの照り返しによるカブリじゃないかと思います。
こちらは弾かれた画像は結構ブレていたので仕方がないかなという感じ。
というわけで、μ-180C 直焦点でもラッキーイメージングできるかも?という感触は得ましたが、コマ数むちゃくちゃ撮らなきゃいけない(ディスク容量が大変)のと、縮緬ノイズ対策どうしようというのと、スタックがうまくいかないことがある点は気がかり。また余裕がある時に色々試してみようと思います。