Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

2673黒点群

2日に撮った時にはまだあまりに小さくてスルーしていた2673黒点群ですが、その後もりもりと大きくなったあげく7日には11年ぶりという規模の巨大フレアを起こして新聞沙汰になるほど話題になりました。

ちょうどその頃は天気が悪くて発達した2673黒点群を撮れなかったのですが、今朝になってやっと撮影できました。太陽の自転で西の方に回っていっていて見えなくなる寸前でした。

太陽 (2017/9/9 11:08)
太陽 (2017/9/9 11:08)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12), Kenko PRO ND-100000 77mm / Kenko-Tokina スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 1/1600s / Lightroom CC で画像処理

太陽の向きは太陽の自転軸が垂直になるように調整しました。西端の少し南に見えているのが2673黒点群です。真横に近い斜めから見ている形ですが、それでも随分な大きさなのはわかります。2674黒点群もまだくっきりと見えていますね。

大抵の黒点の寿命は太陽の自転周期よりも短いので*1一度裏側に回ったらそれでさよならなのですが、大きな黒点だと消えずに一周して戻ってくることがあります。2673黒点群はどうなるでしょうか。

探訪!となりの銀河の DSO

DSO (Deep-Sky Objects)と呼ばれる天体のうち散光星雲、惑星状星雲、散開星団球状星団、といった天体は通常数百〜数万光年の距離にあり、同じ天の川銀河の中にある天体です。そして他の銀河の中にもそういった星雲・星団があり、その銀河の住人の目を楽しませているに違いありません。

そんなよその銀河の中の天体を僕らも一緒に見て楽しむことができるでしょうか?先日撮ったさんかく座の銀河 M33 は、アンドロメダ銀河 M31 と並んで天の川銀河に近い銀河ですが(約270万光年)このくらい近いと銀河の中にある DSO が地球からでも見えたりします。

先日の M33 の写真から M33 の中にある星雲・星団を探してみました。小さな望遠鏡で撮ったぼんやりとした写真ですが、それでも拡大してみると銀河内の DSO がいくつか確認できました。*1

M33 (拡大) (2017/9/3 01:28)
M33 (拡大) (2017/9/3 01:28)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井 ED屈折用0.6xレデューサー (合成F3.6), LPS-D1 48mm / Kenko-Tokina スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 8コマ 総露出時間 48分 / DeepSkyStacker 3.3.2, FlatAide Pro 1.0.19, Lightroom CC, Photoshop CC で画像処理, ピクセル等倍切り出し

無改造のデジカメなので赤い星雲の写りが悪いのですが、それでも明るいものはピンク色の斑点として写っています。

左上の少し広がったピンク色の斑点(中央部が露出オーバー気味ですが)は散光星雲 NGC604 です。ちっぽけなようですが M33 の直径が約6万光年ですから、これはかなり大きな星雲です。というか、知られている限りで最大級の大きさで、オリオン座の大星雲 M42 の約50倍もの大きさだそうです。*2

きっと M33 北部(?)の星では○○大星雲みたいな名前がついて天体写真の定番のターゲットとして天文誌の表紙を飾ったりしてるんでしょうね。

写真の中央、M33 の中心部から少し右上にある小さなピンク色の斑点も散光星雲で NGC595 です。これもかなりでかい星雲です。この写真だと色で星雲と識別できるのはここまでで、あとはぼんやりとしか確認できませんが、NGC/IC に含まれるものについては一応印をつけておきました。

その他、一部は NGC/IC 天体とも重なりますが、Aいくつ、という形で番号が降られている星団(stellar association)があります。stellar association はゆるい星の集まりで、散開星団が時間と共にばらけていったものだそうです。*3 たくさんあるので印はつけませんでしたが、上の写真でぶつぶつしたちぎれ雲のように見えるのがそれです。でもノイズなのか星の粒なのかわかりづらいですね…

最後に球状星団が一つ見えています。写真左下の C39 というのがそれです。M33 では最も明るい球状星団だそうです。*4 と言っても光度は15.9等ですし、小さくて恒星にしか見えません。すばる望遠鏡の撮った高解像度画像*5 で見ても見分けがつきませんでした。どうやってこれが球状星団だとわかったんでしょうね…

そんなわけで、銀河外から失礼して M33 の中の DSO をのぞき見してみました。あちらからもこちらの M42 や M8 なんかが見えているのでしょうか。

M33, M45 (2017/9/2)

昨夜は深夜から朝方にかけて晴れそうという予報だったのですが、日没後は空一面に雲が広がり正直期待してませんでした。しかし0時前にはすっかり晴れ。公園に出撃するかベランダで済ますか迷って結局ベランダで。正直途中で曇るかと思っていたのですが、結局は朝まで快晴でした。出撃すればよかったかな…

今回はベランダからはちょっと厳しい M33 を狙いました。M33 は普通に三脚を立てると見えないのですが、一本の脚をベランダの縁の部分に乗り上げるように設置するとギリギリ見えます。

いつものようにドリフト法で1時間近くかけて極軸を合わせて、アンドロメダ座のアルファ星アルフェラッツからはるばる東へと星を辿って M33 を導入。まだ月が出ていたのですが、とりあえず撮影をはじめました。レデューサーとLPS-D1 使用で6分露出です。

可能なら12枚撮ろうと思っていたのですが、2時を過ぎた頃からオートガイダーの映像にベランダの天井が見えてきて結局9枚で終了。やっぱり出撃した方がよかったかなぁ… 最初の1枚は月明かりで背景が明るいのでボツにして結局8枚コンポジットです。

M33 (2017/9/3 01:28)
M33 (2017/9/3 01:28)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井 ED屈折用0.6xレデューサー (合成F3.6), LPS-D1 48mm / Kenko-Tokina スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 8コマ 総露出時間 48分 / DeepSkyStacker 3.3.2, FlatAide Pro 1.0.19, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1150mm 相当にトリミング

去年撮影した時は90秒露出でした。うーん。露出時間が4倍になっても4倍よく写るというわけにはいかなかったようで… でも淡い部分もだいぶはっきり見えてきて迫力が出てきました。

去年ベランダで撮った時にはベランダの天井からの照り返しで強いカブリが出ていましたが、今回は巻きつけフードが効いたようで露出時間の割にカブリは軽微でした。とはいえ無傷ではなく FlatAide Pro と段階フィルターで処理しています。

M33 の撮影が早く終わってしまったので、薄明前までの間 M45 プレアデス星団を撮ることにしました。M45 はなんとか肉眼で見えるので直接導入できました。

M45 (2017/9/3 02:42)
M45 (2017/9/3 02:42)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井 ED屈折用0.6xレデューサー (合成F3.6), LPS-D1 48mm / Kenko-Tokina スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 8コマ 総露出時間 48分 / DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1150mm 相当にトリミング

これも去年の秋に撮った時は90秒露出で露出不足でしたが、6分露出だと青い星雲がかなり見えるようになりました。光害のカブリの中から無理やりあぶり出しているので階調が失われているのが残念ですが…

今回はフラットがイマイチ合わなかったのですが、FlatAide Pro はこういう広範囲に星雲が広がっている対象には使いにくいので段階フィルターでごまかしています。

M45 を撮ったあとはフラットとダークを撮って、ダークを撮っている間 ISS の飛来を肉眼で眺めていました。ISS は M45 のすぐ上をかすめていきました。そうと知っていたら撮っていたのですが… 残念。

今回また PHD2 のガイドパラメータをいじりました。前回変更を見送った「積極性」を70から85に変更。これが効いたようで、RMSエラーは1.3〜1.4秒になりました。0.2秒の改善。

機材のたわみによると思われる赤緯方向のズレは相変わらず発生しています。アリミゾにしてからはズレの量は減っているようですが。BLANCA-80EDT のアリガタ兼三脚座の底にはコルクが貼ってあるのでこれがよくないのかも。剥がしてしまうのも手ですかねぇ。

2674黒点群

あいかわらず曇り空が続いてますが今日は晴れ。また大きな黒点(2674黒点群)が出たということで太陽を撮ってみました。

太陽 (2017/9/2 12:31)
太陽 (2017/9/2 12:31)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12), Kenko PRO ND-100000 77mm / Kenko-Tokina スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 1/1250s / Lightroom CC で画像処理

2674黒点群 (2017/9/2 12:31)
2674黒点群 (2017/9/2 12:31)
上の写真を拡大

この写真、宇宙天気ニュースの SDO 衛星の写真と比べると太陽の向きがずいぶん違います。この写真は DSO を撮る時と同じように天の北極が上になる=地球の自転軸が垂直になる向きにカメラをセットして撮影しているのですが、SDO 衛星の写真は太陽の自転軸が垂直になる向きになっているようです。

太陽の自転軸に対して地球の自転軸が傾いているので向きがズレるのですが、それにしてもこんなに傾いてたっけ?と思って国立天文台の「太陽の自転軸」で調べてみたところ、今日は21.46度も傾いていました。前回(7月14日)は3.46度だったので気づかなかったのでした。

というわけで21.46度回転させたのがこちら。

太陽 (2017/9/2 12:31)

これで SDO 衛星の写真とほぼ同じ向きになりました。

太陽を撮るときはいつもそうですが、熱のせいか像の揺らぎが激しいので20枚以上撮って一番クッキリ写っているカットを現像しています。ピント合わせも大変ですが、そのままだと液晶画面に直射日光を浴びた自分の顔が写り込んで非常に見づらいので頭から黒いTシャツをかぶって作業しています。道行く人から見ると異様な光景だと思いますが仕方がありません…

太陽面のグラデーションが偏っているのはNDフィルターが微妙に傾いているせいだと思います。フィルター面からの反射光によるものと思われるカブりが左に少しズレていて、それで左側が明るくなっています。前回書いたようにフィルターはフード内にはめ込んだラバーフードに取り付けるという変なことをやっているのでなかなかレンズと平行になりません。

NDフィルターの取り付け方法
NDフィルターの取り付け方法

太陽の撮影は、金環食の時に買ったフィルターがもったいないので撮っている、というスタンスなのであまりお金をかける気もなく、細かいことは気にしないことにしています…

M15 (2017/8/24)

昨夜の東京(職場)は夕方から妙に空が晴れていて、これは久々に星が見れるかも?と思いつつも GPV の予報はずっと曇りなのであまり期待せず帰宅したのですが、どうも横浜も晴れているっぽい、ということで、21:30 頃からベランダに望遠鏡を設置。

いつものようにドリフト法で極軸を合わせていたのですが、ネットしながらだらだらとやってたし、高度調整に手間取ったこともあって1時間ぐらいかかりました。純正の微動雲台、高度調整はウォームギア式ですが、バックラッシュが大きくて調整しすぎて戻す時に微調整が難しいです。

今回のターゲットは、みずがめ座の球状星団 M2 と、同じくみずがめ座の惑星状星雲らせん星雲(NGC7293)だったのですが…

あいかわらず横浜は夜空が明るくて、はっきり見える星がアルタイルしかなくて、そこから M2 まで星を辿ろうとしたのですが、ちょっと無理でした。レデューサーなしの 480mm (フルサイズ換算 960mm)だと視野が狭くて途中でどこにいるのかわからなかくなってしまいます。横着せずにガイドスコープとファインダーを交換してファインダーを使えばよかったかも…

目を凝らすとペガサス座の鼻先にある2等星エニフが確認できたので、そのすぐ近くの球状星団 M15 を導入しました。そこから南に下れば M2 ですが、せっかくなので M15 を撮ることにしました。

今回は赤経方向の追尾精度の改善がテーマで、PHD2 のガイドアルゴリズムのパラメーターを変えてみました。アルゴリズムは「ヒステリシス」で、今まで設定はデフォルトのままでした。今回は「積極性」を上げてみよう、と思ったら「最小移動検知量」がなぜかデフォルトの 0.20 ではなく 0.38 になっていることが判明。こんなところいじった憶えはないのですが…

そういえばガイドグラフを見るとガイド星の動きに対して修正動作が出遅れる傾向があったな、と思って、こちらをデフォルトの 0.20 に戻すことにしました。「積極性」も 80 に設定して、試験運転では良さそうな雰囲気だったのですが、一度に二つのパラメーターを変えるとどちらの効果なのかわからなくなるので、本番では 70 のまま撮影しました。

撮影中ガイドカメラの映像に人工衛星が横切るのが映っていましたが、σクリッピングで消せばいいやと予定通り8枚撮影で終わろうと思ったところ、8枚目を撮り終わる前にフラット撮影のために用意した iPad を PC に挿したUSBケーブルのコネクタにぶつけてしまいました。

ガイドカメラの映像がピタッと止まりガイドグラフも停止。オートガイダーとの通信が途絶えてしまったようです。あわててUSBケーブルを挿し直し PHD2 を再起動。すぐにガイドが再開したのですが、10秒近くガイドが止まってしまいました。撮影後写真を確認すると問題の8枚目は見事にブレていたので追加で1枚撮影…

というわけでなんとか撮れたのがこちら。

M15 (2017/8/24 23:01)
M15 (2017/8/24 23:01)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Kenko-Tokina スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 8コマ 総露出時間 48分 / DeepSkyStacker 3.3.2, FlatAide Pro 1.0.18, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

なかなか球状星団らしく写っていると思うのですが、天文書の作例と比べると粒の小さな星の写りが悪いのか、いまいち密度が足りないような写りです。ちょっとピントが甘いからかな?それとも追尾精度の問題でしょうか。

ガイドパラメーターの変更はそこそこ効いている様子で、RMSエラーは1.5〜1.6秒ぐらいでした。今までは2秒弱だったので少しはマシに。でも等倍でよく見るとまだ星が楕円になっています。

http://rna.sakura.ne.jp/share/phd2-20170824-IMG_5011.JPG

ちなみに人工衛星はガイドカメラ映像で見たものの他にもいくつも近くを横切っていましたが、σクリッピングで綺麗に消えました。

M15 の後はレデューサーを付けてらせん星雲を狙ったのですが…

フォーマルハウトから星を辿ってらせん星雲があるはずの場所を試し撮りしたのですが何も写りません。Lightroom で色々いじってもそれらしき星雲は確認できず。そもそも高度が低いせいか薄雲が出ているのか透明度が悪く背景も明るくて星があまり写りません。ISO200の60秒露出で背景の濃度が25%ありました。

これでは長時間露出だと白飛びしてしまうので3分露出でとりあえず撮影開始。しかしガイドカメラの映像はザラザラのノイズにまみれているし、PHD2 は頻繁にガイド星を見失うしで、まともに撮れている気がしない状況。8枚撮り終わって外を見ると薄雲が一面にひろがっていました…

というわけでらせん星雲は失敗。また次の機会に狙ってみたいです。

失敗と言えば、ダークを撮る前になって気付いたのですが、また組み込みの伸縮フードを伸ばすのを忘れてました。なんで巻きつけフードを巻きつける時に気づかないかなー。あとでブログ読み返してこの手の失敗をリストアップしてチェック項目にまとめたいと思います…

天体写真を撮ること、天体撮影について語ること

僕みたいな一般人が貧弱な機材で天体写真を撮ることの意味ってなんだろう。綺麗な天体写真を見たいなら、そういう本はいくらでもあるし、NASA のサイトに行けば人類史上最高レベルの天体写真を無料で飽きるまで眺めていられる。

純粋に天体を見たい、知りたい、ということであれば、ハッブル宇宙望遠鏡のような最高の機材で撮った写真を見るのが一番だ。どうしても自分の眼で見たいのなら望遠鏡を所有して好きな時に眺めるというのも悪くはないが、写真を撮るとなるとどうだろう。

一部の天文現象を除けば、たいていの天体写真はいつどこで誰が撮っても基本的には同じ写真にしかならない。天体はいつでも誰にでも同じ姿しか見せないので、ベストな撮り方はだいたい決まっているし、あとは単線的なクォリティの差でしか差別化できない。

そしてクォリティの差は圧倒的に機材の差から生まれてくる。結局のところ、いかにハッブル宇宙望遠鏡レベルの写真に迫るものを撮ることができるか、という話になる。それならハッブルが撮った写真でいいのでは?

通常、一般人が撮った天体写真にはオンリー・ワンな要素は全くない。ハッブルが撮った写真にはない特別な何かなんて何一つない、ただの写りの悪い写真でしかない。そんなものをなぜ撮るのか?

影技術を身につけること自体が楽しいということはある。これだけの機材でどこまでの写真が撮れるか極めたい、という楽しみ方はあるだろう。しかし、大抵の人は撮れば撮るほどもっといい写真を撮りたいと思うようになり、より高価な機材に手を出すようになるのだから、そういった楽しみ自体はあまり本質的でないように思える。

それではなぜ?オンリー・ワンな要素はないと言ったが、しかし、自分が撮った写真は自分にとってだけは特別だ。僕自身、自分で撮った天体写真をたびたび見返しては何とも言えない気分に浸ることがよくある。そんな時の気分にはハッブルの写真を眺めるのとは違う何かが確かにある。

それは旅行で撮った写真を見返して旅先での思い出に浸るのに似ているように思う。旅先の思い出と言っても色々あるが、苦労してその場所に辿りつけた、その場所の空気に触れた、という感慨のようなものの記憶のことだ。

と言っても、僕はほとんど旅行をしない人なので、思い出のそういうところを振り返るのが一般的なことなのかよくわからない。普通は土地の人とのふれあいや同行した友と語り明かした思い出などを振り返るものなのかもしれないが… それでも天体撮影と旅行には何か共通点があるように思える。

こういうのはどうだろう。光の強さは距離の2乗に反比例して弱まる。だから肉眼に比べて100倍の光を集めて天体写真を撮ることは、その天体との距離の10分の1の距離まで近付いて見るのと同じだ。1000万光年先の天体なら100万光年まで近付いて、つまり900万光年旅したのと同じだ、と。

これはさすがに嘘っぽい気もする。あまりに理屈っぽいし、実際そんなことを考えて天体撮影を始めたわけでもないし。でも、そういうふうに考えるとちょっとだけワクワクしてくるのもまた事実だ。

天体写真を撮るたびに誰が読むともわからないとりとめのない記録を書き残すのも、旅人が旅行記を書き記すのとどこか似ている気がする。記録を残すこと、その記録を誰かが読んで証人となること。そういったことで旅の体験がより確かなものに感じられるようになる。

普通の旅なら写真自体が記録になるが、天体写真の場合、写真そのものは上手いか下手かという点以外には他人の撮った写真との区別がつきにくいだけに、どうやって撮ったのかという記録が自分の「旅」の証となる。

天体写真の撮影記は技術的なあれこれが多くなりがちで天文の趣味のない人にはあまり面白みのない記録かもしれないが、なにやら頑張って少しでも天体に近づこうと努力しているのだと理解してもらえれば嬉しい。

自宅のベランダや近所の公園に出るだけで宇宙旅行気取りというのもなんだか滑稽かもしれないが、むしろ「見るだけなら宇宙は意外と近い」とも言えるのではないか。北斗七星がやっと見えるぐらいの街の夜空でも、ちょっとした機材と技術があれば様々な天体に近づけるのだから。

月 (2017/8/12)

昨夜 M27 を撮った後は、月が昇るのを待ってから月齢20の月を撮りました。

月齢20.3 (2017/8/13 01:04)
月齢20.3 (2017/8/13 01:04)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12) / Kenko-Tokina スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO400, RAW) 露出 1/80s / Lightroom CC で画像処理

そろそろもっと大口径で長焦点の光学系が欲しくなってくるのですが、そうなると赤道儀も必要になるし…

月を撮った後は機材は片付けて、ベランダから眼視で空を眺めて1時間ほどペルセウス座流星群の流星を待っていたのですが、透明度が低く月明かりで随分空が明るくなっていたこともあってほとんど見えませんでした… くじら座の方向に一つ、やぎ座の方向に一つ、いずれも視界の端でとらえただけでまともに見ていません。

でも久々にゆっくり星空を見ました。と言っても肉眼ではほとんど星が見えない空でしたが。アルタイル、フォーマルハウト、デネブ・カイトス、アルデバラン、ぐらいしか見えませんでした。プレアデス星団は 5cm ファインダーでよく見えました。もうそんな季節なんですね。