Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

M5, M20 (2018/4/21)

4月21日は朝から快晴。予報では翌朝まで快晴ということで月が沈む深夜からは天体撮影日より。相変わらず空の透明度が微妙なのが気がかりですが、リハビリも兼ねてやるだけやってみるという気持ちで20:00頃からベランダに機材を出して撮影準備。

深夜から薄明前にかけて M20 (三裂星雲)を撮るつもりでいたのですが、それまでに何か撮ろうと思ってマルカリアンチェーンを撮ってみることにしました。フルサイズ換算 960mm 相当だと写野ぎりぎりいっぱいの対象なので構図合わせに神経を使います。

21:00頃に試し撮りしたところ12分30秒の露出で背景輝度は68%でした。月がまだ出ているせいか光害のせいもあるのか高度の割に背景が明るいのですが、ぎりぎりなんとかなりそうなので撮影続行。

最初カメラの電源をOFFにしたまま撮影開始してしまったのですが、今回はたまたま PHD2 の手動ディザ撮影を試そうと思って1枚ずつ撮っていたため1回分のタイムロスで済みました。気を取り直して撮影開始してまず1枚撮影したのですが、ガイドが安定しません。それをなんとかしようとしてやらかしてしまいました。

まずキャリブレーションをやりなおし。次にオートガイダーの露出を0.5秒から1秒に変更。これはシーイングの影響で星像がふらつくのにつられて右往左往するのを抑止するためです。少しマシになったのですが、まだ安定しません。

ひょっとしてアライメントしたのが悪影響を与えているのか?と思ってSB10からアライメントデータを全部削除してみたのですが、なぜか追尾が止まってしまいました… 再開する方法がわからずあたふたしているうちに星は流れていきます。

結局適当な恒星を自動導入すると恒星時追尾が再開したのですが、再度マルカリアンチェーン(というか M86)を導入しようとすると SB10 が鏡筒を反転しはじめました。 M86 が既に子午線を越えていたので telescope-west では導入できなくなっていたのでした。

telscope-east になってしまうとカメラが逆さになってしまうので接眼部を回転させる必要があります。が、今回は先にフラットを撮っていたのに接眼部を回転すると撮り直しになってしまうし、ピントも合わせ直しだし、後で三裂星雲を撮るときはまた telescope-west に戻すので、また諸々やり直しです。

面倒すぎるし、トラブルの元なので、もうマルカリアンチェーンはあきらめて他の天体を撮ることにしました。それで撮ったのがへび座球状星団 M5 です。

M5 (2018/4/21 23:09)
M5 (2018/4/21 23:09)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

M5 は昨年撮ったのであまり乗り気でなかったのですが、撮ってみると結構満足できました。光害カットフィルターを使ったおかげで背景の処理がやりやすくなったし、スカイメモSに比べるとガイド精度がよくなっている分、微光星までよく写っています。

M5 は RAW を見ただけでもよく写っているのがわかったので気をよくして三裂星雲の撮影にとりかかりました。1:30頃に試し撮りした段階ではさすがに高度も低く背景が明るかったのですが、それでも RAW を Lightroom でちょっといじっただけでも三裂星雲がクッキリと写っていて期待が持てます。

M5 は淡い部分がない球状星団なのでディザはやりませんでしたが、三裂星雲は手動ディザをやりました。でも12分毎の作業はせわしないし時間も余計にかかるので、2枚おきにディザを実行しました。結果は…

M20 (2018/4/22 01:42)
M20 (2018/4/22 01:42)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

縮小画像だとわからないのですが等倍で見ると「縮緬ノイズ」が出てますね… やっぱり1枚ずつディザしないとダメなのかも?まあ、普通に鑑賞する分には目立たない程度なので良しとします。三裂星雲はレデューサーなしで撮ったのは初めてです。意外と小さい星雲なのでクローズアップで撮れて満足です。

もう少し露出をかけたかったのですが、背景輝度は既に70%前後だし、そもそも12分露出で8枚撮ると天文薄明開始ギリギリまでかかったのでこれ以上露出を伸ばすと一夜では撮れません。長時間ガイドできればFが暗くても撮れると思っていましたが、なかなかそういうわけにはいかないですね。

上の写真はいつものようにトリミングで2倍近く拡大したもので、トリミング前はこんな感じでした(スタックがズレて重ならない分少しトリミングしています)。

M21, M20 (2018/4/22 01:42)
M21, M20 (2018/4/22 01:42)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1000mm 相当にトリミング

散開星団の M21 も写野に入っていますが、フラットナーなしなので結構星像がのびてしまっています。M21 と三裂星雲をバランスよく写野に入れようとすると両方共星像が悪くなってしまうので三裂星雲中心の構図にしました。

なお、ガイドの方は M5 を撮る前に極軸を再調整して(方位が少しズレていた)、アライメントは取らずに運転したところ、その後はかなり安定。赤経赤緯共にRMSエラーは1.0秒前後。

アライメント取らないのが効いてる?そんなことってあるんでしょうか?それとも高度が低めの対象なら安定して高度が高いとダメとか? BLANCA-80EDT の三脚座は構造的に柔いので姿勢によって安定しないということはありそう。ちゃんとした鏡筒バンドで固定したら安定するのかなぁ…

2月の M100 以降は自分のただでさえ低い志の目で見ても満足できない写真しか撮れずかなり落ち込んでいましたが、久しぶりにまともに Deep Sky を撮れました。これからも失敗してもあきらめずに天文を続けていきたいと思います。

木星、土星 (2018/4/19)

4月19日は体調が悪くて会社を休んだのですが、夕方から元気が出てきて色々準備を始めて久々に天体撮影をしたのですが…

今回は M83 のリベンジということで、20:00 頃からベランダに機材を出して 21:30 過ぎに試し撮りを開始。しかし結果は前回と同じ12分30秒の露出で背景輝度が90%…

この時はまだ高度が低かったので20度を越えるのを待って 22:30 に再度試し撮りしたのですが、撮影中のオートガイダーの映像は時々もやがかかったようになっていて、たびたびガイド星を見失う(明るさの変動)状態。背景輝度も前回より悪い86%だったので M83 はあきらめました。

もっと高いところの天体を撮ろうかと M64 黒眼銀河を導入してみたのですが、既に子午線を越えてしまっていて、これから2時間撮影するとなるとベランダの天井に隠れてしまいそうなのでこれもあきらめました。

結局 DSO の撮影はあきらめてCMOSカメラで惑星を撮ることにしました。まずは木星です。

木星 (2018/4/19 23:56)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15) / Vixen SX2 / QHY5L-II-M / 露出 4.7ms x 3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!2 2.6.8, Lightroom Classic CC で画像処理

写真は上が北(正立像)です。中央やや右下に見える黒っぽい粒は大赤斑です。モノクロなのでわかりづらいですが… 直径60ピクセルの小さな像でまともにスタックできるのか?と思ったのですが、意外とそれっぽく写っています。

実は CMOS カメラで撮る前にデジカメ(E-M5)のワンショットで20枚くらい撮ったのですが、このくらい解像したカットは1枚もありませんでした。ライブビューで見るとこのくらいには見えてるんですが…

次は2:00過ぎまで待って土星を撮りました。

土星 (2018/4/20 02:22)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15) / Vixen SX2 / QHY5L-II-M / 露出 8.0ms x 3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!2 2.6.8, Lightroom Classic CC で画像処理

まだ高度が低いせいかシーイングが悪く、動画ではぐにゃぐにゃに歪んだ像しか見えなかったのですが、スタックするとちゃんと土星らしい形になってくれました。とはいえ解像度はいまいちで、カッシーニの間隙も見えません。

やっぱり8cmでは物足りないですねぇ。月惑星用の望遠鏡の購入計画は C8 か μ-180C かでまだ迷っています。どうしようかなぁ…

ちなみに赤道儀の電源問題ですが、今回はACアダプタで給電していたので電池切れを気にせずに撮影できました。夕方このために5mのテーブルタップを買ってきたのでした。いまのところ野外に機材一式を運搬する手段がなくてベランダオンリーなので、当分これで行こうと思います。

これはひどい。M83 (2018/3/14)

ずいぶん間が空いてしまいましたが3月14日の撮影の反省エントリを…

14日は平日にもかかわらずむしゃくしゃして深夜の撮影を敢行しました。ターゲットは11日に電池切れで撮影できなかったM83です。なのですが…

M83 (2018/3/15 00:41)
M83 (2018/3/15 00:41)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分30秒 x 10コマ 総露出時間 2時間5分 / DeepSkyStacker 3.3.2, FlatAide Pro 1.0.28, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

これはひどい… いや、初めての撮影だったら南中高度も低いしこんなもんかーってスルーしてたかもしれないんですが、昨年2月にレデューサー使用で撮ったものと比べると、ノイズがひどくボソボソの仕上がりです。こんなはずではなかった… とがっかりしてしまいました。

その他色々課題がある撮影でしたので今後のためにまとめておこうと思います。

ノイズ

なんでこんなにノイジーなのか?長時間露光のせいでしょうか?ダークフレームのヒストグラム3月11日の撮影で撮ったものと比較すると、ダークノイズの輝度が3倍ぐらい強くなっていました。気温が上がったせいでしょうか?

光害カブリのショットノイズも気になります。今回の写真、強調処理の前はこんな状態でした。

M83 (2018/3/15 00:41) (DSS処理のみ)
M83 (2018/3/15 00:41) (DSS処理のみ)

これは DeepSkyStacker の出力をカラーバランスだけ整えたものですが、背景の輝度が75%もあります。*1 以前の撮影と比べると3月11日の三つ子銀河が68%、先月のM100が50%で、背景輝度が上がるほどノイジーになっている気がします。

ショットノイズの大きさ(標準偏差)は光の強度の平方根に比例するので*2 輝度が大きいほどSN比は上がりますが、ノイズそのものは大きくなるのでレベル補正で背景の輝度を落とした時に浮き出るノイズは大きくなるはずです。

とはいえ平方根で効いてくるので50%から75%でもノイズは22%程度しか増えないんですよね。背景と天体の輝度の差が小さいと、きつい強調処理で天体をあぶり出す時にノイズも強調されてしまうので余計にノイジーになるのでしょうか?

光害カブリがノイズの原因なら春霞で透明度の低い日には撮らない、特に南中高度の低い M83 は冬のうちに撮るべし、ということになります。総露出時間が2時間以上となると薄明前に撮り終わるには2月でしょうか。ダークノイズが原因としても2月なら大丈夫かも。でも夏の天体の撮影が思いやられます…

電池切れ

前回の電池切れに懲りて撮影直前まで充電、トータルで40時間くらいは充電して残量表示がグリーンなのも確認して撮影に望んだのですが、撮影終了後コントローラで望遠鏡を動かしたところで電池切れ。ダークを撮った後に眼視で木星を見ようと思ったのですが諦めました。

23:00過ぎに運転開始、03:05に電池切れなので、やはり4時間足らずで電池切れです。これでは使い物になりませんね… ベランダではACアダプターを使うとして、野外ではどうしましょう?もっとも野外に機材を運搬する手段も今はないのでそれも含めて検討したいと思います。

SB10 の設定で導入速度を落とすのと引き換えに消費電力を抑える設定があるのでそれも試してみようと思いますが、運転時間の大半はオートガイドでこの状況なのであまり効果はなさそう。

ガイドの乱れ

前回ガイドの調子がよかったのでもう大丈夫かと思ったら、今回は赤緯方向のガイドがかなり乱れました。RMSエラーは赤経0.95秒、赤緯1.35秒。

赤緯方向のエラーは、こんな感じに行ったり来たりしたり、

ガイドの乱れ: 赤緯方向に行ったり来たり

あるいは突然大きくブレたりというもの。

ガイドの乱れ: 赤緯方向に急にブレる

なんなんでしょうね?風はほぼ無風だったので、風のせいではないはず。ケーブルが引っかかってるせいでもなさそうな…

その他

今回は「なんちゃってディザリング」をやってみました。前々回方向キーの速度が速すぎると言っていましたが、これはズームキーで解決しました。ズームキーは星図をズームするものだとばかり思っていたのですが、連動して方向キーの速度が調整される仕組みになっていて、ズームアップすれば微動になるのでした。


そんなわけで、今回の撮影は失敗と言っていい結果に終わりました。ぶっちゃけかなり凹みました。スカイメモSで撮った写真の方がずっと綺麗っていうのが… 元々 SX2 は惑星観察用の望遠鏡を載せるために購入したのですが、そちらの方も不安になってきました。この上まだ20万以上投資して元取れるの?みたいな。うーん…

*1:というか、最初に15分露出で試し撮りした時に90%になってしまったので露出を12分30秒に落として75%になるようにしました。

*2:参考: 田中光学工業株式会社 ショットノイズとは

しし座の三つ子銀河 (2018/3/11)

3月に入ってから2回撮影しましたが、2回とも満足な結果が得られず落ち込んでいます…

3月11日は深夜までにしし座の三つ子銀河を、深夜からは M83 を撮る予定でした。19:30頃から準備を始めて20:30に極軸合わせを完了し、三つ子銀河が十分昇るのを待って21:22撮影開始。15分露出で12枚撮影します。

前回赤経赤緯」に設定していた SB10 の方向キーの設定ですが、これは「X-Y」に設定しました。また、撮影前に PHD2 のキャリブレーションをやり直しました。この時、結果が前回(ドリフトアライメントする前)と大きく異なるが大丈夫か?みたいな警告が出ましたが、やり直した結果を使うことにしました。そのへんが効いたのか、今回はガイドが好調。RMSエラーは赤経が0.8〜1.0秒、赤緯が0.7〜1.1秒。

この日は体調がすぐれず、待っている間に具合が悪くなって横になっていました。8枚目の撮影が終了する時間にセットしたタイマーに起こされて様子を見ると、PHD2 のガイドグラフが変です。

ガイド撮影中に赤道儀が停止

これは一体…!?ベランダに出てカメラのライブビューを見ると全然違う場所が写っています。最後に撮った8枚目の写真を見ると星がまっすぐ西へ流れていて、どうやら赤道儀の追尾が停止してしまったようです。SB10 の画面には「架台との通信が途絶えました.電源を入れなおして下さい」の表示が出ていました。

言われるままに電源を入れなおしたのですが、スコープモードに入るとまた同じ表示。

「架台との通信が途絶えました.電源を入れなおして下さい」

どういうことかと思ったのですが、よく見ると画面右上の電池残量表示が空になっています。SG-1000 の残量表示は赤。電池切れでした。

この電池、4時間しかもたない?前回の撮影では3時間半運転して残量表示はグリーンだったので余裕かと思っていたのですが… 前回の撮影後半日充電してから2週間放置している間に放電してしまったとか?でも鉛蓄電池の自己放電率は1ヶ月で1.5%とかだそうなので*1 そんなに減ってるとも思えません。充電が半日では足りてなかったのでしょうか。

とにかく電池切れではどうにもならないので残りの撮影は諦めました。ACアダプターで運転する手もあるのですが、コードが届きません。今度延長コードを買ってきますか… フラットとダークを撮って1:00に撤収完了しました。

電池切れの前に撮れた7枚をコンポジットしたのがこれです。

M65, M66, NGC3628 (2017/3/11 21:22)
M65, M66, NGC3628 (2017/3/11 21:22)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 15分 x 7コマ 総露出時間 1時間45分 / DeepSkyStacker 3.3.2, FlatAide Pro 1.0.28, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1615mm 相当にトリミング

うーん… 去年スカイメモSで撮ったものと比べると、星像はさすがにシャープなのですが、肝心の銀河がパッとしないというか、なんかノイズまみれなんですが…

M66 を等倍で見るとこんな感じです。

M66 (2018/3/11 21:22)

なんか画用紙に色鉛筆で塗った絵みたいな描写になっています。いわゆる縮緬ノイズでしょうか?以前やっていた「なんちゃってディザリング」を今回はやってないのでそのせいかもしれません。

それにしても背景の(というか光害カブリの)ノイズが目立ちます。光害カットフィルターを使っていますが、それでも背景の輝度は70%あり、それを無理やりレベル補正で落とすと全体にノイズが浮いてくるのです。これをさらにレベル補正で消してしまうと NGC3628 の左右の淡い部分も消えてしまうので、妥協して残しています。

長時間露光だとこうなるのか、それともたまたま春霞が強くてカブリが強く出たのか、よくわかりませんが、せっかく高価な機材を投入して撮影に手間も時間もかけてこれでは… かなり凹みました…

電源の件といい前途多難です。

M100 (2018/2/23)

昨夜は久々の快晴。GPV の予報は朝まで晴れ、月齢は7.6で深夜からは春の銀河が狙えるということで、夕方からそわそわしていました。が、この日は睡眠不足で猛烈に眠く、この状態で重いもの持ったり機械を操作したりするのは危険と思い、21時の帰宅でしたが目覚ましをセットしてすぐに仮眠。23時に目覚ましで起きてさっそくベランダに機材を設置しました。

今回はSX2赤道儀でのオートガイドの試験を兼ねてかみのけ座のフェイスオン銀河 M100 を撮ることにしました。8cm F6 の直焦点、光害カットフィルター使用で15分露出にチャレンジです。

SX2(というかSB10)で撮影するには事前に色々設定が必要です。SB10のメインメニューから「架台の設定」画面を出して以下の設定をしました。

架台の種類
デフォルトでは「極軸を合わせていない赤道儀」ですが、「極軸を合わせた赤道儀」に設定しました。こうしないと追尾中に常に赤道儀側で補正動作が入るためオートガイドに支障が出るとのことです。ドリフトアライメントの際も赤緯方向の追尾を止めないといけないのでこの設定でないとダメなはず。
子午線超え
「強制追尾停止」と「鏡筒反転メッセージ」を「Over 30º」に設定しました。子午線超えから2時間は反転せずに追尾を続ける設定です。もう少し伸ばした方がいいかな?今回は南中前から合計2時間の露出の予定なのでとりあえずこれで。
方向キー
デフォルトでは「高度方位」ですが、フレーミングしやすいように「赤経赤緯」に設定しました。が、今見ると「X-Y」に設定するよう推奨されてますね… ガイドがいまいち安定しなかったのはこれが原因?

今回は15分露出なのでカメラの方も設定が必要でした。E-M5 の BULB はデフォルトでは8分で強制的に切れてしまいます。カスタムメニューの「E.露光/測光/ISO」の「BULB/TIMEリミッター」を「30分」に設定しておきました。

PHD2 の方も SX2 用に「機器と接続」画面から新規に機器プロファイルを作成。既存のプロファイルで使っているカメラを指定してもダークライブラリは引き継がれず作りなおしになって手間取りました。

ここまで設定していつものように PHD2 でドリフトアライメントを開始しようとしたのですが、その前にキャリブレーションに失敗。ガイドカメラの映像を見ると星がどんどん流れていて何事かと思ったら、どうも追尾が止まっていたようです。

SB10 がいつのまにか CHART MODE に入っていたようでそのせい?よくわかりませんがとりあえず ENTER キーで SCOPE MODE に戻してレグルスを自動導入してから方向キーで望遠鏡を赤道付近に動かして、ドリフトアライメントを開始。

どういうわけかドリフト中のガイドグラフがかなり暴れていて不安に駆られます。RA の RMS が2秒超えだったり、DEC もずいぶん乱れて調整しにくいことこの上なし。スカイメモS よりひどいような… 大丈夫か?風はほぼ無風で望遠鏡が揺れてるわけでもなさそうで謎です。

慣れない架台で手間取りましたが50分ほどかけてそこそこ追い込めたかな、というところで極軸調整は終わりにしました。あとは2軸ガイドでどうにかなるはず… 時刻は0時50分。ちょうど月が沈んだ頃です。

M100 は自動導入で導入するつもりで今回は周囲の星の並びとか予習してきませんでした。まず自動導入でアークトゥルスを導入しましたが写野外になってしまって、目視で狙いを定めてなんとか写野内に導入してアライメントを取りました。

そのままバーティノフマスクでピント合わせ。シンチレーションが大きくていまいちピントに自信が持てなかったのですが、今回はオートガイドのテストと割り切って適当なところで切り上げました。

そしていよいよ M100 を導入。カメラのライブビューでは全然見えないので60秒露出で試し撮りすると、写野中心から西にズレた位置にうっすらと星雲状の像が写っていました。方向キーでフレーミングを調整したのですが、速度が速すぎるし、キーを離しても慣性が残っていてすぐオーバーランしてしまって苦労しました。これは後で調整しなくては…

1:14、なんとか南中前に撮影が開始できました。心配していたガイド精度はオートガイドが始まると落ち着いてきて両軸ともRMSエラーは1.0秒前後で安定。30分経過してもしっかり追尾しています。

ただ、赤緯方向の修正動作が思ったより頻繁に発生しているのが気になりました。プラスマイナス両方に修正が入っているので極軸のズレによるものだけではなさそう。5分以内のスパンで見ると赤緯のエラーはスカイメモSの1軸ガイドより大きいくらいです。

ターゲット表示では半径2秒の参照円内に大半が命中しており、追尾精度はスカイメモSの倍くらいでしょうか。でも、もう少し精度が良いかと思っていたのですが… 途中赤緯の振れ幅が増大して RMSエラーが1.5秒弱まで増えることもあり、架台の性能をフルに出せているのか疑問です。

ガイドパラメータは、赤経が「ヒステリシス」でヒステリシス10、積極性75、最小移動検知量0.20、Max RA duration 2500、赤緯が「レジストスイッチ」で積極性100、最小移動検知量0.20、大きな変位に対する高速切り替え有効、Use backlash comp 無効、Max Dec duration 2500、赤緯ガイドモード Auto です。赤経の積極性を少し上げた以外はデフォルト値です。

とはいえ、スカイメモSで赤緯軸方向のズレがどれだけ膨らむかハラハラしながらガイドグラフを眺めていたのと比べるとずっと楽なのは確かです。撮影を中断して極軸の再調整とかしなくていいし…

そんなこんなですが、子午線超えも無事通過してトータル2時間露出の撮影は大きなトラブルもなく終了。赤道儀の電源を切ってフラットとダークを撮って薄明前の4:36に撤収完了。

赤道儀とカメラの電池が足りるか心配でしたが、どちらも大丈夫でした。SG-1000 の残量は GOOD、カメラの方も目盛2つ残った状態で余裕です。

結果はこれです。

M100 (2018/2/24 01:14)
M100 (2018/2/24 01:14)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 15分 x 8コマ 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 3.3.2, FlatAide Pro 1.0.28, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

うずまき… いいですね。二本の腕の微細な構造も見えてきています。巻いている腕の外側に淡く広がった部分はさすがに写っていませんが、横浜の空ではこれが限界ですかね。

赤緯方向のガイドエラーが多めだったせいで若干星像が縦長ですが、許容範囲でしょうか。ピントは結局大丈夫でした。ノイズが多めですがこんなものですかね… コンポジット枚数を増やしたいところですが、16枚なら4時間… 一晩で撮るのは厳しいかも。

ということで、初めての2軸オートガイドはうまくいきました。これならレデューサーなしの直焦点で色々狙っていけそうです。

SX2開封・動作確認

昨日届いたSX2赤道儀を開封してベランダで動作確認をしました。今夜も曇り空でしたが組み立てだけでもやっておこうということで、20時頃から三脚と赤道儀の箱を開封。

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STARBOOK TEN (SB10)は別の箱かと思っていたのですが、SX2 の箱の中にきちんと入っていました。てっきり販売店でセットにしているものだと思っていたのですが、ダンボール箱にも「SX2-SB10」のシールが貼ってあるし、メーカーでセット商品として出荷しているもののようです。STARBOOK ONE は入っていませんでした。

まずベランダに三脚を立てます。水平出しをしたいのですが、この三脚(SXG-HAL130)には水準器が付いていません。ベランダの傾き具合はだいたい把握しているので勘で脚を数cm伸ばして調整。水準器はあとで買ってこなくては…

奥行き93cmのベランダですが、脚を縮めた状態で設置すれば十分余裕がありました。しかし高さはかなり低くてハーフピラーはやはり必要でした。

ハーフピラーを取り付けてから SX2 を箱から取り出しました。出荷状態では極軸と赤緯軸のクランプが緩めてあるので注意。取説によるとギアに衝撃が加わらないようにわざと緩めてあるとのことです。ずっしりと重いので気をつけて持ち運び、ハーフピラーに取り付けました。

1kgのウェイトを取り付け、BLANCA-80EDT を取り付け、極軸周りのバランスをとってみたところ、なんとバランスしません。ウェイト側が重すぎます。望遠鏡にカメラとファインダーも取り付けてみましたが、まだ重すぎ。

1kg が一番軽いのにどうしよう… と思いつつおそるおそるウェイトを外すと、バランスしました!えー??

IMG_5726

というわけでこの鏡筒はウェイトなしで使うことに。1kgのウェイトは無駄になりました…

もうひとつ気になったのは赤緯軸クランプと接眼部のフォーカスハンドルが干渉すること。

IMG_5727

接眼部の回転を控えめにして問題なく使えるのですが、ぶつけないように注意しなくてはなりません。

星は見えないので SB10 の動作確認は後回しにして、とりあえずクランプを緩めて望遠鏡の姿勢を色々試しました。ハーフピラーのおかげでいわゆる「イナバウアー」はこのくらいまで可能。

IMG_5729

高さが少し足りなくてベランダの柵が邪魔して鏡筒を完全には水平に向けられませんでした。高度10度くらいまでかな?三脚を少し伸ばせば解決できそう。ω星団とか狙う時は試してみます。

というところで撤収しようとしていたら、雲が晴れてきて冬の大三角が見えてきたので SB10 の動作確認も行うことにしました。

まず SB10 に内蔵時計用のコイン電池を取り付けるところからです。フタがネジ止めでドライバーが必要なのが面倒ですがフタをなくすことを考えるとこのほうがいいのかな。1年に1回程度のことですし。しかし SB10 意外と軽いですね。見た目から想像するよりずっと軽かったです。

そして SX2 に SB10 と電源(SG-1000)を接続して SX2 の電源スイッチをオン… 何も起こりません。えー?SB10 の電源は SX2 側から取るので、これで SB10 が起動するはずなんですが…

かなり焦りましたが SG-1000 の2つあるシガーソケットのもう一つの方に電源ケーブルを接続したら無事起動しました。SG-1000 の不具合かな… 要確認です。

SB10 の時計を合わせて、観測地に Yokohama を追加して(初期状態では東京しかない)、赤道儀の姿勢をホームポジションにしてスコープモードに入り、まずシリウスを導入しました。

キュイーンという音と共に赤道儀がかなりの速度で動いてピタッと止まります。が、望遠鏡の向きはかなりズレていて、シリウスはファインダーの視野の外。極軸がズレ過ぎなのだろうと、シリウスがファインダーの視野内に入る程度に極軸の方位と高度を調整してから、コントローラで望遠鏡の視野中心に入れてアライメント。

続いてベテルギウスを導入。まだ少しズレているのでもう一度アライメント。次はM42を導入するとほぼ視野中心に導入されました。さらに M35 を導入するとそれらしい方向に向いたのですが薄曇りなこともあって何も見えず…

IMG_5732

その後レグルスを導入。子午線超えの姿勢の入れ替えは自動で実行されました。鏡筒がベランダの柵にぶつかったりしないかと気がかりでしたが大丈夫でした。

その後あちこち自動導入を試しました。BLANCA-80EDT の三脚座兼アリガタは短いので赤緯軸周りのバランスがほとんど調整できず心配でしたが、モーターのトルクが十分あるようで全く問題なく動いていました。

薄雲のせいで星雲星団は M42 以外見えませんでしたが、恒星はちゃんと見えたので自動導入はうまくいっているようです。SB10 にはまだまだ色んな機能があるようですが、基本的な使い方はあまり迷うことなくできました。

30分ほど自動導入で遊んだところで撤収しました。オートガイドのテストなどはまた今度。

赤道儀は元の箱に戻して、三脚は半開きにして立ててあります。赤道儀の元箱は一度開けると寝かせて置くしかないのでかなり場所をとります。収納方法を考えなくてはなりません。というか、このままでは20cmクラスの鏡筒を置く場所がないですね。これは本気で部屋を片付けなくては…

SX2赤道儀買いました

昨年末に「シュミカセ欲しい…」とか言って20センチクラスの鏡筒を乗せる赤道儀を検討していましたが、ポルタ経緯台のメーカー在庫が底をつき、次回入荷は9月との知らせに背中を押され、ついに先週の土曜日、震える決心でポチりました…

https://rna.sakura.ne.jp/share/SX2-order.jpg

というわけで結局 SX2 にしました。STAR-BOOK10 仕様の三脚・極望のセット品です。

決め手は日本語のしっかりしたマニュアルがついていることとサポートの安心感です。SB10仕様にするかどうかは迷いましたが、頭が固くなる前に自動導入赤道儀に慣れておきたいのでSB10仕様にしました。

ハーフピラーはいらないかなと思っていたのですが、三脚の脚を縮めた時の高さが意外と低い(73cm)ことに気付いて*1 一緒に買うことにしました。1kgのウェイトは手持ちの BLANCA-80EDT 用です。取説を見ると付属の1.9kgでは重すぎるようなので。

電源はリチウムイオンバッテリーも検討しましたが… 魅力的なバッテリーを見つけたのですが、同じメーカーが出しているバッテリーが発火事故を起こしているのに気付いて*2 思いとどまり、結局定番のSG-1000にしました。

このクラスの赤道儀は初めてなので、SB10をちゃんと使いこなせるのか、本当にベランダで使える大きさなのか、重すぎて組み立てに苦労しないか、バッテリーの管理をちゃんとできるのか、使わない時の置き場所は確保できるのか、ていうかこんなでかい買い物してこの先生活大丈夫か、などと不安になるばかりで、正直モノが届くのを待ってる間のワクワク感は皆無でした…

そして今朝モノが届きました。うちはエレベーターがないので、宅配屋さんが2回に分けて持ってきてくれました。ということは一人で外に一式持ち出すの無理かも?赤道儀の箱がずっしり重くて焦りました。まあ当分はベランダで使うので持ち運びの事は後で考えよう…

今日は帰りが遅かったし、空はあいにくの曇りということで動作確認はおあずけ。でも予報では週末まで曇りが続きそうだしいつまでも待ってられないので、明日あたり組み立てだけでもやってみるかも。今はとりあえずSG-1000の充電だけしています。残量ランプはGOOD(80%以上)でしたが念の為。