Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

最大光度の金星 (2021/12/4)

12月4日は早朝にレナード彗星とM3の接近を撮ってへとへとになってたのですが、そのまま画像処理。L画像だけ処理して星も彗星を止める合成がうまくいきそうなのを確かめて、LRGB合成もやろうとしたのですが、作業ミスが増えてきたので洗濯物干したら寝ることにしました。

なのですが、結局ほとんど寝なかったのかな?記憶が曖昧なのですが昼には最初のLRGB仕上げを twitter にアップしてますね… そして16:00頃から金星を撮っているのでした。

金星は10月に撮った時に年末までにかなり細くなるという話をしていましたが、

そろそろ細くなった姿を撮っておこうと。日没前でシーイングは荒れてましたが日が沈んで少し落ち着いてきた時に撮ったのがこれです。

金星 (2021/12/4 16:26)
金星 (2021/12/4 16:26)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F41.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 205), SharpCap 4.0.8334.0, 露出 1/500秒 x 1250/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 12.0.7, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

輝面比0.26なので月齢で言うと4あたりでしょうか。三日月よりはやや太い感じです。シーイングが悪いので継ぎ目破綻しないようにクソデカAPを6つだけ置いてスタックしました。もう少しシャープにならないかなーと思うのですが、ピント合わせも至難でなかなか…

しかし視直径デカいですね。40"以上あって今の木星よりデカいです。12月31日には60"超え!輝面比は0.03ということで三日月より細いです。-4.3等ということなのできっと見えるのでしょうが上の撮影と同じ機材では写野に余裕があまりなくて、極軸調整が甘いとすぐフレームアウトしそうですね…

ところでこの日の金星は-4.7等、国立天文台の発表によると今年の最大光度だったそうです。今の今まで知りませんでしたが…

アストロアースの方は12月8日を最大光度としています。「※データ出典:『Astronomical Almanac』(他の出典のものとは日付等が異なる場合があります)」とのことなので、計算方法に諸説あるんでしょうか?金星は内合に近づくほど地球に近付きますが、一方でどんどん欠けていって輝面比が減っていきますから、全体としてどこで一番明るくなるかというと簡単な計算ではなさそうです。

4日の金星の太陽からの離角は40度、年末には14度まで近づきます。この日ですら日中は鏡筒の内側の10cmくらいまで直射日光に照らされていてA3サイズぐらいの段ボールをフードにして影を作っていたのですが、これ以上近づくと完全に日光を遮るのは難しくなります。

どこまで細い金星が撮れるか頑張ってみますが、主鏡に太陽光が届いてしまうと危険ですので、ヤバそうだったら諦めます…

モノクロ冷却CMOSカメラ購入(その3): M42 オリオン座大星雲 (2021/11/5)

11月5日は ASI294MM Pro の DSO 実写テスト二回目を行いました。ターゲットは M45「プレアデス星団」と M42「オリオン座大星雲」です。が、結果から言うと M45 の方は失敗、M42 も色々問題はあるのですが「iPad 見て気にならない」という志の低い基準ではまあ、成功ということで…

前回は「ちょうこくしつ座銀河」を撮ったのですが、

色的には地味でLRGB合成がうまくできたのかいまいちわからないというのもあって、青い M45 とピンク色の M42 を撮ってみようというわけです。

まず一応はうまく撮れた M42 の方から。

M42 (2021/11/6 00:52-03:24)
M42 (2021/11/6 00:52-03:24)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) + ED屈折用フィールドフラットナーII (合成F6) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.10 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro(Binning 1, Gain 150, -10℃), SharpCap 3.2.6482, 露出 L: 4秒 x 6 + 8秒 x 6 + 15秒 x 6 + 30秒 x 6 + 1分 x 8 + 2分 x 15, R: 8秒 x 4 + 15秒 x 4 + 30秒 x 4 + 1分 x 6 + 2分 x 8, G: 8秒 x 4 + 15秒 x 4 + 30秒 x 4 + 1分 x 6 + 2分 x 8, B: 8秒 x 4 + 15秒 x 4 + 30秒 x 4 + 1分 x 6 + 2分 x 8 / DeepSkyStacker 4.2.6, Photoshop 2022, Lightroom Classic で画像処理

多段階露光で撮影し、HDRで仕上げたものです。色合いはうまく再現できました。特別なことはせず普通にカラーバランスを整えただけです。

4年前にほぼ同じ光学系で M42 を撮影しています。カメラは OM-D E-M5 で、やはり多段階露光とHDRで仕上げました。

どちらも光害カットフィルターは使用しなかったので、赤み控え目のナチュラルカラー(?)です。今回の方が少し彩度マシマシで恒星の色が若干エグい?M42 の鳥の頭みたいな部分の首の前にある赤い星がちょっと赤すぎるかも。

ノイズ感は今回の方が若干良好かな、ぐらいの感じですが、L画像の露出時間で比べると前回より少し短め(前回が 4分 x 10コマ = 40分、今回のL画像が 2分 x 15コマ = 30分)で、解像度は約1.6倍(Bin1 なので)なのを考えるとなかなか優秀。同じくらいに縮小するとはるかに低ノイズに見えます。

今回はガイドエラーが大きめだったせいか、解像感は若干劣る感じ。星像も等倍で見ると少し横に伸びています。解像度は 0.99"/ピクセル なので、そもそもRAのRMSエラーが1.0"前後のガイド精度ではなかなか厳しいのですかね。SX2 の限界なのか、ガイドスコープが小さすぎるのか…

そしてガイド精度のムラのせいなのか、シーイングの違いなのか、RGB毎に星像の大きさや形が微妙に違ってしまって、RGB合成すると輝度が飽和した恒星の縁に色が付いてしまいます。等倍で見るとよくわかりますし、1/2に縮小しても鑑賞距離より近づいてよく見ればわかります。

この現象は失敗した M45 の方が顕著で青い星なのに輝星の飽和部分の周りがピンク色になってしまいました。ガイド精度が悪くて南中前に最初に撮って高度も低かったR画像の星像が肥大していたからだと思います。

M45 プレアデス星団 (2021/11/5 221:25:40-23:43:40) (失敗…)
M45 プレアデス星団 (2021/11/5 221:25:40-23:43:40) (失敗…)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) + ED屈折用フィールドフラットナーII (合成F6) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.10 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro(Binning 1, Gain 150, -10℃), SharpCap 3.2.6482, 露出 L: 30秒 x4 + 1分 x 6 + 2分 x 16, R: 2分 x 8, G: 2分 x 8, B: 2分 x 8, DeepSkyStacker 4.2.6, Photoshop 2022, FlatAidPro 1.2.3, Lightroom Classic で画像処理

これはチャンネル別にトーンカーブの形を歪めて誤魔化してますが誤魔化し切れてませんね。

ちなみにこの写真が失敗なのは、フラットを撮る前に縦位置で M42 を撮るためにカメラを回転させたため*1 後から撮ったフラットが合わなくなったからです。一応カメラを90度回転して撮ったフラットも撮ったのですが、完全には合いませんでした。

なお、前回の課題だったフラット撮影の問題は、赤道儀に載せたままの鏡筒を真下に向けてベランダの床に置いた iPad を撮影するという方法で撮ることでほぼ解決しました。この方法だとフィルターを切り替えてのフラット撮影でも安定したフラットが得られます。

ベランダの床は排水のために少し傾いており、鏡筒が光源の面に対して完全に垂直になるように調整するのは難しくて、フラットの輝度に若干傾斜が出ました。とはいえこれは最後に段階フィルターで補正すればなんとかなる感じ。

正しいフラットが撮れた M42 の方では概ね色ムラもなく良好な結果が得られました。しかし M45 の方は色ムラが結構出てしまい FlatAid でも被写体が大きすぎて背景があまりフラットにならず、M45 の淡いガスの部分を炙り出せなくなりました。

回転角のズレでフラットが合わなくてもそこはRGBで差はないから色ムラの原因にはならないと思うのですが何故でしょう?単に撮影時の光害カブリの違いのせい?

話を M42 に戻しますが、もう一点問題が。写真の下半分だけ星像が縦にかなり伸びています。どうもカメラが光軸からシフトまたはチルトしてるっぽいんですよね… フラットナーの効きが弱いとはいえ、横位置で撮った M45 の左右の端の星像はほとんど伸びていないので、フラットナーの収差の問題ではなさそうです。

チルトなら写真の上半分の星像も伸びているはずなので、シフトでしょうか?でも冷却カメラの重さでドローチューブが傾いているのならセンサーの上側、像の下側の方が光軸に近いはずで、シフトが原因なら下側の星像が伸びるのは辻褄が合いません。

ということで課題関係をまとめると、

  • R, G, B のガイド精度やシーイングの違いで星像の大きさに差が出ると輝星の飽和部分の周りに偽の色が付いてしまう
  • カメラ + EWF の重さで接眼部が撓むのか(北を上とする構図の場合)カメラが縦位置だと写真の上下のどこかに星像が伸びる部分ができる
  • フラット撮影はフラットパネルを地面に置いて撮れば安定して R, G, B でフラットが安定せず色ムラになる問題は解決する

前回の課題についてはフラット問題はほぼ解決。低空を撮った時のガイド不良の問題については今の所低空で撮らない以外の対処方法がなさそうです。先日のレナード彗星の撮影では対物レンズをヘリコイドで動かす合焦方式で接眼部にドローチューブがない RedCat 51 では低空を撮っても問題なかったので、要は接眼部の頑丈さ次第ということです。

輝星に偽の色が付く問題については、常に十分な精度の出る赤道儀を買うとか、途中でシーイングが乱れたら諦める、ぐらいしか手がない?みんなどうしてるのでしょう。モノクロ冷却カメラとか使う人は赤道儀もいいの持ってるから悩まないとか?でもシーイングの方は特に長焦点で撮る時は問題になりそうですが…

星像が伸びる問題はとりあえず接眼部のあちこちのネジを締め増しして様子見ですかね。モノクロ冷却カメラ、なかなか難しいです… (続く)

続き:

*1:BLANCA-80EDT はアリガタ直付けの鏡筒なので鏡筒回転ができず接眼部もしくはカメラアダプターのスリーブ接続部を回転する必要があります。

レナード彗星と M3 の接近 (2021/12/4)

12月4日の明け方にレナード彗星(C/2021 A1)と球状星団 M3 の接近を撮りました。M3 との接近は日本では3日明け方が最接近、海外ではほとんど重なるくらいに大接近したツーショットを撮った人もいました。*1

しかし、3日明け方は前日の撮影の疲労が激しくて目覚ましが鳴っても起き上がれず、結局パスしてしまいました。「レナード彗星のバカ!このまま崩壊しちゃえ!」ぐらいの気持ちでいましたが、回復してくると「ごめんさっきのナシ!」ってなって撮ることにしました。

接近と言っても実際の距離はぜんぜん近くなくて、地球からの距離は M3 が 32620光年 = 約31京km、レナード彗星は 0.890AU = 約1.3億km と、M3 の方が24億倍遠くにあります。*2 要するにこの現象は本来「M3 とレナード彗星と地球がほぼ一直線上に並んだ」と言うべきもので、物理的には特に意味はありません。が、M3 星人(いたとして)の方は誰一人気づかない地球人だけが知っている現象ですので、地球人の責務として撮っておこうかな、と。

出遅れてしまったものの、まだ RedCat 51 + マイクロフォーサーズセンサーの写野内にはおさまります。前回はデジカメ(OM-D E-M1 Mark II)での撮影でしたが、ダークノイズの多さ、処理のしにくさに不満があり、思い切ってモノクロ冷却CMOSカメラ(ASI294MM Pro)で撮ることにしました。どうせ最接近じゃないし失敗してもいいから冒険に出るのもいいかなと思って…

ということで、結果はこうなりました。

レナード彗星(C/2021 A1)と M3 の接近 (2021/12/4 04:36)
レナード彗星(C/2021 A1)と M3 の接近 (2021/12/4 04:36)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折) + ZWO LRGB Filter 31mm / Kenko-Tokina スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 2.6.10 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro (Binning 2, Gain 150, -10℃), SharpCap 4.0.8334.0, 露出 L:1分 x 13コマ, R:1分 x 12コマ, G:1分 x 11コマ, B:1分 x 12コマ 総露出時間 48分 / DeepSkyStacker 4.2.6, Photoshop 2022, Lightroom Classic で画像処理

やりました。これは撮れたと言っていいでしょう。 光害で尾はあまり写らないと思ったのですが、想像以上に尾が伸びています。M3 もちゃんと球状星団の星のつぶつぶが解像して存在感のある写りになりました。

ちなみに尾の淡い部分が見づらい時は画面を揺らすと見やすくなるようです。ウインドウを素早く振ったり、マウスホイールで拡大縮小できるなら素早くズームインズームアウトを繰り返しても可。

暗い場所でよく見ると背景に結構色ムラが残ってたりもするのですが、実はカブリが盛大に出て段階フィルターを5つ使って整えました。低空の光害カブリも情報のうちだと思って少しカブリを残しておきましたが、ひょっとすると背後から直撃していたLED照明の光が機材のどこかから光線漏れして迷光になっていたのかも。*3

撮影は大変でした。これまでLRGB撮影は、フィルター毎の必要なコマ数をまとめて撮影していたのでフィルター切り替え回数はフィルターの種類の数だけで済んでいましたが、今回は1コマ撮る毎にフィルターを切り替えていたからです。

低空から昇っていく天体を撮ると光害の影響が刻一刻と変わるためフィルター毎にカブリ方が大きく違ってくることが予想され、そうなるとRGBチャンネル毎の画像処理が大変になるからです。コマ毎に1分露出なら毎回フィルターを切り替えればどのフィルターの画像もほぼ同じカブリになるためチャンネル合成後の画像でカブリを処理しても色ムラになりにくいはずです。

そのかわり撮影はめちゃくちゃ忙しくて #天文なう とかつぶやく暇もない有様でした。SharpCap はスクリプトを書けばフィルター切り替えと撮影を自動でできるらしいんですが、今から書いてデバッグしてる暇ないし、他人のスクリプト使うにしても事前テストは必要なため、今回は気合で手動切り替えすることにしました。

フィルターを切り替えて撮影開始をクリック、フィルターを切り替えて撮影開始をクリック… 繰り返すこと48回。さすがに1回間違えて露光中にフィルターを回してしまってボツにして再撮影したり、露光時間の設定を間違えて(これは後で気付いた)1枚ボツにしたりというのはありました。*4

今回はLRGBの露光時間は全部同じなので露光時間の設定ミスなんてしなくてよさそうなものですが、SharpCap は露光ループ中に撮影開始すると既に露光が始まったフレームから保存する仕様で、普通はこれで便利なのですが、露光中にフィルターホイールを回してもそのまま露光を続けてしまうため、そのコマをボツにするために1回の露光時間分待たなくてはならず、それを避けるために一度露光時間を別の値に切り替えてから元に戻すということをやっていました。

架台は今回もカメラ三脚(マンフロット 055XDB)とスカイメモSです。前回のオートガイドのトラブルはガイドカメラを ZWO ASI290MM に交換することで回避しました。極軸合わせは PHD2 のポーラードリフトアライメントで追い込みましたが、そこそこズレていたようで1時間で赤緯方向に30ピクセルぐらい(角度にして40秒くらい)流れていました。

1分露出なら十分な精度ながらコンポジットすると縮緬ノイズが出るのでは?と思いましたが意外と大丈夫だったようです。別の撮影では盛大に縮緬ノイズが出たことがあるので、冷却カメラなら出ないってわけでもないみたいですが、理由はまだよくわかりません。

導入は前回手動導入に苦労したので事前に Stellarium の望遠鏡視野プラグインでスターホップの時にカメラの写野に星がどう見えるか表示したものをスマホに保存しておいて、それを見ながらアークトゥルスから辿っていきました。

実はピント合わせが終わって導入開始の時点でカメラの向きが南北逆だったのに気付いて、RedCat 51 は鏡筒回転で対応できるものの、うっかりピントリングに触ってピントがズレるとやり直す時間がないので*5 星図の画像の方を逆さに見ることで対処しました。

結果的にはほとんど迷うことなく導入できました。SharpCap のプレビューにレナード彗星の彗星らしい姿が飛び込んできた時は感動しました。デジカメのライブビューだとノイジーで「恒星とはなんか違うやつ」ぐらいにしか見えなかったので。

露光時間は迷ったのですが ASI294MM Pro の Bin 2 (1200万画素)だとピクセルサイズが大きめで目立たないかと思って前回の40秒から1分に伸ばしました。当日のレナード彗星の移動速度は赤経方向が+7.5"/分、赤緯方向が-2.6"/分で、3.8"/ピクセルの解像度だと1分間に +2.0ピクセル/-0.7ピクセル の移動量。このくらいなら許容範囲かなと。

画像処理は、彗星核基準コンポジットだとRGB合成で恒星が重ならなくなって恒星の流れる線がカラフルになってしまうはずです。それはさすがに見苦しいので彗星核基準/恒星基準の双方でσ-κクリッピングでブレる恒星/彗星を消してから合成して彗星も星も止まった写真にしました。以前ウィルタネン彗星でやった処理です。

が、今回は彗星の跡だけでなく、彗星核基準の方にも M3 の跡がクッキリ残ってしまいました。球状星団は星の粒が密集しているので、星粒が流れても他の星粒と重なってσ-κクリッピングでも消えない部分がたくさんできてしまうのです。今回はそれぞれマスクを作るのが面倒なので、やや邪道ですが目立つ部分を手動で範囲選択して「明るさの中間値」フィルタで処理しました。

というわけで最接近は逃しましたが構図的には悪くないし、満足です。でもあんな忙しい撮影はなるべくならやりたくないので SharpCap のスクリプトを勉強するか(言語は Python のようです) N.I.N.A に移行するか…

*1:惑星写真の大家ダミアン・ピーチさんのツイート(2021/12/4 4:49)を参照。

*2:距離は Stellarium 調べ。

*3:どうも ZWO EFWmini のモーターの露出しているあたりから僅かな光線漏れがあるようです。近いうちに検証してエントリを上げます。

*4:LRGB各12コマのはずがGだけ1枚少ないのそのせいです。

*5:RedCat 51 はピントリングの動きが渋くて微調整が大変なのでピント合わせに時間がかかります。

C/2021 A1 レナード彗星 (2021/12/2)

12月2日の明け方にレナード彗星(C/2021 A1)を撮りました。3日の明け方が球状星団 M3 に接近するので狙い目だったのですが、彗星核が崩壊しつつあるのでは?との噂もあり撮れる時に撮っておこうということで。

ちなみに3日は好天だったものの体調が悪くて起きられませんでした… 1日の夜は冷却CMOSカメラの野外での撮影テストをした後そのまま徹夜で明け方のレナード彗星撮影で、翌日は疲労と筋肉痛でくたばってたのです。

結果はこちら。画像の向きは北が上です。

C/2021 A1 レナード彗星 (2021/12/2 04:04-04:30) (彗星核基準コンポジット)
C/2021 A1 レナード彗星 (2021/12/2 04:04-04:30) (彗星核基準コンポジット)
William Optics RedCat 51 (D51mm f250mm F4.9 屈折) / Kenko-Tokina スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 38秒 x 38コマ 総露出時間 24分 / DeepSkyStacker 4.2.6, Photoshop 2022, Lightroom Classic で画像処理

何故か背景の色ムラが激しくて炙りきれませんでしたが、一応尾が伸びた彗星らしい姿は写りました。

レナード彗星は東の空でベランダからは見えないので、またマンションの廊下から撮りました。共用部分とはいえ他人の部屋の前なのでSX2は邪魔になるのでスカイメモSを使用。当然彗星追尾などという芸当はできないので短時間露出を繰り返して DSS の彗星核基準コンポジットで処理しました。

極軸合わせは PHD2 の Polar drift alignment を使う予定だったのですが、PHD2 がガイドカメラ(QHY5L-IIM)から映像を取得できないトラブルが。結局極軸は極軸望遠鏡でアバウトに合わせて(使い方忘れた)、オートガイドも諦めました。このトラブルでばたばたしていて撮影開始が遅れてしまいました。

カラーで撮りたかったのでカメラはデジカメ(OM-D E-M1 Mark II)です。動く彗星をLRGB撮影するのは無理っぽいので。*1 ピント合わせは RedCat 51 付属のクリアバーティノフマスクを使用。光害で明るい低空でも一際目立つアークトゥルスを使いました。

そのままアークトゥルスからスターホップしようとしたのですが、途中で星の並びを見失い右往左往。たまたま特徴的な星の並びを星図(スマホアプリのiステラ)に見つけて現在位置を把握して M3 までたどり着いてそこからなんとかレナード彗星を導入できました。デジカメのライブビューでは尾は見えませんでしたが、ぼんやり拡がったコマははっきり見えました。

試し撮りの60秒露出で尾も映ったのですが、彗星の移動が結構速くてブレそうだし、極軸も怪しくオートガイドもないので少し短めの40秒露出で撮ることにしました。インターバルタイマーでコマ間の待ち時間をうっかり0にしてしまったせいでシャッターの動作とSDカードへの書き込みのラグの分引かれて、最初のコマ以外は38秒になりましたが、その場では原因がわからなかったのでそのまま撮影。

結果はやはり追尾エラーでブレているコマも結構ありましたが、選別すると彗星核基準でコンポジットした時に恒星の流れが途切れて気持ち悪くなりそうなので全コマスタックしました。像は甘くなっているはずですが、パッと見目立たないのでよしとします。

背景の変な色ムラについては謎なのですが、真上からLED照明で照らされている環境だったのでどこかから迷光でも拾ったのでしょうか。ダークもその場で撮ったので鏡筒の蓋が甘かったかと思いフラットとダークなしでも処理してみましたが色ムラは変わりませんでした。

PHD2 のトラブルですが、後で調査したものの原因がわからず、結局今後は ASI290MM を使うことにしました。ノートパソコンは Panasonic Let's Note CF-SZ6 で、最近天体撮影用に買った中古品です。事前のテストでは問題なかったのですが…

前夜の撮影でも同様のトラブルがあったのですが、ケーブルをつなぎ直したりしているうちに直ったのでケーブルの接触が悪かったのかと思っていたのですが、その状況でも SharpCap では普通にプレビューできるし、同じケーブルでデスクトップPCに繋いだら PHD2 でも問題ありません。

レッツノート本体の Wi-Fi のスイッチを OFF/ON すると復帰して10秒くらい映像が流れてくるのですが、また止まってしまうのも謎です。QHYのドライバーを再インストールしたりインテルのオプションのドライバを更新したり、デスクトップで使っている古いドライバに入れ替えたりと色々試したのですが症状は変わりませんでした。

ということで、3日の明け方に再チャレンジ、と思って準備はしていたのですが目覚ましが鳴った時には体がだるすぎてもう無理ってなってしまって撮れませんでした… 尾の後ろの方は光害で写らなさそうなので明日もなんとか写野内に M3 を入れられるかな?

*1:彗星核基準コンポジットすると恒星がカラフルになるのを我慢すれば可能?

モノクロ冷却CMOSカメラ購入(その2): NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2021/10/29)

ばたばたしているうちに1ヶ月経ってしまいましたが、10月29日に行った初のLRGB撮影*1 について書きます。

前回はモノクロ冷却CMOSカメラ ZWO ASI294MM Pro のセットアップについて書きました。

カメラが届いた頃には満月期だったのでDSOをターゲットとした最初のテスト撮影は月の出がだいぶ遅くなった10月29日になりました。

テスト撮影なので明るく撮りやすいM42あたりがいいかなと思っていたのですが、この日は月齢22の月がかに座にあり、月の影響で実力が分かりづらいのもテスト撮影としては好ましくないと思い、月の出前に撮れる対象としてNGC253「ちょうこくしつ座銀河」を選びました。色的には地味なのですが、中心部のオレンジ色など目立つ色もあるので、LRGB合成の具合もある程度は判断できるかなと。

撮影鏡はいつもの 8cm F6 屈折の直焦点(BLANCA-80EDT)です。接眼部は購入時にオプションのDXマイクロフォーカス接眼部に換装済み。月面のテスト撮影では合焦に問題はなかったのですが、長時間露出のガイド撮影に耐えられるかどうかはまだ不明。また、今回初めてフラットナーを使います。

この日までにLRGBの撮影方法や画像処理方法は他の天文家の方のブログ等を見て予習していました。フィルター毎の撮影順は高度が低い時に R や Hα、高い時に B と L、G はその中間の時に、同じフィルターのフレームをまとめて撮るのが一般的なようです。

フィルター毎にスタックするので1フレーム毎にフィルターを変えて撮影時間が長くなると光害カブリの変化が大きくなって画像処理が難しくなるのでチャンネル毎にまとめて撮った方がよい、大気による散乱の影響を受けにくい長い波長は高度が低い時に、大気の影響を受けやすい低い波長は高度が高い時に、Lは画質の要なので南中時の良い条件で撮る、という理屈です。

今回は対象が撮影開始時に南中していたので、L、B、G、R、Hα の順で撮りました。ASI294MM は Bin 2 (4144 x 2822, 約1200万画素)で撮るのが標準ですが、ちょうこくしつ座銀河は以前同じ鏡筒で ASI290MC で撮ったことがあり、比較のためにも同等以上の解像度で撮りたいと思い Bin 1 (8288 5644, 約4700万画素)で撮りました。bin1 ではピクセルサイズが2.315μmになり、ASI290MC の2.9μmより高解像度です。

春頃に銀河はクリアフィルターもしくはノーフィルターで撮るのがよいという話があったのですが、EFWmini には5つしかフィルター穴がなくて L/R/G/B/Hα で埋まってしまったので、L画像は普通にLフィルターで撮りました。Hα撮るのやめて外そうかとも思ったのですが、枠なしフィルターの付け外しは手間ですし神経を使う作業なので諦めました…

この日は SharpCap でのフィルターの切り替え方法がわからなかったので ASCOM Diagnostics の Choose Device から EFW を選んで [Properties] で開いたダイアログから操作していました。

これは後日 SharpCap の設定で SharpCap から制御できるようになりました。メインメニューの [File - SharpCap Settings] で設定画面を開いて [Hardware] タブの Filter Wheel から [ZWO FilterWheel (1)] を選択して [OK] です。*2

カメラの冷却は SharpCap から2℃/分を目安に手動調整でゆっくり冷やしていきました。-10℃まで冷やしましたが冷却パワーは50%くらいだったかな?まだまだ余裕がありました。

気を付けたいのは撮影後。うっかりカメラを Close Camera で閉じてしまうと冷却も即停止して一気に温度が上がります。結露の原因になるのでゆっくり温度を戻すべきとのことなので、撤収時は最後までカメラの接続を保ったまま設定温度を徐々に上げていきます。というか、この日はこのうっかりをやらかしてしまいました。幸い結露はなかったようですが…

ピントはLフィルターで SharpCap のバーティノフマスク支援機能で追い込んだ後、他のフィルターでもそのまま撮影しました。3枚玉アポですし、フィルターの光路長もほとんど変わらないらしいし、RGBの方はLRGB合成時にぼかし処理を入れるくらいなのであまり神経質にならなくてよいかなと。

露出時間はL画像で試し撮りして Gain 150 で2分露出に決めました。RGBも同じ露出にしました。RGB の方が光量が落ちるので長めに露出した方がよいかとも思ったのですが、画質への影響が少ないからLより短くても構わないとの話もあり、いまいち判断がつかないのでとりあえず同じに。

Hαはさらに暗くて2分ではほとんど何も写らないので4分露出で撮る予定でしたが、後述するようにガイドが安定しなかったので Gain 300 の2分露出で撮影。それでも星像が流れてしまって結局撮影をあきらめました。

L/R/G/B/Hα各8コマを目標に撮影しましたが、Bin 1 での高解像度撮影のせいかガイドの乱れが目立ちます。極軸はドリフト法で追い込んだので赤緯ガイドは安定していたのですが、そのせいで赤経方向の揺らぎが赤緯より大きくなり星像が東西に伸びる傾向があり、時折伸びすぎて一つの星が二つに写ってしまうこともありました。

最後のHαの撮影はかなり「イナバウアー」状態での撮影だったのですが、このあたりから異変が。PHD2 のターゲット表示ではガイドに大きな偏りはないのに撮影画像では明らかに星像が東西方向に流れているのです。それが何分間も続いて写野がどんどんズレていきます。

接眼部がゆっくり撓んでいるのか、あるいはフィルターがゆっくり傾いているのか。ガイド鏡は接眼部の根本のファインダー台座に取り付けているので、ドローチューブから先の部分で何かが起きているのは確かなのですが特定できませんでした。

結局Hαの撮影は断念して撮影を終了。フラットは今まで通り対物レンズの前に白画像を表示した iPad をかざして撮ったのですが、これが間違いでした… LRGB撮影だとフィルター毎にフラットを撮らなくてはならないのですが、手持ちでかざした iPad では平行性が安定せずフィルター毎にフラットの品質がバラついてしまったのです。

LRGB 合成するとこれが色ムラの原因となり、処理が困難になりました。結局 FlatAidPro でフィルター毎にフラット補正を行ってからLRGB合成しました。FlatAidPro は未だに無料版を使っているので画像は800万画素に収まるようにトリミング。

結果はこうなりました。基本的にストレッチやノイズ処理、カラーバランス調整等のみで、星マスク等のマスク処理はしていません。

NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2021/10/29 21:58-23:38)
NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2021/10/29 21:58-23:38)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) + ED屈折用フィールドフラットナーII (合成F6) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.10 による自動ガイド / ZWO ASI294MM Pro(Binning 1, Gain 150, -10℃), SharpCap 3.2.6482, 露出 L: 2分 x 8, R: 2分 x 8, G: 2分 x6, B: 2分 x 7 / DeepSkyStacker 4.2.6, Photoshop 2022, FlatAidPro 1.2.3, Lightroom Classic で画像処理

フィルター毎にコンポジット枚数がバラバラですが、ガイド不調でボツにしたコマが出たせいです… とはいえコマ数の割には結構よく写っているのでは?

昨年11月に ASI290MC で撮ったのがこちら。3分露出の32コマコンポジットです。

低空の対象で大気の透明度などの条件が異なりますし、画像処理も違うので単純には比較できませんが、今回の写真のL画像が2分露出の8コマコンポジットなのを考えるとノイズの少なさは明らかなようです。

一方で分解能は今回の方が劣ります。今回はガイドエラーが大きく星像が明らかに流れているのでその影響でしょうか。淡い部分の写りは今回の方が良くて、あぶり出し耐性が高そうに見えるのですが、このあたりは空の透明度次第でだいぶ変わるので何とも言えません。

写野周辺部の写りも確かめたかったので FlatAidPro(FAP) で撮影画像を40%縮小したものからシェーディング画像を作成して2.5倍に引き伸ばして Photoshop で処理するという脱法 FlatAid 処理(?)をやってみました。

NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2021/10/29 21:58-23:38)
NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2021/10/29 21:58-23:38)
撮影データは上に同じ。

フラットナーはそこそこ効いている感じですが、四隅の星像は等倍で見ると明らかに伸びていますね…

さて、画像処理ですが、DeepSkyStacker(DSS) でのスタック処理はこちらの記事を参考にしました。

具体的には以下のような手順で処理しました。

  1. まず DSS でL画像をスタックする
  2. スタック後 Score が最大で dx, dy が 0 のライトフレームを参照フレームに設定
    • フレームを選択して右クリックメニューから [Use as reference frame] を実行
    • 参照フレームは Score の頭に「(*)」マークが付く
  3. 参照フレームだけ残してファイルリストの内容をR画像のものと入れ替える
  4. 参照フレームのチェックを外してR画像をスタックする
    • 参照フレームのチェックを外すとスタックの対象にはならないが位置合わせの基準として使用される
  5. 同様の操作をG,B画像についても繰り返す
  6. Phothoshop で DSS でスタック済みのR,G,B画像を 軽くストレッチ(レベル補正)
    • R,G,B 全て同じパラメーターで補正すること
  7. FAP でストレッチ済みのR,G,B画像をそれぞれフラット処理
  8. DSS でスタック済みのR,G,B画像を Phothoshop でそれぞれ開く
    • 画像のタブが3つ開いた状態にする
  9. R,G,B いずれかの画像で [チャンネル] タブを選択してタブバーの右端のボタンで開くメニューから [チャンネルの統合...] を選択
  10. ダイアログの画像モードのメニューで [RGB カラー] を選択して [OK]
  11. 開いている3つの画像をレッド、グリーン、ブルーのチャンネルに適切に割り当てて [OK]
    • 3つの画像が閉じてRGB合成済みの新規画像が開く
  12. カラーバランスを調整して保存

あとは惑星のLRGB合成と同様に Lab モードに切り替えて、LチャンネルにL画像のLチャンネルをコピペすればOKです。

ちなみに脱法 FlatAid の場合は縮小画像のフラット画像(ファイル名末尾に _ff が付く)を保存して元の倍率に拡大後、元画像の上にレイヤーで重ねて不透明度50%にして減算すると良さそうな感じになりました。最初はフラット補正だから除算だろと思ってやってみましたがうまく行かず試行錯誤してこれにたどり着いたのですがこれでいいんでしょうか… この機会にちゃんと課金して合法 FlatAid に移行しようかと思います…

ということで結果自体はやや残念な結果になりましたが課題の洗い出しはできました。

  • 望遠鏡の姿勢によってガイド不良になる問題
  • 手持ち iPad ではフラット画像が安定せずRGB合成時に色ムラが発生する問題

最初の問題の原因は接眼部の撓み(冷却カメラが重いため姿勢変化でドローチューブが傾いた?)の可能性が濃厚です。西の低い方向を向くまでは顕在化しなかったのでその方向での撮影を避けることで回避はできそう。でもLRGB撮影はどうしても長時間撮影になってしまうので、避けられるかどうか… あとは接眼部の各種固定ネジの締め増しでしょうか。

二番目の問題はフラット光源を固定する方法があれば解決できますが、筒先に被せる方式の専用のフラット光源は値が張りますし小口径用のものは国内に在庫がないようです。

後日それぞれ対策を試みたのですが… (続く)

*1:惑星でやっていたモノクロカメラとカラーカメラを組み合わせたL+RGBではなくモノクロカメラとカラーフィルターを使ったL+R+G+Bの撮影。

*2:ただしこれをやると Filter Wheel を接続していない状態で SharpCap を起動すると警告が出るようになります。起動時に一回無視すればよいだけですが最初はびっくりしました。

ほぼ皆既の部分月食 (2021/11/19)

11月19日の夕方に部分月食がありました。今回の部分月食は月の直径の97.8%まで地球の影に入るため「ほぼ皆既月食」と言われていました。国立天文台では「たいへん深い」部分月食と呼んでいます。

ただの部分月食ならともかく、そこまでのものならばと、この日は仕事を休んで撮影の準備をして16:00頃からスタンバイ。天気は曇りで途中何度も雲に邪魔されましたが、最大食分の18:03前後に雲がほぼ切れるという幸運に恵まれて「ほぼ皆既」の瞬間を撮ることができました。

18:02:58.68 が最大食分でしたが、デジカメの電子シャッターの連射で沢山撮っていたので、その前後23秒間を含めた47コマをスタックして処理したものがこちら。

部分月食 (2021/11/19 18:02:34-18:03:22 (47コマスタック))
部分月食 (2021/11/19 18:02:34-18:03:22 (47コマスタック))
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Kenko-Tokina スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO400, RAW) 露出 1s x 47コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理

なかなかシャープな仕上がりになりました。ただし47秒間の加算平均なので欠け際の形は正確ではありません。と言ってもほとんどわからない程度だと思いますが… あと、当然月基準でスタックしてるので周囲の恒星が流れています。

最大食分の瞬間のワンショットはこれです。

部分月食 (2021/11/19 18:02:58)
部分月食 (2021/11/19 18:02:58)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Kenko-Tokina スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO400, RAW) 露出 1s / Lightroom Classic で画像処理

これだけ見れば悪くないんですが、スタックした方と比べるとやはりぼやけて見えてしまいますね…

なお月の向きは北が左で、ほぼ観測地から見たままの向きです。こういうのも月の北極を北にした方がいいのかな?月面写真とはまた違うテーマの写真なので天体の南北を垂直にする必然性もないかな、と…

望遠鏡の直焦点でのクローズアップとは別に望遠レンズも用意しました。今回は既に欠け始めた状態で月の出になるので地上の風景も含めたカットを撮りたいというのと、月がすばる(M45:プレアデス星団)に近いのでツーショットで撮りたいというのが理由です。

残念ながら雲が多くて星は全く見えない状況だったのですばるとのツーショットは諦めたのですが、月の出の20分後の月は撮ることができました。

部分月食の月の出 (2021/11/19 16:48)
部分月食の月の出 (2021/11/19 16:48)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 / Kenko-Tokina スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO400, RAW) 露出 1/80s, F2.5 / Lightroom Classic で画像処理

既に赤い!と言ってもこれは欠けてない部分が低空の大気で赤く見えているだけですね。

今回は東の空での月食ということでベランダからは撮影できず他人の部屋の前でこっそり(?)撮る状況で途中で追い出される可能性もあったので、2018年1月31日の皆既月食の時のようなインターバル撮影は諦めました。

結局住人とは会わずに済んだのですが、終始雲に邪魔されていたのでどっちみちインターバル撮影は無理でした。

というわけで残念なところもあったものの、「ほぼ皆既」の瞬間は撮れたので良しとします。

金星食 (2021/11/8)

11月8日は昼間に金星食がありました。曇りの予報だったので撮影するつもりはなかったですし、潜入の時点では雲が厚く観測は不可能な状態だったのですが、14時頃ベランダに出ると南の空の雲はほぼ流れていって、出現は見えるのでは?と思ってついつい仕事を止めて勝手に休憩にして撮影してしまいました。

機材セットアップは間に合ったのですが、テスト撮影中に雲が出て慌てているうちに出現が始まってしまって、第3接触*1の瞬間は撮り損ねてしまいました… YouTubeライブ配信の画面に映った時刻に惑わされてまだ時間に余裕があると思ったのもあります。遅延があるのはわかってはいたのですが、慌ててると引き算間違えますね…

動画はこちら。14:37:02(05:37:02.167 UT)から14:40:02(05:40:02.307UT)までの3分間の映像です。速度は等速です。

金星食(出現) (2021/11/8 14:37:02-14:40:02)
金星食(出現) (2021/11/8 14:37:02-14:40:02)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15), ZWO ADC 1.25", ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 125) / 露出 1/540秒。

中途半端な動画で申し訳ないですが欠けた金星がだんだん出てくる様子はわかるので…

途中雲が出てきたりしますが、第4接触は写っているかな?金星が欠けているせいで第4接触の瞬間は判別できませんが、14:39:00 あたりがそうでしょうか。

金星に色が付いているのは大気色分散ではなくて、むしろ大気色分散補正プリズム(ADC)の調整ミス(過修正)によるものです。一応月面の縁の部分を見て調整したつもりだったんですが、青空バックの淡い月面では無理でした。潜入前に金星で調整できていれば…

金星が完全に出た後の動画も貼っておきます。こちらはADCを再調整してから撮っています。が、まだ過修正気味?

金星食後の月と金星 (2021/11/8 14:41:14-14:43:14)
金星食後の月と金星 (2021/11/8 14:41:14-14:43:14)
撮影データは上に同じ。

というわけで若干残念な感じですが、一応金星食(の一部)が撮れました。

*1:日食や惑星食の出現時に掩蔽された天体が見える直前のタイミングのこと。図解するとこう。https://rna.sakura.ne.jp/share/planetary-occultation-and-transit.png