Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

月面モザイク失敗… (2019/5/24)

昨日の記事の最後で「うっかりやらかしてしまって残念なことに…」と言っていた月面モザイクの件です。5月24日の深夜、2時過ぎに木星の撮影を終えたのですがかなり疲れていたので迷いつつも月面全面のモザイク撮影を始めました。

μ-180C での月面モザイクは3月に一度やりましたがこの時は月齢4.7の細い月でモザイクの枚数も14枚で済みました。

今回は月齢19.8で輝面比から言うと3倍以上*1 です。というか、当日はそこまで考えてなくて漠然と20カット以上撮らないといけないな、などと甘い見積もりで撮影を始めてしまいました。実際撮ってみると39カット、動画データの合計は 309GB に… 念の為SSDに空き容量を確保しておいたので助かりましたが危ないところでした。

月面モザイク撮影、みんなどうやってるのか知らないのですが、自分はプレビューの月面とにらめっこしながら手動でフレーミングを調整して撮影しています。自動でやる方法とかないのかなー… 撮影順は月面北部の欠け際から順に赤経方向にスキャン、縁にたどり着いたら南にずらして反対向きにスキャン、というのをくり返してジグザグにスキャンしていきます。

モザイク合成時に欠損部分ができないように各カットは十分重ね合わせができるように、目立つ地形が次のカットにも収まるようにうまいことずらしていくわけですが、センサーの向きを月の傾きに合わせると赤経方向のスキャンが月を斜めに切っていく形になることがあり、各カットの重なり具合がわかりづらくなります。今回はそこでやらかしてしまいました…

撮影の最初の方、2枚目と3枚目で重ならない部分ができたのに気づかずに撮影を続けてしまい、機材撤収後に画像処理を始めてから気が付きました。

欠損部分
欠損部分

薄明も進んでいたし気力も残ってないしで撮り直しもできないままその日は失意のうちに就寝。昼過ぎに起きてから念の為残りの動画も処理したのですが、欠損部分はここだけ… てっきりあちこち漏れてるかと思ったのですが、際どいところはあったものの他の部分は大丈夫でした。それがかえって悔しい…

せっかくなので欠損したまま最後まで仕上げたのがこれです。

月齢19.8 (2019/5/25 02:36-03:10) (モザイク撮影失敗)
月齢19.8 (2019/5/25 02:36-03:10) (モザイク撮影失敗)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 2.5ms x 1500/2000コマをスタック処理 x 39枚をモザイク合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC, Photoshop CC, Lightroom Classic CC で画像処理

元画像は 6914 pixel です。作品にはなりませんが等倍で眺めて楽しむことはできると思います… 月の全景だと月面の部位によって微妙な色の違いがあるのもわかります。カラーカメラで撮った甲斐がありました。なのに… ううう…

合成は Image Composite Editor (ICE) ではなく Photomerge を使いました。というのは、各カットの重なり合う部分でシーイングが悪くて写りの悪いカットに影響されて、ぼやけてしまう部分が結構あったからです。このへんは Photomerge の方が若干うまく処理しているようでした。が、それでも継ぎ目の不自然なところは残ってしまいました。

カット毎のシーイングの差で継ぎ目が見える
カット毎のシーイングの差で継ぎ目が見える

上のティコと下のグラビウスを比べるとよくわかるのですが、下半分が明らかにぼやけていて継ぎ目が不自然になってしまっています。8cm 屈折で撮っていた時には全然気ならなかったのですが、18cm になるとこんなことまで気にしなくてはいけないんですね。

今回はディスク容量を気にして各カット2000コマ撮影して1500コマをスタックしました。決して安定したシーイングではなかったので 1500/2000 だと悪いコマもだいぶ混ざってしまったのかもしれません。1000/2000 でもよかったかなー。でもそのくらいではあまり変わらないかな。

wavelet 処理でノイズが増えないように1500にしたのですが、F12 直焦でゲインも低め(260)で撮ってたから1000以下でも大丈夫だったかも。でも失敗作品のために今から再処理する気力はありません…

次から失敗しないようにどうするか考えてみます。

  • センサーの向きを赤経方向と平行になるよう傾けて、フレームがスキャン方向に対して斜めにならないようにする。こうすることで重なり合いがわかりやすくなるはずですが、月が傾いて見えることで変な錯覚が起きてしまうのではという懸念もあります。
  • なるべくシーイングの安定した条件で撮る。カット毎の画質のばらつきが出ないように。そんなの選べるなら苦労はしないという話ですけれど…
  • 8bit RAW でコマ数を多く撮る。月面モザイクではデータ容量がネックになりがちなので、敢えて 16bit RAW ではなく 8bit RAW で撮ってその分撮影コマ数を倍にするのが有効かも?

8bit で撮る案は階調表現が悪くなるという懸念もあるのですが、月惑星の撮影で実際そんなに差が出るものなんでしょうか。8bit で撮った木星と 16bit で撮った木星、正直区別がつかないし… このあたりは実際に試してみたほうがいいかな。

うーん、欠損の件の対策は決定打が思いつかない… 自動制御で撮れればいいのだけど、そんな便利なものはないですよね…

最後にモザイクの元になった写真を全部アップしてアルバムにしました。供養だと思って見ていただければ幸いです…

月面(2019/5/25 02:36-03:10)
月面(2019/5/25 02:36-03:10)

*1:iステラの情報によると輝面比は今回が0.68、前回が0.2。