Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

火星 (2020/10/1)

2ヶ月近くご無沙汰していました。天気も悪かったのですが、このところずっと「天文鬱」といいますか、星を見なきゃ→でも何もしたくない→いっそ空が曇って欲しい… という状態で、天気が悪くなるとホッとする有様。火星を見るチャンスも何度かあったのですが、見なきゃ見なきゃという気持ちだけ頭の中をぐるぐるするばかりで体を動かす気力が絞り出せず、全部スルーするという状況でした。

昨夜(10月1日)も体調が悪く仕事を早退して横になっていたのですが、今後の天候によっては最接近の火星を見れなくなるかも、と思って必死の思いで体を起して夕方からベランダに赤道儀を設置。一時間ほどかけてドリフトアライメントで極軸を合わせて、μ-180C を載せて、L+RGB撮影システムを組み上げて、久々の惑星撮影に臨みました。

ピント合わせも兼ねてまず南東の空に傾いた木星を撮ったのですが、どうも木星像が不自然。1セット(L x3, RGB x3)撮ってから気付いたのですがモノクロカメラを逆さまに取り付けていました。まあ画像を逆転すれば済むことなのでまあいいかというところですが、久々なのでどこか抜けてるようです。気を引き締めて続けます。

木星は大赤斑も見えていないしそこそこにして次は土星。今度はカメラを正位置にセットします。スタックして wavelet をかけると輪の端に黒い影が。どうもまた「おせんべいノイズ」が出ているようなのです。*1 その後撮った火星でも一部のスタック結果で出ていました。何なんでしょうね?

そして火星ですが、東の空が霞んでいて南中まで待っていると雲が出て撮れなくなるかもと思い、21:00頃から30分間隔で3セット撮影。南極冠が粒みたいに小さくなっていて、北半球が明るく南半球に黒い模様が広がっていました。プレビューでは詳細はわかりませんでしたが、シレーンの海からオーロラ湾にかけてが見えていたようです。

途中から薄雲が広がるものの、満月はくっきり見えているし、1/125秒露出で十分写る明るさだったのでそのまま撮影していたのですが、4セット目を撮ろうとした22:30頃から雲が厚くなり撮影中断。空を見上げると一面のうろこ雲。その後、雲が薄くなったタイミングで何本か撮ってみたのですが途中で雲に隠れたりしてダメでした。

今夜はこれまでかな、と思っていたら23:30頃に雲が全部流れていってほぼ快晴に。雲が流れた直後はシーイングが乱れ気味でしたが、少し待ったら落ち着いてきたので23:45頃から撮影再開。火星は自転してキンメリア人の海からシレーンの海にかけてが見えてました。3セット撮ったところでSSDがいっぱいになり、平日ということもあって、撤収することにしました。

撮影の合間にスタックと仮の wavelet 処理だけはしていたのですが、本格的な画像処理は明日以降、と思っていたのですが… 結局火星の写り具合が気になって眠れず、朝方に最後のセットだけ処理しました。

火星 (2020/10/2 00:48)
火星 (2020/10/2 00:48)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 264), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 2500/5000コマ x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してスタック処理してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.2.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

かなり細かい模様まで解像していて、そこそこ上手く撮れた気がします。

火星は現在地球から少し見上げるような位置関係にあり、南極が見えて北極が隠れる状態です。火星の南半球は夏の盛りのようで、8/1に撮影した火星と比べると南極冠がずいぶん小さくなってほとんど消えかけです。北極付近が白く霞んでいますが、雲が出ているのでしょうか。白い霞は画像の右側(東側*2 )のタルシス山地付近にも出ています。

南半球には黒い模様が広がっており、画像の左の方(西)にキンメリア人の海が、画像中央から右(東)にかけてシレーンの海が見えています。WinJUPOS のシミュレーションや『星ナビ』2018年7月号付録の地図だとキンメリア人の海とシレーンの海の間はもっと明るいはずなのですが、写真では黒い模様で繋がって見えています。

ということで、撮る前は辛かったのですが撮ってみるとちゃんと体が動いてそこそこ満足できる結果が得られました。頑張った甲斐がありました。火星の残り5セットと木星土星は後日処理してアップします。

*1:参照: https://rna.hatenablog.com/entry/20200617/1592405940

*2:天球上ではなく火星面上での東です。頭の中で火星面に日本地図を置いて考えるとわかりやすいです。