Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

M27 亜鈴状星雲 (2017/8/12)

GPV の予報では夜は曇りということだったのですが、晴れ間も見える夜空だったので、前回の記事でやったアリミゾ化の効果をテストしようと久々にベランダで天体撮影。

ターゲットはいて座のでかい球状星団 M22 です。あくまでテストでガイドエラーが出てないかわかればいいので薄雲越しに撮影を強行。だったのですが、21時頃、2枚目の撮影中に雲がどんどん出てきて PHD2 がガイド星を見失いテスト中止です。

一面の雲でもう撤収かと思ったのですが、twitter を見ると HIROPON さんが撮影していて東京は晴れているとのこと。それなら横浜もそのうち晴れるかもしれないと思い、機材はそのままにしておきました。

22時過ぎにオートガイダーの映像を見ると雲がなくなっていて、ベランダに出るとすっかり雲が流れていった様子でした。M22 を撮るには遅い時間なので、先月中途半端にしか撮れなかった M27 亜鈴状星雲を撮ることにしました。

今回はレデューサーなしの直焦点での撮影です。いつものように導入後極軸を微調整して撮影を開始。ここはどうしても極軸がズレてしまうみたいです。

懸案の赤緯方向のズレが大きくなっていく現象ですが、結局再発してしまいました。鏡筒の固定方法は関係なかったのか… でもその後また極軸を微調整した後は撮影終了まで20分以上安定していました。これが偶然なのかアリミゾ化の効果なのか判断がつきません。

今度こそ8枚撮影したかったのですが、またターゲットがベランダの天井に隠れてしまって、6枚しか撮れませんでした。前回の4枚よりはマシですか…

結果はこうなりました。

M27 (2017/8/12 22:46)
M27 (2017/8/12 22:46)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Kenko-Tokina スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) 露出 6分 x 6コマ 総露出時間 36分 / DeepSkyStacker 3.3.2, FlatAide Pro 1.0.18, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1920mm 相当にトリミング

光害カットフィルターなしなので前回と比べて赤い部分のコントラストが落ちていますが、青いガスの広がりはよく写っています。

等倍で見ると恒星が楕円状になっていてガイドが少し流れているのがわかります。極軸がぴったり合って赤緯方向のズレがほとんどない場合の赤緯RMSエラーは1秒程度ですが、赤経RMSエラーは約1.8秒あるのでこうなります。レデューサー使用時だと目立たないのですが…

スカイメモSにビクセン規格のアリミゾを

悪天候が続き8日の月食も見られず、天文マニアにはストレスが溜まる毎日です。こんな時はついうっかりやってしまいがちです。そう、たとえば…

これを…

スカイメモS用赤緯微動台座

こうして…

上面のプレートを取り外す

こうじゃ!

アイベル「スカイメモS用タカハシプレート」と交換

さらにこうじゃ!

ビクセン「プレートホルダーSX」を取付

…というわけで、スカイメモSの赤緯微動台座をビクセン規格のアリミゾで望遠鏡を固定できるようにするパーツを買ってしまいました。

最初に取り付けたのは EYE★BELL (アイベル) の「スカイメモS用タカハシプレート」です。

スカイメモS用タカハシプレート取説

これは純正のスカイメモS用微動台座の上面の部品と交換して使う M8 x 35mm のネジ穴(タカハシバンド互換)の付いたプレートです。これを付けるとビクセンのアリミゾ「プレートホルダーSX」を取り付けられるようになるわけです。

以前から極軸をドリフト法で追い込んだにもかかわらず長時間直焦撮影をしていると急にガイド星が上に(北に)ズレていくようになる現象に悩まされてきました。

機材が全体的にたわんで極軸がズレてきたせいだと思っていたのですが、鏡筒がカメラネジ一本で固定されていることを考えると、このネジを軸に鏡筒が少しずつ回転してしまっている可能性も考えられます。

そこで鏡筒をアリガタ/アリミゾで固定すれば安定するのではないかと思って、微動台座をそのように改造している人はいないかとネットを検索していたらアイベルのサイトを見つけました。

これでガイドが安定する保証はないですが、いずれ新しい鏡筒も買うかもしれないし… などと言い訳して買ってしまいました。プレートとプレートホルダーSX合わせて10238円(送料・税込)のお買い物でした。

まだパーツを取り付けただけで実際に望遠鏡を載せて試してはいません。ベランダがまだ濡れているので… プレートホルダーSX が意外と重たくて 220g 増です。現状でバランスがギリギリなのでどうなるか心配。いざとなればウエイトを増やす方法もあるようですが…

追記: バランスとクランプハンドルの干渉について

ベランダが乾いてきたので実際に望遠鏡を載せてみました。

手持ち機材の最大の積載量(BLANCA-80EDT + E-M5 + 2xテレコン + オートガイダー)では完全にはバランスしませんでした。バランスの崩れはわずかで赤道儀の駆動には支障はない模様。12倍速駆動は正逆共に正常に動いているようです。

とはいえ極軸周りのバランスが崩れているということは極軸の回転で重心がズレるということなので、時間と共に足回りのたわみ具合が変動して極軸がズレたりするのではと心配です。

また、これとは別に問題が二つ。

まず、バランスがとれるように微動台座を限界まで中心に寄せてアリガタプレート(赤緯体)を取り付けると、プレートホルダーSXのクランプハンドルが赤道儀本体と干渉して赤緯軸を360度回転できません。望遠鏡の姿勢によっては赤緯軸を180度反転させてから望遠鏡を載せる必要があります。

もうひとつ、これもプレートホルダーSXのクランプハンドルなのですが、ファインダー台座に取り付けたガイドスコープと干渉します。接眼部を回転させれば回避できるのですが、ちょっと嫌な感じです。

どちらも致命的ではないですが、便利になるかと思っていただけにちょっと残念。

思い出の望遠鏡

#あなたの天文はどこから を見ていて懐かしい記憶が蘇ってきて、子供の頃に買ってもらった望遠鏡をもう一度見たくなりました。

ネットの古い機材のレビュー記事あたりで見られないかと思って探していたら、香川県天体望遠鏡博物館の収蔵品として紹介されているのを見つけました。


https://rna.sakura.ne.jp/share/vixen-new-polaris-r-100s.jpg
ビクセンNEWポラリスR-100S - 天体望遠鏡博物館 公式ホームページ

これです!ビクセンの 10cm F6 反射赤道儀。懐かしいなぁ。スライド式の接眼部が特徴的な鏡筒。安全だけど取り付けがめんどくさいネジ式のウエイトシャフト。確か小6か中1ぐらいの頃に買ってもらって、月や惑星、あとハレー彗星を見ました。どれを買ってもらうか結構悩んだ記憶があります。確かタカハシ FC50 が同じ価格帯で、コンパクトで高性能というところに惹かれたのですが、やはり口径が倍違うのは… ということで 10cm 反赤に落ち着きました。

ハレー彗星(1986年)はまだ8等星くらいの頃に見ました。いや、ぼんやりとわずかに淡く広がった星像を見たのですが、あれが本当にハレー彗星だったのか今ではあまり確信が持てません… その後地球に最接近した頃には天候が悪かったり色々あって見られず、結局ハレー彗星はそれっきりだったのですが。

中2以降はパソコンにはまっていって、高校までには天文への興味をほとんど失ってしまいました。写真の趣味は続いていたので鏡筒だけはその後も超望遠レンズとして使っていました。撮影するときはカメラにアングルファインダーを付けて鏡筒を肩にかついでというスタイルで、バズーカ砲かよと笑われたりキモがられたり*1 してました。

赤道儀と三脚は実家か高校の写真部の部室に置いたままどこかへ行ってしまったのですが、鏡筒だけは今も部屋のどこかにあるはず… 超大掃除しないと出てこないと思いますが。

天体撮影は確か中3の頃にお年玉でモータードライブを買って一度だけチャレンジしたことがあります。雪の中必死で機材を設置した記憶があるのですが、あれは結局現像しなかったのかな… 結果については記憶がありません。モータードライブはその後すぐに壊れてしまって天体撮影はそれっきりになってしまいました。

あれから30年経ちました。ここ2年ほどの間に色々撮ってあの頃のカタキはとったかなという気持ちはあります。でも、あの頃機材をちゃんと使いこなせなかったことは、ずっと心の奥に引っかかったままで、今でも大きな機材の購入には二の足を踏んでしまいます。

とはいえ、月世界への招待の管理人さん曰く、

確かに天体撮影にはまり出すと天候や月齢や季節によって狙った天体が撮れるチャンスがいかに希少か思い知らされますよね。残念な機材で残念な写真撮ってる暇なんてないよ、と言われると本当その通りなんですよね。

*1:主に女子に。

はじまりの一冊

twitter#あなたの天文はどこから というハッシュタグがあったのを見て、そういえば何がきっかけで天文始めたんだっけ、と記憶をたどってみたりすることがありました。

以前少し触れたと思いますが、僕の天文の趣味は小学生から中学生の頃にかけて趣味にしていたものが、長いブランクを経てすっかりおじさんになってからぶり返したものです。

親に望遠鏡を買ってもらって毎月『月刊 天文ガイド』を購読していた頃のことは割と憶えているのですが、一番最初ってなんだったっけ?どうも記憶が曖昧です。

最初の最初は絵本のような児童書だった記憶があります。大判で黄色い表紙の… 出版社は福なんとか書店とかいう名前だったような…

40年近く前の話ですから今更検索してもみつからないかな?でも同じような経験をした人がブログに何か書いていたりするかも… と、あてもなくネットを検索してみたら、ありました。

https://rna.sakura.ne.jp/share/seiza-wo-mitsukeyou.jpg

福音館書店の『星座を見つけよう』これですきっと! 翻訳の草下英明という名前も記憶に残っています。初版は1969年で時期的にも合致します。というか、この本今でも売ってます。 びっくり。

正直今読んでも記憶があまりに薄れていて懐かしいという感慨すらわかない可能性が高いのですが、買ってみようかなぁ、と思って Amazon のページを見たら「よく一緒に購入されている商品」がこんな感じでした。

https://rna.sakura.ne.jp/share/seiza-wo-mitsukeyou-amazon.jpg

星座早見盤とスコープテックの望遠鏡。子供へのプレゼントでしょうか。40年経った今でもこうやって天文の世界の入り口になっているんですね。

変態認定 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

ブログに書くの忘れてましたが、先日 twitter天文リフレクションズ編集部さんからこんなリプをもらいました。*1

やったー!変態認定!ポタ赤で直焦 & 横浜で天体撮影、というあたりが変態ポイントなんでしょうか。

天文リフレクションズさん的には「変態」は褒め言葉だそうで、春頃には極めつけの「変態」さんたちの紹介記事のシリーズがありました。*2

天文コミュニティとはあまり縁のない僕でも知ってる人が… Starry Urban Sky の管理人で個人的にも度々お世話になっている HIROPON (id:hp2)さん、FlatAidePro の作者のぴんたんさん、2ちゃんねる赤道儀関係のスレで度々その名を見たハンドルネーム「変態」こと HUQ さん。

皆さんとんでもない「ド変態」で、僕なんかは皆さんの足元にも及ばない「プチ変態」ですが、精進したいと思います。とか言いつつもそろそろ普通の赤道儀が欲しいお年頃…

*1:#天文なうハッシュタグでつぶやいていたのが捕捉されたようです。

*2:というか天文リフレクションズは HIROPON さんの紹介記事で知りました。以来毎日アクセスしてます。

夜明けの月と金星 (2017/7/21)

先週の金曜の朝方に twitter を見ていたら、KAGAYA さんのこんなツイートが。

面白そうだなと思って急いでマンションの廊下に出て撮りましたが、既にかなり空が明るくなっていてあまり露出をかけられませんでした。結果、金星の写りがイマイチだったのでブログには上げそびれていたのですが、最近ネタもないしとりあえず…

夜明けの月と金星 (2017/07/21 04:21)

OLYMPUS OM-D E-M5, ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 (27mm)
f5.6, ISO 200, 1/2s
Lightroom CC で画像処理

金星わかりづらいですね。目で見た時はギラギラと輝いていたのですが。

レンズはキットレンズのズームです。この焦点距離だと M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO も持っているのですが、こちらは画面に月のような明るい光源が入ると結構目立つ涙型のゴーストが出てしまうので、こういう被写体では使わないようにしています。

急いでいたので三脚に付けっぱなしのスカイメモS用微動雲台のアリミゾに自由雲台を付けっぱなしのショートプレート(スカイメモSの付属品)を取り付けて微動雲台として使いました。

余裕があるときはスカイメモS用微動雲台を取り外してK型微動マウントを取り付けるのですが、スカイメモS用微動雲台はガタが出ないようにキツく取り付けるようにしているので、外すのが手間なのです。

M27 亜鈴状星雲 (2017/7/14)

昨夜は帰りが遅くて帰宅した時には月が出てしまっていたのですが、せっかくの星空なのでこのところ撮りたいと思っていた M27 亜鈴状星雲を撮りました。DSOの撮影は6週間ぶりです。

自宅ベランダからの撮影で、例によって PHD2 のドリフトアライメントで極軸合わせをしていたのですが、風が強めでガイド星が揺れまくり。

今夜はダメかなと思いつつもなんとか極軸だけは合わせて、アルタイルから北に辿って M27 を導入した頃には風が止んできました。しかし導入時に極軸がズレてしまったようで、撮影を始めるとガイド星が南に流れていってしまいます。

いつものようにその場で極軸調整をしようとするのですが、水平方向の微調整がうまくいかずいったりきたりの往復ビンタ状態。もう投げ出したくなってきたのですが、こういう時は調整ネジの当たるピンが緩んでいるのでは?*1 と思って機材を全バラし。

案の定ピンが緩んでいたので素手でキツく締め直してから組み立てなおしました。極軸合わせからやり直しで結局1時間のロス。でも極軸はちゃんと合いました。風もすっかり止んでここからは順調かと思ったら…

ということでまた極軸調整。今度はスムースに微調整できて撮影再開、と思ったら写野にマンションの天上が入ってきて撮影中止…

結局4枚しか撮れませんでした。しかも1枚は若干ガイドが流れ気味。最低8枚が目標なので失敗ですが、勘を取り戻す意味もあるのでフラットとダークもいつも通り撮影。でも気が抜けていたのかダークを5分✕4枚撮るはずが、なぜかインターバルタイマーのレリーズボタンをロックしたまま撮影してしまって20分✕1枚で撮ってしまい撮り直したり…*2

4枚コンポジットでダーク4枚ならノイズは44%しか減りませんが*3ものは試しでコンポジットしてみました。

M27 (2017/7/15 01:01)
M27 (2017/7/15 01:01)
OLYMPUS OM-D E-M5, 笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー + LPS-D1
ISO 200, 300s x 4枚
DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1150mm 相当にトリミング

縮小画像なら意外と見れる程度には仕上がりました。昨年20秒露出で撮ったものよりはずっといいです。途中であきらめなくてよかったです。

今回は光害カットフィルターを使ったのですが、そのせいかどうも中心部の青いガスの発色がよくありません。上の写真ではブルーのトーンカーブの中間調を少し持ち上げて強調していますがそれでもあっさり目。かといってフィルターを使わないと赤い部分の発色が悪くなってしまうのですが。

今回は色々踏んだり蹴ったりの撮影でしたが、そもそもマトモな赤道儀があればこんな苦労しなくて済むんですよね… でも置く場所とかお金のこととか考えると色々悩ましいです。

*1:参照: M104 ソンブレロ銀河 (2017/3/21)

*2:実際には8分露出になっていた。E-M5 のバルブは露出時間制限があるため。この制限はメニュー設定で30分まで伸ばせる

*3:参照:ライトフレームとダークフレームどっちを増やす?