Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

土星、火星の自転 (2018/6/29)

6月29日は風が強く、低空をちぎれ雲がものすごいスピードで流れている状況だったので天体撮影はやめておこうかと思っていたのですが、システムBで2.5倍バローレンズを使うテストがしたくて、帰宅後ベランダに機材を出して土星と火星を撮りました。帰宅が遅かったので木星は撮れませんでした。

システムBというのは5月13日のエントリで書いた構成です。

今回試すのはこの構成からバローレンズを笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバローに置き換えたものです。スリーブ部分は邪魔なのでレンズの入った31.7mmバレルの部分だけ取り外して使用します。*1

以前 BLANCA-80EDT でテストした時はピントが来なくて使えなかったのですが、μ-180C ではピントが来ました。合焦ノブをOUT側にかなり回しました。OUT側いっぱいに回すと口径がケラれるという噂がありますが大丈夫でしょうか…

まずはピント合わせも兼ねて土星を撮影。フリップミラーのミラー側に取り付けて撮影しました。

土星 (2018/6/30 01:04) (2.5x B)
土星 (2018/6/30 01:04) (2.5x B)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F55.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/30s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

画質については保留です。拡大率が半端ないですが、後で撮った火星の大きさから計算したところ、合成焦点距離 9965 mm、合成F値 F55.36 でした。元が F12 なのでバローレンズの拡大率は4.6倍ということになりますが、μ-180C はピント位置で焦点距離が変わるので正確ではありません。

さすがに拡大率が高すぎて像が暗く、1/30秒で撮るにはゲインを474まで上げる必要がありました。2000コマスタックでもかなりノイジーで、せっかく大きく写っても F42 のシステムAの写りの方が解像感は上です。

この日はシーイングが悪かった上、風で鏡筒像が揺れて像がブレまくっていたので画質については保留です。ピントもたいへん合わせづらかったので、合ってないかもしれません。

そして火星です。火星は現在-2.1等。たいへん明るいのでこの拡大率でも1/60秒で撮れます。ゲインも300前後まで下げられました。

火星 (2018/6/30 03:06) (2.5x B)
火星 (2018/6/30 03:06) (2.5x B)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F55.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

相変わらずほとんど模様が見えませんね… 中央の黒っぽいところはキンメリア人の海でしょうか。こんな状況ですが、30分毎に撮ってみるとこの薄い模様が動いて火星が自転しているのがわかりました。5枚撮ってアニメーションにしてみました。


はてなブログJavaScript 使えるんですね。カラーのアニメーションGIFは画質がイマイチなので、JPEG でアニメーションさせるためにこちらの記事を参考にしてスクリプトを書きました。

コマをつなげた画像を CSS の背景画像にして background-position を操作してコマを切り替えるものです。コマをつなげた画像は ImageMagic の montage コマンドで生成しました。

というわけでシステムBに2.5xバロー、一応使えるのですが、さすがに拡大率が大きすぎるのでもう少し倍率の低いバローレンズが欲しくなります。でも今の時期バローレンズ品薄らしいんですよね… それにレンズ部分を取り外して使えないと困るのですが、なかなかそういう情報がなくて。どうしようかなぁ…

*1:バレル部分をネジると外れます。ネジ規格は31.7mmフィルターとは異なるので双眼装置などには使えないと思います。

土星、火星 (2018/6/25)

6月25日の深夜、月面の撮影の後、土星と火星を撮りました。拡大系は木星と同じシステムAの2.5倍バローです。

まず土星から。

土星 (2018/6/25 23:12) (3)
土星 (2018/6/25 23:12) (3)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F42), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/30s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

A環の真ん中あたりに隙間が… エンケの間隙?と思ったら「偽エンケ」ですね、これ。

自分で撮影した木星を画像処理したとき、エンケの空隙が出現したように見えたら、画像5のハッブル宇宙望遠鏡による鮮明な土星の画像と比べて位置を確かめてみましょう。
画像5ではA環の外側から5分の1ほどの位置にエンケの空隙があるのに対し、過度のアンシャープマスク処理をした画像4では、空隙のような黒い線はA環のほぼ真ん中にできています。
File No.003「偽エンケの空隙にだまされるな!」-ステライメージ4による「しあわせ画像処理」 - AstroArts ステラ情報局

ハッブルの写真を見ると、これは18cmでは無理っぽいですね… そもそも幅が325kmしかなくて*1 角度にすると0.0495秒*2 です。このシステムの拡大率だと1ピクセルが0.079秒なのでまず無理ですね。

次は火星です。

火星 (2018/6/26 00:02) (2)
火星 (2018/6/26 00:02) (2)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F42), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

相変わらずの美肌モードです… ダストストームはいつになったら晴れるのでしょう。熊森さん曰く、

 大黄雲はこれからどうなっていくんでしょうね。
 発生した火星季節が似ている2001年の大黄雲は、4ヶ月ほど収束にかかっていますからね・・・
火星6月24日(UT)のGIFアニメ 2018/06/26: RB星のブログ

10月くらいまでダメってことですかね。完全に見頃過ぎちゃうじゃないですか…

この日は火星を1本撮ったところで空一面モヤがかかって火星もどんどん暗くなっていったので撤収しました。

2.5倍バローのシステムA(普通に バロー + ADC + カメラ という接続)は、木星の写真から合成焦点距離を計算すると 7559 mm になりました。合成F値は F42 です。*3 確かF40くらいまでが目安だそうなので、ちょっと暗いですね。大きく写るのは魅力的なのですが。

*1:参照: エンケの間隙 - Wikipedia

*2:この日の土星までの距離が 9.049 AU = 1353711132 km で atan(325/1353711132) = 0.0495"

*3:直径 531pixel = 1.54mm、木星までの距離 4.69137 AU = 701818963 km、木星の直径 142984 km から、f = 1.54 * 701818963 / 142984 = 7559 mm

月面 (2018/6/25)

6月25日の夜は木星の撮影の後、正確には1.6倍バローで木星を撮った後、モノクロカメラで月面を撮影しました。

まずは1.6倍バローでガッサンディコペルニクスを撮ったのですが…

ガッサンディ (2018/6/25 21:09)
ガッサンディ (2018/6/25 21:09)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, Lightroom Classic CC で画像処理

プレビューでもクレーター内部の丘や谷が見えてわくわくしていたのですが、スタックしてみるとソフトフォーカス風味というか、いまいちコントラストが低い写りです。今回は薄雲もなかったはずですが…

コペルニクス (2018/6/25 21:36)
コペルニクス (2018/6/25 21:36)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, Lightroom Classic CC で画像処理

切り立った外輪山と特徴的な中央丘、周囲に無数に散らばる小クレーター。8cmでは見えなかった姿に興奮します。でもやっぱりコントラストが微妙に低いような…

バローレンズの取り付け方がいいかげんでスリーブとバローのバレルの間に隙間ができているのですが、そこから光が漏れて迷光になっているとか?

鏡筒の素の写りを確認するために直焦点でも撮ってみました。まずはガッサンディ周辺。

ガッサンディ周辺 (2018/6/25 22:16)
ガッサンディ周辺 (2018/6/25 22:16)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, Lightroom Classic CC で画像処理

なかなかいい感じです。西側の険しい地形もみっしりと描写されています。次はコペルニクス周辺。

コペルニクス周辺 (2018/6/25 22:39)
コペルニクス周辺 (2018/6/25 22:39)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, Lightroom Classic CC で画像処理

こちらも満足できる写りです。ということはやはりバローレンズの問題でしょうか。

虹の入江周辺も撮りました。

虹の入江 (2018/6/25 22:40)
虹の入江 (2018/6/25 22:40)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MM / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, Lightroom Classic CC で画像処理

虹の入江の奥の山地は8cmでは「なんかザラザラしてる地形」という程度でしたが山の起伏がはっきりわかります。東のプラトーの内部には小クレーターが見えていますが、この拡大率だと白い点にしか見えません。

平日の夜ということで時間のかかる月面モザイクは自粛しました… 深夜から曇ってきたのでやらなくて正解でした。

この後は土星と火星を撮りましたが、それはまた後ほど。

木星 (2018/6/25)

6月25日は朝から具合が悪く夕方までほぼ寝ていました。お昼ごはんを買ってきた時にえらい快晴だったのでひょっとしてと思って夕方ベランダに出ると快晴で南東の空に月がくっきりと見えています。日が沈む前に機材を組み立ててまずは木星を撮りました。

今回はシステムAで2.5倍バローを使うテストです。ADCが間に入り実際の倍率は2.9倍ぐらい、合成F値は35ぐらいです。1/60秒で撮るにはゲインを383まで上げる必要がありました。プレビューもかなりノイジーで不安になります。

それ以上に不安にさせられたのはピント合わせです。今まで愛用してきた Contrast (Edge) Detection による合焦支援がどうもあてになりません。シンチレーションのせいなのかなんなのか、目視ではどう見てもピントが外れて見える位置にピークが出てしまいますし、ピントを固定していてもスコアが突然上がったり下がったりするのでスコアをあてにしてよいものか判断しかねます。

Contract (Brightness Range) Detection も Fourier Detail Detection も試しましたが、どちらも山がつかみづらいし、フレームレートが落ちてしまって画像でのピント確認が難しくて難儀しました。結局 Fourier Detail Detection のゆるいピークの範囲内で画像の見え具合で合焦を判断しました。

1000/3000コマのスタックだとかなりザラザラだったので2000コマをスタックしたものを仕上げてみました。

木星 (2018/6/25 19:54)
木星 (2018/6/25 19:54)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

北赤道縞(NEB)のうねりの詳細が見えてきました。が、全体に像がぼやけているのはピントが追い込めてなかったのか、そもそも分解能の限界なのか… とはいえ1.6倍バローよりは解像しています。

1000コマをスタックしたものを4セット分、WinJUPOS で de-rotation スタックしたものも仕上げてみました。今回は端にノイズが出ないようにLV値を0.8に設定しています。

木星 (2018/6/25 19:52-55) (1000/3000 x 4 de-rotation)
木星 (2018/6/25 19:52-55) (1000/3000 x 4 de-rotation)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 x 3 を de-rotation スタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 10.3.9, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

ぱっと見あまり変わりませんが… 強めの wavelet 処理で細部のコントラストが上がっています。しかし東西の端に不自然な段差ができてしまっているのに気付いてしまうと気になってしまいます。Image measurment をもっと正確にやればマシになるんでしょうか?

このあと1.6倍バローのシステムB+でも撮ってみました。

木星 (2018/6/25 20:26)
木星 (2018/6/25 20:26)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

このくらいの倍率のほうが無理がない印象があります。でも、NEB のうねりの渦巻いている感じがこちらの画像ではわかりにくいですね。

前から感じていたんですが、William Optics 1.6倍は笠井2.5倍に比べてコントラストが若干低いような… 倍率が異なる画像の wavelet 処理を揃える方法がわからないので正確には比較できないんですが。

ついでにバローレンズなしの直焦点でも撮ってみました。

木星 (2018/6/25 21:48) (直焦点)
木星 (2018/6/25 21:48) (直焦点)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/125s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

これはさすがにもったいない感じです。ちなみに RegiStax の RGB Align で測定するとY方向に Red が1、Blueが-1ズレていました。直焦点は純粋な反射光学系なのでこれが大気色分散の大きさということになります。

この後月面と土星と火星を撮りましたがそれはまた後ほど。この日は24時過ぎから空に霞がかかってきたので火星は1カットしか撮れずに撤収しました。

WinJUPOS で De-rotation スタック

6月21日の木星のベストショットがいまいち物足りないので、WinJUPOS の De-rotation of images 機能で前後のショットをスタックしてみました。

de-rotation するメリットは、スタックのコマ数を増やしてノイズを減らしてその分強調処理で攻めた調整ができるようになることです。単純に動画の撮影時間を伸ばしてコマ数を増やすと、木星の自転で模様が動いてしまったコマをスタックすることになるためブレた画像になってしまいます。

そこで短時間で撮影した動画からスタックした画像を複数枚用意して、動いてしまった模様を de-rotation で補正してスタックすることで実質のスタックコマ数を増やします。

まずは de-rotaion する前の before 画像。

木星 (2018/6/21 20:22) (1000/3000)
木星 (2018/6/21 20:22) (1000/3000)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

3000コマ中1000コマをスタックしたものです。これと、その前後に撮影した画像(RegiStax で wavelet 処理する前のもの)を、WinJUPOS で処理します。

やり方は途中まで「WinJUPOS で De-rotaion して LRGB 合成」と同じです。まず Image measurment を3枚分実行して .ims ファイルを3つ作成します。そしてメインメニューの [Tools - De-rotation of images...] を選択して「De-rotation of images」画面を開いて [Image measurements to be used] の [Edit] ドロップダウンから [Add] を選んで、ファイル選択ダイアログで作成した .ims ファイルを選択します(複数選択可)。

https://rna.sakura.ne.jp/share/WinJUPOS-20180624.png

De-rotation of R/G/B frames の時と同様に、必要に応じて Quadratic image size ゃ Image type を設定して [Compile image] を押せば de-rotation スタックした画像が出力されます。

そして出力された画像を RegiStax で wavelet 処理します。Denoise 弱め、Sharpen 強めの処理をかけつつ、ノイズ感が before 画像と同じくらいになるよう調整しました。

https://rna.sakura.ne.jp/share/Registax-180624.jpg

de-rotation 処理の副作用で木星の西端のすぐ外の空間に白いノイズが少し出ています。Denoise 強めにすれば消えますが、ディテールが潰れてもったいないので後でレタッチで消すことにします。

最終的に Lightroom で色調や階調を before 画像と同じに揃えた after 画像がこちらです。

木星 (2018/6/21 20:21) (1000/3000 x 3 de-rotation)
木星 (2018/6/21 20:21) (1000/3000 x 3 de-rotation)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 x 3 を de-rotation スタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 10.3.9, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

どうでしょう?大赤斑の左(西)のもやもやした部分など、解像感が増していると思うのですが。

ちなみに同じ wavlet 処理を before 画像にかけたものがこれです。

木星 (2018/6/21 20:22) (1000/3000 強調処理強め)
木星 (2018/6/21 20:22) (1000/3000 強調処理強め)

解像感は同じくらいですが、ノイズがかなり浮いています。離れて見ると目立たないですが…

実際のところ de-rotation が有効な局面はF値が大きくてゲインを上げてノイズが増えたり、シャッタースピードを落としてコマ数が減ったりした場合です。今回の写真は口径18cm、合成F値F28という条件なので本来 de-rotation が必要なほどでもないと思うのですが、練習も兼ねてやってみました。

ADCについて色々言ってきましたが…

6月21日の撮影では木星は急いでいたので ADC (大気分散補正プリズム)はゼロ補正のままで撮影して、土星と火星は補正ありで撮っていました。土星で ADC の調整をしていて気付いたのですが、補正前の色ズレの量が以前8cm屈折(BLANCA-80EDT)で撮っていた時にくらべてずっと小さいのです。

ということは以前の色ズレはほとんどが大気色分散ではなく光学系由来のものなのでは… との疑念が生じたので、21日に ADC の補正なしで撮った木星を RGB Align なしでスタックしなおしてみました。

木星 (2018/6/21 20:22) (RGB Align なし)
木星 (2018/6/21 20:22) (RGB Align なし)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

イオを見るとわかりやすいのですが、右斜め方向に色ズレがあるのがわかります。その量は RegiStax の測定では Red: X=1, Y=2, Blue: X=-2, Y=-2 でした。

μ-180C は純粋な反射光学系ですがバローレンズが入っているのでそれに由来する色ズレが混じっている可能性はありますが、この時の木星は水平から左に20度ほど傾いていて、色ズレの方向的にも大気色分散だとしてだいたいつじつまが合います。

色ズレの量は計算するとBlue-Greenで0.2秒弱。木星の高度は約40度で、HIROPON さんのブログの「大気による色分散量と補正量」によると B-G は 0.75秒になるはずなのでちょっと小さすぎるのですが… ゼロ補正のつもりが少し補正が入っていたのでしょうか。

それはそうと、以前の記事「ADCの間違った使い方」の補正前の写真ですが、明らかに色ズレが大きすぎます。ていうか、そもそも色ズレの向きが逆ですよ?今まで気づきませんでした…

大気色分散は正立像では青が上に浮き上がって赤が下に沈んで見えるはずです。以前の写真ではその逆になっています。ということは今まで ADC を徹頭徹尾「間違った使い方」、つまり光学系の色ズレをキャンセルするのに使っていたことになります…

そもそも BLANCA-80EDT でなぜ色ズレが発生しているのか、ということですが、僕は最初、接眼部のたわみで片ボケ気味になって色収差が表面化したのでは、と思っていたのですが、それだとたぶん赤ハロが出るだけで赤と青で像がズレない気がします。

では何が原因だろうと思っていたら、天文中年の部屋2の「笠井トレーディング BLANCA-130EDTⅡについて」に「玉ズレ」による色ズレの話がありました。対物レンズの三枚玉の芯が揃ってなくて色ズレが発生するというのです。うちのもこれかもしれません。

というわけで今後は ADC の「正しい使い方」をマスターすべくがんばりたいと思います。

μ-180C ファーストライト (2018/6/21)

6月21日は曇り。この日は体調がすぐれず自宅で休んでいたのですが、夕方ベランダに出ると雲が切れ初めていて薄雲越しに月が顔を出していました。早速機材を組み立ててミューロン180C(μ-180C)のファーストライトにトライしました。

実はその4日前、17日の夕方に初めて μ-180C をベランダに出したのですが、夜は曇って天体は見られませんでした。この時は狭いベランダ(奥行き94cm)で鏡筒を振り回せるか、28cmある惑星撮影システムB+を取り付けても大丈夫か等を確認しました。

IMG_7928a

μ-180C は筒先に補正板がないので重心がかなり後ろの方にあり、赤緯軸でバランスをとると接眼部はあまり後ろに出っ張りませんでした。8cm F6屈折の時よりもましなくらいです。後方に飛び出た惑星撮影システムが窓にぶつかるのではないかという心配は杞憂でした。カメラの後ろを通行することも可能でした。

ホームポジションからの導入時に北を向いた筒先が窓にぶつかったり、接眼部のダイアゴナルやアイピースが手すりにぶつかったり、というのも心配していたのですが、それも大丈夫でした。惑星撮影システムはさすがに長過ぎて手すりにぶつかるので導入後に取り付けることになります。子午線越えは要注意です。

日が沈む前に数km先の鉄塔を撮ってみたのですが陽炎がひどくピント合わせも困難で評価は保留。夜は一面に雲が広がり星が見えず撤収したのですが、最後に三脚を片付ける段になって空を見上げると木星が… でも5分ほどで雲に隠れてしまいました。

というわけで17日は光学系のテストがほとんどできなかったのですが、21日は曇り空ながら思いの外晴れ間に恵まれました。

まず薄雲越しでしたがシステムB+で月を撮りました。いつ月が雲に覆われるかわからずあわてていたし、他に星も見えなかったので光軸のチェックはしていません。タカハシの出荷時の検査を信用してそのまま撮りました。

アルプス谷 (2018/6/21 19:45)
アルプス谷 (2018/6/21 19:45)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, Lightroom Classic CC で画像処理

アルプス谷をここまで大きく拡大して見たのは初めてでした。薄雲越しということもあってやや甘い写りです。雲が流れる中でのピント合わせで SharpCap のフォーカシング支援ツールもあまり役に立たず目視で合わせたので若干ピントが甘かったかもしれません。それでも最初の撮影でここまで写れば上等でしょうか。

主鏡移動式のフォーカシングですが、合焦ハンドルの回転は想像以上にスムースで、微妙なピント合わせでもほぼ不自由を感じませんでした。ミラーシフトはありますが、視野が少し揺れる程度で、対象が逃げていってピント合わせが困難になるほどではありませんでした。

そうこうしているうちに雲の切れ間から木星が見えているのに気付いてあわてて導入。ファインダーの中心に木星を導入するとバロー+24mmアイピース(約194倍)の視野内に見えていました。導入で苦労するのではないかと思っていましたが杞憂でした。ファインダーは出荷時に調整済みで17日にチェックした時は十分な精度だったのでそのまま使っています。

モニターを見るとタイミングのよいことに、大赤斑が見えています。雲が流れてくる前にと急いで撮影。あわてていたのでピントは月面で合わせたままで、シャッタースピードはいつも通り1/60s、F値が暗いのでゲインはいつもより多めに、自転の影響を避けるため約1分間(3000フレーム)の動画を撮影しました。

木星 (2018/6/21 19:54)
木星 (2018/6/21 19:54)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

像が十分大きいので Drizzle なしです。モニターではわからなかったのですが、木星の端にイオの影が写っていました。8cm の写りよりははるかに良いのですが、いまいち甘い気がして、ピントをもう少し追い込んでさらに撮影。途中薄雲に邪魔されたりしながら4セット撮ってベストがこれです。

木星 (2018/6/21 20:22)
木星 (2018/6/21 20:22)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

北赤道縞(NEB)のうねりがかなりクッキリ見えてきました。大赤斑の内部の濃淡も見えています。18cmの相場がまだよくわからないのですがなかなかの写りなのでは?

そうこうしているうちに雲が広がってきたので撤収かと思ったら、GPV では深夜2時頃に晴れ間がくる予報。とりあえず自動導入で鏡筒を土星に向けて待機していると、21時半頃から雲が晴れてきて土星が見えるようになりました。

何度も雲に邪魔されながら9本撮ってベストがこれです。

土星 (2018/6/21 22:48)
土星 (2018/6/21 22:48)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/30s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

カッシーニの間隙はギリギリ全周見えていると言ってよいでしょうか。エンケの間隙もうっすら見えているような?

土星は暗いので1/30sで撮るためにゲインを383まで上げています。これだと1000コマスタックではノイズが目立つので5000コマ撮って2000コマスタックしています。

そうこうしているうちに火星が見えてきました。まだ高度が低いのですが、あまり夜ふかしもできないので撮ってみました。火星は今大規模なダストストームで地表がほとんど見えなくなっているとのことですがどうでしょうか。

火星 (2018/6/21 23:47)
火星 (2018/6/21 23:47)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), William Optics 3枚玉1.6倍バロー, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC / 露出 1/60s x 2000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

ずいぶんのっぺりしてしまいました。北西部にうっすら見えているのは大チルシスでしょうか?以前見えていた白い南極冠がほとんど見えません…

このあと撤収する前に眼視で土星と火星を見ました。270倍と2.5倍バローを使って675倍でも見てみましたが、CMOSカメラのプレビューほどにはよく見えません。土星カッシーニの間隙がかろうじて見えました。火星の方はダストストームのせいもあってただの赤い円盤でした。

見え味がもう一つなのはアイピースが安物(セレストロン8-24mmズーム)だからですかね?アイピースも買わなきゃいけないのかなぁ… でも最初に月を導入した時に見た月面は結構良かったので今度はゆっくり見てみたいです。