Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

しし座4重銀河(NGC3190 + NGC3193 + NGC3187 + NGC3185)、NGC4302 + NGC4298、M83 (2021/3/14)

3月14日の夜は、またベランダで春の銀河祭りを開催しました。夜から強風との予報もありましたが、北からの風なので南向きベランダなら大丈夫かと思って。今回も 8cm F6 屈折 + モノクロCMOSカメラ(ASI290MM) での撮影ですが、前回とは異なり赤外撮影ではなくノーフィルターで赤外と可視光を合わせた波長で撮りました。

というのは、前回のエントリで、赤外(IR Pass 850nm)で撮ると銀河の暗黒帯の写りが悪いという話をしましたが、コメント欄で「もりのせいかつ」の k さんから光害地での銀河撮影ではクリアフィルターを使うよ、と教えてもらったからです。

はじめまして。
銀河の暗黒帯描出の件ですが、岡野邦彦さんが「光害地での銀河はSN確保優先の為、赤外カット無しのクリアフィルターで(但し、甚だしい赤外収差が発生しない光学系である場合)」を実践なさっていましたが、
http://www.asahi-net.or.jp/~rt6k-okn/event.htm
同時に、御著書で「暗黒帯のコントラストが若干薄まる」とも書かれていますので、近赤外フィルターをお使いの場合、この傾向が更に強まるのは必至と思います。
解像への短波長の貢献につきましては、UTOさんも書かれていますので、
http://oozoradigital.web.fc2.com/sakugo/Blue/Blue.htm
その兼ね合いの見極めが必要かもしれません。
私はSQM19程度の場所で撮影しておりますが、銀河はクリアフィルターです。
M60 + NGC4647 + M59 + NGC4638、M83 (2021/2/19)」コメント欄の k さんのコメント

光害はカットしないが光害の少ない赤外も一緒に撮ればSN比は上がる、という発想ですね。

ただし屈折望遠鏡だと赤外のピント位置が可視光とはズレたり収差が残ったりする場合があるので要注意。うちは3枚玉アポですが、果たして大丈夫なのか… と思いつつ、とにかく試してみたくて撮ってみることに。LRGB 撮影をするわけではないのでクリアフィルターではなく単にフィルターなしで撮りました。

ターゲットは、実験としては前回と同じにするべきでしょうが、それじゃつまらないので M83 だけは再撮影することにして、それとは別にしし座4重銀河(NGC3190 + NGC3193 + NGC3187 + NGC3185)と、かみのけ座の NGC4302 + NGC4298 のペアを撮ることにしました。

19:00前から準備して最初のしし座4重銀河を撮り始めたのが20:45、総露出時間2時間で3対象を撮って撤収完了は4:00過ぎということで9時間以上撮り続けていました。途中布団に入って寝落ちしてたりもしてましたが…

露出は Gain 75 で2分。ダイナミックレンジ優先でこのくらいにしました。センサーのDRはこのあたりが最大だし、3分だと背景濃度が50%を越えるので。さすがにノーフィルターだと明るいですね。

ガイドはまあまあ好調でした。RMSエラーは RA, DEC 共に ±1.0" 前後。DEC は一時乱れてガイドグラフ上では ±1.4" くらいになっていましたが、変化は緩やかで2分露出だとあまり影響はない感じでした。風の影響と思われるブレは時々ありましたがほぼ問題なし。

画像処理は最初はスタックして Lightroom で調整しただけで Twitter に上げたりしてたのですが、だいこもんさん(id:snct-astro)のブログ*1 に触発されて wavelet 処理など色々やってみました(後述。でも Pixinsight はまだ敬遠…)。

まずは結果から。横位置で撮りましたが横長の画像はスマホで見た時「映え」ないので正方形にトリミングしたものを貼ります。写真のリンク先から前後を辿ると横長サイズ(オリジナルサイズは4K)の写真もあるのでPCのデスクトップに貼りたい場合はそちらを。

撮影順では最後の対象なのですが赤外との比較が気になるので M83 から。

M83 (2021/3/15 01:10)
M83 (2021/3/15 01:10)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MC + PHD2 2.6.9 による自動ガイド/ ASI290MM (ゲイン75) / 露出 2分 x 60コマ 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 4.2.2, Photoshop 2021, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理

前回の赤外のやつとは全然違うのですが… もっとも微光星の写りを比べると前回はシーイングもしくはピントにも問題がありそうです。当日は深夜から冷え込んだのでピントがズレたのかも…

今回は途中で一度ピントを再調整しましたが、実際バーティノフマスクの星像をひと目見てわかるくらいにはズレていました。調整後この写真を撮るまでにさらに冷え込んでいたのでまだ改善の余地はあるかも。

暗黒帯の写りは以前デジカメで撮ったものに比べると若干薄い気はしましたが、軽い wavelet 処理で改善しました。総露出時間は前回と同じですが、実際に受光した光量が全然違って低ゲインで撮れたのもあってノイズも比較的少なく、軽い wavelet 処理ならそれぼと荒れずに済みました。

フェイスオン銀河はこのくらいの解像すると楽しいですね。光害カブリで元の写りは淡かったのですが、ダイナミックレンジが良かったからか、画像処理で淡い部分もそこそこ出ています。

次は最初に撮ったしし座4重銀河。

しし座4重銀河(NGC3190, NGC3193, NGC3187, NGC3185) (2021/3/14 20:45)
しし座4重銀河(NGC3190, NGC3193, NGC3187, NGC3185) (2021/3/14 20:45)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MC + PHD2 2.6.9 による自動ガイド/ ASI290MM (ゲイン75) / 露出 2分 x 60コマ 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 4.2.2, Photoshop 2021, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理

中央の暗黒帯の見える銀河が NGC3190、左上の楕円銀河が NGC3193、右上の両端から腕が出てカギ型になっている棒渦巻銀河が NGC3187、右下の少し離れたところにある楕円形の棒渦巻銀河が NGC3185 です。

10.9等から13.4等と、メシエナンバーのついた銀河と比べるとやや暗い銀河の集まりで、特に13.4等の NGC3187 は両端に直角に曲がって伸びる淡い腕があり、横浜の空でこれは写らないのではと思っていたのですがギリギリ写りました。腕の先端部は写りませんでしたが腕の形の雰囲気は伝わるかな…

ちなみに NGC3190 は Stellarium では NGC3189 と表示されるのですが、NGC3190 の暗黒帯で分割された南西部分を別の銀河と誤認したもののようです。*2

「しし座4重銀河」という名称も Stellarium の表示に出てくるものですが、あまりメジャーな呼び方ではないようです。コンパクト銀河群のカタログのナンバーで HCG44 (Hickson Compact Group 44)と呼ぶのが正式のようです。

最後は NGC4302 と NGC4298 です。

NGC4302, NGC4298 (2021/3/14 23:01)
NGC4302, NGC4298 (2021/3/14 23:01)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MC + PHD2 2.6.9 による自動ガイド / ASI290MM (ゲイン75) / 露出 2分 x 60コマ 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 4.2.2, Photoshop 2021, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理

左のエッジオン銀河が NGC4302、右の楕円状の渦巻銀河が NGC4298 です。NGC4302 の暗黒帯ははっきり写っていて、暗黒帯の構造もある程度見えています。NGC4298 の渦巻き腕の網目状の暗黒帯の構造はさすがに解像していませんが、モコモコした感じは見えています。

2017年にハッブル宇宙望遠鏡打ち上げ27周年記念に公開された写真がこの銀河のペアで、当時こちらの記事で紹介しました。

ちょうどこの頃 8cm F6 + 0.6x レデューサーとデジカメでこのペアを含む写真を撮っていたので記事にしたのでした。

NGC4302, NGC4298 (2017/3/5 02:13)
NGC4302, NGC4298 (2017/3/5 02:13)
笠井 BLANCA-80EDT (8cm F6) + 0.6x レデューサー, IDAS LPS-D1 48mm / ケンコー スカイメモS, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 2.6.1 による自動ガイド / OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO 200), 3分 x 10コマ 総露出時間 30分 / DeepSkyStacker 3.3.2, Lightroom CC で画像処理

解像度は今回の写真が断然上ですが、褐色の NGC4302 と白い NGC4298 という色の対比が写っているのはいいですね。やはりこれはカラーで撮りたいところ。もう一夜頑張ってカラーで撮って LRGB 仕上げてみようかな…

画像処理についてですが、だいたいこんな手順で処理しました。

  • DeepSkyStakker の出力を Photoshop で軽くストレッチして 16bit モノクロTIFFで保存(stretch)
  • stretch を StarNet++ 処理した画像を PhotoshopTIFF のバイトオーダーを「IBM PC」に変更して再保存(starless)
    • StarNet++ のTIFFMAC形式で RegiStax 6 で読み込めないため。
  • stretch から starless を減算して星だけ画像作成(star)
  • star をぼかして軽くストレッチして反転して RegiStax 6 用のマスクを作成(wavelet-mask)
  • RegiStax 6 でマスクに wavelet-mask を適用して starless を軽く wavelet 処理(wavelet)
  • wavelet 画像の穴埋め部分のノイズを Photoshop の「コンテンツに応じた塗りつぶし」やガウスぼかしで平滑化(fixed-wavelet)
  • fixed-wavelet をストレッチ、段階フィルターによる傾斜カブリ補正、ノイズ軽減フィルター等で処理したものに、star を加算合成(wavelet+star)
  • wavelet+star を LR で調整して result に

ただし、しし座4重銀河については StarNet++ がうまく星を消してくれなくて、楕円銀河が半分残ったり、銀河の中心付近に目立つブロックノイズが出たりしたので、諦めて「明るさの最小値」でフィルターしたものを減算して作った星マスクで処理しました。

低ノイズの60枚コンポジットとはいえ、強い wavelet 処理ではノイズがバリバリ浮いてくるので、気持ち程度に軽くかけるだけにとどめました。それでもその後の本番ストレッチで見てわかる程度には解像感が上がりました。

というわけで、ノーフィルター(もしくはクリアフィルター)の銀河撮影はいいぞ、でもカラーも撮りたいな… やはりここは LRGB 撮影か?といった感じです。

ASI290MM/MC では感度低くて一晩で両方撮るのは厳しいですね。ていうかまともな冷却CMOS欲しい…

M60 + NGC4647 + M59 + NGC4638、M83 (2021/2/19)

2月19日の夜は春の銀河を撮りました。今回は最近流行り(?)のモノクロCMOSカメラとIRパスフィルターを使って赤外線で撮るテストです。赤外線で撮れば光害も平気、という噂なので、銀河ならモノクロでも楽しめるかなと思って試してみました。ターゲットはおとめ座の銀河 M60 + NGC4647 + M59 + NGC4638 の組と、うみへび座の銀河 M83 です。

カメラは惑星のL画像撮影用の ZWO ASI290MM、IRパスフィルターは2018年に火星のダストストームを透過するために使った850nm以上を通すものを使いました。

というかこれしか手元になかったので… Hαもカットしてしまうしセンサーの感度の低い部分を使うので像がかなり暗くなりますが大丈夫でしょうか…

今まで惑星撮影に使っていた ASI290MM、センサーにゴミの影が乗っていたのをある時期から騙し騙し使っていたのですが、今回は惑星と違ってセンサー全面を使うので昼のうちに一度分解清掃しました。無水アルコールで拭くのが正式のようですが、コロナ禍のせいか薬局にも在庫がなかったので、綿棒とブロワーのみでセンサーとカバーガラスの両面をクリーニング。ゴミはFが明るいと目立たなくなるので、8cm F6 + 2.5xバロー(F15)で青空を撮ってゴミがないことを確認。惑星撮影の時のF40で大丈夫か気になりますが確認はまた後日。

昨夜の天気は快晴。19:30頃から機材の設置。今回は普段ガイドカメラとして使っている ASI290MM を撮像に使うので、ガイドカメラを ASI290MC に入れ替えました。PC に ASI290MM と ASI290MC を同時に接続していると PHD2, SharpCap 共に何故かカメラ名の表示と接続先が入れ替わることがあって混乱しましたが、PHD2 や ShapCap を再起動すると直りました。

PHD2 でプロファイルを作り直してダークライブラリの作成とゲインの調整をしてドリフトアライメント。カラーカメラでのガイドは初めてでしたが、特に問題なく使用できるようです。

その後、月明かりの下ではありますが先日撮った NGC2903 を導入して露出を決めました。

モノクロセンサーの感度をもってしてもやはり IR 860nm パスフィルターを通した像は暗く、総露出時間を倍くらいに伸ばしたいところですが、そうもいかないのでとりあえずゲインを少し上げて(250)、3分露出の40コマ(総露出時間2時間)で撮ることにしました。

月没は24:30頃でしたが、撮れるうちに撮っておこうと23:50頃から撮影開始。ガイドはまあまあ好調で、時折赤緯ガイドが若干乱れましたが、赤経赤緯共にほぼRMSエラーが±1.0秒前後に収まっていました。

53コマ撮りましたが24:08からの45コマから DeepSkyStacker で 89% を選別して40コマを 2x drizzle でスタック。結果はこうなりました。

M60, NGC4647, M59, NGC4638 (2021/2/20 00:08) (IR Pass 850nm)
M60, NGC4647, M59, NGC4638 (2021/2/20 00:08) (IR Pass 850nm)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), IR 850nm パスフィルター / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MC + PHD2 2.6.9 による自動ガイド/ ASI290MM (ゲイン250) / 露出 3分 x 40コマ 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom Classic で画像処理

左が M60 でその右上にくっついてるのが NGC4647、右がM59、中央下が NGC4638 です。地球からの距離は M60 が5700万光年、NGC4647 が6300万光年、M59 と NGC4638 は5000万光年です。*1 銀河のタイプは M60 と M59 は楕円銀河、NGC4647 は渦巻銀河、NGC4638 はレンズ状銀河です。

M60 と NGC4647 は親子銀河のように見えますが M51 に見られるような重力相互作用はないか、あってもわずかのようです。しかし、NGC4647 の渦巻き腕の暗黒帯が写るかと思ったのですがほとんど写っていませんね…

バックグラウンドは暗いものの結構ノイジーで、やはり総露出時間をもっと増やしたいところです。

画像処理する前のスタックのみの画像はこうでした。

M60, NGC4647, M59, NGC4638 (2021/2/20 00:08) (IR Pass 850nm) (no stretch)
M60, NGC4647, M59, NGC4638 (2021/2/20 00:08) (IR Pass 850nm) (no stretch)
撮影データは上に同じ。

光害のカブリが全くないというわけでもないようですが、撮って出しとしては今まで見たことのないレベルで天体が見えています。

2:30からは M83 です。赤緯ガイドが若干揺れ気味でしたがRMSエラー±1.1秒前後で許容範囲。総露出時間2時間で、結果はこうなりました。

M83 (2021/2/20 02:30) (IR Pass 850nm)
M83 (2021/2/20 02:30) (IR Pass 850nm)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), IR 850nm パスフィルター / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MC + PHD2 2.6.9 による自動ガイド/ ASI290MM (ゲイン250) / 露出 3分 x 40コマ 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom Classic で画像処理

M83 は地球からの距離が1500万光年の棒渦巻銀河。大きいのは近いからです。大好きなフェイスオン銀河なのですが、一昨年カラーで撮ったものと比べるとやはり暗黒帯が薄い、というかほとんど消えているような…

外周部の淡い部分の写りは良くなっているのですが、個人的には暗黒帯が薄いと魅力が半減です… うーむ、赤外だとこうなるんですかねぇ?

撮って出しはこうです。

M83 (2021/2/20 02:30) (IR Pass 850nm) (no stretch)
M83 (2021/2/20 02:30) (IR Pass 850nm) (no stretch)
撮影データは上に同じ。

赤外とはいえ、さすがに低空では結構カブリがでています。それでも撮って出しで M83 の腕がはっきり見えるのはさすがといったところでしょうか。

というわけで、赤外(850nm 以上)での撮影をまとめると、

  • 暗い。光害カットフィルター使用時と比べて露出時間は倍くらい欲しいかも。
  • 光害カブリの軽減にはかなり効く。ただし低空ではそれなりにカブる。
  • 銀河の暗黒帯の写りが悪くなる?

といったところでしょうか。

ちなみに、フラットの撮影で有機ELパネルのタブレット端末に白い画像を表示して使ったところ、最大輝度でも露出時間が15秒も必要でした。有機ELパネルは赤外線がほとんど出ていないのでしょうか?

あと、これは赤外撮影とは関係ないですが、DSS でモノクロカメラで撮った FITS を使う時は Raw/FITS DDP Settings で Monochrome 16 bit FIT Files are RAW files created by a DSLR or a color CCD camera のチェックボックスを OFF にしないとデベイヤーされてカラーTIFFが出力されてしまうので注意。

というわけで赤外撮影、今後どうしようかな… もっと低波長まで通すフィルターなら暗黒帯も暗くなってくれるのでしょうか?

*1:いずれも Wikipedia 英語版による。

NGC2903 (2021/2/10)

ごぶさたしてます。今年最初のエントリになります。あけましておめでとうございます。って、もう2月も中旬になりますが… 1月はちょっと燃え尽きていた感じで、やっと星を見る余裕が出てきました。

昨夜、2月10日の夜は久しぶりにベランダに SX2 を出してしし座の銀河 NGC2903 (通称(?):肉丸さん)を撮りました。しし座の鼻先にあるちょっと大きめの棒渦巻き銀河で、今回初めて撮りました。

21:00過ぎから撮影開始の予定で20:00前から準備していたのですが東の空から薄雲が拡がってドリフトアライメントを何度も中断するはめになり、今夜はダメかもと思っていたのですが、22:00頃から晴れてきて撮影開始。

NGC2903 は南中高度が比較的高いのでベランダの天井に邪魔されるかと心配していたのですが、子午線越えを挟んで2時間無事に撮影できました。ガイドは最初の90分は絶好調だったのですが、そこから赤緯ガイドが振動し出して後半は過修正を避けるた赤緯ガイドを時々OFFにするなどだましだましやって、ガイドエラーでボツになった分を補充するために追加で5コマ撮影しました。

結果はこちら。

NGC2903 (2021/2/10 22:07)
NGC2903 (2021/2/10 22:07)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 2.6.9 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン200) / 露出 3分 x 40コマ 総露出時間 2時間 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom Classic で画像処理

うーん、南北に伸びる淡い腕がほとんど写らなくて、ぱっと見実際の半分くらいの大きさになっちゃってますね。やはり横浜の空では厳しいか… でも中心部の棒渦巻きの構造はしっかり写っているので、一応撮れたってことにしておきましょうか…

NGC2903 の東には楕円形で小さくぼんやりした姿の銀河 PGC27115 があるのですが、この写真ではほぼ見えません。よーく見るとうっすらそれらしき光芒があるにはあるのですが…

わかりやすいように astrometry.net でアノテーション付き画像作ろうとしたら「OSError at /upload/ [Errno 122] Disk quota exceeded」とかエラーになって画像アップロードできませんでした… 手元の Ubuntu 18.04 にもインストールしてあるんですが、なぜかアノテーション付き画像が生成されず。

しょうがないので PGC27115 に位置については WikiSky のここを参照してください。

2020年の天文活動をふりかえる

今年も一年の天文活動をふりかえるエントリを書きたいと思います。また長文エントリになりますので写真だけ眺めてみたい方はこちらのスライドショーをどうぞ。

昨年作った JavaScript のスライドショースクリプトを使っています。ソースはこちら。

火星

火星 (2020/10/20 20:35)
火星 (2020/10/20 20:35)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

2020年はなんといってもまず火星。火星の準大接近の年でした。2018年の大接近では大黄雲(全球規模のダストストーム)で可視光では表面の模様がほとんど見えなくて、赤外である程度は見えたもののもう一つスッキリしないシーズンだったのですが、今年は火星も地球もよく晴れて、10月は火星撮影に全集中の1ヶ月でした。

火星の自転速度は地球よりわずかに遅く、日に日に地球から見える場所がずれていきます。これを利用して一ヶ月間で火星面をほぼ一周する形で撮影ができました。火星の表面の模様をちゃんと見たのは初めてでしたが、地球との位置関係で死角になっていた北極周辺を除けば隅から隅まで見ることができて堪能しました。

火星撮影の「本番」は10月でしたが6月頃から機会を見て撮っていて、視直径がだんだん大きくなり、また、火星の南半球が夏を迎えて南極冠が縮小していく様子を見ることができました。

火星 (2020/6/10 03:20)
火星 (2020/6/10 03:20)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 280) / 露出 1/60s x 3000/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

火星 (2020/6/17 02:56)
火星 (2020/6/17 02:56)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25"(RGB), ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 217), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 296) / 露出 1/125s x 2500/5000コマをスタック処理 x4 (L:2, RGB:2) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.1.5, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

8月には複雑な模様がかなりはっきり見えてくるようになりました。

火星 (2020/8/2 01:01)
火星 (2020/8/2 01:01)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 245), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 285) / 露出 1/125s x 2000/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.1.5, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

その後9月末までは天候も体調も最悪で天文活動が全くできず先が危ぶまれる状態でしたが、10月からは比較的天候と好シーイングに恵まれ、また少々の雲があってもしぶとく待ち続けるだけの気力も出てきてたくさんの写真を撮りました。この一ヶ月間に撮ったデータ量は合計1.85TBになりました。

以下撮影順に。火星の地形の名前については、これらの写真を使って WinJUPOS で作成した地図を以下のエントリに載せましたので参照してください。

まず10月1日の夜に撮ったもの。この日はキンメリア人の海の東側からシレーンの海、太陽湖にかけての地形が見えていました。

火星 (2020/10/1 22:08)
火星 (2020/10/1 22:08)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 264), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 2500/5000コマ x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してスタック処理してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.2.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

南半球の右側に漫画の目みたいな模様が見えますが、この黒目の部分が太陽湖と呼ばれる地形です。その右上の先が二股に別れた筋状の模様がマリネリス峡谷です。全長4000kmの巨大な峡谷です。

火星 (2020/10/2 00:48)
火星 (2020/10/2 00:48)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 264), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 2500/5000コマ x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してスタック処理してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.2.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

右上の虫さされみたいにぷくっとしているのが太陽系最大の山として知られるオリュンポス山です。

10月6日は最接近でしたが写真の出来は1日とあまり変わらないので省略します。

この日は火星の衛星も撮りました。

火星、フォボス、ダイモス (2020/10/7 02:21, 02:19)
火星、フォボスダイモス (2020/10/7 02:21, 02:19)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2, ZWO ASI290MC (Gain 302) / 火星:露出 1/125s x 2500/5000コマをスタック処理, 衛星: 1/4s x 250/500コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.2.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

写真中央右寄りの火星から近い方の星がフォボス、火星から遠い方の左端近くにうっすら見えている星がダイモスです。

10月12日はオーロラ湾からマリネリスにかけての複雑な地形が楽しめました。

火星 (2020/10/13 00:33)
火星 (2020/10/13 00:33)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

10月18日は子午線の湾からサバ人の湾のあたり、俗にアリンの爪と呼ばれる地形が見えていました。

火星 (2020/10/18 23:13)
火星 (2020/10/18 23:13)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

10月20日はみんな大好き大シルチスの登場です。

火星 (2020/10/20 20:35)
火星 (2020/10/20 20:35)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

中央から北半球に飛び出している地形が大シルチス。小口径でもよく見える地形なので人気です。2018年に大黄雲越しに赤外で撮った時はモヤモヤとした雲みたいな形にしか見えなかったのですが、ずいぶんと複雑な模様が見えました。

大シルチスが正面に来たこの写真を撮った時には火星はまだ高度が低くてシーイングがもう一つでした。この日のベストはこちら。

火星 (2020/10/20 21:30)
火星 (2020/10/20 21:30)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

南半球の正面にヘラス盆地が見えています。2018年には明るく輝いていたヘラス盆地ですが今年はやや黒ずんで黒い模様も浮かんでいてだいぶ印象が違って見えました。

10月24日は今シーズン唯一失敗した日で、シーイングが悪すぎて全然解像しましせんでした。このまま冬が近づいてシーイングが悪いままだったらどうしようと思っていたのですが…

10月26日の撮影は成功でした。10月1に東の端が見えていたキンメリア人の海を正面に捉えて、これで火星ほぼ一周分の撮影ができました。

火星 (2020/10/26 20:13)
火星 (2020/10/26 20:13)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2021, Lightroom Classic CC で画像処理

火星 (2020/10/26 21:42)
火星 (2020/10/26 21:42)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 244), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 302) / 露出 1/125s x 1250/5000コマをスタック処理 x6 (L:3, RGB:3) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.3.0, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2021, Lightroom Classic CC で画像処理

一周分の写真を WinJUPOS で処理して作った地図がこちら。

火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (0º中心)
火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (0º中心)

北半球の高緯度地域は今回は地球から見て死角に入っているので地図上では黒くなっています。そのかわり南半球は完全に見えていたので南極側から見た南半球の地図も作りました。

火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (極射影・南極)
火星地図 (2020/10/1-2020/10/26) (極射影・南極)

南極冠が南極点からズレている(偏心している)理由についてはこちらのエントリに書きました。

ということで2020年の火星観測は満足できる結果になりました。

木星土星

2018年に μ-180C を購入してから毎年撮っている木星ですが、なかなかシーイングに恵まれず… しかし8月1日の撮影で過去経験したことのないレベルの好シーイングに恵まれて自己ベスト更新と言える写真が撮れました。

木星 (2020/8/1 21:45) (A + K 10%)
木星 (2020/8/1 21:45) (A + K 10%)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 298), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 335) / 露出 1/60s x 1500/3000コマをスタック処理 x8 (L:4, RGB:4) を de-rotation してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.1.5, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

大赤斑が見えている状況でベストショットが撮れたのはラッキーでした。この後はスランプに陥って10月に回復した後は火星に全集中だったので今年の木星の拡大撮影はこれが最後になりました。大赤斑、去年は内部から赤い雲が流出して消滅の危機か?などと騒動になりましたが今年は平穏無事だったようです。

ちなみにこの写真は10月に画像処理(wavelet)のパラメータを大きく変更して再処理した写真です。去年までの解像感重点の振り切ったパラメータから階調表現が劣化しないよう抑えたパラメータに変更しました。詳細は以下のエントリを。

上の写真はこのエントリの写真から少しだけ処理を変えています。「あっさり」仕上げの写真に以前の「こってり」仕上げの写真を少しだけ(10%)ブレンドして模様の濃度を上げてあります。*1

wavelet の段階でベストの強調ができればいいのですが、L画像だけみていい感じにするのが至難の技なのでこうしました。これだと Photoshop でレイヤーの不透明度のスライダーを動かすことで容易に解像感と階調表現のバランスを探ることができます。

同じ日に撮った土星の写真も同様に再処理したものを以下に。

土星 (2020/8/1 23:06)
土星 (2020/8/1 23:06)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / L: ZWO ASI290MM (Gain 303), RGB: ZWO ASI290MC (Gain 374) / 露出 1/30s x 2500/5000コマをスタック処理してLRGB合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, WinJUPOS 11.1.5, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC 2020, Lightroom Classic CC で画像処理

土星も特に変わったことはなかったです。

その他の惑星・準惑星

今年は水星、天王星海王星は撮りませんでしたが冥王星を撮りました。これで太陽系の惑星・準惑星は全部撮れたことになります。

冥王星

今年は初めて冥王星を撮影しました。木星土星の間という探しやすい位置にあったこともあって失敗することなく一度の撮影で撮れました。

冥王星 (2020/8/11 23:00) (キャプション付き)
冥王星 (2020/8/11 23:00) (キャプション付き)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 285) / 露出 15秒 x 10/20コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, Lightroom Classic CC で画像処理

冥王星の明るさは14等。μ-180C 直焦点でノータッチの15秒露出でまともに撮れるのか不安でしたがなんとか撮れました。計算上はギリギリ解像しそうな冥王星の衛星カロン(16等)は写らず、と思ったのですが、wavelet 処理して拡大してみると冥王星の像に微妙に出っ張った部分があってカロンの位置と一致していました。

冥王星とカロン? (2020/8/11 23:00) (3倍に拡大)
冥王星カロン? (2020/8/11 23:00) (3倍に拡大)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 285) / 露出 15秒 x 10/20コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC で画像処理

撮れたとはいいづらい写りですが、恒星がほぼ真円に写っていますし追尾エラーというわけでもなさそうなので、僕の中では撮ったことになってます…

金星

金星は4月に一度だけ撮影してそれっきりでした。内合近くの細い金星も勇気がなくて撮れず…

金星 (2020/4/25 12:35)
金星 (2020/4/25 12:35)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (ゲイン275) / 露出 1/1000秒 x 1000/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC, Photoshop 2020 で画像処理

一応三日月状の姿の金星が撮れました。これでも μ-180C で撮った中では一番細い金星です。昼間の金星の撮影の難しさを思い知らされました。来年はもっと細い金星が撮れるといいなぁ。というか何か工夫しないと無理ですが…

天文現象

いわゆる天文ショー的なものとしては、今年は日食と彗星と木星土星の大接近がありました。その他、地味なものも含めてまとめます。

日食

6月21日の夕方の部分日食は天候に恵まれず雲越しに見え隠れするのをなんとか撮ったという形になりました。

部分日食 (2020/6/21 16:54)
部分日食 (2020/6/21 16:54)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12), Kenko PRO ND-100000 77mm / ミザール K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/15秒 / Lightroom Classic で画像処理

一番きれいに撮れたのがこれです。一番欠けた姿(最大食分0.47)は雲に隠れて撮れませんでした。部分的に撮れたもので一番欠けているのがこれです。

部分日食 (2020/6/21 17:13)
部分日食 (2020/6/21 17:13)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12), Kenko PRO ND-100000 77mm / ミザール K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO1600, RAW) 露出 1/4秒 / Lightroom Classic で画像処理

まあ、一応欠けたところは見れたし部分日食なのでそんなに悔しくないです…

ネオワイズ彗星(C/2020 F3)

今年は急激な増光で大彗星になるかも!?と期待されたアトラス彗星(C/2019 Y4)が最接近前に崩壊という悲劇がありました。コロナで野外での撮影は自粛していて崩壊前のアトラス彗星はマンションからは撮れる位置になく結局一度も撮らないままになってしまいました。

そして7月に今度は本当に「大彗星」になったネオワイズ彗星(C/2020 F3)ですが、横浜は天候に恵まれず薄雲越しに一瞬だけしか見ることができませんでした…

C/2020 F3 (NEOWISE) ネオワイズ彗星 (2020/7/19 19:45)
C/2020 F3 (NEOWISE)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (71mm F2.0) / ケンコー スカイメモS, ノータッチ / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 5.0秒 / Lightroom Classic で画像処理、トリミング

ワンショット5秒露出です。まだ薄明が明るい時間に薄雲越しに10秒足らずしか見えず、その後雲に隠れて見失い、それっきりになってしまいました。というかこれが撮れたのもほとんど奇跡でした。翌日以降は悪天候が続き本当にこれが最初で最後となりました。

日本各地・世界各地の天文家のみなさんが続々と見事な尾の伸びた大彗星と呼ぶに相応しい姿を捉えた写真をSNSに流しているのを見て期待値MAXだっただけに悔しい思いをしました。コンポジットも何もできないしそもそも雲と薄明で淡い尾は全く写ってないし…

まあ、一応彗星ってわかる姿が撮れただけ良しとしますか。大彗星の勇姿を見たい方は仙台高専天文部(id:snct-astro)のブログをどうぞ!崩壊前のアトラス彗星の写真もありますよ!


木星土星の接近

12月21日の木星土星の大接近、海外では The Great Conjunction などと言われ、お固い観測写真しか載らないのかと思っていた ALPO-Japan にも Damian Peach さんや Christopher Go さんといった惑星写真の大家による素晴らしい写真が載っていました。

Damian Peach さんの写真は NASA の Astronomy Picture of the Day に選ばれました。

チリのリモート天文台の1m鏡で撮ったそうで凄まじい写りです。

さて、僕の方はといいますと、まずは17日の月と木星土星の接近を望遠レンズで撮影。

月と木星と土星の接近 (2020/12/17 17:25)
月と木星土星の接近 (2020/12/17 17:25)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (100mm F2.0) / ケンコー スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/60秒 x 40/80コマをスタック処理 + 1.6秒 x 20/24コマをスタック処理して合成 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

20日に翌日のリハーサルもかねて μ-180C 直焦点で撮影。

木星と土星 (2020/12/20 16:26)
木星土星 (2020/12/20 16:26)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO ADC / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/100秒 x 150/300コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理。

この日はガリレオ衛星と恒星を含めた並びが天頂プリズム越しの裏像で見ると数字の 7 になると話題になっていました。

木星と土星 (2020/12/20 17:43)
木星土星 (2020/12/20 17:43)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO ADC / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 4秒 x 12/16コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理。

そして最接近の21日。

木星と土星の接近 (2020/12/21 17:00)
木星土星の接近 (2020/12/21 17:00)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO ADC / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/30秒 x 210/420コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理。

リハーサルではイマイチな写りだった土星の輪と木星の縞模様が写った形でのツーショットが撮れました。土星の輪にはカッシーニの間隙まで見えています。木星の縞模様はややぼやけ気味ですが… デジカメでの連射はSDカードへの書き込み時間の関係で420コマを3分くらいかけて撮っているので木星の自転のブレが出ているのかも。

8秒露出で木星土星の衛星も撮りました。

木星と土星の接近 (2020/12/21 17:31)
木星土星の接近 (2020/12/21 17:31)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO ADC / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 8秒 x 12/24コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理。

土星の衛星はさすがにミマスまでは写りませんでしたがエンケラドゥスは写りました。

まあ本番の撮影は成功と言っていいかなということで、翌22日はプランBとして検討していた8cm屈折 + CMOS カメラで撮影。

木星と土星の接近 (2020/12/22 16:55)
木星土星の接近 (2020/12/22 16:55)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15), ZWO ADC 1.25", ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 201) / 露出 1/60秒 x 2500/5000コマをスタック処理(1.5倍 Drizzle) / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理。

こっちの方がよく写ってるじゃないですか!木星の縞模様、それに大赤斑も!土星カッシーニの間隙は21日の方が綺麗に解像していますがトータルで見るとこっちの方がいいのでは?という写りでした。21日もこれで撮ってたらよかったのかな…

まあ両方撮らないとどっちがいいかわからなかったわけだし、22日のシーイングがたまたま良かっただけかもしれないし、後悔はしていません。それに22日も21日と比べて両惑星の距離は1割くらいしか離れていないので、これはこれで成功と言えるでしょう。

低空で日没直後というシーイングが安定しない条件で、大口径望遠鏡が実力を出しきれず運次第では小口径の下克上もありうる状況とは思っていましたが、実際にこうなるとは…

その他天体同士の接近

天体ショーと言うほどでもないのですが、月と惑星や星団の接近です。

まず4月25日の三日月とすばる(M45 プレアデス星団)の接近。

三日月とすばる (2020/4/25)
三日月とすばる (2020/4/25)
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO (f40mm, 絞り F2.8) / ミザール K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 2秒 / Lightroom Classic で画像処理

実はこの接近は撮ってみるまで知らなくて、単に三日月のある風景写真を撮っていたつもりだったのですが、撮った写真をよく見るとすばるが近くに写っていたのでトリミングしたものです。

5月24日には二日月と水星と金星のスリーショットを撮りました。

二日月、水星、金星 (2020/5/24 19:37)
二日月、水星、金星 (2020/5/24 19:37)
ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0 (83mm F2.8) / ミザールテック K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 1.6秒 / Lightroom Classic で画像処理

撮っていた時は意識してなかったのですが、天リフさんが水星が一番高い!と面白がっていました。確かになかなか見ない光景かも。

12月13日未明には月と金星の接近がありました。

月と金星の接近 (2020/12/13 06:10)
月と金星の接近 (2020/12/13 06:10)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / ケンコー スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 0.8秒 x 20/24コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

雲が出たりして最接近は撮れなかったのですが、フルサイズ換算960mmの画角に収まりました。

今年は月面の拡大写真は撮らずじまいでしたが、デジカメ(OM-D E-M1 Mark II)の電子シャッターで数百枚連射したものをスタックしてディテールを出すという撮り方を始めました。この撮影法は木星土星の接近の時にも使いました。

月齢20.9 (2020/2/15 04:38)
月齢20.9 (2020/2/15 04:38)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12) / Kenko-Tokina スカイメモS / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO2000, RAW) 露出 1/500s x 64/188コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC, Lightroom Classic で画像処理

画質としてはワンショットのベストショットとCMOSカメラでのモザイク撮影との中間くらいでしょうか。2000万画素の画像処理はかなり重いしデータ量も馬鹿にならない(中間ファイルを含めて数十GB)のですが、撮影の気楽さを考えると捨てがたい撮影法で、今年はずっとこれで撮っています。

今年は幸運に恵まれて4月7日の最近の満月と10月31日の最遠の満月が両方撮れました。両方撮れるのは三年ぶりです。

2020年の最近の満月と最遠の満月 (2020/4/7, 2020/10/31)
2020年の最近の満月と最遠の満月 (2020/4/7, 2020/10/31)
最近の満月 (2020/4/7 21:03): 笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12) / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/400s x 96/146コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC, Lightroom Classic, WinJUPOS 11.3.0 で画像処理
最遠の満月 (2020/10/31 23:49): 笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12) / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/320s x 128/361コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic, WinJUPOS 11.3.0 で画像処理

視直径の差は12%ですが結構違って見えますね。

太陽

今年も黒点が少ない年でしたが、第25太陽活動周期が始まって11月頃から大きめの黒点が出てくるようになりました。在宅勤務なのをいいことに平日の昼休みに撮っています。

11月5日の2781黒点群。

2781黒点群 (2020/11/5 12:28)
2781黒点群 (2020/11/5 12:28)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 150) / 露出 1/2000s x 1250/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

久々にデジカメで太陽全体の写真も撮りました。月と同じで連射&スタックです。

太陽 (2020/11/5 12:47)
太陽 (2020/11/5 12:47)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12), Kenko PRO ND-100000 77mm / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/2500s x 64/226コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic, WinJUPOS 11.3.0 で画像処理

12月1日の2786, 2785黒点群。

2786黒点群、2785黒点群 (2020/12/1 12:42)
2786黒点群、2785黒点群 (2020/12/1 12:42)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15), Kenko PRO ND-100000 77mm, ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 135) / 露出 1/2000s x 1250/5000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理

Hαで撮れる太陽望遠鏡を買う予定は当分ないですが、来年も今ある機材で黒点くらいは撮っていこうと思います。μ-180C で太陽を撮るのは… やってる人はいるようですが、さすがに真似する勇気はありません… 来年もないと思います。

DSO (Deep-Sky Object)

今年は DSO 撮影はあまりできなかった気がしていたのですが、失敗気味のを含めれば一応10対象撮っているので特に少ないわけでもなかったです。銀河と惑星状星雲しか撮ってなくて、赤い星雲を全然撮らなかったので撮ってない気分なんですかね。

惑星状星雲

今年は初めて μ-180C 直焦点での DSO 撮影にチャレンジ、と言ってもオフアキ等には結局手が出せず惑星用CMOSカメラとの組み合わせで短時間露出で撮れる惑星状星雲だけなんですが… まあ、惑星状星雲のクローズアップ撮影自体も初めての経験なのでそこそこ楽しめました。

まずは木星状星雲。


NGC3242 木星状星雲 (2020/3/24 21:49) (normal + wavelet)
NGC3242 木星状星雲 (2020/3/24 21:49) (normal + wavelet)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 350) / 露出 4秒 x 250/1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC, Lightroom Classic で画像処理

そして土星状星雲。

NGC7009 土星状星雲 (2020/8/11 23:14) (normal + wavelet)
NGC7009 土星状星雲 (2020/8/11 23:14) (normal + wavelet)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 285) / 露出 4秒 x 90/180コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC, Lightroom Classic で画像処理

緑色一色の星雲ばかりでぱっとしませんが、緑色の天体というのも惑星状星雲以外ではあまり見ないですし、不思議な形も面白いものです。来年はカラフルな M57 (環状星雲)あたりを撮ってみたいのですが、ベランダからは無理なのでいよいよ重量機材を野外に持ち出す方法を考えなくては…

銀河

今年は惑星用CMOSカメラでの系外銀河の撮影を始めました。昨年は惑星状星雲と超新星残骸だけでしたが、視直径の小さい銀河も同じように撮れば少しは見栄えがするのではないかと思って。

デジカメでも撮影しましたが去年までの OM-D E-M5 から OM-D E-M1 Mark II に乗り換え。1600万画素から2000万画素に解像度がアップです。また、E-M5 で悩みの種だった謎のカブリが出なくなったような… 強調処理の激しい赤い星雲をまだ撮れてないので要検証ですが。

今年は年初からスランプでDSOの撮影は2月18日のマルカリアンチェーンが最初でした。BLANCA-80EDT 直焦点 + デジカメでの撮影でしたが、これは失敗気味…

Markarian's Chain (2020/2/18 01:26)
Markarian's Chain (2020/2/18 01:26)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 4コマ 総露出時間 48分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Lightroom Classic で画像処理

赤道儀のアライメントのミスと月の出の計算ミスでタイムロス&まだ撮れるのに月が出たと思い込んで撮影終了、という失敗でコマ数が足りず画質が上げられませんでした。これは来年リベンジです。

2月23日には M100 と M104 を撮影。惑星用CMOSカメラによる銀河の撮影はこれが最初です。

M100 (2020/2/23 23:58)
M100 (2020/2/23 23:58)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン240) / 露出 1分 x 96コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Lightroom Classic で画像処理

M104 (2020/2/24 01:46)
M104 (2020/2/24 01:46)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン240) / 露出 1分 x 96コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Lightroom Classic で画像処理

8cm 相応の写りではありますが、過去最高の写りでそこそこ満足できるものでした。

これならば… ということで、3月16日、昨年デジカメで撮って微妙な写りだった M87 のジェットも同じ方法で撮りました。

M87のジェット (2020/3/16 23:03) (拡大)
M87のジェット (2020/3/16 23:03) (拡大)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン240) / 露出 30秒 x 96コマ + 1分 x 80コマ 総露出時間 2時間8分 / DeepSkyStacker 4.2.2 (2x Drizzle), Lightroom Classic で画像処理

まさにジェットです。wavelet 処理しなくてもこの写り。これならば撮れたと言っていいでしょう。

3月18日にはこれまた昨年微妙だった NGC 4565 Needle Galaxy を撮りました。

NGC4565 (2020/3/18 22:39)
NGC4565 (2020/3/18 22:39)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン240) / 露出 60秒 x 90コマ 総露出時間 1時間30分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom Classic で画像処理

まあ撮れたとは言えると思いますが、「針先」の写りがもう一つなのは光害地では仕方がないのでしょうか…

コロナで野外での撮影は自粛していましたが、マンションの廊下からなら許されるのでは… と思ってマンションの廊下に機材を出して北天の天体を狙おうとしたのですが、天井の制約が厳しくて唯一撮れるのが M81 と M82 でした。

3月20日に意を決して撮影。これはツーショットで撮りたいので BLANCA-80EDT の直焦点 + デジカメでの撮影です。マンションの住人に白い目で見られたり話しかけられたりしながら…

M81, M82 (2020/3/20 22:37)
M81, M82 (2020/3/20 22:37)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 16コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom Classic で画像処理

M81, M82 それぞれの拡大写真(トリミング)も。

M81 (2020/3/20 22:37) (DeNoise AI 15/5/0)
M81 (2020/3/20 22:37) (DeNoise AI 15/5/0)
DeNoise AI で画像処理

M82 (2020/3/20 22:37) (DeNoise AI 10/5/0)
M82 (2020/3/20 22:37) (DeNoise AI 10/5/0)
DeNoise AI で画像処理

マンションの廊下の蛍光灯等からの迷光によるカブリもひどく、元の処理画像はかなりザラザラだったので、拡大画像の方は当時流行っていた DeNoize AI によるノイズ除去を施しています。

M82 の赤いガスはさすがに写りませんでしたが、中心部のモクモクのディテールはそこそこよく写っています。M81 はぱっと見悪くないですが、淡い部分がAIの補間なので… ちゃんとした空で撮り直したいところです。

11月13日には NGC253 ちょうこくしつ座銀河を撮りました。デジカメで何度も撮った銀河ですが、今回は惑星用CMOSカメラで。

NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2020/11/13 20:57)
NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2020/11/13 20:57)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン100) / 露出 3分 x 32コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom Classic で画像処理

かなりデカい銀河なので1/2.8インチセンサーの画角いっぱいに写ってなかなかの迫力です。でもやっぱり低空で光害の影響を受けやすいので端の淡い部分の写りはイマイチ… 光害地の限界ですかね。これ以上は赤外でL画像を撮るくらいでしょうか。

同じ日にM74も撮りましたがこれは失敗気味。途中からベランダの天井に隠れてコマ数が稼げませんでした。

M74 (2020/11/13 23:00)
M74 (2020/11/13 23:00)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン100) / 露出 4分 x 17コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom Classic で画像処理

これでも一応今までで一番よく撮れてはいるのですが… 来年また撮ってみたいと思います。

今年は M33 も撮りたいと思っていたのですが、試してみるとベランダに設置した SX2 からはベランダの天井が邪魔で撮れないことが判明。設置方法を工夫するか、野外で撮るか… 来年はなんとかしたいところです。あと、野外で撮れるなら RedCat 51 で M31 も撮りたいです。

球状星団

4月24日に M22 を撮りました。3年前のリベンジです。

M22 (2020/4/25 02:00)
M22 (2020/4/25 02:00)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 1分30秒 x 2コマ + 3分 x 6コマ + 6分 x 6コマ 総露出時間 57分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom Classic で画像処理

オートガイドが乱れ気味で若干星像が甘くなってしまったのですが、まあ許容範囲内でしょうか。

M22 は大きくて金色で(低空のせい?)球状星団では一番好きな天体です。でも全天一球状星団 M13 をまだ撮ってないので… これも野外でないと撮れないのですが、来年は撮れるかなぁ…

二重星

また去年のリベンジみたいなものなのですが、3月11日にシリウスA, Bを撮りました。どうもコントラストが命らしいということで拡大光学系は使わず μ-180C 直焦点で撮影。

シリウスA, B (2020/3/11 18:57) (wavelet)
シリウスA, B (2020/3/11 18:57) (wavelet)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (ゲイン100) / 露出 1/8秒 x 200/1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic Classic で画像処理

これは撮れたと言っていいでしょう!実は3月5日に一度失敗しているのですが…

その他の活動

ふりかえり記事

このブログを始める前の固定撮影時代の撮影記を書いたりしていました。7年前のパンスターズ彗星(C/2011 L4)とアイソン彗星(C/2012 S1)のお話です。


写真自体はたいしたものではないですが、これから固定撮影から天文を始める人の参考にもなるかと思って書きました。

DeNoise AI の検証

Topaz Labs の DeNoise AI は天文家の間で今年一番話題になったソフトではないでしょうか?言い過ぎ?でも今でもあちこちで使われているのを見るので一過性のブームではなく定番の画像処理ソフトになりそうな気配です。

自分でも色々試してみました。

銀河のような白っぽい天体にはマッチするけど、色の濃い天体はディテールとノイズの判定ミスがあるようで微妙、というのが暫定的な結論。3月時点での話なので、その後のバージョンアップでどうなっているかわかりません。

また、惑星写真でも使っている人が結構いるようなのですが… 自分では検証できていないのであくまで印象ですが、AI で模様のディテールがあり得ないほどシャープに描写されてしまったり、wavelet 処理などで出てくるアーティファクトのパターンが強調さされて偽の模様として描写されてしまっているケースがあるような…

というわけで DeNoise AI は使用期限がきれた後だいぶ迷ったのですが未だに購入していません。年末にセールやってるんですけどどうしようかなあ…

天下一画像処理会

天文系VTuber(?)のけむけむさんの主催で、けむけむさんが用意した同じ生データを参加者が各々工夫して画像処理した結果を持ち寄ってけむけむさんが動画にまとめるという「天下一画像処理会」というイベントがあって、その「惑星の部」に僕も参加しました。

昨年鍛えた画像処理技術で頑張りました。順位とかはないのですが、自分の目指す方向性の処理としてはいい線いってるな、という自信がつきました。が、その後目指すべき方向性が変わったので… 来年もまた修行します。

またこういう機会があったら参加したいと思います。

KAGAYA さんの機材チェック

たぶん今年一番読まれたエントリがこれです。いいのかそれで?

NHKの天文番組『コズミック フロント☆NEXT』で映像作家 KAGAYA さんのお仕事紹介をする回があって、NHK ということもあってか機材の名前の紹介はなかったのですが、映像から機材を特定して紹介するというエントリです。中にはとんでもない機材も…

KAGAYA ファンにはたまらないのか、公開翌日には通常の6倍(天リフさんの紹介でブーストかかった時と比べても3倍)のアクセスがありましたし、半年近く経った今でもちょくちょくアクセスがあります。

まあ需要もあるし、自分でも書いてて楽しかったのでいいのではないでしょうか…

アニメ『恋する小惑星』と『小惑星ハンター』

今年最初のエントリがこれだったのですが…

1月3日からオンエアされた「きらら系」アニメ『恋する小惑星(アステロイド)』(略称:恋アス)のお話。きらら系というのは芳文社の漫画雑誌「まんがタイムきらら」やその系列誌の連載漫画を原作としたアニメで、なんといいますか、女の子同士のきゃっきゃうふふな日常を描いたゆるい感じの萌えアニメのことです。

特にそういう趣味はないのですが、恋アスに関しては「天文部がテーマ」「作者がガチ」「ビクセンアストロアーツがタイアップ」との不穏な(?)事前情報が流れて一部の天文家の間で注目されていたのでした。

開けてみると、ちょっと前例がないのではないかというレベルで「ガチ」の天文アニメでした。「背景の星空を Astrometry.net で plate solve できる」と言えばそのレベルがわかるでしょうか。

詳しくは HIROPON(id:hp2)さんの各話レビューをどうぞ。

レビューする方もガチなので読み応えがあります。

僕の方は2話以降は twitter で録画をエア実況(最終回はリアタイ実況)するのみでした。

1話〜11話は実況ツイートがスレッドになってます。

ちなみに第7話であおが読んでいた渡辺和郎『小惑星ハンター』ですが、オンエア当時は古本しかなくプレミア価格がついていたのですがその後電子化されていました。

小惑星ハンター

小惑星ハンター

版面をスキャンした形の電子化で検索とかできないのが残念ですが、3月4日オンエアで3月30日電子版発行なので要望があって急遽電子化したんですかね?

Kindle版で読みましたが1996年発行の本なので、ネットでの情報流通も黎明期、冷却CCDがアマチュアにもやっと使われるようになった頃の話で、現代の我々の実用になる要素は限られているのですが、当時の天文家たちの熱意が伝わってきてなかなか楽しい本でした。

やり残したこと

今年やり残したことを簡単に。去年からやろうとは思っていたのですが SX2 を含めた重量機材を運び出しての野外での天頂付近や北天の撮影、結局できませんでした。運搬用の台車もしくはキャリーカートもまだ買っていません。来年コロナが落ち着いたら是非やりたいです。

去年購入した RedCat 51 ですが今年は全然使いませんでした。元々大きめの天体を撮るのに使うために購入したのですが、ターゲットがベランダからは撮れないものばかりだったので… RedCat ならスカイメモSでも十分扱えるので野外でも撮れると言えば撮れるのですが、コロナ自粛ということもあって。これも来年の課題になります。

今年は新機材の導入もありませんでした。周りの天文家のみなさんは次々とデジカメから冷却CMOSに移行しているのですが… 自分は一般撮影と共用の非改造デジカメで撮ってることもあって、冷却CMOS移行のメリットは大きいのですが、まだ思いきれません。お金はなくもないのだけど… 来年導入するかどうか、まだ検討中です。

最後に、今年は火星接近にちなんで、入江哲朗『火星の旅人 ―パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史』というローエルの伝記を読み始めたのですが、結局読了できませんでした。

火星の旅人 ―パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史―

火星の旅人 ―パーシヴァル・ローエルと世紀転換期アメリカ思想史―

  • 作者:入江哲朗
  • 発売日: 2020/01/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

ローエルと言えば「火星の運河」。何故彼はそんなことを言い出したのかというあたりが一番興味のあるところなのですが、ローエルの実家の話、日本や朝鮮半島を旅して紀行文学の作家として活動していた頃の話、まで読んだものの、肝心の火星観測の話にまだたどり着いていません… 次の火星の接近までには読了したいところです。

というわけでみなさんよいお年を!

*1:写真のタイトルの「A + K」というのは A = ASSARI、K = KOTTERI です…

木星と土星の接近 (2020/12/22)

12月22日もまだまだ接近している木星土星を撮りました。最接近は21日とはいえ22日も負けないくらい近いです。星ナビさんによると、木星土星の間隔は21日が0.11度、22日が0.12度だそうです。

今回は21日の撮影にあたって検討していたプランBの撮影方法、8cm屈折と惑星用CMOSカメラを使った撮影にトライしました。体調が悪く夕方まで寝ていたのですが、16:00頃から昨日から出しっぱなしの赤道儀に鏡筒(BLANCA-80EDT)を載せて月面でピント合わせ。

シーイングも悪くなくこれは期待できそう?と思いつつ16:30に木星を導入したのですが、1/2.8インチセンサーの横位置に木星土星が収まるように選んだ1.6倍のバローレンズでは惑星像が思いの外小さくて見栄えがしない事が判明。

しばし悩んだのですが、「本番」は昨日済ませたので失敗してもいいやと2.5倍バローに組み換えて、木星土星がフレームに入るようにカメラを斜め向きに取り付けました。ピントが大きく変わるので改めて月面でピントを大まかに合わせてから木星でピントを追い込むと、縞模様がくっきり見えてきました。

17:30頃まで露出を変えながら動画を撮り続けてベストショットがこれでした。

木星と土星の接近 (2020/12/22 16:55)
木星土星の接近 (2020/12/22 16:55)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15), ZWO ADC 1.25", ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 201) / 露出 1/60秒 x 2500/5000コマをスタック処理(1.5倍 Drizzle) / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理。

木星の縞模様の濃淡と色合いがちゃんと解像しています。南赤道縞の東の端には隠れる直前の大赤斑が見えています。

木星と土星の接近 (拡大: 木星) (2020/12/22 16:55)
木星土星の接近 (拡大: 木星) (2020/12/22 16:55)

土星も縞模様が見えており、ぎりぎりながらカッシーニの間隙も見えています。

木星と土星の接近 (拡大: 土星) (2020/12/22 16:55)
木星土星の接近 (拡大: 土星) (2020/12/22 16:55)

2500コマスタックが効いたのか、筒内気流の影響が少ない屈折式の勝利なのか、21日の18cm反射+デジカメで撮ったものより解像してるような…

衛星が写るように2秒露出で撮ったものがこちら。

木星と土星の接近 (2020/12/22 17:21)
木星土星の接近 (2020/12/22 17:21)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), 笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー (合成F15), ZWO ADC 1.25", ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 201) / 露出 2秒 x 20/40コマをスタック処理(1.5倍 Drizzle) / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理。

木星の衛星は、左斜め上の離れたところに見えるのがカリスト木星の光芒の左斜め上に出っ張っているのがイオ、左斜め下がガニメデです。エウロパ木星の後ろに隠れて見えていません。

木星と土星の接近 (拡大: 土星) (2020/12/22 17:21)
木星土星の接近 (拡大: 土星) (2020/12/22 17:21)

土星の衛星は、左斜め下に見えるのがレア、土星のすぐそばの左斜め上に二つ並んでいるのが上からディオネ、テティス、右斜め上に離れて見えるのがタイタンです。エンケラドゥスとミマスは土星に近すぎて写りませんでした。

こんな感じで撮影していました。

IMG_0225

イメージングトレインはこんな感じ。

IMG_0227

IMG_0229

まあ普通ですね。対物側から、ビクセンフリップミラー(接眼筒は BORG [7423] + [7317]に交換)、笠井FMC3枚玉2.5倍ショートバロー、ZWO ADC 1.25" の組み合わせです。

ちなみに21日の μ-180C での撮影風景がこちら。

IMG_0203

イメージングトレインはこうです。

IMG_0210

IMG_0213

対物側から、AstroStreet T2ネジ付き 2インチ31.7mm変換アダプター、ZWO ADC 1.25" (プリズム本体)、ZWO 両側Tマウントオスアダプター、ビクセン 42T→50.8AD、笠井トレーディング CNC2インチLP直焦点アダプター、Tリング(フォーサーズ用)です。

42T→50.8AD を噛ませているのはカメラの回転のためです。2インチ31.7mm変換アダプターの方を回転するとADCが回転してしまう(プリズムの向きのが合わなくなる)のでこうしています。

というわけで今年最後の天文イベントは無事終わりました。

16日に試し撮りした時はちょうど寒気が入ってきた時期のせいかシーイングがめちゃくちゃ悪くて土星の輪すらギリギリな感じでまともに撮れるのか不安でしたが、21日、22日共にそこそこのシーイングに恵まれてラッキーでした。3日間快晴が続いたので極軸調整済みの赤道儀をベランダに出しっぱなしにできたのもラッキーでした。

まあ、ただ木星土星が地球から同じ向きに見えるだけという宇宙的な観点からはどうってことのないイベントですが、実際に撮ったり見たりするとなかなか見応えのあるものでした。正直最初は条件が悪くて無理ゲーだと思ってパスしようとしていたくらいですが、諦めずに頑張った甲斐はあったと思います。

木星と土星の接近(最接近) (2020/12/21)

12月21日は早めに仕事を終えて最接近の木星土星を撮りました。SCW では夕方から雲がかかる予報でしたが結果としては夜までずっと快晴でした。

15:00から機材の設置*1、また月面でピントを合わせてそのまま待機し*2 16時頃から鏡筒を木星に向けて16:15頃からファインダーで木星を視認できるようになり撮影開始。

撮影の合間に Twitter を見ていると天リフさんのこんなツイートが。

せっかくなので成澤さんの楽しげなライブ配信をPCで流しながら撮影を続けました。

昨日は途中から雲が出て悔しい思いをしたので、とにかく見えているうちはどんどん撮ることにして、最終的には2300枚以上撮りました。結果はこうなりました。

木星と土星の接近 (2020/12/21 17:00)
木星土星の接近 (2020/12/21 17:00)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO ADC / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/30秒 x 210/420コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理。

1/30秒は3セット撮りましたがこれがベストです。シーイングが当たりでかなり解像しました。土星の輪はカッシーニの間隙まで写っています。拡大するとこうなっています。

土星 (2020/12/21 17:00)
土星 (2020/12/21 17:00)

木星 (2020/12/21 17:00)
木星 (2020/12/21 17:00)

スタックは AS!3 ですが、APは木星土星にサイズ200のAPを1個ずつ置きました。最初は惑星面にサイズ80のAPを並べていたのですが、惑星面はうまくいくものの、なぜか背景に大きな継ぎ目や模様が浮いてきて使い物になりませんでした。AP1点置きではディテールが若干甘くなるのですが仕方がありません…

衛星狙いの長秒露出はこちら。

木星と土星の接近 (2020/12/21 17:31)
木星土星の接近 (2020/12/21 17:31)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO ADC / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 8秒 x 12/24コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop 2021, Lightroom Classic で画像処理。

拡大するとこうなります。

土星と衛星 (2020/12/21 17:31)

土星の衛星は左からレア、エンケラドゥステティス、ディオネ、タイタン。ミマスは土星の輪の輝きに埋もれて解像できず。

木星と衛星 (2020/12/21 17:31)
木星と衛星 (2020/12/21 17:31)

木星の衛星は左からカリスト、ガニメデ、イオ、エウロパ。イオの上に見える星は恒星(HIP 99314)です。

惑星と衛星を合成しようかと思ったのですが、デジカメだとSDカードへの書き込みが重くて1セット400コマ撮るのに3分ぐらいかかります。そうするとその間に惑星や衛星が動いてしまってそのまま合成できません。かといって部分的に切り貼りしてしまうのも嫌なので結局合成は諦めました。1/30秒の写真の輝度を上げたものを合成する手はあるのですが、それだと土星の衛星はタイタンしか写らなくて寂しいので…

撮影後は正立プリズムとセレストロンの8mm-24mmズームアイピースを使って眼視でも観察しました。8mmの270倍で木星土星が同一視野に見えてなかなかの迫力でした。その後せっかくなので月面と、火星と海王星天王星を眺めました。

火星はもう模様はほとんど視認できず赤い円盤状の姿でした。海王星は微妙に青っぽい点、天王星は灰色で微妙に円盤状に見える気がしました。

というわけで何百年に一度だかしか見られないという木星土星の大接近を無事撮影、観察することができました。22日は8cm屈折とCMOSカメラでの撮影を試してみようと思います。

*1:赤道儀は前日に極軸を合わせてベランダに置きっぱなし。

*2:日が沈む前に鏡筒を木星に向けると直射日光が鏡筒の内側にあたって熱を持ってしまうので。

木星と土星の接近 (2020/12/20)

12月20日の夕方、接近中の木星土星を撮りました。12月21日の最接近の撮影のリハーサルです。前日の深夜にベランダに赤道儀を設置して極軸を合わせておいて、15:00過ぎに鏡筒を載せて撮影準備。

早速木星を導入したのですがファインダーでも木星が視認できません。月齢5.7の白い月は見えていたのでとりあえず月面でピント合わせ。その後また木星を導入したのですが、ファインダーでもカメラのライブビューでも見えません。結局日没直前の16:00過ぎになってやっと木星を見つけることができました。

木星と土星 (2020/12/20 16:26)
木星土星 (2020/12/20 16:26)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO ADC / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/100秒 x 150/300コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理。

暗くなる前に撮ったものです。かなり淡いですが土星の輪と木星の縞模様がなんとか写りました。

事前にADCで大きなケラレは発生しないのは確認していたのですが、青空バックで強調処理をかけると結構周辺減光が出ていました。本当はフラットを撮りたいところですが、18cm鏡のフラットを撮る方法がなくて Lightroom の周辺減光補正で誤魔化しました…

また、青空の部分に AS!3 の継ぎ目破綻がちょっと出ています。APは惑星面のみに配置したのですがこういうのは全面に配置した方がいいのでしょうか?でも日没中で背景のグラデーションが変化する中の撮影だったので上手くスタックできないような…

さて、この後もう少し暗くなってから更に撮ろうと思ったのですが、雲が出てきて17:40頃まで撮影は中断。やっと木星が見えた時にはひどいシーイングで土星の輪や木星の縞模様は写りそうになかったので木星土星の衛星狙いで長めの露出で撮りました。

木星と土星 (2020/12/20 17:43)
木星土星 (2020/12/20 17:43)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO ADC / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 4秒 x 12/16コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic で画像処理。

土星の衛星は、レア、ディオネ、タイタンが見えています。土星のすぐ上に微かに見えているのがレア、土星のすぐ左に微かに見えているのがディオネ、土星から少し離れてやや右上にはっきり見えているのがタイタンです。

木星の衛星は、全て木星の左側に並んでいて、木星に近い方からエウロパ、イオ、ガニメデ、カリストです。カリストからさらに向こうに並んでいるのは恒星です。

この写真は最初惑星と衛星にAPを置いてスタックしたのですが、あちこちに継ぎ目が見えてしまってボツに。全面配置も試しましたがやはり継ぎ目が出て、結局衛星1個に1つだけAPを置いたら継ぎ目が出ませんでした。謎。

ということで、わかったことは、

  • 16時台ならそれなりのシーイングで撮れそう。17時台後半は厳しい。
  • 16時より前は木星をほぼ視認出来ず導入もピント合わせも無理っぽい。
  • F12, ISO200 で4秒露出で土星の衛星も写る。タイタンだけなら2秒でも可。

といったところでしょうか。

明日の本番は早めに仕事を切り上げて撮影に臨むつもりです。ちゃんと晴れてくれるといいのですけど…