Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

1年ぶりの M83 (2019/3/8)

3月8日の深夜はうみへび座のフェイスオン銀河 M83 を撮りました。昨年は思わずこれはひどいと言ってしまうくらいひどい写りだったのでリベンジです。本当は2月中に撮りたかったのですが天候に恵まれず3月に入ってしまいました。

M83は7等台の明るい銀河ですが横浜からは南中高度が25度以下と低く、光害の影響を受けやすいのがネックです。一昨年初めて撮った時は2月の始めだったのでよく写ったのですが、昨年は3月下旬に撮ったところ春霞で光害カブリが増大してひどい写りになりました。

昨日は朝富士山がよく見えたので空の透明度は悪くないと思って期待しつつ撮りましたが、結果は…

M83 (2019/3/9 01:26)
M83 (2019/3/9 01:26)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1915mm 相当にトリミング

まあまあ、ですね。等倍ではザラザラなのですが縮小画像なら見れるといったところでしょうか。レデューサー使用で撮った一昨年の写真と比べると、渦巻き構造の詳細が見えてきて、腕に沿って走る暗黒帯も見えてきました。

F6, ISO200で12分露出ですが、本当はもう少し露出をかけたかったところです。でも背景の輝度が75%もあったのでこれ以上は無理と判断しました。南中時にはもっとマシでしたが露出を伸ばすと結局最初と最後に高度の低い(背景の明るい)カットが入ってしまうんですよね。高度の低い対象を長時間露出で撮るのは難しいです。Fの明るい鏡筒が欲しい…

この日も本当は12枚コンポジットの予定でしたが、最後の方は背景が明るすぎるのでボツにしました。最初の方はトラブルで撮れなかったりボツにしたりだったのですが、ちゃんと撮っていてもやはりボツだったと思います。

トラブルというのは… 今回はちょっと色々やらかしてしまいました。

22:30頃からドリフトアライメントを始めようとしたのですが、オートガイダーのキャリブレーションができません。キャリブレーション中にガイド星がほとんど動かないのです。この時点ではガイドカメラはいつもの QHY5L-II-M を使っていました。

ここで先日ガイドカメラのファームウェアをアップデートしたのことを思い出し、てっきりそのせいだと思い込んでしまいました。ドライバも PHD2 も3年前に入れたままの古いものなので、新しいファームとの相性問題が発生したと思ったのです。

まず、カメラドライバを最新にしましたが、状況は変わらず。次に PHD2 を 2.6.1 から最新の 2.6.5 にアップデートしましたが、やはり変わらず。これはカメラが逝かれてしまったのかも… と思い惑星撮影用の ASI290MM をガイドカメラにすることを思いつきます。

しかしCマウントのガイド鏡に取り付けられるのか?と思ったのですが、ASI290MM を買った時に付いてきたTマウントで取り付けるレンズを見るとレンズの先がねじ込み式になっていて、このネジがCマウントでした。レンズを外したところにガイド鏡をねじ込んだところ、無事接続できました。

もっとも QHY5L-II-MM とはフランジバックに差があり、ガイド鏡のピントが大きくずれてしまいました。miniGuideScope は対物レンズのネジを回してピントを調節するのですが、レンズが外れるんじゃないかと思うくらいの量を繰り出してやっとピントが合いました。

PHD2 から接続すると無事カメラとマウントに接続。最初は映像が真っ白でしたが設定でゲインを落とすと星が写るようになりました。ここでキャリブレーションを開始したのですが… 動きません。ガイド星が。

ここに至ってやっと気付きを得ました。これはケーブルがマズいのではないかと。断線かなと。しかしオートガイダー用のケーブルの予備は買ってなかったよなー、電話の線の6芯のやつなら使えるんだっけ、でも持ってないなー、などと思ったのですが、よく考えたら ASI290MM/MC の付属品のケーブルがありました。

というわけで、ケーブルを交換。カメラ側の線を抜いて新しいケーブルを挿し、SB-10 側の線を… ?…!?

オートガイダーケーブルをLANポートに挿してはいけません。
※ 再現映像

…なるほどね。

はい。SB-10 コントローラーのLANの方のモジュラージャックにオートガイダーケーブルを挿していたのです。A.G.の方ではなく。挿した時プラグのツメがカチッて鳴ったからヨシ!*1 って思ってたんですよね。LANの方はサイズ違うからゆるゆるになると思うじゃないですか。でも実際は意外とピッタリと挿さるんですね。

今までやったこと全部無駄!と崩れ落ちそうになりましたが、気を取り直してこのまま ASI290MM でガイドすることにしました。QHY5L-II-M とケーブルが無事であることを確かめたかったのですが、色々元に戻そうとすると時間がありません。

しかし PHD2 も「マウントに接続」とかドヤ顔で言ってたけど接続してへんやん!などと八つ当たりしつつキャリブレーションを無事完了、ドリフトアライメントに入ります。ガイドグラフの傾きは上向き(ガイド星が北にドリフト)だな、と極軸を東に調整したのですが、再びドリフトさせるとガイドグラフの傾きがもっと上を向いてしまいました。

原因はわからないのですが、ガイドグラフの北(赤緯の+側)と南(赤緯の−側)が入れ替わっているっぽいのです。ガイドカメラを変えたせいでしょうか?それとも PHD2 のバージョンを上げたせい?深く追求している時間がないのでとにかくいつもとは逆方向に調整することにしました。

これは後で確認して場合によっては「ドリフト法による極軸調整」の方も修正しないとマズいですね。うちも逆だったよ、という方はコメント欄にガイドカメラの機種とPHD2のバージョンを添えてコメントしていただけると助かります。

そんなわけで、なんとか極軸を合わせた後、スピカを導入しバーティノフマスクでピントを合わせ、M83 を自動導入し、60秒で試し撮りしながら構図を調整して、12分露出の試し撮り。結果をPCで見て光害カブリがひどいなーと思いつつ本番1枚目を撮影して、2枚目の途中で巻きつけフードを付け忘れているのに気が付きました。

バーティノフマスクを固定できない段ボール製の自作巻きつけフードなのでピント合わせをしてから取り付けるのですが、慌てててすっかり忘れていました。高度が低く地上の明かりからの迷光が怖いので2枚目の撮影を中断してフードを取り付けた後1枚目からやり直しました。時刻は1:25。結構ギリギリです。

この後はトラブルもなくスムースに撮影できました。今回はドリフト方向の混乱もあって一方向赤緯ガイドはやめて、普通に二軸ガイドでガイドしましたが、蛇行運転もなく順調にガイドできました。

RMSエラーは赤経赤緯共に1.1秒前後。いつも2秒以内にするのに苦労してることを思うと嘘のようです。ガイドカメラのセンサー解像度が上がったせいもあるのでしょうか。でもバックラッシュの影響は?なんだかよくわかりません。

あと PHD2 の画面を見て気づいたのですが、ターゲット表示の上下と履歴(ガイドグラフ)の上下が逆になってますね。ガイドグラフがマイナス(下)方向に振れるとターゲットのプラス(上)方向に点が打たれます。今までは同じ方向だったのですが… ガイドに影響ないとはいえ気持ち悪いです。なんなんでしょう。

というわけで、M83 はなんとか撮れました。画質に不満はありますが、今年はこれが限界ですかね。また来年頑張ってみたいです。