Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

三日月、すばる、金星 (2020/4/25)

4月25日の夕方、KAGAYAさんのツイートで三日月(月齢2.1)が出てるのを知ってマンションの廊下から撮影しました。一応 stay home ですかね?

三日月 (2020/4/25 19:11)
三日月 (2020/4/25 19:11)
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO (f40mm, 絞り F2.8) / ミザール K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 2秒 / Lightroom CC で画像処理

三日月はおうし座に位置して、よく見ると三日月の右のすぐ近くにすばる(M45 プレアデス星団)が見えています。

三日月とすばる (2020/4/25)
三日月とすばる (2020/4/25)
上の写真をトリミング、画質調整。

三日月の上の方を見上げると金星が輝いていました。

三日月と金星 (2020/4/25 19:14)
三日月と金星 (2020/4/25 19:14)
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO (f27mm, 絞り F2.8) / ミザール K型微動マウント(固定撮影) / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 4秒 / Lightroom CC で画像処理

三日月の左上にはヒアデス星団も見えています。

翌26日には金星が四日月に接近して、それをみんなで撮ろうというイベントがあったのですが、当日の横浜は曇り。しかも強風ということで、そんな中で雲の切れ目を待ち続ける気力もなかったのでパスしたのでした。東京も似たような天気だったと思うのですがKAGAYAさんは一瞬の晴れ間をものにして撮影に成功。いやあ、やっぱりそういうところが違いますよね。反省…

金星 (2020/4/25)

4月24日の深夜は M22 を撮りましたが、その後赤道儀だけそのままベランダに残しておきました。昼に μ-180C を載せて金星を撮るためです。昼間に極軸合わせは至難なので夜のうちに合わせた状態で置いておくというわけです。

最近金星が三日月状に欠けているのを撮っておきたいなとは思っていて、日没前後だと南向きベランダからは撮れない位置に来ているので昼のうちに撮ろう、在宅勤務になっているから昼休みに撮るチャンスはあるはず、と思っていたのですが、結局土曜日に撮ることになりました。

朝 M22 の処理が終わってからふと気になって Stellarium で確認したところ金星の南中高度が高すぎて南中付近ではベランダの天井に阻まれて撮れないことがわかり、これはヤバいとあわてて調べた結果、12時頃から14時前までならなんとか撮れそうだと判明して一安心。

もう一つ気になっていたことがあって、それは直射日光が鏡筒の内側を照らして迷光にならないかということ。離角が43度くらいなので鏡筒径21cmのμ-180Cだと筒先から22.5cm奥まで日光が届く計算。

なので、そのくらいの長さの板を太陽側に付けて遮光しようということで、段ボールをマジックで黒く塗ったものをゴムバンドで筒先に取り付けました。ゴムバンドは8cm屈折用に自作した巻きつけフードを取り付けるためのマジックテープ付きのものを2本つなげるとちょうどよい長さになりました。

実際に取り付けると計算通り遮光できていてなかなかナイス、と思っていたのですが… この日は風が強すぎました。西からの風をまともに受けて煽られて鏡筒は揺れるし最終的には吹き飛ばされて危うく外に落ちてしまうところでした。

結局撮影は遮光なしで行いましたが顕著なコントラストの低下も見られず不要だったかな、と。黒い鏡筒内面が日光で炙られて筒内気流が乱れるのでは、とも思っていたのですが、元々シーイングが最悪だったせいもあって遮光の有無による差は識別できませんでした。

金星の導入ですが、かなり苦労しました。まずファインダーと鏡筒の筒先にキャップを付けたまま自動導入。導入中に太陽の方を向いてしまう可能性を考えてのことです。自動導入が終わってファインダーのキャップを外し、おそるおそるのぞいて見ると青空に浮かぶ白い光点がはっきり見えました。

【注意】誤って太陽を見てしまうと失明の危険があるので、昼の金星の観察は十分注意して行ってください。特に手持ちの双眼鏡等で見ることは避けてください。

4月28日には最大光度を迎える金星は-4.5等。この明るさなら肉眼でも見えるとも言われますが、さすがに肉眼では全くわかりませんでした。僕の目が悪いせいもあるのかもしれませんが… ここまでは順調でしたがここからが大変でした。

ファインダーの中心に金星を合わせてバローレンズを組み込んだ撮影システム(システムC)のフリップミラー側に取り付けたアイピース(8-24mmズーム)をのぞいて金星を探したのですがみつかりません。ピントが合ってないせいかと思いピントを調節するのですがそれらしき光は見えず、どうも金星は視野の外のようです。

システムCは拡大率が3倍以上あって24mmアイピースでも300倍ぐらい出ていて視野が狭すぎるので、一度システムCを天頂プリズムに差し替えて90倍で見たところ中心から少し離れたところに金星を発見。中央に寄せてからシステムCに差し替えたのですがやはり青空しか見えません。

合焦ノブを回していってもそれらしき光点がみつからず焦ります。正直あきらめかけたのですが、ピントの行ったり来たりを繰り返して4回目くらいでやっと金星の姿が現れました。夜空なら相当ピンぼけでも明るい星の存在はすぐわかるのですが、青空がバックだと合焦するギリギリまで何も見えないので、合焦ノブを相当ゆっくり回さないと見逃してしまうようです。

やっと導入した金星ですが、シーイングが悪くプレビューでのピント合わせは困難を極めました。結局ピントを少しずつずらしながら撮影を繰り返して5本目ぐらいでやっとピントが合った気がしました。

システムCにはADCが組み込まれていますが、像の乱れが激しい上に青空バックで色ズレが視認できないし、天頂付近ではプリズムの水平方向もよくわからない状態だったのでADCのプリズムはニュートラルにセットした状態で撮影しました(ADCを外すと倍率が変わるので)。

これだけシーイングが悪いのだから5000フレーム撮って1000フレーム選別ぐらいが適切かと思ったのですが、実際に撮ってみると90秒くらいの間にどうしても強風で大きくブレる瞬間があって、そうなると AutoStakkert!3 で image stabilization 後に AP を置ける領域がものすごく狭くなってしまうため使い物になりませんでした。

結局、強風が来ないうちになんとか撮り切れる3000フレームで撮影しました。結果はこうなりました。

金星 (2020/4/25 12:35)
金星 (2020/4/25 12:35)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), AstroStreet GSO 2インチ2X EDレンズマルチバロー (合成F40.4), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25", ZWO ADC 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (ゲイン275) / 露出 1/1000秒 x 1000/3000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Lightroom Classic CC, Photoshop 2020 で画像処理

ややぼやけてはいますが、一応三日月状の姿が撮れました。地球照はもちろんありません。

表面の模様は全くわかりませんが、そもそも可視光ではほとんど何も写らないですよね。ではUVフィルターを買ってまで撮るかというと… 撮影する機会もあまりないし、そこまでする気にはまだなれないでいます。

模様はともかくもっと細い金星も撮ってみたいとは思うのですが、細くなればなるほど太陽に近く危険が伴います。遮光の問題もあってドームでもないと厳しいのではとも思うのですが…

M22 (2020/4/24)

4月24日の夜、無性に球状星団が撮りたくなって、深夜から M22 を撮りました。もちろん自宅のベランダから。Stay Home が叫ばれる昨今、天体撮影のための遠征の是非についても議論のあるところですが、個人的にはここ2年ほどベランダからしか撮影してない(できない)ので普段通りというわけです。

M22 は4年前に 8cm F6 + 0.6倍レデューサーで初めて撮影してそのデカさに驚いたものでした。

8cm F6 直焦での撮影は3年前に試みたのですが雲が出て失敗してしまいました。

今回はそのリベンジということになります。球状星団は周辺部の微光星がはっきり見えるように強調すると中央の星が密集した部分が白飛びしやすいので多段階露光で撮影しました。

ガイドは乱れがちで、最初は蛇行はないもののシーイングが悪いせいか細かいゆらぎの多い状態が続き、その後安定してきたと思ったら蛇行が始まるという有様で、途中から過修正を防ぐため断続的に赤緯ガイドを Off にしてガイド星がドリフトで自然に中央に戻るのを待ってみたり、ほとんど半自動ガイドみたいなことをしていました。

それでもガイドが流れたコマが出てきて、予定より少ないコマ数でコンポジットするはめになりましたが、対象が球状星団なので強調処理も控えめでノイズもあまり目立たずに済みました。結果はこちら。

M22 (2020/4/25 02:00)
M22 (2020/4/25 02:00)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 1分30秒 x 2コマ + 3分 x 6コマ + 6分 x 6コマ 総露出時間 57分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom CC で画像処理

等倍で見ると星像が肥大気味でキリッとしない感じですが、鑑賞距離で見る分には悪くないと思います。

M22 は写真では黄色みがかった星が多くて金色の星団に見えるのが好きなのですが、他の人の撮った写真を見るともっと白っぽく仕上げている人が多いようです。普通に背景をニュートラルグレーに寄せると黄色くなるんですが、みなさんどうやっているのでしょう?

そもそも M22 の星の実際の色はどうなっているんでしょうか。単に高度が低いから黄色っぽく色付いて見えるだけで本当は白かったりするんでしょうか?でも周囲の恒星を見るとちゃんと白い星もあるから本当に黄色っぽい気もするんですが…

ところで球状星団を構成する恒星って球状星団の中心の周りを公転していたりするのでしょうか?もしそうなら何十年かかけて球状星団が回転するタイムラプスムービーとか撮れるのかなーとか思って気になりました。

この記事を見ると M22 の中心部にはブラックホールが複数あるようですし、星団の中の恒星の運動とかややこしいことになってそうですが、そういうのがアマチュアの機材でも観測できたらおもしろいのですが。

最近の満月(スーパームーン) (2020/4/7)

4月7日は月が最近の満月、いわゆるスーパームーンでした。一般に満月はクレーターなどの地形の起伏に影が落ちず地形の観察には向かないので月面写真の対象としては好まれないのですが、最近の満月は同じ機材で撮った最遠の満月と組写真にすると面白みが出るので撮っています。

最近の満月 (2020/4/7 21:03)
最近の満月 (2020/4/7 21:03)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), OLYMPUS EC-20 2x TELECONVERTER (合成F12) / Vixen SX2 / OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) 露出 1/400s x 96/146コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

写真の向きは月の北極ではなく天の北極が上です。最近になるのが深夜03:09、満月になるのが翌日11:35なので正確にはスーパームーン未満。ベランダの天井に隠れないように早めに撮ったこともあって結構欠けています。

ちなみに最遠の満月は10月31日の23:49です。10月は2日に満月があるのでこの日はギリギリ10月の2度目の満月(ブルームーン)ということになります。最近と最遠の両方の満月を撮ったのは2017年が最後です。

今年は両方撮れるといいのですが。

木星状星雲を wavelet 処理

3月24日に撮った木星状星雲の写真、wavelet 処理はイマイチでボツにしたと言ってましたが、再チャレンジしました。

NGC3242 木星状星雲 (2020/3/24 21:49) (normal + wavelet)
NGC3242 木星状星雲 (2020/3/24 21:49) (normal + wavelet)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 350) / 露出 4秒 x 250/1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, RegiStax 6.1.0.8, Photoshop CC, Lightroom Classic CC で画像処理

リング状の構造がくっきり浮かび上がってきました。淡い部分の濃淡も若干見られますがもやもやした構造までは出てきませんでした。

wavelet 処理は光学系と対象が違うと毎回適正なパラメータが違って戸惑います。今回は以下のパラメータで wavelet 処理したものを、ノーマルのものと 65:35 の比率でブレンドしました。

  • Waveletscheme: Linear
  • Initial Layer: 2
  • Step Increment: 0
  • Wavelet filter: Gaussian
  • Use Linked Wavelet Layers: ON
  • Contrast: 100
  • Brightness: 0
Layer Denoise Sharpen 設定値
1 0.15 0.100 8.5
2 0.15 0.100 7.3
3 0.15 0.100 3.6
4 0.10 0.100 1.1

ノーマル画像をブレンドしたのは wavelet 処理で淡い(暗い)部分の濃淡のコントラストが上がってかすれたようになってしまったのと、空間周波数が低めの斑点状のノイズが目立たないようにするためです。*1

ちなみに AutoStakkert! の選別はイマイチで手動選別した方が良い結果が得られるとの噂を聞いて、実は頑張って500コマから手動で144コマの良像を選別、そこからAS!3で上位125コマをスタックして、AS!3 の自動選別の結果と比較してみたんですが…*2

NGC3242 木星状星雲 (2020/3/24 21:49) (手動選別125コマ, wavelet)
NGC3242 木星状星雲 (2020/3/24 21:49) (手動選別125コマ, wavelet)

NGC3242 木星状星雲 (2020/3/24 21:49) (AS!3 125コマ, wavelet)
NGC3242 木星状星雲 (2020/3/24 21:49) (AS!3 125コマ, wavelet)

ご覧のようにほとんど変わらない、というか手動選別の方が若干ぼやけてるかな?という有様だったので、最初の写真では AS!3 に全部任せた結果を使いました。少なくとも僕の目よりは AS!3 の方が確かな判断ができるようです。

*1:wavelet 画像のノイズ対策には CameraRaw のノイズ軽減も使っています。

*2:wavelet パラメータは試行錯誤中のもので上のものとは異なります

NGC3242 木星状星雲 (2020/3/24)

3月24日の夜は μ-180C で NGC3242 木星状星雲を撮りました。μ-180C で DSO を撮るのは初めてです。μ-180C にガイド鏡をマウントするパーツは未購入なのでノータッチ追尾でラッキーイメージングを試みました。

短秒露出とはいえ対象がドリフトしてずれていってしまうと面倒なので1時間ほどかけてドリフト法で極軸を追い込みました。手間ではありますが、同時に鏡筒をベランダに出しておいて温度順応しているのでタイムロスはゼロです。

極軸が合ったらレグルスでピント合わせとアライメント、そして NGC3242 を自動導入。ですがそれらしき姿が見えません。むむ、っと思いましたが、Stellarium で見た写野の外の北西方向にある特徴的な星の並びが見えているのに気付いて手動で写野をずらしたところ緑色に輝く「木星状」の姿が4秒のプレビューでもはっきりと見えました。

視直径はまさに木星といったところですが、緑色に光っていてこれが木星?という感じ。もっとも原語では "Ghost of Jupiter" だそうで*1 木星に似ているというよりは木星の幽霊みたいなヤツということで、そう言われるとしっくり来ます。

事前に関西天文同好会の山下さんによる「都会で惑星状星雲を撮ろう 天体用CMOSカメラ超短時間露光による撮影」という資料を見て露出時間は2秒くらいかなと思っていたのですが、4秒でもゲインをあまり下げられないので4秒で撮りました。

撮影中じっと見ているとピリオディックモーションのせいなのかシーイングの乱れなのか、結構ブレて写っているコマが多かったので1000コマ撮って3/4を捨てることにしました。スタックは AutoStakkert! 3 です。APは中心とリング状の部分2箇所で3つ。DeepSkyStacker は写野内に星を見つけられず使えませんでした。

結果はこうなりました。

NGC3242 木星状星雲 (2020/3/24 21:49)
高橋 ミューロン180C (D180mm f2160mm F12 反射), ZWO IR/UVカットフィルター 1.25" / Vixen SX2 / ZWO ASI290MC (Gain 350) / 露出 4秒 x 250/1000コマをスタック処理 / AutoStakkert!3 3.0.14, Lightroom Classic CC で画像処理

中心部の明るいリング状の模様は三つの節もよく写っています。中心部や外側の淡い部分の細かいもやもやした模様はさすがに写りませんでしたが、口径 18cm の写りとしてはまずまずではないでしょうか。

ちなみに星雲の左やや上にギリギリ見えている恒星が15.3等、左下に見えている恒星が13.35等です。4秒でも結構写るものですね。

エメラルドグリーンに輝く姿はまさに夜空の宝石といったところですが、カラーバランスはこれでいいんですかね?眼視で見ておくのを忘れたのですが、眼視でもこんな色なんでしょうか。

wavelet 処理でもっと細かい模様が出るかと思いましたが、特にそれらしきものは出てこずノイズが浮いてくるばかりだったのでボツにしました。光学系の解像度的にはもう少し何か写りそうな気もするのですが、ラッキーイメージングと言っても4秒露出では結構ブレるのでこんなものですかね。

DeNoise AI 14連発

試用期間も残り少ない DeNoise AI ですが、先日から過去の画像もいろいろと処理してみたところ、だんだん傾向が見えてきた気がしました。以前掲載したものと一部重複しますが、DeNoise AI の試用前・試用後を14枚分まとめて紹介して検討します。

それぞれ観賞用に仕上げた最終画像を DeNoise AI で処理しています。ただし、最後の2つは試しにノイズリダクションなしで仕上げたものを DeNoise AI で処理しています。各写真のタイトルに付した三つのパラメータは、Remove Noise/Sharpen/Recover Original Detail です。パラメータは試行錯誤して個人的に一番いい感じに見える値を採用しています。

各画像は flickr の写真ページにリンクしてあります。flickr の写真ページでは写真をクリックすると拡大表示されます。縮小画像ではノイズ処理の効果がわかりづらいのでぜひ拡大表示で見てください。等倍画像もダウンロードできます。

最初から flickr で一気見したい場合は flickr のアルバムの方で見てください。

DeNoise AI 使用前・使用後
アルバム: DeNoise AI 使用前・使用後

1. ばら星雲

使用前

ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (StarNet++使用(3))
ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (StarNet++使用(3))
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 15分 x 12コマ 総露出時間 3時間 / RStacker 0.6.4, DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, StarNet++ 1.1, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 984mm 相当にトリミング

無改造の E-M5 で撮ったばら星雲です。ノイズリダクションを強力にかけてあるので DeNoise AI いらないような…

使用後

ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (DeNoise AI 15/15/0)
ばら星雲 (2019/1/1 21:54) (DeNoise AI 15/15/0)

元々ノイズリダクションがかかってるのであまり違いは感じられませんが不自然なところも見当たりません。Sharpen の効果なのか黒い模様がややくっきりしています。

2. M64 黒眼銀河

使用前

M64 黒眼銀河 (2019/2/2 01:10) (+wavelet)
M64 黒眼銀河 (2019/2/2 01:10) (+wavelet)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + QHY5L-IIM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 15分 x 8コマ 総露出時間 2時間 / RStacker 0.6.4, DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC, RegiStax 6.1.0.8 で画像処理, フルサイズ換算 1915mm 相当にトリミング

こちらも E-M5 で撮ったもの。wavelet 処理で暗黒帯を強調したものと強調前のものを合成して wavelet で浮いてきた暗部ノイズをごまかしたものですが、それでも銀河周辺の淡い部分にノイズが残っています。


使用後

M64 (2019/2/2 01:10) (DeNoise AI 20/0/5)
M64 (2019/2/2 01:10) (DeNoise AI 20/0/5)

銀河周辺に残ったノイズは完全に消えています。暗黒帯のディテールも失われていません。

3. M83

使用前

M83 (2019/3/9 01:26)
M83 (2019/3/9 01:26)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1915mm 相当にトリミング

こちらは wavelet は使わずに普通に処理しています。ノイズリダクションは強めにかけています。周辺の淡い部分はノイズでボソボソになっていて銀河の一部に見えない感じです。

使用後

M83 (2019/3/9 01:26) (DeNoise AI 15/0/10)
M83 (2019/3/9 01:26) (DeNoise AI 15/0/10)

銀河周辺のボソボソした部分がふわっとした淡く広がった星雲状の描写になりました。一方で銀河の腕のディテールはほとんど失われずに残っています。

4. M8 干潟星雲

使用前

M8 (2019/5/12 01:02) (HDR) (3)
M8 (2019/5/12 01:02) (HDR) (3)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 2分 x 8コマ, 4分 x 8コマ, 8分 x 7コマ 総露出時間 1時間44分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1100mm 相当にトリミング

無改造の E-M5 で撮ったもの。多段階露光でHDR処理した干潟星雲です。光害の影響もあって星雲周辺の淡い部分は強調処理に無理がかかってかなりノイジーです。

使用後

M8 (2019/5/12 01:02) (DeNoise AI 15/0/0)
M8 (2019/5/12 01:02) (DeNoise AI 15/0/0)

ノイズは消えたのですが、階調が不自然な部分が出てきています。画像周辺の恒星が一部ドーナツ状になっているのも気になります。

階調の不自然な部分(星雲の北側の淡い部分)を拡大するとこうなっています。

M8 (2019/5/12 01:02) (DeNoise AI 15/0/0) (拡大)
M8 (2019/5/12 01:02) (DeNoise AI 15/0/0) (拡大)

どうも星雲の暗い部分と少し明るい部分の境目がディテールとして認識されてシャープなエッジとして描出されてしまっているように見えます。

5. M27 亜鈴状星雲

使用前

M27 (2019/8/2 20:05)
M27 (2019/8/2 20:05)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン177) / 露出 1分 x 100コマ 総露出時間 1時間40分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, StarNet++ 1.1, Lightroom CC で画像処理

こちらは惑星用CMOSカメラで撮ったものです。ガイドが不安定だったため、青い星雲の部分に流れたようなノイズ(いわゆる「縮緬ノイズ」)が目立ちます。

使用後

M27 (2019/8/2 20:05) (DeNoise AI 15/5/0)
M27 (2019/8/2 20:05) (DeNoise AI 15/5/0)

全体的なノイズ感は減っていますが、縮緬ノイズの流れが微妙に模様として残っています。

6. NGC7293 らせん星雲

使用前

NGC7293 らせん星雲 (2019/10/4 22:10)
NGC7293 らせん星雲 (2019/10/4 22:10)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン153) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

惑星用CMOSカメラで撮ったものです。低空で光害の影響が強く、無理な強調処理でかなりノイジーな仕上がりになっています。

使用後

らせん星雲 (2019/10/4 22:10) (DeNoise AI 20/0/0)
らせん星雲 (2019/10/4 22:10) (DeNoise AI 20/0/0)

星雲中央の青い部分のノイズはきれいに消えています。しかしリング状の赤い部分と外側の黒い背景との境目がノイジーなままです。ここはディテールと判断されたのでしょうか。

7. M1 かに星雲

使用前

M1 かに星雲 (2019/10/5 01:47)
M1 かに星雲 (2019/10/5 01:47)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン153) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

これも惑星用CMOSカメラで撮ったもの。中心部は十分明るいのでノイズは少ないのですが外周部の赤いフィラメントがややノイジーです。

使用後

M1 (2019/10/5 01:47) (DeNoise AI 15/0/0)
M1 (2019/10/5 01:47) (DeNoise AI 15/0/0)

外周部のノイズはまあまあうまく取れています。ちょっともやもやした感じになっていますが。星雲内部のフィラメントのディテールは失われずむしろ若干くっきりしています。かにパルサーも潰れずに残っています。

8. M45 プレアデス星団

使用前

M45 プレアデス星団 (2019/10/31 23:39)
M45 プレアデス星団 (2019/10/31 23:39)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 8分 x 7コマ 総露出時間 56分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1049mm 相当にトリミング

こちらは E-M5 で撮ったもの。ガスの流れのディテールを潰したくなかったので青い星雲の淡い部分に少しノイズを残したままにしています。

使用後

M45 (2019/10/31 23:39) (DeNoise AI 15/5/0)
M45 (2019/10/31 23:39) (DeNoise AI 15/5/0)

ガスの流れのディテールはちゃんと残っていますが、ノイズもきれいに取れているとは言い難い感じです。

9. NGC253 ちょうこくしつ座銀河

使用前

NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1 22:06)
NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1 22:06)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1915mm 相当にトリミング

E-M5 で撮ったもの。低空で光害の影響を強調処理で消したあおりで銀河の両端の淡い部分はけっこうノイジーです。

使用後

ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1 22:06) (DeNoise AI 15/0/10)
ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1 22:06) (DeNoise AI 15/0/10)

両端の淡い部分のノイズはうまく処理されているように見えます。中央の暗黒帯の入り組んだディテールはしっかり残っています。

10. 馬頭星雲

使用前

馬頭星雲 (2019/11/2 01:04)
馬頭星雲 (2019/11/2 01:04)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン201) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

惑星用CMOSカメラで撮った馬頭星雲のクローズアップですが、露出が不足しているのか全体的に結構ザラザラしています。

使用後

馬頭星雲 (2019/11/2 01:04) (DeNoise AI 20/5/0)
馬頭星雲 (2019/11/2 01:04) (DeNoise AI 20/5/0)

赤い星雲のノイズはだいぶきれいに取れましたが、赤い星雲の背景と暗黒星雲のモコモコの境目はノイジーなままです。ここはディテールと判断されたのでしょうか?

11. M100

使用前

M100 (2020/2/23 23:58)
M100 (2020/2/23 23:58)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン240) / 露出 1分 x 96コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Lightroom CC で画像処理

これも惑星用CMOSカメラで撮ったものです。銀河の周辺部の淡い部分は露出不足でノイジーになっています。

使用後

M100 (2020/2/23 23:58) (Denoise AI 20/15/15)
M100 (2020/2/23 23:58) (Denoise AI 20/15/15)

淡い部分のノイズはきれいに取れて、銀河の腕のディテールも損なわれていません。むしろよりくっきりしています。

12. M104 ソンブレロ銀河

使用前

M104 (2020/2/24 01:46)
M104 (2020/2/24 01:46)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン240) / 露出 1分 x 96コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Lightroom CC で画像処理

同じく惑星用CMOSカメラで撮ったもの。銀河周辺の淡いハローは露出不足でザラザラしています。暗黒帯の模様が微妙に出ているような単なるノイズのような…

使用後

M104 (2020/2/24 01:46) (Denoise AI 20/15/15)
M104 (2020/2/24 01:46) (Denoise AI 20/15/15)

淡いハローはふんわり仕上がりました。暗黒帯の濃淡はノイズと判定されたようでスムースに均されています。

13. M81 ボーデの銀河

使用前

M81 (2020/3/20 22:37) (ノイズリダクションなし)
M81 (2020/3/20 22:37) (ノイズリダクションなし)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 16コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom CC で画像処理

こちらは無改造の E-M1 Mark II で撮ったもの。先日のエントリに載せたものとは別にノイズリダクション一切なしで仕上げたものです。明るい中心部以外点描画みたいにザラザラです。

使用後

M81 (2020/3/20 22:37) (DeNoise AI 15/5/0)
M81 (2020/3/20 22:37) (DeNoise AI 15/5/0)

ザラザラの部分はふわっとした淡い星雲になり、その中に埋もれていた銀河の腕はディテールとして浮かび上がってきました。先日のエントリに載せたものよりもディテールがよく出ています。

14. M82 葉巻銀河

使用前

M82 (2020/3/20 22:37) (ノイズリダクションなし)
M82 (2020/3/20 22:37) (ノイズリダクションなし)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II (ISO200, RAW) / 露出 6分 x 16コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.2.2, Lightroom CC で画像処理

M81 と同時に撮ったもの。やはりノイズリダクションなしで仕上げたものです。ザラついてはいますが淡い部分が少ないので弱めのノイズリダクションでも十分見れるかも。

使用後

M82 (2020/3/20 22:37) (DeNoise AI 10/5/0)
M82 (2020/3/20 22:37) (DeNoise AI 10/5/0)

ザラつきが解消されました。中心部の燃えるような模様のディテールもしっかり残っています。

まとめ

こうして見ると、DeNoise AI が得意なのは銀河のような白っぽい対象のようです。逆に赤い星雲は苦手なようで、黒い背景との境目をディテールと判断してトーンジャンプみたいになったりノイズを消さなかったりするようです。その点青い星雲はまだマシなようです。

おそらく DeNoise AI の AI は雲や青空のような写真で学習しており、天体写真に多い赤い星雲というのは想定外なのでしょう。階調豊かな高品質の写真ならともかく、激しく強調して階調に乏しくノイズが浮きまくったような写真だと、人工物を見て培った知識で色の差が大きい部分をディテールと判断してしまうのではないでしょうか。

縮緬ノイズ」も DeNoise AI の苦手とするところのようですが、これはさすがに仕方がないかなぁ…

というわけで、もっぱら銀河のために DeNoise AI を買うかどうかという話なのですが、M81 の処理結果を見るとなかなか魅力的ではあるんですよね… もう少し考えてみようと思います…