Deep Sky Memories

横浜の空で撮影した星たちの思い出

プレアデス星団を再処理

10月31日のプレアデス星団の写真、あちこち階調が潰れ気味だったので再処理しました。

M45 プレアデス星団 (2019/10/31 23:39)
M45 プレアデス星団 (2019/10/31 23:39)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 8分 x 7コマ 総露出時間 56分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1049mm 相当にトリミング

青い星雲の階調がだいぶマシになって、ガスの流れも見やすくなったと思いますがどうでしょう。

Photoshop の縮小表示の階調が飛ぶ現象は解決していないのですが、がんばって Photoshop で処理しました。

プレアデス星団は普通に撮れば高度も高く、光害のカブリもマイルドで傾斜カブリにならないはずなのですが、ベランダ撮影だとベランダの天井からの照り返しのカブリが出てしまい、苦労しました。というか星団周辺の淡いガスの描写は諦めました。

街の灯りを反射するベランダの天井はオートガイダーの映像で見ると真っ白に見えるくらい明るくて、写野が天井に近づくにつれカブリの角度も変わってくるのでやっかいです。他の人の写真を参考にしてカブリの傾向をつかんで段階フィルターを組み合わせて処理しています。

今回は段階フィルターを5つ使ってカブリを除去しましたが、星団周辺に広がった淡い部分の階調は不正確だと思います。このあたりは正直「お絵描き」と言われても仕方がないですね… FlatAide Pro を買ったほうがいいかなぁ。でも画像全体に星雲が淡く広がってる場合結局星雲部分のお絵描き次第で結果が違ってくるから一緒かなぁ。

あと、光害カブリの他にも E-M5 特有なのかどうかわかりませんが、画像の片方の長辺にカブリが出る現象にも悩まされています。野外で撮ってもカブるし、縦位置で撮った写真でも同じ場所がカブるのでセンサー由来のカブリかなと思うのですが、ダークを引いても消えません。なんなんでしょうね? まあ、これは段階フィルター1個でごまかせるのでさほど深刻ではないですが。

追記: 写真の利用について

以下のブログでこのエントリの写真が利用されていますが、これは僕が許諾したものではありません。

僕は当該ブログの著者と何の関わりもありませんし、当該ブログの主張や活動に賛同するものではありません。

当該ブログでの僕の写真の利用方法は著作権法で自由利用が認められる「引用」の要件を満たすとは言い難いものだと思います。ただし、個人的には著作権法における「引用」の要件は厳しすぎると思っていますし、僕自身も法的な要件を逸脱した形での引用を行うことはままあるので、今のところこの件で法的に対処するつもりはありません。

とはいえ、今後のこともあるので何らかのルールを明示しておく必要があると感じています。詳細は後日エントリとして公開したいと思います。

ていうか、プレアデス星団なら NASAハッブル宇宙望遠鏡で撮った綺麗な写真があるからそれ使えばいいのでは…

NASA が所有する写真は原則自由に利用できます。上のリンク先も Wikimedia が自由に再配布しているものです。利用条件の詳細についてはJAXAが公開しているガイドラインの日本語訳が参考になると思います。

ちょうこくしつ座銀河を再処理

昨夜のちょうこくしつ座銀河を再処理してみました。

NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1 22:06)
NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1 22:06)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1915mm 相当にトリミング

少しはよくなったかな?これなら2年前の写真よりは進歩があると言えるでしょう。と言っても2年前の写真を再処理したらもっとよくなるかもしれませんが…

最初の画像は Lightroom のみで仕上げたものですが、今回は Photoshop で処理しました。先日のエントリで、Photoshop が縮小表示で階調が飛ぶ(トーンジャンプが発生する)ので使えないという話をしましたが、この写真は中央の銀河だけ見えていれば作業できるので100%表示で使うことで回避しました。

縮小表示の階調が飛ぶ現象は強力なレベル補正をかけると発生します。レベル補正レイヤーを画像と結合してしまえば解消されるのですが、それだと再調整ができなくなるので… 66.7%までの縮小率なら大丈夫なので4Kディスプレイ買ったら解決する?

馬頭星雲 (2019/11/1)

11月1日深夜、ちょうこくしつ座銀河の撮影後、まだ夜が長かったのでもう一つ撮影。ターゲットは馬頭星雲です。

馬頭星雲は何度目だというくらい撮っていますが、今回はデジカメではなくCMOSカメラ(ASI290MC)で撮影。画角が狭いので馬頭の部分だけクローズアップで撮りました。

馬頭星雲 (2019/11/2 01:04)
馬頭星雲 (2019/11/2 01:04)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン201) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

馬の首がくっきり浮かび上がりました。でもちょっとノイジーですね。これでもノイズ軽減処理強烈にかけているんですが。もっとコマ数を増やすべきだったか…

Hαの感度に期待したのですが、2分露出では馬の頭が見えるか見えないかくらいにしか写らなくてコンポジット後かなり強い強調処理をかけてやっと赤い星雲が見えてきました。ノイズも多くてザラザラでしたし思ったより写りは悪かったです。あと、ホットピクセルがあちこちに残っていて、悩んだ末 Photoshop のダスト&スクラッチで消しました。

ガイドはついさっきまで荒れていたのが嘘のように絶好調でRMSエラーは両軸とも1.1秒前後。何が違うのでしょう?CMOSカメラは軽いので鏡筒のバランスはむしろ崩れてフロントヘビーになっています(BLANCA-80EDTは組み込みのアリミゾが短すぎてバランスが調整できない)。

バランスが崩れているのがむしろよかったとか?あるいは単にホイールが偏心していてギアの当たりのいいところに鏡筒が向いていると調子がいいとか?でもらせん星雲を撮った時CMOSカメラでもガイドが荒れていたのでバランス説は棄却されますね。ということはホイールの偏心?

NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1)

11月1日、週末に天気が崩れると聞いていたのに金曜の夜は快晴。前夜の疲れが残ってはいましたが、せっかくなのでこの日も天体撮影。快晴とは言っても黄砂の影響なのか、昼に富士山を見た時はずいぶん霞んでいたので、空の透明度はあまり期待できない状況でした。

今回のターゲットは NGC253 ちょうこくしつ座銀河。2年前に撮っていますが、露出不足気味だったのと月が出ていたこともあって写りがもうひとつでした。当時はスカイメモSを使っていたので、光害カットフィルターを使って露出時間が伸びるとガイドしきれないという問題があり、光害カットフィルターなしで撮っていたのも心残りでした。

もっとちゃんと撮れば銀河の端の淡い部分も写るのでは?と思い今回撮影したのですが…

NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1 22:06)
NGC253 ちょうこくしつ座銀河 (2019/11/1 22:06)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 12分 x 8コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1915mm 相当にトリミング

結果から言うと前回の再処理分の結果からあまり改善しませんでした… 空の透明度が悪くて光害カブリが強かったのと、撮影開始が遅れて高度の低いコマが出てきて余計にカブリが大きくなったため、光害カットフィルターがあっても淡い部分はほとんど改善されませんでした。

中心部は前より明るく写っているようですがフィルターの効果なのか画像処理の違いなのかよくわかりません。前回の方が暗黒帯がくっきり写っている気も…

せっかく大きな銀河なので隅々までくっきり写したいのですが、南中高度の低い天体は撮影条件が厳しいです。

ガイドはかなり不安定でした。赤緯ガイドが流れがちで、特にディザの後は過修正が発生し蛇行が始まる原因に。そのたびガイドを一度止めてやり直すということをやっていましたが、すぐ蛇行しだすので途中から一方向赤緯ガイドに切り替え。それでも過修正なんですが過修正が往復にならない分少しはマシでした。

Max Dec Duration (Mx DEC)を減らしたらいいのかな… でも過修正と言っても赤緯のガイドパルスになかなか反応せず、反応しだすと急に動き出して行き過ぎてしまうのが問題なので、Mx DEC の問題ではないのかも。

M45 プレアデス星団 (2019/10/31)

ハロウィンには特に興味がないので10月31日の夜は天体撮影をしていました。平日ですが、週末から天気が崩れると聞いていたのでちょっと無理して撮影。

ターゲットは M45 プレアデス星団です。M45 は2年前に撮っていますが、レデューサー使用だったのと、光害カットフィルターの影響か、青い色の発色がイマイチだったので、今回はレデューサーなしの直焦で、フィルターなしで撮ってみました。

いつものように南向きベランダからの撮影ですが、M45 は赤緯が高いので南中時にはベランダの天井に隠れてしまいます。なので早めに撮影開始して南中前に終わらせたかったのですが、ドリフトアライメントに手間取って撮影開始は23時過ぎに。

結局8コマ目の途中で天井が写野に入ってきて7コマで終了。本当は短時間露出のコマも撮ってHDRしたかったんですが叶いませんでした。ガイドは始めは好調だったのですが、4コマ目撮影後のディザの後蛇行運転が始まってしまい、後半はやや不安定でした。

結果はこちら。

M45 プレアデス星団 (2019/10/31 23:39)
M45 プレアデス星団 (2019/10/31 23:39)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折) / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ OLYMPUS OM-D E-M5 (ISO200, RAW) / 露出 8分 x 7コマ 総露出時間 56分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Lightroom CC で画像処理, フルサイズ換算 1049mm 相当にトリミング

画像処理は Photoshop では縮小表示で階調が飛ぶ現象が発生して使い物にならなかったので、Lightroom のみで仕上げました。

光害カットフィルターを使わなかったのが功を奏したのか、前回うまく出なかった青いガスの色が綺麗に出るようになりました。さすがに光害地からの撮影では分子雲までは写りませんが、ガスの流れる様子もそこそこ写って満足です。

しかし、M45 でこれだともっと赤緯の高い M33 とかベランダからでは無理ですね。野外に機材を持ち出すことを考えなくては… 実は赤道儀と三脚を運ぶためのバッグは買ってあるんですが、台車がまだです。まずは台車を置く場所を確保しないと…

かに星雲とらせん星雲を再処理

10月4日に撮ったかに星雲、ホワイトバランス調整がうまくいかず背景が青に寄ってしまってて、でも少しだからいいか、と思ってたら MaciPhone から見ると結構青っぽく見えるので、なんとかしなくてはと思いつつほったらかしにしてましたが、やっと再処理してみました。

M1 かに星雲 (2019/10/5 01:47)

M1 かに星雲 (2019/10/5 01:47)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン153) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

Lightroom CC での調整だけですが、これで大丈夫かな?やはりホワイトバランス(色温度、色かぶり補正)ではどうしてもバランスがとれない、というかヒストグラムのブルーのピークが動かせなくて、結局トーンカーブをRGB別に調整することで解決しました。

基本トーンカーブの左下 (0, 0) の点を動かしつつヒストグラムを見てピーク位置を調整する感じですが、それだけだと中間調のカラーバランスが崩れてしまったので B チャンネルだけポイントを追加して非線形のカーブにしました。

ついでにらせん星雲も再処理しました。

NGC7293 らせん星雲 (2019/10/4 22:10)
NGC7293 らせん星雲 (2019/10/4 22:10)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン153) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

こちらも同様に調整しましたが、左上の赤カブリが気になりますが星雲の淡い部分なのかもしれないので残してあります。

しかしデジカメで撮った写真ではホワイトバランスでここまで苦労したことはないんですが、天体用CMOSカメラだとこんなものなのでしょうか? DSOの撮影も4/3サイズのCMOSカメラに乗り換えようかとも思っているのですが、使いこなせるかどうかいまいち自信が持てません…

「かにパルサー」ってこれですか?

昨夜撮ったかに星雲(M1)の写真に中性子星「かにパルサー」は写ってるのか?という件ですが、どうやらギリギリ写っているようです。拡大写真に印を付けてみました。

かにパルサー (2019/10/5 01:47)
かにパルサー (2019/10/5 01:47)
笠井 BLANCA-80EDT (D80mm f480mm F6 屈折), LPS-D1 48mm / Vixen SX2, D30mm f130mm ガイド鏡 + ASI290MM + PHD2 による自動ガイド/ ASI290MC (ゲイン153) / 露出 2分 x 48コマ 総露出時間 1時間36分 / DeepSkyStacker 4.1.1, Photoshop CC, Lightroom CC で画像処理

中央の二重星みたいになってる星の小さい方の星がそれのようです。かにパルサーの位置は以下のサイトで確かめました。

そもそも中性子星って可視光で光ってるの?と思ったのですが、かにパルサーの場合、パルサーとして発生している電磁波*1 が電波だけでなく可視光の波長にも及んでいて、それが見えているそうです。

なので、可視光でも電波と同じように33ミリ秒周期で点滅しています。これは1968年にかにパルサーが発見されてすぐに観測されています。*2 点滅の様子の動画はこちらで見ることができます。

これはキットピーク国立天文台4メートルマイヨール望遠鏡で撮影されたものだそうです。1/30秒周期の点滅を撮るには16等星を1/60秒以下の露出で撮らないといけないのでアマチュアの機材では無理そうですね…

かにパルサーで動画と言えばこんなのもあります。ハッブル宇宙望遠鏡で撮ったかに星雲の写真にはかにパルサー付近を中心に広がる波紋のような模様が写っていますが、この模様が水面に広がる波紋のように動くのです。その動画が HubblsSite で見ることができます。

これは約1週間毎に撮った10枚の写真から作られたタイムラプスムービーですが、こんなにダイナミックに動くんですね… そして、どうやらアマチュア天文家でもこの波紋の変化が観測できるらしいのです。Dave Goodin さんが撮った動画がこちら。

2年かけて半年毎に撮影したものをタイムラプスムービーにしたそうです。確かにかにパルサーの位置から波が広がるような模様の変化が見られます。撮影機材等はわかりませんが、写り具合からすると30cmクラスの望遠鏡で撮ったもののように見えます。

この「かにウェーブ(?)」、8cm の解像度ではさすがに無理っぽいですが、20cm クラス以上なら写りそう?誰かチャレンジしてみませんか?うちは μ-180C をガイド撮影する機材が揃ってなくて当分無理そうです…

*1:磁場を持った天体が高速回転することによるもの。

*2:参照: Pulsar | cosmic object | Britannica.com